エグゼクティブサマリー
玉川憲氏(以下、玉川):みなさま、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ソラコム代表取締役社長の玉川です。2026年3月期第1四半期決算についてご説明します。
エグゼクティブサマリーです。第1四半期の業績は、おおむね計画どおりに進捗し、順調です。我々が重視するリカーリング収益は、前年同期比19.7パーセント増の18.4億円となり、2桁増収を達成しました。為替影響調整後では前年同期比24.6パーセント増と、力強い成長を続けています。
売上高も2桁増収を達成し、前年同期比17.7パーセント増の22.2億円、EBITDAは前年同期比29.7パーセント増の1.7億円、GAAPベースの営業利益は35.0パーセント増の1.2億円で、営業利益率も0.7ポイント改善しました。
次に、ビジネスハイライトです。1つ目に、「SORACOM」の回線数がついに800万回線を突破しました。「SORACOM」を利用できるカバレッジも継続的に増加しており、現在では213の国と地域、509の通信キャリアを通じて利用可能です。
2つ目に、ソラコムでは数年前から生成AIの取り組みを強化し、生成AIを当たり前に使う組織になるべく、「アフターAI組織への進化」を推進しています。一言でいえば、生成AIをすべての職種が使いこなし、より少人数でより大きな生産性を実現する組織への変革に取り組んでおり、その成果も着実に上がっています。
また、先日の当社の年次イベント「SORACOM Discovery」において、生成AIとIoTに関する新しい戦略「リアルワールドAIプラットフォーム」を策定しました。こちらは後ほど詳しくご説明します。
3つ目に、丸紅グループとの新会社は、計画どおり8月1日に連結子会社化を完了し、PMIも順調に進んでいます。これにより業績への大きな貢献が見込まれるため、第2四半期以降のさらなる成長にもご期待ください。
以上がサマリーとなります。
目次
本日はアジェンダに沿って、2026年3月期第1四半期決算、ビジネスハイライト、成長戦略の順でご説明します。
リカーリング収益と売上高の四半期推移
2026年3月期第1四半期決算についてご説明します。スライドのグラフは、リカーリング収益と売上高の四半期推移を示しています。
青いグラフはIoT通信やAI・クラウドのストック収入であるリカーリング収益、グレーのグラフはIoTデバイスやソフトウェア販売などのフロー収入で、インクリメンタル収益と呼んでいます。
我々は、青で示したリカーリング収益を重視しています。この第1四半期でも、リカーリング収益は前年同期比で約20パーセント、為替影響を考慮すると約25パーセントの成長を遂げました。売上全体でも7割以上を占める高い割合となっています。
一方、インクリメンタル収益については、デバイスやソフトウェアのお客さまへの納入時期により変動する傾向があり、例年は下期に偏る傾向が見られました。しかし、下期偏重の大きな要因であったKDDI向けシナジー案件において、2025年3月末に包括契約を締結し、より前倒しで実施可能な体制を構築しました。
この効果もあり、インクリメンタル収益を足した全体の売上高は、この第1四半期で前年比約18パーセント増の2桁増収を達成しました。
2026年3月期第1四半期 前年同期比
第1四半期の営業利益などを前年同期との比較でご説明します。リカーリング収益は、前年同期比19.7パーセント増、売上高も17.7パーセント増となりました。
粗利は前年同期比9.3パーセント増の12.2億円となりました。粗利の伸びは売上の伸びに比べるとやや緩やかですが、これは生成AI関連の投資を継続しているためです。
販管費は前年同期比6.9パーセント増の10.9億円となりました。生成AIを活用した業務効率化の効果が現れ、販管費を効果的に抑制できています。
その結果、EBITDAは前年同期比29.7パーセント増の1.7億円、営業利益は前年同期比35パーセント増の1.2億円と大幅な増益となりました。
アフターAI組織への進化
全社的に進めているイニシアティブとして、生成AIへの取り組みがあります。ソラコムでは2022年の終わりから生成AIを全社でフル活用してきました。社内では「アフターAI組織に変わる」と宣言し、生成AIが本格的になってきた後の組織を目指して、イニシアティブを推進してきました。これは、人的リソースを本当に必要な部分のみに最小限確保し、生成AIの活用によって業務の省人化を進めるものです。
まず、既存の事業は、生成AIを使いこなすことでより少ない人数で実現します。その省人化で生み出した人的資源を新規事業の創出に再配分することで、新規採用を最小限に抑えながら、事業のスケールを図ります。
すでに、新サービスの開発も、少人数で生成AIをフル活用して開発しています。エンジニアが生成AIを使いこなしてコーディングするのはもちろんのこと、バックオフィスのメンバーも、生成AIにコードを書かせて業務効率化アプリを開発する実績も出ています。
