アジェンダ
村上航一氏(以下、村上):執行役員経営管理部長の村上です。2024年12月期第4四半期決算についてご説明します。本日のアジェンダはスライドのとおりです。
まず、私から2024年12月期第4四半期の決算についてご説明します。後半は代表取締役社長の河瀬から事業計画および成長可能性についてご説明させていただければと思います。
KPI ハイライト
第4四半期決算について、まずはKPIハイライトです。スライドは2024年10月から12月までの第4四半期の成績をまとめています。売上高は7億7,000万円、前年同期比10.4パーセントの成長となりました。
売上総利益は5億9,000万円と前年同期比8.1パーセントの成長でした。営業利益はマイナス3,000万円となりましたが決算賞与の影響を受けており、これを除くと若干プラスとなっています。
ARRに関しては28億9,000万円となり前年同期比で11.0パーセントの成長となりました。リカーリング売上比率は92.9パーセントと、引き続き高水準を維持しています。
ARPUは42,405円と前年同期比で6.6パーセントの成長です。Churn Rateに関しては1.16パーセントとなりました。
2024年12月期第4四半期におけるハイライト/ローライト
第4四半期におけるハイライト、ローライトです。ハイライトとしては、連結グループで通期営業黒字化を達成できたことや、「Akerun」導入台数の増加、新規の「Migakun」の伸長により売上高・営業利益が順調に拡大していることを挙げました。
ローライトとしては、主に大口顧客の解約などが影響し、ARPUとChurn Rateが一時的に若干減少しています。
2024年12月期第4四半期 対通期計画比
第4四半期の対通期計画比です。売上高に関しては29億6,100万円と、上方修正後の対通期計画で100.4パーセントとなり、計画達成となりました。「Akerun」および「Migakun」等の堅調な推移等が影響し、上方修正値を上回る水準での着地です。営業利益に関しても7,600万円と達成率127.2パーセントとなりました。
その他、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益に関しても、それぞれ130.0パーセント、141.1パーセントと上振れて達成となっています。こちらも収益性の拡大および効率的な経営により、上方修正値を上回る数字で着地ができました。
2024年12月期第4四半期 繰延税金資産(法人税等調整額)及び特別損失の計上について
本日の適時開示の中でも公表していますが、一部繰延税金資産および特別損失の計上について、何点か公表すべき事項があるため補足をご説明します。
繰延税金資産の計上については、繰延税金資産の回収可能性について検討した結果、今回の決算において繰延税金資産を計上し、法人税等調整額を利益側で1億1,900万円計上することとなりました。
また、固定資産の減損損失の計上について、当社の連結子会社であるMIWA Akerun Technologiesの所有する固定資産について継続して営業利益がマイナスとなり、減損の兆候が認められたため、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づいて回収可能性を検討した結果、減損損失として1億5,300万円を計上しています。
こちらについては、事業立上げ時に策定された販売計画に対して実際の受注に至るまでのリードタイムが想定よりも長期であったことなどが起因し、継続的に営業損益がマイナスとなっていることから、減損の兆候ありと判断しました。しかし、現時点で標準採用いただいている取引先、および新規取引先からは、すでに受注や内諾等を多数いただいています。継続してMIWA Akerun Technologiesでの住宅分野も伸長していきたいと考えています。
固定資産除却損の計上については、当社の制作した自社利用ソフトウェアである特定用途向けのWeb管理ツールについて、特定利用先の契約終了に伴い、将来の利用見込みがないことから、当該ソフトウェアの固定資産除却損を4,100万円計上しました。
2024年12月期第4四半期 対前年比
対前年比です。当期の実績は、売上高は前年比で4億6,800万円の増、増減率18.8パーセントの成長となりました。「Akerun」の導入台数の増加、「Migakun」の事業成長に伴って堅調に増加しています。
売上総利益は前年比で2億3,800万円の増加、売上総利益率は76.6パーセントとなりました。売上総利益率は前期よりも若干下がっていますが、従来ご説明している理由と同様に賃貸資産の償却費の増加があったことと、また「Migakun」等の売上が増加したことにより若干減少したものの、引き続き70パーセント台後半の高水準を維持しています。
営業利益の実績は7,600万円と、前年比で2億9,700万円の増となりました。その他の各段階利益もおおむね3億円以上の増加です。効率的な成長投資に切り替えたことに伴い、売上高の成長を達成したことで、このような黒字化が達成できたと考えています。
