要旨
三宅孝之氏(以下、三宅):代表取締役社長の三宅です。それでは、当社の第25回定時株主総会を開会します。事業報告について、概要をご説明します。
まず、報告内容のサマリーです。メイン事業であるビジネスプロデュースは、サービスライン・陣容・協業・機能の4つの拡張を掲げて推進してきましたが、おおむね狙いどおり進展させてきました。前期に関しては売上高は増加したものの、営業利益は赤字でした。
これからは利益成長フェーズに移行させていきます。次の5年では規模と収益性のバランスを取った継続成長を目指します。
インキュベーションについては、3年間で投資簿価は大きく減少させ、将来のボラティリティを抑制することができました。前期も複数の収穫によりキャピタルゲインを計上し、営業黒字となっています。今後も引き続き適切な収穫を進めていきます。
株主還元については、中期経営計画期間の3年で100億円の還元をお約束し、実現しました。今後も継続的な還元強化に取り組んでいきます。
2025年3月期 連結P/L
2025年3月期の決算の要旨をお話しします。スライドは連結P/Lの結果です。全社の売上高は61億8,000万円、営業利益は2億5,000万円、親会社株主帰属純利益は1億7,000万円となっています。
ビジネスプロデュースの売上
スライド左側のグラフは、ビジネスプロデュースの売上の状況について、通期計画との対比を示しています。昨年4月に修正した通期計画の売上高73億円に対し、達成率は75パーセントとなりました。
スライド右側のグラフは四半期ごとの売上高推移です。上期は出遅れましたが、下期以降は受注が積み上がっており、良いかたちで今期につなげることができたと思っています。
ビジネスプロデューサーの人員数推移
人員数の推移です。2022年3月末時点で58名だったビジネスプロデューサーは、2025年3月末までに160名まで拡大しました。直近の伸びは相対的に小さくなっていますが、売上拡大のペースにあわせて採用をコントロールしたことによるものです。
ベンチャー投資:ポートフォリオと時価の状況
ベンチャー投資のポートフォリオについてです。中期経営計画の方針は適切な収穫を行っていくというもので、今期は主に3社の売却を実現しました。今後も引き続き、この方針に沿って進めていきます。
2025年3月 連結B/S
連結バランスシートの状況です。2024年3月末で151億円だった純資産は、12億円の前期期末配当と10億円の当期中間配当により、2025年3月末では131億円となっています。今後もさらなる資本効率の向上に努めていきます。
中期経営計画(23年3月期~25年3月期)の位置付け
中期経営計画の振り返りです。2023年3月期から2025年3月期の中期経営計画では、構造改革期と位置付けて、ビジネスプロデュースの拡大と、インキュベーションの収束を推進してきました。
ドリームインキュベータ(DI)最大の差別性は「ビジネスプロデュース」にあります。構造改革前はこれをフックとしてインキュベーションで拡大するという事業構造でしたが、これからの時代のニーズを鑑みると、むしろこの差別性そのものを最大限スケールしていくことが最適と判断して、改革を進めてきました。
この中期経営計画期間で一定の拡大は実現できたため、今後は継続成長フェーズとして引き続きビジネスプロデュースに注力し、ミッションの実現に向けて邁進していく考えです。
構造改革と成果
構造改革の概要と現時点の成果です。今回の構造改革では、ボラタイルなインキュベーションのアセットを売却することで縮小し、その資金や培ったケイパビリティをビジネスプロデュースの人的資本へとシフトしていくことを目指しました。
その結果、中期経営計画開始前の状況と比較すると、ビジネスプロデューサーの陣容は58名から160名と約3倍になりました。この中には、サービスラインの拡張にあわせて採用した、DX/IT等の領域に豊富な知見を持つシニアメンバーも多数含まれています。
また中期的な仕込みとして、投資スキームを絡めた収益モデルのプロジェクトの実装・実践も開始しています。
ビジネスプロデュース事業:各施策は概ね狙い通り進展し、中長期成長への手応えは十二分
ビジネスプロデュースの拡大においては、サービスライン・陣容・協業・機能の4つの拡張を重点テーマとして進めてきました。