ソラコムは、私やCTOの安川を含む経営陣が最新のテクノロジーに強いバックグラウンドを持ち、グローバル3拠点で海外メンバーを含むインターナショナルかつリモートな環境で仕事をしています。このため、業界トレンドの変化に柔軟に対応できると自負しており、引き続き変革を推進していきたいと考えています。
実際に、アフターAI組織への取り組みの成果が数字にも表れ始めています。スライド右のグラフのとおり、販管費は前年同期比でわずか7パーセントの増加に抑えられています。また、従業員数についても、買収した株式会社キャリオットを除けばほとんど増員していません。
その結果、従業員一人あたりの売上高が昨年同期比で約8パーセント増加し、生産性の向上が見られます。今後も生成AIを活用して、生産性の高い新しい時代のアフターAI組織への変革を進めていきます。
リカーリング収益のKPI
リカーリング収益のKPIについてです。リカーリング収益は、顧客1人あたりの単価であるARPAと課金アカウント数を掛け合わせたものです。
第1四半期のARPAは、前年同期比6.4パーセント増の80万1,000円、課金アカウント数は前年同期比8.3パーセント増の8,900アカウントとなりました。今年度の下期には、海外の大型案件やコネクテッドカー関連の案件が本格化する見通しですので、さらなる成長を目指していきます。
なお、この数字にはキャリオットや丸紅グループとの新会社であるミソラコネクトの数値は含まれていませんので、ご了承ください。
KDDIとの包括契約の進捗 - 売上/利益の平準化
業績に大きな影響を与えているイニシアティブとして、KDDIとの包括契約の進捗についてもお話しします。スライド左のグラフは、KDDIシナジー売上の四半期推移を示しています。包括契約の取り組みにより、この第1四半期は前年同期比52パーセント増となり、着実に増収しています。
一方、包括契約は今年度が初年度であることから、下期偏重の傾向がまだ多少残る見込みではありますが、ここから第2四半期以降、取り組みを加速させていく予定です。
第1四半期には、ソラコムがKDDIのIoTプラットフォーム戦略の策定を支援しました。コネクテッドカー、クラウドネイティブなモバイルコアシステムのOEM提供、生成AIとIoTという3つのフォーカスエリアで、協業をさらに進めていきます。
丸紅グループとの新会社「ミソラコネクト」の進捗
丸紅グループとの新会社設立の進捗については、予定どおり8月1日に新会社ミソラコネクトの連結子会社化が完了しました。丸紅グループの中のNTTドコモのフルMVNO事業を継承し、KDDIのフルMVNO、そしてグローバルなフルMVNOでもあるソラコムの技術と融合させ、お客さまのDXを加速させていきます。
また、このミソラコネクトを通じて、丸紅グループの国内、海外事業のIoT化やDXを推進するとともに、シナジー効果を積極的に高めていきます。
ミソラコネクトの業績予想への影響
あらためて、ミソラコネクトの当期業績への影響についてご説明します。売上は12.9億円、粗利は3.5億円、EBITDAは1.7億円と、当社グループの中でも大きなものとなっています。この数字は保守的に算出しており、両者のシナジーによるアップサイドは含んでいません。
すでにミソラコネクトの回線をソラコムで再販したり、ソラコムの技術を活用してインフラコスト削減に取り組んだりするなど、シナジー創出に取り組んでいます。ここからアップサイドを実現できるよう進めていきます。
2026年3月期第1四半期 通期業績予想に対する進捗
通期の業績予想に対する進捗です。通期の業績予想はレンジ方式を採用しているため、中間値に対する進捗率でご説明します。リカーリング収益の進捗率は20.4パーセント、売上高は19.7パーセント、粗利は20.6パーセント、販管費は20.8パーセント、EBITDAは15.4パーセントとなっています。
前年同期の進捗率と比較すると、やや進捗率が低く見えるところもありますが、新会社ミソラコネクトの業績が8月から連結に取り込まれることを考慮すると、売上と利益は予定どおりの進捗となっています。
以上、第1四半期決算の数字についてご説明しました。
日本最大級のAI / IoTカンファレンスSORACOM Discoveryを開催
次に、ビジネスハイライトについてご説明します。当社は2015年に創業したため、今年で創業10周年の節目を迎えます。7月16日に開催した当社主催の年次カンファレンス「SORACOM Discovery」も10回目を迎え、今年も来場者は2,200名を超え、どの講演でも立ち見が出るほどの大盛況となりました。
基調講演には、OpenAIの長﨑社長、アイリスオーヤマの尾形部長、スズキの藤谷本部長にご登壇いただき、生成AIやIoTのお客さま事例、新戦略、新製品を発表しました。
展示ブースも終日人混みが絶えず、参加者やパートナーのみなさまから「昨今のイベントで一番良かった」とお褒めいただいています。
イベントでたくさんのお客さま事例を発表
イベントでご紹介した最新のお客さま事例を、一部ご紹介します。スライド左から、1つ目の写真は、バンダイの「たまごっち」の「Lab Tama」です。これはお店に設置する「たまごっち」の巨大版でご利用いただいています。