2024年12月期第4四半期 売上高と売上総利益及び営業利益の推移
売上高と売上総利益および営業利益の推移です。冒頭でご説明しましたとおり、決算賞与を除いた第4四半期の営業利益は400万円と若干のプラスとなっており、通期としての営業利益は計画よりも上振れて達成できています。
2024年12月期第4四半期 ARR (全社)の推移
ARRの推移です。「Akerun」導入台数の増加および新規「Migakun」の事業成長に伴い堅調に推移しています。
2024年12月期第4四半期 売上高とリカーリング売上比率の推移
売上高とリカーリング売上比率です。こちらも冒頭でお伝えしたとおり、第4四半期のリカーリング売上比率は92.9パーセントと非常に高水準で維持できています。
2024年12月期第4四半期 ARPU (全社)の推移
ARPUの推移です。ローライトでお伝えしたように大口の解約等が影響し、一時的に若干下落しています。2022年第2四半期等でも一時的な若干の下落傾向がありましたが、中長期の傾向としてARPUの拡大は引き続き維持できると考えています。
今後も「Migakun」の伸長を踏まえ、拡大傾向を継続できる見込みであり、こちらは一時的な減少と見ています。
2024年12月期第4四半期 Churn Rate(全社)の推移
Churn Rateの推移です。こちらも大口顧客の解約が影響したため、目標の1.15パーセントを若干超過し1.16パーセントとなりました。しかし、2024年通期で見ると、目標を達成した数字になっているため、継続してChurn Rateの改善は達成できていると考えています。
引き続き大規模顧客への拡販やAPI連携の増加等により、また「Akerun」と「Migakun」のクロスセル契約によるインフラ化により、Churn Rateも逓減していきたいと考えています。
2024年12月期第4四半期 売上高と営業費用の推移
売上高と営業費用の推移です。売上高の推移は、先ほどご説明したとおりです。
営業費用に関しては、セールス&マーケティングコストにおけるリード獲得の効率化等により、直前四半期比では微増したものの、前年同四半期比では減少し、引き続き効率性の高いマーケティング活動に注力しています。
コーポレートコストに関しては、決算賞与の影響により、直前四半期比で増加しましたが、前年同四半期比では減少しています。
開発コストに関しては、ソフトウェア資産化の減少などにより増加しています。今後も適切な投資等を行っていきます。
2024年12月期第4四半期 損益変動要因 対前年同四半期比
スライドは、対前年同四半期比の損益変動要因をウォーターフォールチャートで示したものです。前年同四半期比では5,200万円ほど改善できました。主要な要因は売上総利益の改善による4,400万円です。その他はご覧のような増減となっています。
2024年12月期第4四半期 損益変動要因 対直前四半期比
対直前四半期比での損益変動要因です。3,200万円の減となりましたが、主に決算賞与の影響と考えています。その他の要因についても、ご覧いただければと思います。
2025年12月期ガイダンス
2025年12月期のガイダンスをご説明します。前提となる戦略や経営方針等に関しては、後ほど河瀬からご説明します。
売上高は33億4,000万円で、増減率は12.8パーセント増となっています。「Akerun」の認知度を最大限に活用しながら、「Akerun」周辺領域のさまざまなニーズや用途において、「Migakun」やその他のサービスを拡大していくことにより、引き続き売上高を伸ばしていきたいと考えています。
2024年度の成長率よりやや逓減していますが、経営の効率性と収益性を高める製品やサービスの開発・提案により、効率性を重視しながら、付加価値の最大化を図る経営を推進します。
営業利益は1億6,000万円と、前年比で109.6パーセントの成長としています。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益についても75パーセントから80パーセント前後の成長を見込んでいます。
2025年12月期は、主力サービスの売上拡大を実現しながら、中長期的な成長を見据えた「Akerun」のマーケット開拓、また「Akerun」を基軸にしたサービスのソリューション開発に向けて適宜投資し、効率的な経営を行っていきたいと考えています。
その結果として、営業利益は前年比100パーセント以上の増加を見込み、1億6,000万円を計画としています。この数字の達成を目標に掲げながらも、これを上回る水準で成長できるよう、新たな戦略およびソリューションの開発等を進めていきます。
補足事業数値:ARR(Akerun)の推移
補足事業数値について簡単にご説明します。「Akerun」のみのARRは引き続き成長していますが、成長率としては若干逓減しています。全社ARRは「Akerun」を基軸としつつ、「Migakun」等新規事業の成長が順調に進捗しています。
