目次
黒岩正勝氏:みなさん、こんにちは。本日は大変お忙しい中、当社の2025年3月期決算説明にご参加いただき、誠にありがとうございます。ニッコンホールディングス株式会社代表取締役社長の黒岩正勝と申します。どうぞよろしくお願いします。
本日は、当社の連結決算内容とESGの取り組みについてご説明します。内容はスライドのとおりです。
1.業績概要① 損益計算書(連結)
連結決算概況の、損益状況についてご説明します。売上高は、業務量の増加や積極的に進めたM&Aの寄与もあり、2,478億9,000万円と前期比11.5パーセントの増収となりました。
経費面では、M&A費用や燃料価格、外注費の上昇もありましたが、増収効果や原価低減に取り組み、営業利益は前期比9.0パーセント増の231億5,500万円と、ほぼ計画どおりで推移しました。
一方、経常利益では、為替差損が前期比で15億円ほど増加したこともあり、前期比では微増益となりましたが、計画比では若干の未達となりました。本業としては、順調に推移をしています。
1.業績概要② 貸借対照表(連結)
次に、バランスシートの状況をご説明します。今回M&Aを実施した中央紙器工業株式会社については、貸借対照表のみを取り込んでいます。
資産の部において、有形固定資産が前期比180億9,800万円増加し、無形固定資産ではのれんが121億円ほど、顧客関連資産が134億円ほど増加しました。これは、アメリカのシュプリーム・オート・トランスポート社、中央紙器工業株式会社、株式会社ミツバロジスティクスのM&Aによるものです。
負債の部では、M&A資金として178億円の借入金が発生しました。またCBを221億円発行しています。この内訳は、アメリカのシュプリーム・オート・トランスポート社の買収費用として150億円、自己株買いとして70億円となっています。
1.業績概要③ 事業セグメント別 売上高/営業利益
事業セグメント別の収支についてご説明します。売上高は、荷量の増加や料金適正化交渉、M&A効果などにより、堅調に推移しました。
運送事業ではM&A効果もあり前期比17.5パーセント増、倉庫事業では国内外での新倉庫稼働もあり、前期比5.2パーセント増となりました。
梱包事業ではアメリカのNKPの業務量増加、株式会社ミツバロジスティクスの取込み、産業機械の輸出梱包や保管業務の増加等により前期比7.0パーセントの増、テスト事業も順調に増加し、前期比5.6パーセント増となりました。
一方、営業利益ですが、各部門とも増収効果もあり、運送事業は前期比13.1パーセント増、倉庫事業は減価償却費が増加するも2.8パーセント増、梱包事業、テスト事業もそれぞれ順調に推移しました。
その他事業の営業利益がマイナスとなっているのは、中央紙器工業株式会社のM&Aに関する付帯費用の発生によるものです。
1.業績概要④ 顧客セグメント別 売上高・地域別 売上高/営業利益
産業セグメント別には、自動車産業や産業機械が前年対比で堅調に推移し、またM&A効果もあり、大きく売り上げを伸ばしたことに加え、食品・飲料も前期比10.9パーセントの増加となりました。
地域別セグメントとしては、北米がNKPの業務量増加に加え、シュプリーム・オート・トランスポート社を取り込んだこともあり、前期比72.5パーセント増と大きく売上を伸ばしました。
一方、アジアではインドは好調であったものの、中国経済の低迷に引きずられ、営業利益では前期比マイナスとなりました。
海外売上比率は、引き続き、売上全体の30パーセント程度を目指して事業を拡大していく計画です。
1.業績概要⑤ 設備投資額の推移(M&Aは含まず)
設備投資については、年間230億円を目途に投資を行うことを公表していますが、2025年3月期は264億4,700万円の投資を行いました。営業車両につきましては、新規購入と古い車両の代替も含め、282台となっています。この中には、シュプリーム・オート・トランスポート社の20台が含まれています。M&Aの投資に関しては、計画には含めず、随時対応をしています。
事業用不動産については、173億500万円となりました。この内容については、次のページでご説明します。
1.業績概要⑥ 設備投資額の内訳
建設状況についてご説明します。建設が完了したものとしては、海外ではインドネシアとタイ、国内では栃木県宇都宮市のウォーレ宇都宮や、日本梱包運輸倉庫の東海営業所、岩手県の金ケ崎倉庫、群馬県の日本運輸太田インター倉庫などとなっています。
