バークシャー・ハサウェイ株主総会の質疑応答
益嶋裕氏(以下、益嶋):ここまではなかなか、表面的なところと申しますか、あまり投資のお役には立ちづらい、バークシャー・ハサウェイの株主総会がどんなイベントであったかというところをご紹介してきたんですけれども。
ここからは実際に、株主からどんな質問が出て、それに対して(ウォーレン・)バフェットと(チャーリー・)マンガーがどのように回答したということをご紹介していきたいと思います。
このように、真んなかのステージにバフェットとマンガーが座って、株主からの質問に回答するわけなんですけれども。
この(スライド)右側のように、あらかじめ株主が質問する場所が決まっております。事前に希望者を受け付けて、抽選を行って質問していたということでした。
西尾貴仁氏(以下、西尾):実際には、もともと最初から受け付けていた(質問)メールとあとは会場(質問)がバフェットやマンガーに投げられていくシステムですね。
益嶋:なるほど。かなり順番に数多くの株主が質問するわけなんですけれども、なにか詰まったりして時間が取られることはとくになくて、非常にスムーズな運営が印象的でした。
5年先・20年先の企業利益を予想するポイント
では、ここからいよいよQ&Aセッションのご紹介に入っていきます。
バフェットたちは、全部で60問ほどに回答したんですけれど、時間の都合上、すべてをご紹介することはできませんので、今日はそのなかから抜粋して、とくにみなさまのお役に立つのではないかというところを絞ってご紹介します。
まず、「これから5年、10年先の企業利益を予想するのに使う5つのポイントはなんでしょうか?」ということで、こちらが回答です。
まず、この質問の背景からご紹介いたします。
実はウォーレン・バフェットは、1996年の「株主への手紙」において、このようなことを言っております。
「投資家の目的は、簡単に理解できる事業を行っていて、5年・10年・20年後に今よりもっと利益を稼いでいる企業の株式を適切な価格で買うことである」と。
もうこれが投資家の目的であると、今から20年ほど前になりますけれども、すでにこのようにはっきりと言い切っていると。「投資家の目的は、将来5年・10年・20年後にもっと利益を稼いでいる企業の株を買うことである」と言ってるわけなんですね。
もちろんバークシャーの株主からの質問ですので、その投資哲学はおそらくみなさんよくわかっていると。その上でこの質問が出てきたと。「じゃあ、利益を予想するのにどういうポイントがあるんですか?」ということで質問がきたと。
それで、バフェット。こちらはチャーリー・マンガーというバフェットの長年の相棒です。バフェットは84歳、マンガーさんは90歳ということで非常にご高齢なんですけれども、「チャーリーなんだと思う?」と。このように振りました。
そうするとマンガーは「どんなものにも当てはまる公式はないね。我々はいまだに学び続けている途中だから、公式を伝えることはできないんだ」と言いました。
そしてバフェットも「5つのポイントというのはありません。ただ、5年・10年先にビジネスがどのようになるか、合理的な考えを持てる会社が好きですね。業界によっても違いますし、すべて同じではないですけれども」と。
それで、「残念ながら5つお伝えするとはできない。それがないからね。あってもチャーリーは僕に教えないだろうしね(笑)」といったジョークも交えて説明しているわけなんです。
こちらで「5年・10年・20年の先にもっと利益を稼いでいる企業」ということなんですが、「簡単に理解できる事業」というのをバフェットは重視すると言われております。
バフェットと言えば、有名なのがコカ・コーラなどの事業だと思うんですけれども。「これから先にコカ・コーラが飲まれなくなることはあるだろうか?」ということを(自分に)問いかけて、「それは考えにくいんではないか」と。
かなりシンプルに、わかりやすく将来を見通せる企業を中心に投資対象としていると。実はこのあとコカ・コーラについての質問もあがりますので、またご紹介したいと思います。
IBMの株を買い増しした理由
そして、こちらも注目の質問だったかと思います。株主から「チャーリーに質問です。IBMへの投資をやめるようにバフェットと話しましたか?」と。
これも先に背景をご紹介します。今ご覧いただいているグラフが、昨年12月末時点のバークシャー・ハサウェイのポートフォリオでございます。
実は先週の金曜日に3月末時点のものが発表されましたので、厳密には最新ではないんですけれども、そこまで大きくは変わっておりませんので、おおむねこういったポートフォリオであるとご理解いただいて大丈夫かと思います。
ウェルズ・ファーゴという大きな銀行。コカ・コーラ。アメリカン・エクスプレス、そして4番手にIBMということです。
この4つでポートフォリオの6割程度を占めているということで、バークシャー、バフェットのポートフォリオのなかでもこの4つの注目はとくに高いと。
そのなかでもIBMなんですけれど、この9月末から12月の3ヶ月間でIBMを大量に買い増しを行ったということなんですね。
ただ、後ほども出てきますけれども、IBMの業績というのはこの売上高、青色のグラフが売上高を示しているんですけれども、売上は減少傾向と。当然利益もそんなに大きくは増えていないということです。株価もですね。
これは2010年以降ですので、約5年間の株価推移なんですけれど、2013年あたりをピークとして、そのあとは大きく下落してきていると。
こういうなかで、IBMの投資をどう考えているのかと。「買い増したりしているようだけれども、どう考えて買い増したのか?」というのが、先ほどの株主からの質問であったと。
「IBMの投資をやめるようにバフェットと話しましたか」という質問に対して、「いいえ、話してません」「やめるようになんてことは言っていません」「IBMはとても興味深い会社です」と。
そして「とても信頼できる立派な会社だと思っています」と。一時的に不調に陥っていた、先ほどご紹介した業績が冴えなかったということで、「我々は合理的な価格でIBM株を購入できました」と。IBMの投資ついては、チャーリーもかなり自信を持っている様子がここから伝わってきます。
そしてバフェットのほうも「IBMの投資は2対0で決まりました」と。つまりチャーリーと自分の2人とも賛成であったと。
ただ、「我々は保有株について話はしないほうがいい」と。我々かIBMかどちらかが将来IBMの株を将来買うということもあるかもしれませんので、株価は低いほうがいいと。自社株買いをするにあたっては株価は低いほうがいいと。
なので、もし話すとしたら、先ほどご紹介した保有株上位4つ、ウェルズ・ファーゴ、コカ・コーラ、アメックス、IBMの4つについて、悲観的な話をしたほうが株価が下がっていいかもしれませんねと。これも若干皮肉といいますか、ジョークを含めながら話していると。
西尾:ジョークですね。
益嶋:ただ、ここから明らかになったのは、IBM株への投資というのは、足元、業績は冴えていない、株価も冴えないんですけれども、2人とも非常に自信を持って投資をしているというのが伝わってくる、このやりとりでございました。