補足事業数値::契約社数(Akerun)の推移
「Akerun」の契約社数の推移です。現契約者数は5,600社を超え、営業チャネル戦略が功を奏し顧客数を伸ばしています。また、大口顧客比率が若干増加したことにより、ARR成長率が社数成長率よりも高い水準となっています。
補足事業数値:ARPU(Akerun)の推移
「Akerun」のARPUの推移です。こちらも2024年第4四半期は若干低下したものの、推移としては改善傾向が継続すると考えています。
補足事業数値:Churn Rate(Akerun)の推移
「Akerun」のChurn Rateの推移です。第4四半期のChurn Rateは1.15パーセントとなり、目標の水準を達成しました。当第4四半期のChurn Rateの上昇は一時的なものと考えており、継続したChurn Rateの改善等に今後も取り組んでいきます。
補足事業数値:売上総利益率の推移(全社)
全社の売上総利益率の推移です。売上総利益率は76.5パーセントと、高水準を維持しています。今後も70パーセント台後半の水準を維持したい考えですが、賃貸用資産およびソフトウェアの償却費の増加、あるいは「Migakun」の売上の構成比等により増減する可能性があります。
補足事業数値:正社員数の推移
正社員数の推移です。正社員数は期末時点で143名と、通期で一定数を維持しました。また2025年12月期以降は利益の増加を前提に、事業成長をさらに加速するために営業や新規事業の人員採用を継続していく予定です。
会社概要 経営陣紹介
河瀬航大氏(以下、河瀬):代表取締役社長の河瀬です。私からはPhotosynthの事業計画および成長可能性についてお話ししたいと思います。
あらためて、本日はご参加いただき本当にありがとうございます。2024年度は目標であった通期連結の黒字化をなんとか達成することができました。黒字化以降はどのようにしていくのか、また、「Akerun」を広げてからはどのように事業展開していくのかという問いに、本日はしっかりお答えできればと考えています。
まず会社概要です。株式会社Photosynthは約10年前に創業しました。いわゆるIoTを活用したスマートロック「Akerun」を主軸とした、入退室管理システムを提供しています。
最近ではギグワーカーを活用したBPaaS事業として、「Migakun」という清掃の代行サービスも行っています。「Photosynthがまさかの清掃サービス?」というリアクションもありましたが、実はかなりシナジーが大きい事業です。
創業10周年を迎えるにあたり、従来は「PhotosynthイコールAkerunの会社」でしたが、「Migakun」をはじめさまざまなプロダクトを生み出しています。本日は当社のビジョンのアップデート、およびエクイティストーリーのアップデートを行いたいと考えています。
2024年12月期通期:KPI ハイライト
2024年12月期通期のKPIハイライトです。売上高は29億6,000万円、売上総利益が22億7,000万円、営業利益が8,000万円となっています。
ストックの年間収益であるARRは28億9,000万円、1社当たりの平均単価であるARPUは月額42,405円、Churn Rateは1.16パーセントです。
Photosynthのコアコンピタンス
ビジョンをご説明する前に、私たちがどのようなコアテクノロジー、そしてコアコンピタンスを持っているのかを整理します。
まず、当社はAkerun Access Intelligenceという認証基盤を持っており、これを基軸としたハードウェアの開発力を有しています。
社内でメカエンジニア、ファームエンジニア、アプリ、インフラも含めた開発が可能なベンチャー企業は非常に少ないです。ハードウェア開発ができて、認証基盤を持ち、さらにSaaS開発やギグワーカープラットフォームを持つという唯一無二の企業です。
なお、スライド中央に記載したHESaaSとBPaaSは、本日頻出するキーワードです。
HESaaSはHardware Enabled SaaSの略で、ハードウェアとSaaSを連携させたようなサービスです。ハードウェアだけ、あるいはソフトウェアだけでは解決できない、リアル空間における課題をHESaaSで解決します。
BPaaSは人を派遣するようなBPOにSaaSを組み合わせることで、需給バランスをマッチングプラットフォームによってスムーズに整えたり、あるいはその連携コミュニケーションをSaaSで効率化させたりします。テクノロジーによりBPOを効率化できることが当社の強みです。
Photosynthの提供価値
「Akerun」はハードウェアとソフトウェアとを連携するサービスです。例えば「Akerun」を導入しカメラと連携します。さらに、当社がリリースしている自動権限発行付きのQR受付システムをリンクします。あわせて、自動打刻する勤怠管理システムとも連携します。