また、今年度以降の営業用倉庫の竣工に向けても記載のとおり、三重県鈴鹿市やインドネシア、福岡県苅田町、栃木県さくら市など、着実に準備を進めていますが、現在の新規設備投資は、建築費高騰の影響もあり、抑制をしています。
1.業績概要⑦ M&Aの状況
M&Aの状況についてご説明します。2024年4月に、自動車部品製造業の株式会社ミツバロジスティクスの物流子会社の株式を100パーセント取得しました。これにより、自動車部品部門のサプライチェーンの強化、効率運営によるビジネス拡大を目指しています。
さらに同年5月には、米国の東側の広範囲にわたって完成車輸送を行う、コロラド州のシュプリーム・オート・トランスポート社の持分の75パーセントを取得しました。既存顧客とのシナジーを追求し、キャリアカー事業を拡大します。
また、2025年3月には、中央紙器工業株式会社が当社グループに入りました。この企業は、トヨタグループに所属しており、当社と顧客が重複していないこと、また技術力が高く、毎年のように日本パッケージングコンテスト等で入賞をしています。
さらに中国やマレーシアにも工場を持っており、国内や海外でのシナジー効果による経営ノウハウの融合で売上、利益の拡大を目指しています。当社は、今後も必要に応じてM&Aを進めます。
1.業績概要⑧ システム化による省人化の取り組み(CIRRUS:WMS機能拡充)
システム化の取り組み状況です。物流ノウハウを生かし、倉庫管理システム「WMS(Warehouse Management System)」の機能を拡充し、自社開発システム「CIRRUS(シーラス)」を立ち上げ、運用を開始しています。
これは、クラウド型の倉庫管理システムに、新たに流通加工モジュール、梱包モジュール、調達物流モジュールの3つのモジュールを自社開発により拡充するものです。
現在グループ会社に導入を進めていますが、ペーパレス化、省人化を図り、属人化にとらわれず新人作業者でも無理なく作業対応が可能なシステムとなっており、導入したグループ企業では、さまざま効果が出ています。現在、これに加えて、運行管理機能や配送機能等も開発を進めています。
また、追加機能によって、グループ外を含む多方面の顧客企業等にご利用いただける製品としており、すでに数社からお引き合いをいただいています。
2.中期経営計画① 計画の振り返り
中期経営計画の進捗状況です。中計2年目の2025年3月期決算は、売上計画2,500億円に対し、2,478億円とほぼ計画を達成しています。
営業利益については、2025年3月期の計画240億円に対し、231億円と未達となりました。これはM&Aコスト等の一時的な経費が発生したことによるものであり、ほぼ計画どおりとなっています。
中央紙器工業株式会社の売上利益が今期の4月より加算されます。アメリカのシュプリーム・オート・トランスポート社の売上利益も、前期は9ヶ月分の計上でしたが、今期は12ヶ月分が計上されます。
これら各社とのシナジー効果による売上拡大を含め、これに5パーセントの年平均成長率を加味すると、中期計画3年目の業績については、計画達成に向けての道筋が見えてきています。当初設定した中期経営計画の数字である売上高2,800億円、営業利益280億円を見込んでいます。ただし、これにはトランプ関税による影響は含めていません。
2.中期経営計画② 成長ドライバーの進捗
成長ドライバーの状況です。今年度の展開内容としては、スライドをご覧のとおりとなります。
循環事業では、産業廃棄物の中間処理事業への展開や、一般社団法人自動車再資源化協力機構との協業による、リチウムイオンバッテリーの収集運搬業務など、サーキュレーションビジネスへの取り組みに加え、木材チップ配送やペットボトルの中間処理や配送なども含めて、さらに加速します。
三温度帯事業の管理の拡充については、食品以外にも、化学品、精密機械、産業機械措置やバッテリー保管など、温度管理が必要な商品の取扱いも拡大していきます。
海外事業については、買収したシュプリーム・オート・トランスポート社とのシナジーを早期に発揮すべく、取り組んでいます。また、インドでは新たに四輪完成車の鉄道輸送業務が新たに開始され、鉄道輸送を通じて環境負荷低減も図っていきます。
労働コストの拡大、ドライバー確保などに加え、トランプ関税による影響を含めたマクロ経済の動向には不透明感が漂いますが、新規設備の稼働や、クロスセルによる既存ビジネスの拡大と、M&Aなどとのハイブリッド戦略で推進します。
3.株主還元① 資本コストを意識した企業価値向上を目指した資本戦略