2つ目に、GMOフィナンシャルゲートには、商業施設で利用する決済端末に採用いただきました。
3つ目に、JURENには、レンタルバッテリーサービスでご利用いただいています。
4つ目に、海外でも引き続き先進的な活用が進んでおり、Riddellでは、アメリカンフットボールのヘルメットにスマートセンサを装着し、練習スケジュールの調整や怪我のリスク軽減に取り組まれています。
このように、最近では私たちの生活の身近なところでも利用が加速しており、ユニークな事例が日々生まれています。
現実世界のデータが、AIで価値に変わる時代
みなさまもご存知のとおり、足元では生成AIの劇的な進化が続いています。ソラコムでは10年前からIoTに取り組んできましたが、当初から、あらゆるものがつながりデータが取得され、新たな知見が生まれ、世界がより良くなるというIoTのビジョンを掲げていました。
そして、生成AIというインテリジェンスがついに最後のピースとして加わったことで、このIoTのビジョンが実現できるようになり、非常に大きなチャンスがあると実感しています。
数年前からさまざまなお客さまのプロジェクトを通じて、生成AIとIoTを組み合わせた取り組みを進めてきましたが、まさに「現実世界のデータがAIで価値に変わる時代」が来たと確信しています。IoTで集まってきたデータ、いわば埋蔵金が生成AIによって掘り出される時代になったと考えています。
「現実世界のデータがAIで価値に変わる時代」における課題
この生成AIの進化により、「現実世界のデータがAIで価値に変わる時代」が到来し、非常に大きなチャンスが生まれてきています。一方で、多くのお客さまにはさまざまな課題があると認識しています。
例えば、「IoTデータはソラコムなどを利用して収集できるが、生成AIには連携できておらず、活用方法が限定的」となっているといった課題や、「社内データが各部門に散在して、統合が困難」といった課題です。また、理想的には「IoTデータも社内のデータも生成AIに連携することができれば、より大きな価値が生み出せるはずですが、精神的ハードル、技術的ハードルが高い」といった課題に直面しているケースが多いと感じています。
そこでソラコムは、IoTデータ収集やAIへの連携において蓄積してきたノウハウを活用し、お客さまの技術的ハードルや心理的ハードルを取り除き、その実現を支援します。その想いを込めて、先月のイベントにおいても、新しい企業理念と新しいプラットフォーム戦略を発表しました。
新しい企業理念
新しい企業理念は、「Making Things Happen for a world that works together」です。
「私たちがつくるのは、共鳴しあう世界です。モノや人がつながり、それぞれの価値が増幅しあい想像を越える未来が次々と生まれていく。通信、クラウド、AIといったテクノロジーをだれもが使えるようにして、志を共にするパートナーたちと共に世界を良くするイノベーションへとつなげる。IoTと、その先へ。」
ソラコムは日本発の真のグローバルの会社として、企業理念も英語で作りました。「Making Things Happen」ということで、主体的に、世の中を素晴らしいものにすべく、モノや物事を生成AIにつなげることで、素晴らしい未来を生み出していきたいと考えています。
そして、これまで、「IoTの民主化」を掲げてきましたが、さらに「生成AIの民主化」も行って、パートナーのみなさまとともに、世界を良くするイノベーションを起こしていきます。
新戦略 リアルワールドAIプラットフォーム
この企業理念のもと、IoTだけでなくAIの民主化も含めた上位の新戦略を定義しました。「リアルワールドAIプラットフォーム」です。フィジカルとデジタルの両方、現実世界のすべてをAIにつなぎ、より良い未来を創造する「リアルワールドAIプラットフォーム」へと「SORACOM」は進化していきます。
ここでのフィジカルとは、IoTデバイス、つまり自動車や家電などあらゆるものから取得可能なIoTデータを指します。デジタルとは、社内の営業データ、生産データ、人事データなどで、これらをすべてAIにつなげることで、お客さまのデータに大きな価値を創出できると考えています。一言で言うと、ソラコムが「すべてをAIにつなぐ」部分を支援します。
リアルワールドAIプラットフォームの実現に向けて
この新しい戦略「リアルワールドAIプラットフォーム」の実現に向けて、イベントでも多くの発表を行いました。一部をご紹介すると、例えば、OpenAIが提供する「OpenAI APIプラットフォーム」のエンタープライズ契約を締結しました。OpenAIとの密な協業を進めることで、社内のサービス開発を高速で推進し、新しいサービスを提供していきます。
また、誰でも簡単に生成AIボットを作成できる新サービス「Wisora」を発表しました。これは、いわば生成AIボットの民主化を目指すサービスです。後ほどデモをお見せします。