このように「Akerun」のデータを活用し、さまざまなHESaaSのプロダクトを提供することが可能です。
ギグワーカーのプラットフォーマーにはタイミーさんやUber Eatsさんなどさまざまありますが、当社グループが提供する「Migakun」はその清掃版/施設運営版のようなものです。例えばお客さまが清掃してほしいタイミングでギグワーカーさんに瞬時に「Akerun」で入退室の権限を発行し、ギグワーカーさんが現場に赴いて掃除をするというプラットフォームを提供しています。
進化するAkerunの概要
「Akerun」と「Migakun」について、それぞれご紹介します。「Akerun」はスライド左上の画像のような「Akerun Pro」という法人向けの後付け型スマートロックが主力商品です。この他にも「Akerunコントローラー(Akerun Ctl)」という法人向けの電気錠対応スマートロック、住宅向けスマートロック、住宅共用エントランス向けスマートロックなど、住宅向けで合弁企業を設立している美和ロックさんとも協働しながらさまざまなハードウェアを開発しています。
スマートキーはSuicaなどの交通系ICカードやアプリで開閉できる鍵です。特に当社のユニークな点としては、ウォレットと呼ばれるスマートフォン内の財布にデジタル社員証やデジタル学生証を生成することに技術的に成功しました。これらをキーとしてスマートロックを開けていきます。
つまり、スマートロックで錠前をスマートにし、同時に鍵もスマートにするような、両軸の取り組みを進めています。
管理ツールは業界によって異なります。オフィス向けには入退室管理システム、住宅向けはキーレス賃貸システム、学生証や社員証管理向けにはデジタル身分証管理システムを開発しています。
Migakun 施設運営代行の概要
ギグワーカープラットフォーム「Migakun」には、現在約700名のギグワーカーがいらっしゃいます。従事している現場数でいうと300を超えます。
「Migakun」は非常に「Akerun」とのシナジーが高い事業です。清掃してほしいタイミングで「Akerun」に権限を発行するだけで、ワーカーがスポットあるいは定期で清掃することができます。
「Akerun」と合わせて導入することで、本当に清掃が入ったかをモニタリングでき、スマートカメラとも連携できるためサービスのクオリティチェックも可能です。
オーナーから見ると、空間自体に受付担当者や清掃員を置かなくとも、本当に無人化・省人化できていくようなサービスを構築しています。
沿革 ー 市場やニーズに合わせたサービスの進化と事業アップデート
当社の沿革です。「Service/Products」のところが、これまでに連携したシステムやサービスになっています。勤怠管理や顔認証、在室管理、受付管理、会員管理など、さまざまなシステムと連携しています。
「Corporate」は資本業務提携などです。出資をいただいたり、一緒にジョイントベンチャーを作ったりというような企業です。
市場における実績
「Akerun」および「Migakun」は、5,600社超の企業でご採用いただいています。スライドの地図にプロットしたピンが「Akerun」の利用顧客を示しています。1社当たり1つのピンですが、実際には1社当たり10台、100台以上を使っていただいているお客さまも多くいらっしゃるので、ここに示したよりも何十倍もの密な状態で「Akerun」が存在しています。
このように、いわゆるフライホイール効果も効かせていきながら、「Akerun」と「Migakun」を広げ、1つの経済圏を作りたいと考えています。
私たちの想い
ここからは、ビジョンに関わる社会的背景と「Akerun」の可能性についてお話しします。私たちは「Akerun」のスマートロック事業を基軸に、減り続ける労働人口問題を解決するため、お客さまの施設空間の無人化/省人化ソリューションを提供します。
日本全体の社会課題
日本は本当に深刻な人手不足の問題に直面しています。最近では例えばAIで知的労働力を代替していくようなトレンドもありますが、知的労働がなくなったとしても、あるいは一部が代替されたとしても、物的な労働はなくなりません。
物的な労働を代替するために出てくるのが、IoTやロボティクスといった領域だと思っており、当社はこの領域に真っ向から向かっていきたいと考えています。
人手不足による各業界の現状
当社のお客さまにおいても、人手不足は非常に深刻です。オフィス業界ではなかなか人材が採用できなかったり、過重労働の問題であったり、いろいろな問題が露呈しています。
最近ではホテル業界においても「Akerun」や「Migakun」が参入していますが、こちらでは特に清掃員が不足しています。インバウンドが急回復したことで客単価は上がっていますが、実は7割、ニセコなどでは3割程度の予約が入ると、清掃員が足りないために満室と表示させていると聞いています。それでも客単価が2倍から3倍になるため、売上は変わらないという業界ですが、非常に多くの機会損失をしています。
