1. PBR(株価純資産倍率)とは?株価評価の基本指標を解説
PBR(ピービーアール)はPrice Book-value Ratioの略。株価が1株当たり純資産(自己資本)の何倍かを示す指標です。PBRが1倍を下回る場合、理論上はその企業を解散して資産を売却した方(解散価値)が、現在の株価よりも高い価値が得られることを意味します。つまり、PBRが1倍未満の企業は、純資産以下の評価しか市場から受けていないので割安と判断する材料の一つにすることができます。
投資家にとって、PBRは企業の割安度や成長期待を判断する指標の一つとなります。ただし、PBRの適切な水準は業種や企業の成長段階によって異なるため、単純に数値の高低だけで判断するのではなく、他の指標と組み合わせたり、同業他社と比較するなど、総合的に評価するようにしましょう。
2. PBRの計算方法と目安
PBRの計算方法は比較的シンプルです。以下の式で算出されます。
1株当たり純資産は、企業の貸借対照表から算出できます。純資産合計を発行済み株式数で割ることで求められます。
PBRの一般的な目安としては、1倍が基準となります。ただし、この目安は絶対的なものではなく、業種や企業の成長段階によって適切な水準が異なります。例えば、成長期待の高いIT企業では5倍以上のPBRも珍しくありません。一方、安定した業績の公益企業では1倍前後が一般的です。
投資家は、同業他社とのPBR比較や、その企業の過去のPBR推移を見ることで、現在の株価が割高か割安かを判断する材料としています。
3. PBRを使った投資判断のポイント
PBRを投資判断に活用する際に気にすべきポイントは、以下の通りです。
・同業他社との比較:同じ業種内で相対的にPBRが低い企業は、割安と判断できる可能性があります。
・成長性との関連:高成長が期待される企業は、一般的に高いPBRでも正当化される傾向があります。
・収益性との関係:ROE(自己資本利益率)が高い企業は、高いPBRでも合理的と考えられることがあります。
・時系列での分析:その企業の過去のPBR推移と比較することで、現在の株価水準の妥当性を判断できます。
・他の指標との組み合わせ:PERやPSRなど他の指標と合わせて分析することで、より総合的な判断が可能になります。
PBRは有用な指標ですが、これだけで投資判断を行うのは危険です。企業の財務状況、事業モデル、市場環境など、多角的な視点か分析しましょう。また、PBRが低いからといって必ずしも割安とは限らず、何らかの構造的問題を抱えている可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
4. PBRに言及している企業の決算説明会書き起こしを読んでみよう
ここからは、決算説明会やIRセミナーでPBR改善などを説明している事例を紹介します。詳しくは書き起こし記事も読んでみてください。
4-1. 事例:ID&Eホールディングス株式会社(9161)
ID&E(東証プライム・サービス業)は、建設コンサルティング事業、都市空間事業、エネルギー事業を展開していますが、ROEとPERを向上することでPBR改善に取り組んでいることを説明しています。
▼決算説明会書き起こし▼
【QAあり】ID&Eホールディングス、受注高・売上・各利益とも計画達成、過去最高更新 コンサル・都市空間・エネルギーが好調|2024年6月期決算・中期経営計画説明より
経営基盤としての財務戦略についてご説明します。PBR改善に向けた取り組みについては、スライドの図に示すように、ポートフォリオマネジメントをはじめとする中期経営計画の各施策の着実な実行と資本最適化を行います。これらの施策により、株主資本コストを上回るROE12パーセントの実現とPBRの向上を目指していきます。
4-2. 事例:ニチモウ株式会社(8091)
ニチモウ(東証プライム・卸売業)は、漁業・水産業界を基盤とし、水産物の「食」の分野を主として、「住」の分野まで生活づくりをサポートする企業です。PBR改善や企業価値の向上に取り組んでおり、個人投資家からの期待も高まってきていると説明しています。
▼IRセミナー書き起こし▼
【QAあり】ニチモウ、中計最終年度は目標を上回る予想 需要が高まる機械・養殖事業の拡大、食品事業の年末商戦で3Qに利益集中の見通し|個人投資家向けWEB説明会より
PBR1倍への意識改革に対して2024年3月期は0.64倍と、改善は進んでいるものの依然として低い評価となっています。引き続き、PERの改善とROEの向上によってPBR1倍割れの解消を目指してまいります。また、このIR説明会も今年で3年目となりますが、個人投資家のみなさまから当社に対する興味や期待をヒシヒシと感じています。業績はもとより、今後の成長ステージをより一層引き上げ、更なる企業価値の向上に努めてまいる所存です。
4-3. 事例:株式会社マーキュリアホールディングス(7347)
株式会社マーキュリアHD(東証プライム・証券、商品先物取引業)は、ファンド運用事業や自己投資事業を手掛ける投資企業で、東証の市場区分再編でプライム市場を選択し、上場維持基準を充足するための取り組みの説明でPBRを使っています。
▼決算説明会書き起こし▼
【QAあり】マーキュリアHD、バイアウト1号ファンドからの成功報酬が3Qに実現 年度予算は過去最高を据え置き|2024年12月期第2四半期決算説明より
上場維持基準を充足するために必要な株価はPBR1倍弱の870円水準になりますが、直近株価はこれを上回る水準のため、足元は今期予算を達成する中で収益性を高めていくとともに、IR活動の充実を通して事業進捗を投資家のみなさまにお伝えし、市場評価を高めていくことで、今期末にはプライム市場の上場維持基準を確実にクリアすべく努めていきます。