そして、「ソラカメ」のようなカメラだけでなく、ドローンやロボットといった分野で必要とされる大容量通信に対応し、テラバイト級のデータをアップロード可能なプランを新たに発表しました。
さらに、グローバルなIoTプラットフォーム「SORACOM」自身も、生成AIとの融合を加速させています。これにより、「SORACOM」のデータの可視化が可能になるほか、生成AIを活用してIoTアプリケーションを簡単に作成したり、生成AIクライアントから「SORACOM」を呼び出したりすることができるようになっています。
また、「SORACOM」が提供するクラウドカメラサービス「ソラカメ」は、現実世界のデータを生成AIに簡単につなげることができますが、これまでは屋内で電源がある場所にのみ対応していました。ネットワークや電源がない屋外でも設置可能な「屋外スターターキット」と「ソーラーキット」をリリースし、あらゆる場所の映像を生成AIにつなげられるようになりました。
さらに、生成AIによってIoTアプリケーションのプロトタイプ開発が数日で可能となりましたので、お客さまのIoTアプリケーション開発・運用をソラコムが支援するプロフェッショナルサービス「SORACOM GenieBuild」も提供を開始しました。
データ分析基盤サービス「SORACOM Query」
イベントでお客さまから好評だったサービスのデモをお見せします。最初にご紹介するのは「SORACOM Query」です。生成AIとIoTのサービスとしては、これまでにも生成AIの力で誰もが簡単にIoTアプリケーションを構築できる「SORACOM Flux」を提供してきました。
今回の「SORACOM Query」は、生成AIとIoTを用いた新しいサービスです。これは、大量のデバイスから収集したデータの検索や分析を、生成AIの力で簡単に行うことができるデータ分析基盤サービスです。
SORACOM QUERYのデモ
デモをご覧ください。「SORACOM Query」を使用すると、実際に「SORACOM」のプラットフォーム内で「ローミング中のSIMの位置を表示して」と入力するだけで、地図上に自動的にマッピングされ、すぐに確認することができます。
また、「国別の円グラフを表示してください」と自然言語で記入すれば、すぐに円グラフが表示されます。
さらに、プラットフォームの情報だけでなく、IoTデータも「センサーデータから過去2日間の温度・湿度を表示して」と入力することで、グラフ表示が可能です。
その上、「1時間平均にして、暑さ指数と不快指数を追加してください」と入力すると、指示に基づいたグラフも表示されます。
以上のデモのように、IoTの「SORACOM」におけるプラットフォームデータのみならず、温度や湿度などの情報を含めた分析できる基盤サービスとなっています。
業務支援のための生成AIボットサービス
次にご紹介するのは、生成AIボットサービス「Wisora」です。これは、まったく新しいサービスとなります。背景として、ソラコムは2年前からカスタマーサポートで、AIによる自動化を実現してきました。このような取り組みをお客さま自身も実現したいと考えているのではないかと思いましたが、生成AIボットを自ら作り、社内データを学習させ、設置し、外部に公開するためには、開発リソースとノウハウが必要となります。
ソラコムはこの生成AIボットを民主化するべく、「Wisora」というサービスを提供します。「wisdom」と「SORACOM」から、「Wisora」と名付けました。
利用を開始する方法は非常に簡単で、Web上から登録し、ドキュメントをアップロードしたり、学習させたいWebサイトのURLを入力したりするだけで、このボットを簡単に学習させることが可能です。その後、学習したボットはWebサイトや「Slack」などに設置できます。
このサービスは非常に使いやすく、さまざまな用途に対応可能です。具体的には、カスタマーサポートや社内ヘルプデスク、マーケティングサイトなどに利用できます。
さらに、AIボットであるため、24時間365日、人間に代わって応答することができます。また、日本語だけでなく、多言語にも対応しており、幅広い分野でお客さまに貢献できるサービスとなっています。
Wisoraのデモ
実際に「Wisora」の使用感をご覧いただきます。Webからログインし、ファイルで学習データをアップロードするか、WebのURLを入力するだけで操作できます。例えば、ソラコムでは「ソラカメ」がありますので、このURLをコピーして貼り付けるだけで、自動的にWebサイトの情報を取り込み、学習が進みます。
次に、営業担当なのかカスタマーサポートなのかといったキャラクター設定を行うことで、すぐにAIボットが学習を終えて完成します。もしこれを外部のページに公開する場合は、「公開ページ」で色合いや説明文をカスタマイズすることで、外向けのボットを即座に設置できます。
例えば、「ソラカメ」の月額利用料金について質問してみると、このように非常に詳細かつ正確な回答を得られます。
「Wisora」は月額3万円強から使えるサービスです。正式リリースは8月中を予定しており、すでにプライベートベータでお客さまにご利用いただいており、お客さま事例も出てきています。