サービスライン拡張は、戦略の実装フェーズの支援のほか、DX/ITなどの成長領域に対応するラインを構築し、おおむね順調に成長させることができました。
顧客へのコミットを強化したことで、さまざまな経営ニーズに対応するプロジェクトが増加傾向にあります。DX/IT領域が立ち上がり、売上の3割を占めるまでに成長しました。今後、さらなる成長ポテンシャルを活かしていきたいと考えています。
陣容拡張は、もともと3年間でビジネスプロデューサーを倍増させる計画でしたが、中長期の成長力確保と採用環境を鑑みて、前倒しで採用を加速させました。その結果、約3倍の水準に達しています。
また拡大に伴って、女性、外国人などダイバーシティも大きく進捗しました。
協業拡張は、電通グループやYMFG(山口フィナンシャルグループ)との資本業務提携を中心に着実に進化、強化しています。
機能拡張は、コンサルティングフィーモデル以外の多様な収益モデルの実装・実践に取り組んでいます。今後、その結果を踏まえて、注力するモデルの進化や拡大を検討していきたい考えです。
但し、売上は拡大(約2倍)したが、人員の伸び(約3倍)にまで見合っていない
ただし、売上は約2倍に拡大したものの、人員の伸びには見合っておらず、結果として利益計画に対して未達となった点は謙虚に受け止めています。今後は人員規模に見合う売上に拡大し、収益の向上を実現していくことで、早急な改善を図っていきます。
インキュベーション事業:投資の収穫は進む
インキュベーションの状況です。中期経営計画での「適切な収穫を行う」という方針に従って投資先の売却などを進め、合計185億円分のネットゲインを実現しました。簿価ベースでは79億円から22億円となり、将来の減損などによる損失リスクは大きく下がっています。
株主還元:3年間で総額100億円実施
株主還元についてです。ビジネスプロデュースを中心とした事業経営への移行に伴い、安定的な株主還元の強化も推進してきました。
本中期経営計画期間中は、アイペットホールディングスなど大型の投資先の売却資金を原資に、総額100億円の株主還元を実行するとお約束しました。結果として、特別配当72億円、自己株式取得28億円というかたちで還元を完遂し、3期トータルでの総還元性向は103パーセントとなっています。
今後も株主目線の経営を意識して、さらなる企業価値向上を実現すべく、適切な株主還元を推進していきたいと考えています。
ビジネスプロデュース事業:今後5年で目指すこと
今後の計画についてお話しします。ビジネスプロデュースについて、今後5年間で目指すことをスライドにまとめました。
前・中計期間の実績として、売上は3年で約2倍となり、CAGRでは25パーセントを達成しました。一方で、直近の営業利益率はマイナスにとどまっています。
これを受けて、今後は規模と収益性のバランスが取れた継続成長を意識し、売上高は5年で2倍、CAGRは15パーセント、営業利益率は5年後に15パーセント以上を目指します。
そのために、「時代の潮流を捉えた提供価値の進化」にしっかりと取り組んでいきたいと思っています。これまで主戦場であった新規事業だけではなく、既存事業までビジネスプロデュースの領域を拡大していくことを目指します。
具体的には、新規事業で培ったノウハウを既存事業の変革にも活用し、顧客の包括的支援に重点的に取り組みます。また、戦略立案に加えて、インキュベーションスキルやハンズオン支援の実績を活用し、伴走・実行・実現までを推進します。さらには産業レベルの構想、ビジネスエコサイクル創りを活用して、顧客をより大きく成長させる仕組みでレバレッジする施策等を行います。
これを実現するためには優秀なビジネスプロデューサーの存在が不可欠です。人材育成の強化や仕組みの充実、売上成長とのバランスを意識した継続的な採用活動を並行して進めていきます。
時代の潮流を捉え、新規事業から既存事業までビジネスプロデュースの領域を拡大
ビジネスプロデュース領域の拡大を進めていくDIにとって、マクロ環境としては大きなチャンスを迎えています。
スライド左側のグラフのとおり、東証主導のガバナンス改革やアクティビズムの台頭などを背景に、新規事業の具体化だけでなく、株主価値向上への経営者の関心がますます高まっています。既存事業の立て直しを含めた総合的な企業価値向上が強く求められる時代となっているのです。
