バリュー投資は中国でも通用するか

益嶋裕氏(以下、益嶋):そして、今度は投資の手法について質問が出ました。「バリュー投資は中国でも通用しますか?」ということですね。

実はこれ、「中国でも通用しますか?」という質問が出てることからもわかるとおり、中国系の投資家の方から質問が出ました。私たちが会場に行ってかなり驚いたのが、中国系の方の多さです。

もちろんアメリカ人と見受けられる方が一番多いんですけれど、かなり中国の方だなと。実際に話してる言語が中国語であったり、そういうのが非常に多かったと。印象でいうと全体の1割とか、もっとですかねぇ……。

中国系の方がそのぐらいいたんじゃないかなと。我々から(見て)、同じアジアの方ということで目立ったのかもしれませんけれども、かなり多くいらっしゃいました。

中国マネーというのも、これから世界のマーケットを見るうえで無視できないんだなと、そんなところでも実感しました。

その中国系の株主の方から「バリュー投資は中国でも通用するんですか?」ということで、バフェットははっきりと明言しました。「通用します。投資原則に国境は関係ありません」と。

中国ですね、足元、上海総合指数がかなり大きく上昇して、バブルなんじゃないかという指摘も聞かれるようですけれど、「中国には多くの投機的な取引があるかもしれませんが、そうした際にはバリュー投資による投資機会を生み出すものです」と。

投機で盛り上がって、例えば、それが弾けたあとに本来は非常に価値がある株式が売られすぎると。それを割安な価格で買いにいくのがバリュー投資ということになるかと思いますので、それは通用するのであると、バフェットははっきりと言いました。

そして相方のチャーリー・マンガーも、「私はバリュー投資が廃れていくとは思いません。人々はより簡単な方法を探していますが、簡単そうに見えて難しいのです」と。

ここには書いてないんですけれど、このバフェットやマンガーが投資の手法として、教科書として用いたのが、グレアムさんというバフェットの師匠にあたる方が書いた本、いくつかあるんですが、一番日本でポピュラーなのが『賢明なる投資家』という本です。

けっこう難解といえば難解な本で、なかなか読むのに骨が折れるところはあるんですけれど、バリュー投資の王道について、バフェットの投資の芯を作っているのがそのグレアムの教えであると。

そしてその教えをグレアム自身が書いたのが『賢明なる投資家』という本がございますので、ご興味ある方はぜひご参考いただければと思います。

嫌われ者だった? バフェットの少年時代

そしてこんな変わった、ちょっとかわいらしい質問も出ております。

7歳の株主からということで、ほんのお子さんなんですけれども、「どうやって友達を作ればいいですか? どうやったら人に好かれますか?」ということで、非常に会場が和むような質問が出たと。

西尾:かわいい子でしたね。

益嶋:それで、チャーリー・マンガーとバフェット、それぞれ回答するんですけれども。まずチャーリーですね。

「私は若い頃、生意気な質問をたくさんしていて、周りは私のことが嫌いでした」。嫌われ者でしたと。「だから、人に好かれる唯一の方法は、金持ちになってはやく寛容になることだとわかったのです」ということで、これはまあ一種のジョークだとは思うんですけど。

西尾:そうですね、ジョークですよね。

益嶋:それに続けてバフェット。「私も嫌われていましたが、年齢が上がるについて先生たちからたくさんのことを学び、努力して自分の行動を変えました。前に進んでいくにつれて、人間の行動がわかるようになるでしょう。あなたが好きな人の良いところをリストをあげるようにし、それにしたがって行動を変えるようにしてください」と。これはバフェットはかなり紳士なアドバイスを送っていると。

2人とも、「私たちは嫌われ者だった」と言ってるんですけれども、これはあながち冗談というわけでもないですけれども。のちほどもご紹介いたします、バフェットが全面協力して書かれた自伝的な書物があるんですけれども、そのなかでバフェットの少年時代が描かれています。

バフェット、実はお父さんが国会議員になったということで、中流からもう少し裕福な階級の子供ではあるんですけれども、とくにお母さまが感情を爆発させるような方で、バフェットはそこにあまり接点を持たないようにしようということで、親の愛を一身に受けたというような育ち方はどうやらしていないようなんです。

その過程で、少し悪いことにも手を染めるにようになったようです。例えば、ゴルフ場の池に夜暗いときに忍び込んで、ボールを拾って、それを盗んで売りさばいたりですとか。もちろんずっとそういうことをやっていたわけではないんですけれど、一時的にそういうことをやっていたと。

そして、やはりバフェットはかなり頭がよくて、数字についてずっと人にしゃべるのが趣味であったとか、そういった逸話なんかも残っているようです。

2人とも、今のようにみんなに愛されるという子供時代を過ごしてきたわけではなかったというのが、この回答の背景にあるのかなと思ったんですけれども。

ただ、そういった若い頃の過ちといいますか、経験を真摯に7歳のお子さんにも伝えるということで、バフェットの真摯な人柄が伝わってくるのかなというものもございましたので、投資とはちょっと逸れましたけれども、ご紹介をさせていただきました。