教育業界においても、学校、寮、体育館などで「Akerun」を多く使っていただいていますが、先生たちは非常にお困りです。最近では部活動は先生ではなく、地元の人たちが担うといったトレンドがありますが、鍵の開け閉めや清掃業務は結局先生たちがしなければいけないため非常に大変です。
また、小売業界もコロナ禍以降、夜間帯の人材の採用が難しくなっています。国内の10パーセント以上のコンビニが、夜は閉めざるをえないという状況まできています。
人手不足問題へのソリューション/オフィス
そのような中で、私たちが解決策として提案したいのが、「Akerun」を活用したHESaaSとBPaaSです。これにより、オーナー側は最低限の人的リソースで空間を運営でき、社員側は業務時間が短縮され、働き方改革が促進されます。
ただのSaaS、ただのITではなく、このような事業をハードウェアを作り、ギグワーカープラットフォームを活用することにより提供していきたいです。
いわゆるITサービスのみでは限界があると思っており、実際にやはりどうしても人手が必要な場面があります。そこで、物的な課題を解決するHESaaS、これを効率化させるBPaaSが必要と考えます。
人手不足問題へのソリューション/フィットネスジム&ホテル
「Photosynthがあるから」と言うと大げさですが、「Akerun」を提供したことで初めて空間が無人で運営できているという施設が最近増え始めています。
例えば、フィットネスクラブは無人の施設が多くありますが、かなりの割合で「Akerun」が入っています。「Akerun」があることにより、受付の人がいない状態でも会員はいつでも出入りが可能です。
さらに、データがカメラと連携しているため防犯になります。加えて、清掃や機器メンテナンスはギグワーカープラットフォームで行うというスキームをすでに提供しています。
ホテル業界も同様です。スモールラグジュアリーという1泊10万円を超える新しい形態が増えていますが、プライバシーやプライベートが非常に重要視されるため無人なのです。こちらにも「Akerun」があり、自動チェックインキーやカメラがあれば、いつでもホテルが使えるようになります。また、清掃スタッフが駆けつければ、いつでも清掃できるため、効率よく回すことができます。このような無人化を前提とした事業運営が可能です。
人手不足問題へのソリューション/学校&コンビニ
学校でも「Akerun」は普及しています。「Akerun」単体だけではなく、入退室管理システムにひもづく「Akerunデジタル学生証」を作っています。先ほどご紹介したように、スマートフォンのウォレットに入る学生証です。
現在は大規模な大学も含め、非常に前向きに検討を進めていただいています。「Akerun」により学生の出欠管理や、図書館ゲートの入退室や本の貸し出しなど、個人の認証と決済との連携により、学校を大幅にDXできるのではないかと考えています。
物理的な学生証をなくしてすべてスマートフォン内に収めてしまうことで、DXを進める取り組みです。
コンビニにおいても「Akerun」は導入され始めています。先ほど、無人のコンビニが増えているとお伝えしましたが、手当たり次第に無人にすると防犯上問題があります。したがって、会員登録した方のみが出入りできるコンビニや商業施設が増えてきています。
「Akerun」と「Migakun」があることにより、店内に入ってしまえばカメラやセルフレジでいくらでも決済が可能ということが、本当に実現できてしまうと考えています。
私たちは、さまざまな空間、施設、商業施設すべてに、HESaaSとBPaaSを活用することにより、人がいることが前提ではなく、人がいないことを前提とし、どのように産業を作るべきかを、イチから見直し、作り直していきたいと考えています。
私たちが考える無人化/省人化の広がりと可能性
私たちはこのようにハードウェアを作り、鍵の自由化を実現してきました。さらに、HESaaSを乗せることにより空間を自由化し、BPaaSを絡めることで、空間だけでなく労働力を自由化させていきます。最終的に多くのデータがたまってきていますので、社会システム全体が自由化していくのではないかと考えています。
先ほどご紹介したとおり、「Akerun」は東京都内、どこを歩いても「Akerun」のBluetooth圏内に収まってしまうのではないかと思うぐらい密な状態まで広がっていますので、このプラットフォームを活用しながら、経済圏を作っていきたいと考えています。
中期目標の振り返り
中期経営計画です。これは2年前に発表した、いわゆる経営計画におけるおさらいと結果になります。まず、2023年中に単月黒字化を達成し、そして2024年度に関しては、連結での通期黒字化を達成する計画でした。また、安定的な顧客基盤の構築も掲げています。
中期目標の進捗