これに対してDIは、従来よりビジネスプロデュースという独自のアプローチで多くの新規事業実現の支援を行ってきました。この新規事業で培ったビジネスプロデュース力は、既存事業を抜本的に変革していく際に必要となるスキルセットとの親和性が極めて高いため、この領域でのご相談も増えてきている状況です。
今後5年間のビジネスプロデュース事業規模感
スライドに、今後5年間のビジネスプロデュースの事業規模感をグラフで示しています。
売上高は、今後5年間の年平均成長率目標を15パーセント以上として、5年後に現状の約2倍となる110億円以上を目指します。収益性についても、5年後に営業利益率15パーセント以上の達成を目指します。
2026年3月期はその第一歩として、売上高62億円、営業利益率4パーセント程度の計画です。一定の売上成長スピードを保ちつつ、継続的な利益成長を実現していくべく、各施策を推進していきます。
B/Sマネジメントと2026年3月期の株主還元
バランスシートのマネジメントと株主還元の考え方についてです。前・中計期間中は、資本効率を向上すべく株主還元を強化し、バランスシートのスリム化を推進してきました。結果として、純資産は3年前と比べて20億円強減少しています。
そして今後についても、現方針である「継続的な株主還元により、バランスシートのスリム化」を踏襲していきます。ただし、M&Aなど良い成長投資機会があれば、その検討も積極的に行っていきたいと考えています。そのため、当面は年度ごとの状況に応じて柔軟に還元額を決定する方針です。
また、利益の上振れが発生した際には、追加配当の検討も積極的に行っていきたいと考えています。
この考えをもとに、2026年3月期の期末配当予想を10億円としました。継続的な利益成長とともに、この施策を推進し、5年後の目標ROEを15パーセント以上として実現に向けて邁進していきます。
今後に向けて
今後の成長に向けた総括です。DIがこの数年かけて進めてきた構造改革はほぼ一段落しました。ビジネスプロデュースについては規模を拡大し、サービスラインを拡充し、そして協業関係を強化させることで、今後の成長力を確保することができました。
また、従来のインキュベーションは適切に収束させ、その価値をビジネスプロデュースに統合することも進めてきました。
一方でマクロ環境としては、DIは大きなチャンスを迎えています。日本企業を取り巻く環境の変化は著しく、新規事業の立ち上げに加えて、既存事業の改革による企業価値向上の必要性が増しています。このニーズに対して、DIの総合ビジネスプロデュース力のフィット感は極めて高いと思っています。
その戦略の重要性もさることながら、その戦略を実行、実現することの価値も増しており、インキュベーションで培った実現力の高いDIへの期待の高さを日々感じているところです。
このような背景をしっかりと受け止め、DIを継続的な企業価値向上に導いていきます。規模と収益性のバランスを意識した成長路線を描き、採用した人員を早期に育成し、高いDIクオリティを維持・向上させていきます。
表層的ではなく、より深くより長期の支援にコミットできるDIの、今後の成長にぜひご期待ください。
質疑応答:インキュベーションの収束について
質問者:インキュベーションが縮小していくとのことですが、スライドを見ると、縮小だけでなく将来的にはゼロになってしまっています。
その上で「社会を変える 事業を創る。」がミッションとなっていますが、昨年のお話にあった「ソニーやホンダを100社作る」のほうがミッションに合うのではないかと感じます。上場企業であることが制約となり、足かせになっているのではないかと感じています。
そこで、残すかなくすかの二者択一ではなく、せっかく育てたインキュベーションという祖業をスピンアウトしてはどうでしょうか? そこをDIの関連会社にしてしまうと、また機関投資家の意向などを意識しなくてはならないため、純粋にプライベート・エクイティを集めたエンティティとしてはどうかと思っています。
収益性や配当を求めている株主ばかりではなく、インキュベーションに期待して株主になっている方もいると思いますし、創業以来の株主も多く出席しているように思います。
三宅社長も、何十年か後にDIを去って人生を振り返った時に、「やりたいことがあったけれども、機関投資家の意向に沿った経営をしてしまった」「実はインキュベーションをもっとやりたかった」という思いを持たれるかもしれないと思っています。