資本戦略についてご説明します。2025年3月期については、ROAの低下は中央紙器工業株式会社のBSのみを取り込んだこと、ROEは一過性のコストで当期利益が低下し、自己資本比率はデットファイナンスの活用により低下しました。
資本戦略として引き続きROE8パーセント、営業利益率10パーセントを目指すことは変わりません。資本コストやWACCを意識して、成長投資には積極的に負債を活用するなど、資本効率を高めます。
3.株主還元② 資本コストを意識した企業価値向上を目指した資本戦略
株主還元についてご説明します。ご参考までに、過去の配当性向と1株当たりの配当金額の推移をご説明します。2023年3月期以降は配当性向を30パーセントから40パーセントに引き上げています。
2025年3月期の1株当たり配当金額の計画値は108円に対して、10月1日の株式分割により1株当たり配当金額が変更になっていますが、分割前で換算すると、配当金額に変更はありません。
2026年3月期については、還元方針をDOE4パーセント以上目途とすることを発表しており、年間配当金の総額は1株あたり74円を予想しています。これを株式分割前で換算すると、年間配当金の予測は148円となります。
4.企業価値の向上 特別委員会の新設について
企業価値向上のために、特別委員会の設置を2025年5月16日の取締役会で決議しました。内容についてはご覧のとおりとなりますが、所有不動産の所有状況、運営方針を資産および資本効率の観点から再検証し、取締役会へ提言するものとなっています。また検討結果を、2025年末を目途に開示をする予定です。
1.第13次中期経営計画(ESG)
ここからESGの取り組みについてご紹介します。CO2の排出量については、環境配慮車の導入や太陽光パネルの設置による自家発電、再生可能エネルギーの外部調達など、順次取り組んでおり、一定の成果は出ています。一方でM&Aを含めた業務拡大に伴う排出量増加も顕著であるため、さらなる取り組みを推進します。
2030年に向けては、大型EVトラックの実用化や次世代太陽光発電などの技術革新が一段と進むものと期待していますが、導入に向けたインフラ整備やコストの価格転嫁など、課題が山積しており、体制を強化して取り組みます。
1.第13次中期経営計画(ESG)
女性の活躍に関しては、国内において管理職に占める女性の割合を、現状の2.9パーセントから引き上げていくことが将来的な課題ですが、ベースとなる女性従業員全体の数を増やすことに注力して取り組んでいます。
採用した女性の定着率をいかに高め、育てていくかも重要と認識し、産休・育休制度や短時間勤務制度など家庭との両立を支援する制度、現場での労働環境を整備し、女性が活躍できる体制作りを継続して進めています。
当社グループは現在100数名の女性ドライバーが活躍しています。「社会に貢献したい」という意識を持っている人ならば、性別関係なく活躍できる企業を目指しています。
水銀灯削減については、今期中の全廃に向け取り組んでいます。またLED照明への切り替えも順次進めています。
2.ESGへの取組み①
直近のESG活動をご紹介します。
一橋大学に加え、2025年2月には、一般財団法人海外産業人材育成協会の事業の一環でバンコクのモンクット王立工科大学で寄付講座を開講しました。
物流工学科の学生を対象に、当社が物流に関する2つのテーマで講義を行い、その翌日には当社の倉庫にて貨物の管理手法を中心に実務見学を実施しました。参加した学生からはさまざまな感想とともに好評をいただいています。この中から物流分野で活躍する人材が出てくることを期待しています。
次に、森林環境保全を目的に森林文化協会へ寄付を行いました。この寄付は埼玉県狭山市の「ロッジ水野の森」の森林整備に使われます。
今後は、当社従業員がこの場所で具体的に環境保全活動を行うことを計画しています。
2.ESGへの取組み②
当社グループの日本運輸は倉庫DXの一環として、ロボットとシステムを活用した自動化技術を太田インター営業所に導入しました。 多種多様な自動車部品の輸送計画に合わせた自動化システムの構築により、作業効率向上・省人化・誤配送防止を実現しています。
また、オートテクニックジャパンはこれまでの四輪・二輪の研究開発サポート業務で培ったノウハウを活かし、視覚障がい者向けに電気自動車の接近を振動で知らせる機器の開発を進めています2025年からは、宇都宮大学と車両接近通報音の共同研究を開始し、技術開発を通じた社会貢献活動に取り組んでいます。
ご説明は以上です。この説明会を通じて当社へのご理解が深まれば幸いです。ご清聴ありがとうございました。