現在は社内ドキュメントやWebから学習して生成AIボットを簡単かつ迅速に作成できるサービスですが、今後はIoTデータとの連携を進めることで、「リアルワールドAIプラットフォーム」の生成AIエージェントとして進化させていく予定です。
以上、「SORACOM Query」と「Wisora」のデモをご紹介しました。
ソラコムの成長戦略とドライバー
最後のセクションでは、「リアルワールドAIプラットフォーム」という新戦略のもとでの成長戦略についてお話しします。これまでは成長戦略として、スライドに記載のとおり、もともとのリカーリングの持続的な成長に加えて、「A」のグローバル展開、「B」の戦略的アライアンスやM&Aの推進、「C」の生成AIとIoTの3つを取り組みとして進めてきました。このCの生成AIとIoTの取り組みが、今回発表した「リアルワールドAIプラットフォーム」戦略にあたります。
「リアルワールドAIプラットフォーム」の取り組みは、「C」の観点だけでなく、生成AIの力が全体に波及することで、土台となるリカーリング収益の成長、グローバル展開、戦略的アライアンスを含め、成長スピードが加速すると考えています。
この構想を進めることで、生成AIとIoTの分野における「ソラコム」のブランド力を高め、成長戦略をさらに加速させていきます。
グローバル展開
成長戦略を一つひとつご説明します。1つ目は、グローバル展開です。グローバル売上高は第1四半期で10.5億円となり、全体の売上高に占めるグローバル売上高の比率は47.3パーセントでした。グローバルでは、以前ご報告したヒルトンやBusPatrolの大型案件が着実に進捗しており、下期も成長が期待できます。
また、このような大型案件を継続的に獲得できる体制が構築されており、既存の大型案件の進捗が進む中で新規案件も加わることで、今後さらなる成長を見込んでいます。
これに加えて、グローバルではIoTプラットフォーム、特に通信プラットフォームとしての認知が先行していましたが、生成AIとIoTのプラットフォーム、つまり「リアルワールドAIプラットフォーム」としての認知も高めていきます。
その上で、先ほどご紹介した「SORACOM Query」や、生成AIで簡単にIoTアプリケーションを作成できる「SORACOM Flux」といった生成AIの高付加価値サービスの利用を促進し、顧客あたりの単価であるARPAの向上を図っていきます。
戦略的アライアンス - コネクテッドカー
戦略的アライアンスについては、コネクテッドカー、KDDI、丸紅と複数の分野で取り組んでいます。特に、日本のお家芸であるコネクテッドカーについては、引き続き注力し、KDDIと連携したグローバルプラットフォームを推進します。また、スズキにもご出資いただいており、今後も粛々と推進していきます。
今回のイベントでも、AECCというコネクテッドカーのコンソーシアムに展示ブースへご出展いただき、トヨタ自動車と共同で検証しているコネクテッドカー向けの無線通信の冗長化・制御の仕組みである「IRIGATE」の展示を行っていただき、好評を得ています。
イベントにおけるソラコムの新リリースとしては、「SORACOM Connectivity Hypervisor」と呼ばれる「SORACOM」のSIM上で、他社の通信キャリアの通信プロファイルを追加できる機能をリリースしています。この機能についても、「IRIGATE」の仕組みで検証を行っています。
このように、コネクテッドカーに求められる特有の機能の開発を、生成AIを活用してこれまでにない速度で進めることで、さまざまなご要望に対応していきます。これにより、日本のお家芸の分野において、ソラコムのグローバル通信およびグローバルプラットフォームを通じて貢献していきます。
生成AI時代における成長エンジンとしての、インオーガニック戦略
M&Aにおいては、これまでもIoT領域におけるリカーリング型サービスの創出が期待できる事業に対して、積極的に検討してきました。
例えば、昨年はキャリオットの子会社化を行いました。今年度は、丸紅との合弁会社ミソラコネクトの子会社化を実現しています。
今後はリアルワールドAIプラットフォームの戦略のもと、IoT分野に加えてAI分野も含め、リカーリング型サービスの獲得を軸としたインオーガニック戦略の推進を進めていきます。これにより、インオーガニック戦略自体も広がりを見せていきます。
リアルワールドAIプラットフォーム
当社が提供するグローバルプラットフォーム「SORACOM」も、単なるIoTプラットフォームではなく、「リアルワールドAIプラットフォーム」へと進化を続けています。
例えば、IoTデバイスでは、カメラの画像や映像をAIとクラウドに容易につなぐことができる「ソラカメ」の屋外対応版をリリースしました。
また、IoT通信については、カメラやAI、ロボティクスといった分野で必要となる大容量アップロードプランの提供も開始しました。
そして、AIクラウドでは、「Wisora」や「SORACOM Query」といったAIサービスを引き続き開発していきます。「リアルワールドAIプラットフォーム」として位置付けることで、対応可能なマーケットも広がっています。
