1. PER(株価収益率)とは?基本的な定義と重要性

PER(株価収益率)はPrice Earnings Ratioの略。企業の株価がEPS(1株当たりの純利益)の何倍になっているかを示し、企業の収益力に対する株価の割高・割安を簡単に判断できる指標です。一般的に、PERが高いほど株価が割高、低いほど割安と考えられます。企業の成長性や業界特性によって適正なPERの水準は異なるため、単純に数値の高低だけでは判断しないでください。

2. PERの計算方法:具体例を交えて解説

PERの計算式は以下の通りです。

PER = 株価 ÷ 1株当たりの純利益(EPS)

具体例を見てみましょう。A社の株価が2,000円、1株当たりの純利益が100円だとします。この場合、PERは以下のように計算されます。

PER = 2,000円 ÷ 100円 = 20倍

つまり、A社の株価は1株当たりの純利益の20倍ということになります。

ここで注意すべき点は、1株当たりの純利益(EPS)の選び方です。通常は直近の決算期のEPSを使用しますが、企業の業績が大きく変動している場合は、複数年の平均値や予想EPSを使用することもあります。これにより、一時的な業績変動の影響を排除し、より適切な企業価値評価が可能になります。

3. PERを使った企業価値評価の方法

PERを使った企業価値評価の基本的な方法は、同業他社や業界平均との比較です。例えば、A社のPERが20倍、同業他社の平均PERが15倍だとすると、A社の株価は相対的に割高と判断できる可能性があります。

ただし、PERだけで企業価値を判断するのは危険です。企業の成長性を考慮したPEGレシオ(PER ÷ 予想利益成長率)も併せて使用することで、より正確な評価が可能になります。PEGレシオが1未満であれば、その企業の株価は割安と判断されることが多いです。

また、PERを用いた株価の理論値計算も可能です。例えば、業界平均PERが15倍で、ある企業の1株当たり純利益が100円の場合、理論株価は1,500円(100円 × 15倍)と計算できます。現在の株価がこの理論値を下回っていれば、割安と判断できる可能性があります。

以上のように、PERは株式投資において役に立つ指標です。ただし、PERだけでなく他の財務指標も併せて分析し、総合的に企業価値を評価していきましょう。

4. PERに言及している企業の決算説明会書き起こしを読んでみよう

ここからは、決算説明会やIRセミナーでPERの改善などについて説明している事例を紹介します。詳しくは書き起こし記事も読んでみてください。

4-1. 事例:株式会社セラク(6199)

セラク(東証スタンダード・サービス業)は、企業のデジタル化を支援するDXサービス、企業のITインフラやITシステムを支えるシステムインテグレーションサービス、農業IoTサービス「みどりクラウド」等を提供していますが、PERと営業利益額との相関を折れ線グラフで示し、現在のその乖離からこれからの株価上昇への期待を説明しています。

▼IRセミナー書き起こし▼
【QAあり】セラク、IT人材創出やクラウドシステム運用・定着、「らくらく出荷」「NewtonX」で営業利益と時価総額の拡大へ|個人投資家向けIRセミナーより

スライドは、この間のPER、営業利益率を示したグラフとともに、株価推移や売上高、営業利益額および各期の成長戦略との相関を示しています。売上高の成長による規模拡大を続けながら営業利益率を高めている現状と、成長戦略としてもクラウドシステム運用・定着領域の事業成長や、今後の大きな利益貢献が期待できる「みどりクラウド らくらく出荷」「NewtonX」への投資と、今後の成長が見込める中での現在の株価水準は割安だと言わざるを得ません。成長戦略を多くの投資家のみなさまに評価していただき、我々がその戦略を着実に実行していくことで株価水準が上がっていくものと確信しています。


4-2. 事例:立川ブラインド工業株式会社(7989)

立川ブラインド工業(東証プライム・金属製品)は、ブラインドやロールスクリーン、間仕切りなどのインテリア製品を通じて「安心・安全・快適」を届けるインテリアメーカーです。東京証券取引所からの要請を受け、現在1倍割れの状態にあるPBR向上を目指し、PER向上がその一つの取り組みであると説明しています。

▼決算説明会書き起こし▼
【QAあり】立川ブラインド工業、注力している電動製品、間仕切り製品の拡販が奏功し、室内外装品関連事業で増収を確保|2024年12月期第2四半期決算説明より

PERは現在10倍を下回っており、上場会社の平均と比べても低い状態にあります。開示資料の充実や投資家のみなさまとの対話機会を増やすことに加え、先日検討を開始した事業領域の拡大に向けた活動を進めていくことで、成長への期待を高めていきたいと考えています。


4-3. 事例:東邦ガス株式会社(9533)

東邦ガス(東証プライム・電気・ガス業)は、事業を取り巻く様々なリスクとそれらへの対応について投資家に伝えていくことが、投資家の不安を取り除き、PERの改善につながる可能性があると説明しています。

▼決算説明会書き起こし▼
東邦ガス、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について PBR向上に向けて「資産効率の向上」と「稼ぐ力の向上」を実施|2024年3月期決算説明より

当社のPERは、以前は20倍程度で推移していましたが、外部環境の変化やインデックス(MSCI)からの除外などにより、2020年度から2022年度にかけて大きく低下しています。電力調達環境の変化やカーボンニュートラルの進展といった新たなリスクへの対応を含め、当社の成長性に対する十分な理解を得られておらず、不安を払拭できていないことが、足元のPERの水準につながっている可能性があると考えています。


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