結果についてです。上場してから「まず、ここを目指そう」ということで、社員一丸となり努力して事業を作ってきました。まず、2023年度中に単月黒字化を達成しています。そして2024年に関しては、上方修正等も出しましたが、かなり早期で通期黒字化も達成し、これは社員の努力のたまものと考えています。
そして、安定的な顧客基盤の構築ということで、Churn Rateの対策など、複合的なサービスを生み出し、さまざまなニーズに合う商品を提供し、さまざまなお客さまに使っていただくことによって、安定的な顧客基盤の構築ができているのではないかと考えています。
2025年12月期からの事業方針
2025年度以降、黒字化以降、大きく投資していくのか、それとも利益を作っていくのか、どのように成長していくかという話です。これは率直なところ、経営陣の中でも大きく議論しています。
経営陣として、現在の市況感を考慮すると、大きく赤字を掘って投資していくというのは、なかなかマーケットからも理解されづらいのではないかと思っています。大きく投資ではなく、「Akerun」のプラットフォーム、経済圏を活用しながら、効率性を重視し、付加価値を生み出すことで、売上と利益をあげます。そのような方法があるのではないかということを、ここ1、2年ずっと議論を積み重ねてきました。
これが、「Akerun」の基盤があるからこそ実現できる戦略であり、かなり蓋然性高く、売上と利益を伸ばしていく施策があるのではないかと思っています。
既存事業と新規事業に分かれますが、既存事業に関しては、まずセールス&マーケティングです。実は大幅な組織変更を行いました。これまでは、いわゆる「Akerun」と「Migakun」を売る営業がそれぞれの組織下で営業活動していましたが、一人ひとりが複数商材を売るような体制をとることで、1人当たりの売上と単価を上げ、結果的にはLTV/CACを上げていきます。
これは本来マーケティングコストもかかりますが、「Akerun」とのシナジーにより「Migakun」に関してはかからないので、そのような意味では、非常に効率が良い施策になっていくのではないかと考えています。
また、R&D/開発運用についてです。「Akerun入退室管理システム」に関しては、10年間運用しているため、かなり作り込まれたサービスになっているのではないかと自負しています。
一方で、売上がどんどん上がっていくため、エンジニア1人当たりで保守・運用できるMRRを最大化させることで、最終的に利益をしっかり生み出していきたいと考えています。反対に、残りのエンジニアは全部、新規事業に集中していただきたいです。そのようなメリハリのある組織体制を作っていきたいと考えています。
次に、新規事業に関してです。これまで「『Akerun』の事業を立ち上げるぞ」という時には、数十億円もの先行投資で「Akerun」事業を作ってきました。現在ではこのアセットがある状況なので、非常にアセットライト、そこまで大きな投資は必要ない、まさに「Migakun」事業もそのような典型だと思います。このような事業を作ることで、アセットライトなビジネスを展開し、早期に利益化を図っていきたいと考えています。
また、これはまさに規律ある買収戦略が大前提だと思いますが、時にはアライアンスやM&Aを加速させることで、迅速に収益化に貢献できるようなアップセル・クロスセル商材を生み出していきます。このようなことは非常に重要だと考えています。
成長戦略サマリー/概念
成長戦略サマリーの概念図です。企業成長には、「Akerunのマーケットを開拓」し、その上に「Akerunを基軸としたサービスのソリューション開発をする」必要があります。
土地を広げていくのが「Akerun」、そこにビルを建て賃貸収益のようなものを得ていくのが「ソリューション開発」だとご理解いただければわかりやすいのではないかと思います。
成長戦略サマリー/マーケット開拓
「Akerun」をどのように広げていくか、「Akerun」のマーケット開拓についてです。現在、8割以上はオフィス向けのマーケットで売れています。ここに、MIWA Akerun Technologiesも含めて、さまざまなハードウェアのプロダクトラインナップが揃ってきています。そのような意味で、商業施設や住宅に提案できたり、学校や行政など新しいマーケットにも広がっています。
また、チャネルも直販だけでなく、システム連携、OA機器、不動産関連などのパートナー会社と連携することで、「Akerun」をどんどん拡大、開拓させていきたいと考えています。
成長戦略サマリー/ソリューション開発
「Akerun」を基軸としたサービスのソリューション開発です。これは2つの観点で注力、意識する必要があると思います。1つ目は、収益拡大しやすい商材の選定です。アップセル・クロスセルしやすい商材を選定していくことです。
「Akerun」とシナジーがあることを前提とした商品をアップセル・クロスセルすることで、競合優位性や利便性を高めることができるのではないかと思っています。