リアルワールドAIプラットフォームによって広がるTAM
IoT市場を見ると、2026年の世界のIoT市場規模は約1兆946億ドルと予測されています。これまでのソラコムの主戦場は、コネクティビティとその周辺領域でした。
今回の新発表では、ハードウェア分野において「ソラカメ」の屋外製品、サービス分野ではお客さまのIoTアプリケーション開発・運用を支援する「SORACOM GenieBuild」、ソフトウェア分野ではデータ分析基盤サービス「SORACOM Query」、および生成AIを活用して簡単にIoTアプリケーションを構築できる「SORACOM Flux」などが新しい付加価値となります。
また、主戦場であるコネクティビティにおいても、テラバイト級の大容量アップロードプランの提供など、サービスラインナップを拡充しています。
新戦略「リアルワールドAIプラットフォーム」のもと進化したソラコムは、コネクティビティだけでなく、ソフトウェア、サービス、ハードウェアを含めたIoT市場全体へのリーチをさらに加速させたいと考えています。
本日のまとめ
本日のまとめです。1つ目に、第1四半期の業績は順調に進捗しており、リカーリング、売上ともに2桁増収で約20パーセント増加し、EBITDAは約30パーセント増加しました。第2四半期からはミソラコネクトの業績も連結されますので、第2四半期以降のソラコムのさらなる成長にご期待ください。
2つ目に、ソラコムは10年目の節目を迎え、「リアルワールドAIプラットフォーム」の戦略を掲げ、新サービスを続々と投入しています。グローバル売上も40パーセントを超えており、戦略的アライアンスもKDDI、コネクティッドカーエリアと、着実に進んでいます。
3つ目に、小さなチームが世界を変える時代において、ソラコムもアフターAI組織への変革をすでに実行しています。その効果が従業員あたりの生産性にも現れ始めていますので、今後の10年も先頭を走り続ける企業でありたいと考えています。
中長期の成長を着実に築いていきますので、引き続きご支援をよろしくお願いします。ご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:リカーリング収益への為替影響について
質問:第1四半期のリカーリング収益の成長率について、為替影響を除外すると前年同期比で25パーセントとのご説明がありました。この為替影響についてもう少し詳しくご説明をお願いします。
玉川:為替レートに関しては、前期第1四半期は急激な円安進行により、実際のレートは155.9円でした。しかし、今期第1四半期の平均レートは144.6円となっています。
この円高の影響により、リカーリング収益においては約2割の控えめな伸びに見える一方、為替影響を除いた場合は前年同期比で25パーセントほどの堅調な成長を示しています。
今年度の通期業績予想との対比という意味では、通期の為替想定は145円と見ています。そのため、現状の水準で推移すれば、通期業績への影響はニュートラルになると考えています。
質疑応答:第1四半期の業績予想に対する進捗について
質問:第1四半期の進捗について、業績予想中間値との比較で進捗率は概ねインラインとのお話がありました。「予定どおり」というのは、業績レンジの中間値に対して、現時点で第1四半期の進捗がインラインだったということでしょうか? それとも、説明しやすいから中間値で表記しただけで、実際は若干上回ったり下回ったりしているのでしょうか?
玉川:今年度については、為替影響やM&Aに関連する費用があるため、通期業績をレンジでの表現を採用しています。進捗率については、レンジの中間値と比較しており、進捗率は現在、中間値と比べて19.7パーセントです。
前年同期比では一見低く見えますが、実際には8月1日から「ミソラコネクト」が連結されることを考慮しています。当初の業績予想にもこの連結を織り込んでいましたので、順調に推移していると見ています。
具体的には、通期業績予想の中間値ベースで売上が113億円と見込んでおり、そのうちミソラコネクトの影響が約13億円です。ミソラコネクトを除いた通期売上100億円に対する進捗率を見ると、22.3パーセントとなります。
前期は同時点で21パーセントでしたが、リカーリングが積み上がっていることを考えると、今期は堅調に進捗していると判断しています。
質問:つまり、中間値より少し上回る水準で進んでいるということですか?
玉川:そのとおりです。ここからさらにミソラコネクトとのシナジーや、その他の大型案件をしっかり積み上げ、アップサイドを確保していきたいと考えています。
質疑応答:業績予想のレンジ開示の終了時期について
質問:業績予想レンジについては、もともとは為替影響やシナジーを踏まえてレンジを設定しているというお話でした。逆に言うと、サービスが本格的に始まると、業績予想をある程度明確にできるのではないかと思っています。その意味では、上期が過ぎればレンジでの予想が終了する可能性はあるのでしょうか?