細野恭平氏(以下、細野):取締役副社長の細野です。コーポレートと、インキュベーション、グローバルを担当しています。
弊社はもともと「ソニーやホンダを100社作る」をミッションとして、インキュベーション、要するにベンチャー投資を行ってきました。それを事業の柱の1つとしてきたのです。
数年前の構造改革の時に、経営陣の中でさまざまな議論を行い、ベンチャー投資に関してはいったん収束させていこうという方向性を打ち出しています。
理由としては、株主の方から見てベンチャー投資の業績が予測しにくく、結果的に株価が安定しにくいということです。弊社は上場しており、みなさまのような株主に支えていただいています。ベンチャー投資は、1社あたり5,000万円や1億円という金額で数パーセントの株式を投資し、成長していくのを支援する事業です。あくまで数パーセントの株を投資するということで、投資している会社の業績を共有することができません。
そうすると、弊社に投資していただいている投資家のみなさまの立場では、いきなり投資先が上場して大きなゲインが出たり、いきなり投資先の減損で大きな損が出たりしますので、株価や収益の見通しが立てにくいということが特徴としてありました。
また、インキュベーションは投資した後、花が咲くまで10年ぐらいお金が眠っていて、損が先行するビジネスモデルだといえます。また、コンサルティングのビジネスプロデュースは、毎月、毎年、お客さまからコンサルティングのフィーとして収益をいただく事業です。
この毎日きちんと利益を追っていく事業と、10年後にリターンがくるものの、それまではどうなるかわからない事業の2つを、上場会社で並行して進めていくことが非常に難しいという課題がありました。
いろいろな機関投資家の方とも相談した上で、ベンチャー投資はいったん収束させていこうと3年の間進めてきています。このような背景で、ペット保険などさまざまな会社を保有していたものを売却してきました。
そして、今後のベンチャー投資に関しては、大きな方針として基本的には収束させていこうと進めています。ご質問いただいたスピンアウトについては、実はすでに実行もしています。
国内の投資としては、DIMENSION(ディメンション)というベンチャー投資ファンドを運用していたのですが、そちらはすでにカーブアウトしました。今、株式会社DIMENSIONというチームで別途、100億円ぐらいのファンドを運用しています。
ただし、そこの株式をDIが保有していると、結局、連結の収益に影響してきてしまうため、純粋に一投資家としてDIMENSIONを応援しているかたちです。
したがって現状、DIのポートフォリオとしては、引き続き社内で保有しているインドの投資と、ほかのファンドに出資しているものが残っている状況です。
では、このような投資は今後まったく行わないのかというと、そうではないと思っています。我々は新しく社会課題を解決していくようなビジネスを、大企業のお客さまと一緒にどんどん行っていきたい考えです。
その過程で、そのようなものをサポートできる投資を大企業と一緒に行う、あるいは新しく大企業が作るジョイントベンチャーに一緒に投資するなど、いろいろな方法が考えられると思っています。このような戦略的な投資は今後も引き続き進めていきたいと思います。
ただし、お金を広く小さく張って成長を支援するベンチャー投資の事業は、いったんここまでで収束させる方針です。
三宅:先ほどお話があったとおり、私も「ソニーやホンダを100社作る」「ベンチャー投資をする」という思いを持って入ったことはそのとおりですが、数年取り組んで思ったことは、ベンチャーは投資しただけで、あるいは経営や事業を助けるだけで、ソニーやホンダになるというわけではないということです。
では、どうすればよいのか。幾つかのポイントがあると思ったのですが、1つ目は、大企業と一緒に成長させてあげることです。2つ目は、5パーセントや10パーセントではなく、100パーセント事業投資を行うのも、我々のコミットが上がるため、その分成長しやすいと思いました。しかし、この2つだけでは実はあまり成長しません。
3つ目が、構想やエコサイクルをまず先に創り、その中でマクロ的に成長するような業界構造、ビジネスモデルなどを創った上で、そこにベンチャーを乗せると非常に成長するという点です。
実は、この3つを兼ね備えて考えたのが、ビジネスプロデュースです。ビジネスプロデュース事業を、単純にコンサルティングと捉えて「つまらないのではないか」とおっしゃる方もいます。