また、ターゲットとタイミングの一致も重要です。私たちの場合は、総務や情報システム、セキュリティ担当が、移転時に意思決定するタイミングが非常に多いため、そのタイミングで同時に提案できるような、「Akerun」とシナジーがある商材をどんどん獲得していきたいと思います。
「では、どのように獲得していくか?」というと、大きく3つあります。自社で新しい事業を作っていく、アライアンスで組み立てていく、そしてM&Aを推進していきます。これをすべて同時並行的に推進させていきたいと考えています。
成長戦略サマリー/ソリューション開発(ストーリー戦略)
現在、「Migakun」など新規事業もどんどん仕込んでいますが、この新規事業そのものでリードを取っていくわけではなく、まずは毎月多くのお客さまからお問い合わせをいただき、顧客基盤がしっかりしている「Akerun」を入り口としたビジネス機会の創出を目指します。
ここに対して、「Akerun」があるからこそデータが連携され、そのメリットを十分に生かせる「自動打刻勤怠システム」や「アクセスデータ連携AIカメラ」、「Akerun」が権限発行できるから無人化・省人化が可能な、「ギグワーカーアクセス施設運営代行」そして権限発行が可能で、自動的に事前に来訪があった時に、会議室に入ってもらうような「自動権限発行QR受付システム」。
このようなものをどんどん提案することで、アップセル・クロスセルを「Akerun」の起点として行いたいと考えています。そのような意味では、新しくマーケティング費用がかかるわけではありません。
成長戦略サマリー/ソリューション開発(クロスセル戦略)
「Akerun」を基軸としたサービス「Migakun」がかなり順調に推移しています。例えば、「Akerun」だけをご利用いただいているお客さまの平均単価は、最初にご説明しましたが約4万円です。それに対して、「Migakun」のアップセル・クロスセルが成功した場合は、その平均単価は約3倍から5倍まで上昇します。さらに、クロスセル率は約30パーセントになります。
「Migakun」は従来型のものと比較して必ず清掃代が下がるサービスなので、私からすると、導入しない理由はないぐらい非常に質が高く、安価に提供できるサービスです。このような意味で、どんどん売上、粗利を増やすことができるクロスセル戦略になっていると考えています。
実際、例えばMRR1,000万円を獲得するために、「Akerun」は既存のリード顧客の獲得から行うため、それと比べると「Migakun」のクロスセルを通じた顧客獲得は3倍以上効率が良いということで、クロスセル戦略をどんどん狙っていきたいと考えています。
成長戦略サマリー/ソリューション開発(R&D戦略)
クロスセル戦略を狙う際は、利益率が高い自社開発のプロダクトを最初に考えたいと思います。そして同時にスピードを重視してM&Aのプロダクト、場合によっては他社のプロダクトを再販する、紹介取次でマネタイズしていく方法も考えられます。これは商材や検証の段階、フェーズによって変えていきたいと考えています。
実際に自社開発、M&A、連携していきたいと思っている会社の領域です。スライド右側にまとめていますが、BM(ビル管理)/清掃、BCP/防災、IoTロボティクス、業務管理SaaS、通信ネットワーク、PM(物件管理)、情報システム、セキュリティ認証など、このようなシステムであれば、アップセル・クロスセル率がかなり高いことがわかっているため、このあたりを早期に取り込んでいきたいと考えています。
成長戦略サマリー/ターゲット市場規模
市場規模です。SOMは、オフィス向けのIoTセキュリティで約1,200億円あります。これをオフィス、商業施設、さらにHESaaSまで組み込んだ場合は約5,950億円のマーケットがあります。そこに住宅まで含めたBPaaS事業、HESaaSとBPaaSを絡めた場合は約2兆1,000億円を超える非常に大きなマーケットサイズがあります。
それをHESaaSやBPaaS、これはPhotosynthしかできない組み合わせなので、このマーケットを「Akerun」の基軸として取っていきたいと考えています。
事業全般:セキュリティや認証、無人化/省人化などの幅広いサービスでさらなる事業成長を加速
サービスの特徴です。大きく4つのサービスがあります。法人向けに提供している「Akerun入退室管理システム」、住宅向けに提供している「Akerun.Mキーレス賃貸システム」、新規事業の「Akerunデジタル身分証」、施設運営代行サービスの「Migakun」です。それぞれ背景と特徴についてご説明します。
法人/商用向けAkerunの市場背景:オフィス領域を取り巻く様々な課題
まず、法人向けの「Akerun入退室管理システム」です。個人情報保護法の改正や働き方改革により、「入退室の履歴をしっかり取っていこう」というトレンドは引き続き変わりません。ただ従来であれば、それをオンプレでサービス提供するのが当たり前になっていました。そこで非常に大きな課題としてコストの高さや工事の必要、労力がかかるなどが発生します。
法人/商用向けAkerunの競合優位性:クラウドやAPIを通じた提供価値の向上と収益性の強化
