2025年度 第1四半期決算のポイント

清水敦史氏(以下、清水):株式会社アーレスティ執行役員管理本部副本部長兼経営企画部長の清水敦史です。決算補足資料に沿って2025年度第1四半期決算についてご説明します。

まず、全体感についてです。売上高は429億1,400万円、前年同期比で45億1,100万円の増加となりました。主要なお客さまによる自動車生産量が回復したことが影響しています。ご記憶のとおり、2024年度の第1四半期はお客さまの生産が不調な時期でしたが、そこから大きく回復しています。加えて、新規品の量産開始により販売量が順調に増加したことも主な要因です。

営業利益は16億2,300万円、前年同期比で15億2,200万円の増加となりました。販売が好調だったことに加え、2024年度の上期末に実施した希望退職者募集など、生産体制の合理化を行ったことで基礎的収益力が大幅に向上したことが主な要因です。また、一過性の収益の計上も発生し、前年同期比で大きく改善しました。

経常利益は12億8,900万円、当期純利益は前年同期比で4億8,800万円増加の9億7,600万円となりました。営業外損益段階では為替差損を計上しましたが、営業利益の増加により、最終利益も大きく増加する結果となりました。

売上重量推移

スライドは売上重量の推移です。右から2つ目の棒グラフが第1四半期決算の実績となります。中央に記載の「2024年Q1」は2024年度の第1四半期を指しますが、こちらの重量をご覧いただくと、販売量の回復が見て取れるかと思います。

2024年度の第4四半期と比較すると若干の減少は見られますが、引き続き順調に推移していることがご確認いただけるかと思います。

一方、2025年度の第2四半期は、第1四半期よりやや減少すると予想しています。こちらについては、後ほど各地域のご説明の中で詳しくお話しします。

ダイカスト事業

ダイカスト事業における各地域の状況です。スライドは全体的な概要です。日本および北米のセグメント損益はそれぞれ約6億円強と、いずれも前年同期比で大きく増加しています。一方、アジアのセグメント損益は5,500万円と、前年同期比で減少しています。

各地域の個別の状況については、この後のスライドでご説明します。

ダイカスト日本

日本です。日本は6億円強のセグメント損益を計上しており、1年前は赤字だったため、9億3,000万円の損益改善が見られる状況です。

売上重量に関して、スライド右上の棒グラフをご覧ください。右から2つ目の棒グラフが2025年度の第1四半期、中央あたりに2024年度の第1四半期が示されています。2025年度の第1四半期は、1年前と比較して日本セグメント単独で約8パーセント増加しています。

改善の要因については、スライド右下の滝グラフに示されているとおりで、売上重量が回復し販売量が大幅に改善しました。製造コストについては、希望退職者募集の実施による固定費の削減など、原価低減や生産性改善が寄与しています。

さらに、1年前はアルミ価格が上昇している時期で、売値の引き上げが追いつかない状況でしたが、第1四半期はアルミ価格が安定的に推移したこともあり、前年同期比で大きく改善しました。結果として、セグメント損益は6億3,000万円となりました。

ダイカスト北米

北米についてです。北米は2024年度の第2四半期から第4四半期にかけて赤字が続いていましたが、第1四半期は6億3,000万円のセグメント損益を計上することができました。売上高も順調に推移しており、新規品の量産開始による効果が大きく貢献しています。

セグメント損益については、メキシコ工場が引き続き好調に推移していることに加え、アメリカ工場でも損益が大きく改善しました。その結果、合計でプラス6億円となり、黒字転換しています。

スライド右上の売上重量の表をご覧いただくと、第1四半期は前年同期比で若干増加していることがわかります。

大きな要因としては、スライド右下の滝グラフの販売量部分がプラス2億円となっている点です。売上重量の増加に比べ、大きな金額となっていますが、背景としては、お客さまとのさまざまな取り決めの中で、一過性の一時金の支払いがあったことが挙げられます。そのため、売上重量の増加に比べ改善幅がやや大きく見える状況となっています。

加えて、減価償却費については、昨年度にアメリカ工場で減損が行われた影響で、減価償却費が減少している効果が出ています。その結果、6億3,000万円のセグメント損益を計上しています。

ダイカストアジア

アジアの状況です。アジアはやや苦戦しました。売上高は92億円、セグメント損益は5,500万円で、黒字は確保したものの、セグメント損益が減少しています。

セグメント損益については、中国工場では昨年から生産体制の合理化を進めているものの、第1四半期はインド工場において一部製品の生産が安定しないトラブルが発生し、製造コストがかさんで利益が減少する結果となりました。