玉川:現時点では、上期が終了した時点でレンジを外すかどうかについては、具体的には検討していません。ただし、今年度の為替は145円で見ています。1円の円安による影響としては、売上ではプラス3,500万円、営業利益ではほぼニュートラルのプラス300万円と見込んでいます。
進捗状況に応じては、補足的な追加情報をお出ししてもよいかとも考えています。いずれにせよ、本質的には実質的なリカーリングの積み上げやシナジーのアップサイドを確実に達成すること、またKDDIの包括契約を前倒しで実現すること、さらに生成AIに関連した新サービスでしっかりと成果を出すことが重要だと考えています。
これらのアップサイドを確実に出すことで、業績予想に対してポジティブなアップデートを示すことが理想的だと考えており、その実現に注力していきます。
質疑応答:KDDIシナジー売上の今後の見通しについて
質問:KDDIに関して、第4四半期に提示された見通しと、この第1四半期の実績が異なっています。「第1四半期は減少するが、第3四半期から第4四半期前にはKDDI向けの売上がこれまで以上に増加する」といった見通しに修正されたように見受けられます。
この背景や、今期にでこぼこがあった中で、この取り組みが順調に進むことでKDDI向けの売上は継続的に増加すると見てよいのか、進捗状況について教えてください。
玉川:KDDIとのシナジーにおける進捗については、第1四半期は昨年と比較して、前倒しが実現できたと考えています。スライドのとおり、売上は52パーセント増の1.4億円で着地しており、一定の成果が出ていると認識しています。
理想的には、包括契約による完全な平準化を目指すと、四半期ごとに25パーセントずつの割り振りとなるべきところです。ただし、昨年度末に包括契約を結んだばかりであるため、その進め方を議論しながら進めています。そのため、現在も若干下期偏重が残りますが、第2四半期においても昨年より確実に成果が出せるよう準備を進めています。
第1四半期では、その準備を着実に進めており、スライドに記載のとおり、KDDIのIoTプラットフォーム戦略をソラコムが支援しています。コネクテッドカーや、クラウドネイティブなモバイルコアシステムのOEM提供、「生成AI X IoT」といったエリアで、取り組むべき項目のリストアップや優先順位の設定も着実に進んでおり、第2四半期も前倒しで目標を達成できると考えています。
これにより全体的な前倒しが進み、大きなシナジー支援につながると考えています。通期を通じた成長も期待しており、引き続き粛々と成果を上げていきたいと思います。
質問:第4四半期の説明資料で、参考として提示されていた棒グラフのようなイメージのものを拝見しました。これはあくまでイメージであり、四半期の予想ではないという認識でよいでしょうか?
玉川:おっしゃるとおりです。あくまで、より前倒しで実現していく内容を示すためのグラフです。我々が想定している進捗状況としては、現在のところしっかりと達成できていると思っています。
ただし、先ほどもお話ししたとおり、理想的には第1四半期で25パーセントを達成するのが最良の状態ですので、そのようなかたちに近づけるよう、引き続き毎年しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
質疑応答:第1四半期におけるオーガニックの成長について
質問:先ほどのご質問とも重複しますが、第1四半期の進捗について、あらためて確認させてください。スライド8ページにリカーリング収益のKPIが記載されていますが、こちらはミソラコネクトやキャリオットを除いたオーガニックの数字だと思います。第1四半期がARRベースで15パーセント成長している一方で、期初のレンジは下限が18パーセント成長、上限が27パーセント成長となっています。
そうすると、少し物足りないようにも感じられるのですが、このオーガニック部分の数字について、どのようにお考えでしょうか? 第1四半期については、下期に大型案件が控えているため、15パーセント成長でも十分と見るべきなのでしょうか?