それをクラウドかつ後付けで提供することで、急速にマーケットに広がっており、また「Akerun」の特徴として、拡張性が非常に高く、さまざまなAPI連携をしているため、そのようなSaaSと連携することで付加価値を提供していきたいと考えています。
住宅向けAkerunの市場背景:住宅領域における「物理鍵」利用による様々な課題
住宅向けの「Akerun.Mキーレス賃貸システム」です。内覧時に仲介会社が鍵をわざわざオーナーや管理会社に受け取りに行かないといけない、鍵を紛失してしまう、退去時に鍵を交換しないといけない、そして最近、空き巣の問題がニュースでも多く取り上げられていますが、物理的な鍵だと、落としてしまうと誰でも出入り可能な状態になってしまうなど、多くの問題が存在します。
住宅向けAkerunの競合優位性:美和ロックとの共創を通じて競争力のある製品を提供
対策として、私たちは錠前メーカー最大手の美和ロックとジョイントベンチャーを作り、Photosynthが51パーセント、美和ロックが49パーセントで出資し、美和ロックが作るすべての電気錠において、「Akerun ID」で鍵を開け閉めすることができるようなアライアンスを進めています。
先ほど村上からも説明がありましたが、事業自体はかなり好調だと思います。大手案件もかなり入っていますが、売上が計上されるタイミングがマンションが竣工するタイミングであるため、受注は決まっていますが、売上が立つのが2年後のような案件がけっこう仕込まれています。
事業自体は進捗しており、かつ可能性自体も非常に大きなものが広がっていますが、数字としてはまだという状態です。
Akerunデジタル身分証の市場背景:オフィス/商業施設、教育機関などにおけるID管理の様々な課題
「Akerunデジタル身分証」です。これは学校の例をイメージしていただくとわかりやすいですが、学生証の発行は非常に大変です。学生からすると、証明写真を撮りに行き、その写真を事前に大学側に送り、大学側はその紙をスキャンして学生証に印刷し、さらにその学生証はどこの扉を開け閉めすることができるかという、一切を設計する必要があります。
基本的に大学の施設ごとの各種システムはオンプレで構築されて相互につながっていないため、そのカードを持ってそれぞれのゼミ室や図書館に行き、全部をひもづける必要があります。これは非常に大変です。このようなものを「Akerun」が、いわゆるデジタル学生証を発行することで、スマートキー、スマートロック両方でサポート可能なサービスを提供しています。
Akerunデジタル身分証の競合優位性:法人向け事業で培った高信頼の認証基盤でID管理の課題を解決
「デジタル身分証アプリ」というものがあります。ダウンロードすると、身分証機能があり、最終的にはデジタル身分証として学生証や社員証を生成することができます。また、それを生成するための管理ツールがあります。
海外では少し進んでいますが、なかなか日本では進んでいません。ここができるのは、Photosynthが非常に強い技術力を持っているため、その強みを活かして事業展開していきたいと考えています。
Migakunの市場背景:人手不足や少子高齢化に伴う施設運営の無人化・省人化の要請
「Migakun」についてです。「Migakun」も人手不足、さらに施設を回していくために効率化させていかなければならないという課題があります。
Migakunの市場優位性:様々な空間における人手不足対策・業務効率化とAkerunとのシナジー
それに対して、ギグワーカープラットフォームは非常に有効です。清掃業界はかなりの多重下請け構造です。テナントがあり、そこからデベロッパー、ビルマネジメント会社、清掃会社、ワーカーがあります。4段階から5段階の多重下請け構造です。
これを「Akerun」では、ある意味、私たちはワンストップでエンドに提供しているため、直接「Migakun」もご契約いただくことで、驚くほど大幅にコストを削減できます。さらに、ワーカーも時給を上げることができるとして、非常に人気のあるサービスになってきています。
また、清掃スタッフはどのように清掃しているか、クライアント側は直接、連絡先を知らないため、コミュニケーションが取れません。これができるようになるため、「最近、このあたりが汚いからきれいにしてほしい」「ここの文具を補充してほしい」「この窓をきれいにしてほしい」など、さまざまな要望をコミュニケーションできます。
当たり前のサービスですが、これが清掃業界にはありませんでした。これを実現できるのが「Migakun」のサービスです。
質疑応答:クロスセル推進における具体的な取り組みについて
司会者:「今年度は無人化・省人化に注力し、『Akerun』周辺の商材の拡充などによるクロスセルを推進するとのことでしたが、具体的な取り組みなどはありますか?」というご質問です。
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