しかし、コンサルティングは収益の取り方の1つの方法論に過ぎません。エコサイクルを創って「世の中の構造はこうあるべきだ」と考え、国の制度やいろいろな仲間作りを鑑みて「このような新しい世界観を創る」ということをセットした上で、私たちも大企業側のコンサルティングを行うし、場合によってはその中でベンチャーも乗せていくという方法であれば、ベンチャーも大きく育つ可能性が高まります。
これがまさにビジネスプロデュース事業です。今はだいぶかたちが出来上がってきて、いろいろなチャンスもいただけるようになっているため、これをどんどん伸ばしていきたいと思います。
コンサルティングフィーモデル以外の投資も含めたモデルをその中で行っていくというのは、夢があるのではないかと思っています。したがって、私もこのようなかたちで人生を続けていこうかと思っていますので、よろしくお願いします。
質疑応答:ビジネスプロデュースの基盤を支える人材の採用・育成について
質問者:インキュベーションは収束させる反面、ビジネスプロデュースを拡大していくというお話がありました。ビジネスプロデュースの拡大にとって、高いDIクオリティを担保していく時に、優秀な人材の採用と育成がとても大事ではないかと思っています。
2030年に向けてというお話もありましたが、持続的な成長のために、採用・育成でどのような打ち手を考えているのかを端的に教えてください。
三宅:ビジネスプロデュースの採用については、我々のコアとなっています。もちろん戦略コンサルティングスキルはベースにしていますが、仲間作り、政策連携、構想創りなど、いろいろなスキルを持つビジネスプロデューサーを我々としてきちんと定義し、「それになりましょう」というようなマーケティングあるいは採用活動を進めています。
幸いにも、そのブランディングが非常に浸透してきており、学生や中途の求職者など、我々の扉を叩いてくれる人は非常にたくさんいらっしゃいます。その中で優秀な人を見極めて採用し、かつしっかりと育成しています。
育成については、もちろん研修もありますが、私たちが書いた本にもいろいろなノウハウを詰め込んでいますので、それをOJTでも進めていくかたちを取っていますし、弊社の中にはCDP(Career Development Program)が用意されており、一人ひとりをどのように育成し、どのようなタイミングで、どのように何のプロジェクトに取り組んでもらったらよいのかを考えながらアサインしています。
質疑応答:株価について
質問者:私は、この会社は良い会社だと思っています。一方でお聞きしたいことは、株価が3月はけっこう高値でしたが、今は半分近くに下がっています。今期が始まってまだ3ヶ月ですが、社長はこの株価についてどのように考えていますか?
三宅:弊社の株価は昔からわりと乱高下しやすく、私もそれには心を痛めています。いろいろ見ていった結果、短期の上がり下がりはどうしようもないため、下値を上げていこうと考えています。
基盤となるビジネスをしっかり持ち、安定した人材プールもきちんと所持することで、中長期で下値を少しずつ上げていくことにトライしています。その見通しが立ちつつあるのかと、現在は思っています。
引き続き短期の株価の上がり下がりはどうしてもあると思いますが、継続成長していくことをお見せしながら、安定した上昇を目指していきたいと考えています。
質疑応答:今期の業績の進捗について
質問者:先ほど人材を増やすというお話がありました。そのような中で、今期の業績についてお聞きします。ビジネスプロデュースは今期は黒字の予想です。足元の第1四半期ももう少しで終わりますが、進捗について可能な範囲で教えてください。また、ベンチャー投資は今期は非開示ということですが、可能な範囲で今の状況について教えていただけると幸いです。
三宅:インサイダーにかかわらないように、可能な範囲でお伝えします。ビジネスプロデュースについては、昨年の上期は大変でしたが、構造改革や先行投資が相当進み、基盤ができましたので、今期は良い滑り出しができているのではないかと思っています。
ベンチャー投資は市況の影響を受けるため、読めない部分が多く、非開示としています。少なくとも今年も複数の回収案件が見込めるのではないかと思っています。
質疑応答:次の代のサクセッションについて