玉川:リカーリング収益を昨年の第1四半期と比較した際、為替の影響がかなり出ています。その影響を踏まえると、単純な計算では約20パーセント成長にはなっていると考えています。
加えて、大型案件の進捗が後半にしっかりと成長すると考えています。そのため、現状、ミソラコネクトを除いたインオーガニックを除いたオーガニックの成長は、着実で堅調に推移していると考えています。
質問:第2四半期以降については、前年の為替面でのハードルが下がり、さらに大型案件が加わるため、前年度比が強くなるということですね。
玉川:おっしゃるとおりです。前年度比という観点では、為替影響が緩やかになっていくと考えています。
質疑応答:生成AI活用による粗利と販管費の状況について
質問:粗利率と販管費について、生成AIの活用により、売上総利益ベースでは若干ですが前年度比で粗利率が悪化しています。一方で、販管費については生成AIの活用により抑制できているとスライドに記載されていますが、それぞれの詳細な考え方や背景について教えてください。
玉川:生成AI関連の投資について説明すると、例えば、OpenAIとのエンタープライズ契約や、本日お話しした「SORACOM Query」や「Wisora」といった新サービスの開発費などが挙げられます。これらは開発費として原価側に計上しているため、原価が少し上昇し、その結果として粗利率が若干下がっています。
一方で、販管費についてですが、以前までは毎年20人から30人ずつ着実に採用を増やし、人件費が積み上がっていく傾向がありました。しかしながら、生成AIの進化に伴い、実際のところ社内でも驚いているのですが、エンジニアによるコーディング作業においても、現在では大半が生成AIで対応可能となっています。
このような状況を踏まえると、少人数でもこれまで以上のアウトプットを出せることが現実的になってきています。そのため、これまでどおりの採用方針を続けるのではなく、現メンバーが生成AIを効果的に使いこなし、アンラーニングして新しいスキルを習得することで、生産性を向上させることが重要だと考えています。
そのため、現在では本当に必要な場合のみ採用を行っています。より意図的に、既存事業を少人数で効率的に運営する、より少人数で新規事業を立ち上げることにより、生成AIを使用せざるを得ないという進化圧を社内でかけています。その結果として、人件費を抑制できています。
スライドの右端の従業員数を見ると、薄い灰色の部分は、ほとんどが実際に連結したキャリオットの人員増加によるものです。それ以外のメンバーはほとんど増えていません。一方で、新サービスの開発や新機能の追加速度は上がっており、社内の生産性も高まってきていると実感しています。
質問:つまり、既存事業の人員効率化が販管費率の改善に反映されており、その分、新規事業に人員を振り分けることで若干原価率が上がっているという理解してよいでしょうか?
玉川:おっしゃるとおりです。
質疑応答:ミソラコネクトとのシナジーについて
質問:ミソラコネクトとのシナジーについて、期初計画には直接的な業績への影響のみを反映しているとのお話でした。現時点でシナジーの手応えや、再販に関する具体的な進展が見えている部分があれば教えてください。
玉川:新会社のミソラコネクトを合弁で立ち上げる予定日を8月1日としていましたが、そのスケジュール通りに設立し、PMIも順調に進んでいます。この時点で一つの変動要因が解消されたと思っています。また、シナジーの観点でも、プロジェクトが着実に進んでいます。いくつか具体例をご紹介します。
1つ目は、ミソラコネクトが有するドコモのフルMVNOのインフラに関するものです。このインフラは広い帯域を有しています。この帯域を活用して、大容量アップロード製品をソラコムからも販売する取り組みをすでに進めています。
実際、「SORACOM Discovery」でも大容量アップロードに関して発表しましたが、それ以降お客さまからの問い合わせが非常に増加しており、この点でシナジーが進展しています。
2つ目に、インフラコスト削減の観点でのシナジーも複数のプロジェクトが進行中です。当社は、携帯電話通信インフラのコア部分を自社開発してきた実績が、業界で高く評価されている会社だと自負しています。
このソフトウェアアセットを、ミソラコネクトの既存のハードウェアアセットと置き換えることで、インフラコストの削減を図る計画があります。この取り組みはPMIにおいて着実に進んでおり、コスト削減という面でのシナジーのアップサイドも実現していきたいと考えています。
これらトップラインの増加とコスト削減の両面において、着実に成果が見え始めてきましたら、適切なタイミングでご報告したいと考えています。
質疑応答:KDDIとの包括契約による売上・利益の平準化について
質問:KDDIとの包括契約について、今年度が初年度であることから、下期偏重の傾向がまだ多少残る見込みだとのご説明がありました。
来期または来期以降にどのようなかたちで均されていくイメージを持てばよいでしょうか? 1年が経過すればかなり議論が進み、来期から一気に均されていくのか、それとも来期以降じわじわと進み、最終的に25パーセント程度になるのか、そのイメージを教えてください。
玉川:具体的には、初年度である現時点では、来年度から約25パーセントずつ、つまり4分の1ずつというかたちで確実に進むことをお約束することは難しいのですが、今年度も前倒しで進めているように、第2四半期でも前倒しで実現を目指したいと考えています。イメージとしては、毎年、前倒しで進めていく傾向が出てくるだろうと思います。
また、この包括契約の枠組みの中で進めることにより、1年単位に限定されず、複数年にわたるプロジェクトも実際に増加しています。
このようなプロジェクトが増えるほど、複数年にわたって分割しながら平準化していくケースが増加しており、結果として平準化が進行すると同時に、次年度だけでなく2年後、3年後のパイプラインとしても積み上がり、平準化が進み、取引量も増加していく実感を得ています。
いずれにせよ、今年度は前倒しで実現を目指すとともに、年度内のみにとどまらず、複数年にわたり我々のシナジーの価値をKDDIに提供できるよう進めていきたいと考えています。