CAGR(年平均成長率)とは? 計算式と活用方法【エクセル計算式&自動計算シート付き】
1. CAGR(年平均成長率)の基本概念や読み方
1-1. CAGRの定義
この指標は、企業の売り上げ予測や投資先の成長可能性を評価する際に利用されています。CAGRの計算は複雑に見えるかもしれませんが、エクセル関数やスプレッドシートで、簡単に求めることができます。長期的な成長トレンドを単一の数値で表現できるため、経営者や投資家にとって非常に有用なツールとなっています。
CAGRは複数年にわたる成長率を元に1年あたりの幾何平均を求めたものです。例えば、ある企業の売上高が3年間で100百万円から160百万円に増加した場合、CAGRは17.0パーセント。
このように、CAGRは均等な成長率を示すため、異なる期間や異なる規模の成長を比較するのに適しています。
1-2. CAGRの意味
CAGRは、一定期間における成長の平均速度を示すため、長期的な成長の傾向を把握するのに有用です。例えば、企業の売上、利益、投資額などの成長パターンを分析する際に使用されます。重要なのは、CAGRが中間年の変動を平滑化し、全体的な成長率を示す点です。
このため、CAGRは将来的な売上の予測や成長率の調査・比較、さらには企業の長期的な安定性を確認するための指標となります。また、CAGRは単なる平均成長率ではなく、複利効果を考慮したものであるため、投資やビジネスの評価に際して信頼性が高いとされています。
1-3. CAGRの読み方
CAGRの読み方は、シー・エー・ジー・アール、カーガー、ケーガーなど、どう読むかは複数あります。
2. CAGR(年平均成長率)の計算方法、エクセル計算式、自動計算シート
2-1. CAGRの基本的な計算式
CAGRは、複数年にわたる成長率から1年あたりの幾何平均を求めたものです。この指標は、企業や投資の成長率を一つの値にまとめたもので、長期的な成長トレンドを見やすくします。基本的な計算式は次の通りです。
2-2. CAGRの計算例
例えば、ある企業の売上高が3年間で次のように推移したとします。
1年目: 1,000万円
2年目: 1,150万円
3年目: 1,400万円
この場合、CAGRを計算するには、次のステップを踏みます。
まず、最終年の売上を初年度の売上で割ります。
次に、この結果を(年数 - 1)で割った値の累乗にかけます。
最後に、この値から1を引き、100を掛け合わせます。
したがって、この企業の3年間の年平均成長率(CAGR)は約18.3パーセントとなります。
2-3. CAGRを求める関数を使った自動計算スプレッドシート
ここまでCAGRの算出方法について紹介しましたが、順を追って上の計算をするのは面倒です。そこで今回は、あらかじめ計算式を入れたGoogleスプレッドシートと、コピペで使えるエクセル関数をご用意しました。ぜひこちらのファイルをCAGRの算出にご活用ください。
▼Googleスプレッドシートが新規タブで開きます▼
CAGRを自動計算するスプレッドシート
(閲覧専用としています。ファイルをコピーしてご利用ください。)
使っている関数はPOWER関数とRRI関数で、どちらを使っても答えは同じです。
〜3年分の実績から計算する場合〜
CAGR(パーセント)=POWER(3年目売上高/1年目売上高,1/(年数-1))-1
CAGR(パーセント)=RRI((年数-1), 1年目売上高, 3年目売上高)
※エクセルやスプレッドシートの表示形式を使ってパーセント表示にするため、最後の「× 100」は入れていません。
3. CAGR(年平均成長率)の応用
3-1. 経営戦略における活用方法
CAGRは、ビジネスにおいて有用な指標の一つです。企業はCAGRを用いて過去の業績を分析し、将来的な売上の予測を行います。例えば、ある商品の売上が過去数年間でどれだけ成長したかを把握することで、その商品の将来の需要や市場規模を予測することができます。
また、企業全体の成長率をCAGRで測定することにより、経営戦略の見直しや事業計画の策定に活用できます。CAGRで長期的な成長傾向を捉え、安定した経営を実現するための指針とすることができます。
3-2. 投資における利用例
投資家も、ある資産が過去数年間でどれだけのリターンを上げたかを測るためにCAGRを利用できます。CAGRが高いほど、その資産は安定して高い成長を示していることになります。例えば、ある株式が3年間でどれだけ成長したかをCAGRで計算し、その結果を元に投資の判断をします。
CAGRを活用することで、異なる投資候補のパフォーマンスを比較し、最も有望な投資対象を見極めることが可能です。また、CAGRは将来の投資リターンを予測する際にも役立ちます。複利効果を考慮に入れることで、長期的な投資計画を立てる際の重要な指標となります。
4. CAGRの注意点
4-1. 長期間のデータが必要
CAGRを正確に計算するためには、長期間のデータが必要です。CAGRは複数年にわたる成長率を基に算出されるため、短期的なデータでは正確な結果を得ることができません。例えば、売上高の推移を3年間でなく、5年や10年といった期間で見ることで、事業の長期的な成長トレンドを把握することが可能になります。
4-2. 外れ値や異常値の影響
CAGRの計算においては、外れ値や異常値の影響に注意が必要です。特定の年だけ売上が極端に高かったり、低かったりする場合、その年が全体の成長率の計算に大きな影響を与えてしまいます。これにより、実際とは掛け離れたCAGRが算出される可能性があります。したがって、CAGRを用いる際には、データの整合性を確認し、異常値を適宜修正するか無視することで、より信頼性の高い成長率を得ることが求められます。
加えて、CAGRはあくまで過去のデータに基づいた指標であり、将来の成長を正確に予測できるわけではありません。そのため、CAGRを利用する際は、他の指標と組み合わせて総合的に評価することが重要です。
5. CAGRに言及している決算説明会書き起こしを読んでみよう
ここからは、決算説明会やIRセミナーでCAGRについて説明している事例を紹介します。詳しくは書き起こし記事も読んでみてください。
5-1. 事例:株式会社グッドコムアセット (3475)
当社グループは、M&Aによる事業領域の拡大や、不動産ファンドへの物件供給を通じて成長を目指していきます。また、私募リートの早期開始や上場リートの立ち上げを進め、2030年10月期に売上高6,000億円、営業利益600億円の達成を目指します。
5-2. 事例:コロンビア・ワークス株式会社 (146A)
営業利益CAGRは当社が最も大切にしている経営指標で、過去の実績は40パーセントを超えています。
今回の25.9パーセントという数字は、中期経営計画として投資家のみなさまに約束するために設定したものですが、社内ではより高いCAGRを目指していくことを、日々のオペレーションで意識しています。
これは昨年IPOを行った際に「保守的すぎるのではないか」とよく指摘されました。しかし、達成できない約束をして落胆されるよりも、確実に実現できる範囲で約束しつつ、より高いCAGRを目指すのが当社のカルチャーです。
5-3. 事例:株式会社オプロ (228A)
もう1つの目標はARR(年間経常収益)です。平均成長率(CAGR)30パーセント以上を達成できれば、2030年11月期にはARR約100億円を実現できます。「グローバルのSaaS企業はARR100億円がスタート」と言われているため、ここにこだわっています。