売上重量については、スライド右上の表をご参照ください。2024年度の第4四半期は、棒グラフのとおり大きく増加しています。これは前回の決算説明会でもお話ししたように、中国の中資系のお客さま向けの新規受注によるものです。これにより第4四半期で大きく増加したかたちですが、第1四半期に入って中資系のお客さま向けの売上がやや減少し、成長が曲がり角に入る局面を迎えたことで、若干の落ち込みが見られる状況です。この状況は第2四半期においても続くと見ています。

スライド右下の滝グラフですが、製造コストについては主にインドにおいてややマイナスの影響が出ており、結果としてセグメント損益は5,500万円で着地しています。

アルミニウム事業および完成品事業

アルミニウム事業と完成品事業についてです。アルミニウム事業については、売上重量の減少に伴い、売上高が前年同期比でやや減少しました。一方で単価が改善したため、セグメント損益は前年同期比で4,900万円増加の6,400万円となりました。

完成品事業は、売上高が11億1,700万円、セグメント損益が1億6,300万円となりました。引き続き、クリーンルーム物件向けの売上が堅調に推移しており、それに伴い安定した利益を計上しています。

今回は第1四半期の決算ということで、数字のみのご説明となります。以上でご説明を終了します。

質疑応答:2025年度の上期営業利益予想の修正について

質問者:今回の決算は非常に良い結果だったように見えるのですが、上期の営業利益予想は19億円ということで、修正されていません。こちらに関してコメントをお願いします。

清水:おっしゃるとおり、決算としては非常に良い結果だったと思います。その理由については、先ほどご説明したとおり、1年前に比べて売上重量、販売が着実に回復してきたことがあります。加えて、当社の場合、売上変動に対して脆弱な体質であった部分がありましたが、各地域で体質改善を進め、特に昨年は国内において希望退職者募集を実施したことで、基礎的な収益力を強化することができました。

今回、非常に良い決算になったもう1つの要因として、お客さまと受注時に取り決めた一時金的な支払いが多少集中したことが挙げられます。これにより、正直にお伝えすると、私どもの実力以上に良い結果が出た部分もあったのではないかと考えています。

一方、第2四半期を見据えると、特に中国で昨年受注した大型案件において、若干不透明感が見えてきています。また、トランプ関税についても、第1四半期はあまり影響が見られなかったものの、自動車各社の決算を見ると下方修正を行っている企業も見受けられる状況であり、引き続き慎重に見極める必要があると考えています。

このような状況から、現在の走り出しとしては良い状態ではあるものの、状況を確実に見極める必要があるため、今回は業績予想の見直しを行わない判断をしています。

質疑応答:第2四半期の日本の営業利益の見通しについて

質問者:第2四半期の考え方について教えてください。例えば、日本では第1四半期で営業利益が約6億円出て、第2四半期は数量が第1四半期よりも増える見込みです。第1四半期並みの営業利益を出すことは可能でしょうか? もちろん、これはトランプ関税の影響があまり出なかった場合を前提としています。

清水:少し減速する可能性があると思います。ただし、日本については、トランプ関税の影響を除けば、現状は比較的安定していると見ています。従前から第2四半期は、夏休みなどの影響で営業日数が少なくなります。そのため、例年、第1四半期と比較すると第2四半期は販売量などがやや減少傾向にある点も考慮しています。

質疑応答:北米の第2四半期の利益が赤字になる可能性について

質問者:北米についてですが、第1四半期で6億円の黒字にまで浮上しています。しかし、第2四半期以降は数量が減少するため、マイナスの影響があると思います。それ以外に、第1四半期より利益が減少する要因を教えてください。先ほどの一時金などがあるのかもしれませんが、また赤字になってしまう可能性はあるのでしょうか?

清水:先ほど、「正直、出来すぎた部分もある」とお伝えしましたが、こちらは一時金が発生しており、そこに出来すぎた部分が含まれています。まだアメリカ工場の再建が完結したとは言えず、手を挙げて喜べる状況には至っていません。

アメリカ工場の見通しについては、上期の実績としてはかなり改善が進みましたが、第2四半期においては若干壁にぶつかる可能性があると考えています。

質問者:ということは、四半期で赤字になる可能性があるのでしょうか?

清水:アメリカについては、赤字に転落する可能性があるのかというと、その可能性はまだ残っているかと思います。決して予断を許さない状況です。その理由としては、他の事業所と比べて不良品が多いことや、設備が故障すること、生産状態が依然として非常に不安定であることが挙げられます。先ほどからお話ししているとおり、再建は概ね計画どおりに進捗はしているものの、もろ手を挙げて喜べる状況にはないためです。

質疑応答:新規品について

質問者:先ほど新規品の売上開始というお話もありましたが、それはどのようなものなのか、どの程度の規模感なのかを教えていただけますか?