質問者:この会社を継続的に成長させていくために、次の代の方々のサクセッションについて、可能な範囲で、具体的にどのようなことを考えているのかを教えてください。
三宅:最初は数人の特殊な人たちのスキルから始まったビジネスプロデュースでしたが、これをできるだけ定型化して広げていくことから進めてきました。現在はその中から、将来、会社を引っ張っていけるような人を何人かピックアップしながら見ているところです。
人材もかなり育ってきており、私や細野の代の次の候補も非常にたくさんいますので、彼らにいろいろチャレンジしてもらいながら、今後のサクセッションを考えていきたいと思っています。
質疑応答:株主還元の考え方について
質問者:3年前から続いているアイペットホールディングスなどの還元は、一通り終わったということでした。配当として還元することはよいのですが、「ばら撒いて終わっちゃったな」という印象があります。
株価は3月の期末を終えた途端に、残念な推移をたどっています。今回の施策について、良かったのか、悪かったのかを検証していただきたいと考えています。経営陣のみなさまには「他にもっとよい方法はなかったの?」と言いたいというのが、偽らざる心境です。この点について考えを教えてください。
細野:株主還元については、過去3年で100億円を実施しました。これは、アイペットホールディングスというペット保険の会社を3年前に売却し、そのゲインが大きく出たことがポイントでした。
社内でもいろいろ議論しましたが、使い方としては、大きくは株主のみなさまへの還元と、成長投資の2つがありました。
成長投資としては、我々が「T&A」と呼んでいるテクノロジーのチームの人材を採用するなどの目的で使ってきました。
還元に関しては、これまで20年ほど、株主のみなさまに大きな還元を行うことができなかったこともあり、株主の方に、配当もしくは自己株式の取得で報いるという対応を行ってきました。
「さらに別の使い道があるのではないか」というところに関しては、他のコンサルティングファームなどのM&Aは、考え得ると思っています。現状においても、その方向性を常に検討しながら事業を進めています。
今期は期末配当として、10億円を予想しています。今後も引き続き、還元策を進めて資本を少しずつ薄くしていき、ROEできちんとした数字が出せるようにしていきたいと思っています。
M&Aも常時視野に入れるため、一定の資本は持ちつつも、株主のみなさまの期待にできるだけお応えできるような資本政策を進めていきたいと考えているところです。
質疑応答:社員の年収について
質問者:先日、マネー雑誌でコンサルティング会社の特集が組まれており、上場企業の社員のみなさまの年収に関するランクが掲載されていました。未上場の企業は出ておらず、上場企業だけですが、金額は確か1,500万円か1,800万円くらいだったと思います。
非常に驚きましたが、優秀な人を採用するには、これくらいの金額が一般的なのでしょうか?
細野:年収に関しては、有価証券報告書でも開示していますが、アイペットホールディングスを売却した直後が一時的に非常に高くなり、1人当たり1,700万円になったと思います。直近、2024年度の平均年収は1,216万円です。世の中の一般企業と比較すると、高い年収にはなっています。
ただし、業界内で見ると、まだ劣後しています。我々は上場会社ということもあり、一定の利益を出して、それを内部留保しつつ、還元や投資を行うことが必要です。
多くの未上場のコンサルティングファームの場合は、その部分をすべて社員向けの給与に支払えます。したがって、給与面では未上場の会社に多少劣後することが、弊社の弱点となっています。
一方で、「新しい事業を創っていく」というミッションに共感していただき、他の資本を絡めたいろいろな事業政策を進めていくことに魅力を感じて、引き続き社員が入ってきている状況です。
給与は他社に対して必ずしも魅力的というわけではありませんが、ブランド力を引き続き保っているため、採用はできています。
三宅:少しだけ補足すると、1,800万円というのは一時的なもので、今は1,200万円程度です。そのような意味では、同業他社と同じくらいかと思います。
トップの戦略コンサルティング会社と比べると安いのではないかという指摘もありますが、先ほどお話しした「ビジネスプロデュースで何か事を成すぞ」「世の中を変えるぞ」という新しい夢に集まってきていただいている中で、採用のブランドが保たれていることは、私も同じ見解です。