清水:新規量産品についてですが、こちらはメキシコに関するものです。メキシコで新たに、日系ではなく欧米系のお客さま向けの新規品が立ち上がった状況です。

質疑応答:アメリカ工場の生産性改善の手応えと現状について

質問者:アメリカ工場の生産性についてです。現時点ではまだ道半ばとのことですが、以前と比べてどの程度改善した手応えを感じていますか? 

清水:アメリカ工場の赤字幅は着実に縮小しています。1年前に大きなトラブルが発生し、お客さまにお約束している製品を届けられないという状況に陥り、大きな混乱を招きました。しかし、少なくともその最悪の事態からはすでに脱しており、現在、お客さまへの製品供給は基本的に正常化していると認識しています。

ただし、他の当社の事業所と比較しても依然として不良品の割合が高い状況であり、この点については、さらなる改善の余地があると考えています。一方で、赤字幅はかなり縮小してきており、改善は着実に進んでいると捉えています。

質疑応答:ダイカスト事業の日本における前第4四半期と第1四半期のセグメント損益の業績差の背景について

質問者:日本に関してですが、今回業績が良かった中で、2024年度の第1四半期と比較すると非常に大きく改善していますが、2024年度の第4四半期と比較すると売上重量は増えているものの、セグメント利益が半分程度に減少しています。この背景を教えてください。

清水:お客さまと人件費やエネルギー費の価格交渉を行っており、この交渉で発生するお客さまからの一時金での支払いは期末に集中する傾向があります。2024年度の第4四半期は、そのようなお客さまとの精算金の支払い等により実際の実力以上の数字になったと考えています。

一方で、第1四半期はこのような精算金が発生しにくい四半期であるため、より平準化された状態での収益になっているとお考えいただければと思います。

質疑応答:中国市場の停滞について

質問者:中国の停滞について注視しているというお話がありましたが、それは中国の自動車関連の生産全体が黄色信号という意味なのか、それとも受注したものや御社に関係する個別の部分が先行き不透明だということなのか、そのあたりの見解を教えてください。

清水:まず、当社の中資系のお客さまとの取引についてですが、現在のところ社数ベースではそれほど多くありません。そのため、現段階では基本的に当社のお客さまベースのお話であると認識しています。

背景をお伝えすると、2024年度の第4四半期には中資系のお客さまは非常に成長途上にありました。しかし、足元では売上高は落ちていないものの、モデルチェンジを行っている状況です。

モデルチェンジの結果、前のモデルの売上が急激に落ち込み、在庫を抱えることになりました。その影響で、生産ラインに若干の影響が出ています。売上自体はそれほど落ち込んでいませんが、生産がかなりスローダウンしている状況です。部品を供給する側としては、生産の影響のほうがより大きくなるため、現時点では当社にもこの影響が出てきていると認識しています。

中国市場全体に問題がなければ回復してくると考えていますが、その判断にはもう少し見極めが必要だと考えています。中国市場は競争が激しく、予断を許さない状況ですので、引き続き注視していきます。

質疑応答:第2四半期の見立てにおけるトランプ関税の影響について

質問者:トランプ関税の影響はまだ読めないということで、見立てには入れないということでよいでしょうか? 第1四半期の業績が良かったのは、新規製品の量産開始や、トランプ関税が発動する前から準備していたものが量産に入ったためだと見えるのですが、いかがでしょうか?

清水:当社では、日本セグメントにおける日本で製造して日本の自動車会社に供給する製品のうち、お客さまにおける最終仕向け地がアメリカという製品と、北米セグメントにおいてメキシコのお客さまに供給し、最終的にアメリカに向かう製品があります。アメリカに輸出される製品は、この2地域、2セグメントに該当します。しかし、少なくともメキシコと日本の第1四半期においては、トランプ関税による当社のお客さまへの供給減は認識されませんでした。

私どもとしては、あわよくばこの状況が続くことを期待しているところですが、新聞報道などでは、第1四半期に駆け込み的な輸出やアメリカ側での駆け込み購入があったという話もあります。そのため、私どもとしては予断を許さず、状況を見極めているところです。

質疑応答:シンジケートローンを利用する理由について

質問者:シンジケートローンを組まれていますが、なにか理由があるのでしょうか?

清水:当社は、「25-27年度 中期経営計画」をスタートしています。それに伴い、機動的に必要資金を調達するために今年度の資金調達を検討した結果、シンジケートローンというかたちで調達することを判断しました。これについては、私どものメインバンクとも相談を重ね、このようなかたちでの調達を決定した次第です。