質疑応答:マクロ経済拡大時の事業展開について
質問者:本日初めて株主総会に出席しました。先ほどのご質問と重複しますが、私は配当金を重視したいです。今回初めて株を買い、株価はそれ以降かなり下がっています。今期の期末配当は1株当たり106円の予想ですので、前期配当からはだいぶ下がっていて、しかもあくまでも予想で、どうなるのかと思っています。
質問は、先ほど社長からお話があったマクロ経済の拡大について、今どのように読んでいるのかを教えてください。
三宅:スライドでご説明したように、我々はどちらかというと、「新しい事業を創る」という大企業のお手伝いをすることが多くありました。
そのスキルセットを持って、大企業のメイン事業、例えば大手自動車メーカーの自動車製造の事業といった既存事業の改革について、「さらにアップグレードする」「サプライチェーンも変える」「DXに変える」など、抜本的な価値の創造の相談を多くいただくようになりました。
我々は10年くらい前から「日本企業はそうすべきだ」と思っていましたが、なかなかそのような話が少なく、新規事業の方が中心でした。今は本業の改革に関心を持たれるようになりましたので、ほぼすべての業界にチャンスがあると思っています。
特に、ITや金融、あるいは先ほどの事業者のような動きの早いところから順番に、どんどんいろいろな仕事を作っていこうと思っている次第です。
また、最近関心が高い関税についてもけっこう相談が来ています。あまり詳しくはお伝えできませんが、自動車、造船などの話はかなり増えています。非常に大きな仕掛けになるため、「そういう時はDIだろう」と言ってくれるお客さまや政府系機関は多い状況です。
質疑応答:AIの活用について
質問者:社長の今後の計画やこれまでの改革などのお話を聞いて、非常に魅力的な事業を展開していると思っていますが、AIというワードが出てこなかったと思います。今後、発展する中で欠かせない重要事項だと思いますが、どのように考えていますか? 導入状況・進捗状況を教えてください。
三宅:AIはコンサルティング業界の根本を変えるのではないかと思っていますが、すでにプロジェクトでは日常的にたくさん使っていますし、お客さま側としては、AIを活用して既存事業をどのように改革していくのかという話もやはり日常的にしています。
質疑応答:インドとベトナムにおける成長の可能性について
質問者:インドやベトナムに子会社がありますが、これらの国に関する展望と成長の可能性について考えを教えてください。
宮内慎氏:グローバル戦略共創本部でグローバル事業を管掌している執行役員の宮内です。まずインドにおいては、さまざまな統計やアンケートの「今後、日本の産業界が大きな事業を仕掛ける国はどこですか?」という類の質問への回答で、軒並みインドが1位であり、日本産業界内でも、かなり血中濃度の高まりを感じています。
これまでのようにインドを単なる製販の拠点と捉えるのではなく、「雨後の筍」のように、新しいワールドクラスのデジタルソリューションが生まれるような素地の底堅さ、ポテンシャルを、私どもはスタートアップ投資を行った時から非常に大きく感じています。
したがって、日本の企業をパートナーやクライアントとして、新しい世界を席巻できるようなソリューションをインドの中で作っていくという観点では、単純な新規事業の参入戦略のみならず、日印官民連携で、どのような大掛かりな事業構想を仕立てられるのかが重要です。
地政学的にも、日印両国の関係は非常に良好ですので、社会を変える事業を創るDIとして、今後いろいろな役回りが広がっていくと考えています。したがって、インドを戦略コンサルティングの拠点として、拡充していきたいということで進めています。
ベトナムについては、私も過去に6年駐在していますが、引き続き日本企業のサプライチェーンの中の重要な一角として、1億人の巨大な内需も相まって、対越進出の機運は陰りを見せていないと思っています。
したがって、新規事業の創出のみならず、すでにベトナムに進出しているみなさまの既存事業の改善のお手伝いや、ベトナムプラス周辺のASEAN諸国も絡めた新しいサプライチェーン作りに、私どもの活躍余地は今後も広がっていくだろうという感触を持っています。
引き続き、インド・ベトナム事業に注力していきたいと考えています。