円安の終焉と円高の転換点

司会者:続いては「5年から10年単位で円安の底はどのあたりですか?」円高反転のタイミングはということで、吉田さん、今から5年後10年後はどうなっていますか。

吉田恒氏(以下、吉田):僕は、あまり円安にならないと思っています。今日の本編でも、今の状況が2007年にかなり似ているという話を、グラフなんかを使いながらご説明しましたが、そんな2007年は6月に124円で円安が終わったんですね。9月にはアメリカが利下げして、124円から半年で2割、ドルが下がりました。

じゃあ、その後、この124円を超えたのはいつかというと、2013年に入って、アベノミクスの円安が始まってから。ようやく124円の円安を更新して、125円までかな、円安が進んだので、要するに更新するまで6、7年かかるんですね。今回もそんなもんだろうなとは思っています。

そういう意味で言ったら、もう161円で円安は終わった可能性もあるんだろうし、この161円を更新して円安ドル高が進んでいくのは6年、7年先になるんだろうなという具合に思っています。

司会者:循環していくということですね。ありがとうございます。

議決権行使の開示制度

司会者:「ファンドを保有した時に、運用会社が組み込み比率上位の企業に対して自分の意思に近い議決権行使をしたかどうかを一般的に確認できるものなのでしょうか?」

松本大氏(以下、松本):運用会社に対する責任、投資原則とかがあるのですが、金融庁の方針が変わったりして、確か2017年あたりから議決権の内容が開示されるようになったんですね。各社によって開示の程度はややばらつきがあるのですが、すべての議案について、この議案は賛成した、この議案は反対したとか、そういうのを開示しているのが最近では一般になっています。

おびただしい量なので、確認するのはなかなか大変ですが、議案の番号で書いてあってわかるようにはなっているので、自分の興味のあるところをしっかり見る。

司会者:ありがとうございます。

米国企業の債務超過と投資判断のポイント

司会者:続いては、「アメリカでは株主への還元のために債務超過となっている著名企業がいくつかあります。例えばスターバックス、マクドナルドです。日本の企業の場合、こうした債務超過企業は倒産の危機に瀕しているという見方が一般的ですが、アメリカの場合は考え方が異なるのでしょうか? こうした米国企業に対して投資する際の注意点についてお聞かせください。」

松本:アメリカは投資における自己責任原則を本当に徹底している国です。SECとか、そういうところが何をやっているかっていうと、この会社が良いか悪いかじゃなくて、開示をきちんとしているかどうかを見ているんですね。開示さえちゃんとしていればそれでいい、というのが基本的な考え方です。

あと、株価もストップ安とかそういう制度がなくて、何か問題が起きると、100ドルだったものが1日で0.5ドルとかまで下がったりするんですね。

そういうマーケットですべは自分の責任でやってくださいと。だから、債務超過であっても、それを全部開示していれば、あとは投資家が決めることというのが基本的なアメリカの考え方です。

司会者:「(アメリカでは債務超過に陥っても上場廃止にならずに)上場維持されたまま(という解釈であっていますか?)」

松本:一応そういう時には取引所から、この状況では困るので、債務超過ではどういうふうにこれを直すのですか? という問いが来るんです。確か上場廃止の理由の一つに入っていると思いますが、デリスティングレターというのが来て、それに対してヒアリングをしてくれと発行体が言い、取引所がヒアリングをして、その中でこういうことを今後やっていきますということを説明して、はい、わかりましたって、それも全部開示されるんですね。

日本は全部、金融庁と取引所が先回りして、投資家保護という名目で場合によっては中途半端な形で手を入れる。アメリカは完全にマーケットに任せるというのが大きな違いだと思います。

司会者:広木さん、いかがですか?

広木隆氏(以下、広木):こ今松本さんからあったように、日本の場合は投資家保護の観点から、債務超過になったら上場廃止基準に抵触するので上場廃止です。というのは、日本の場合、大概赤字で、資本がそれで減少して債務超過になるんですね。

ただ質問者さまからもあるとおり、アメリカのこういった企業の債務超過って、自社株買いのやりすぎなんですよ。要は、ROEを高めようというレバレッジ経営の行き過ぎで債務超過になっている。別にキャッシュフローは回っているわけです。利益は出ているんですよ。その利益を超える自社株買いをやってるから、資本がマイナスになっちゃっているだけで、事業はぜんぜんうまくいっている。だからそのまま上場が続いてるんです。今、アメリカS&P500を日本円に直すと10兆円ぐらい債務超過が出ているんですよね。

当然こういうレバレッジを追求した過度なリスクを取った経営は、危機に弱い。それに十分注意することが必要だと思いますね。

直近の危機はコロナです。コロナ危機の時は、例えば航空機、デルタとかアメリカンとか、みんな債務超過だったのですが、あの時はアメリカ政府の支援を受けて、あまりにもレバレッジが効きすぎていて、すぐ潰れそうになった。ボーイングなんかもそうです。過大な自社株買いで資金繰り困難な中、結局R&Dに金を回さないでそういうことをやっている。ボーイングの事故が2回も起きたりしているのはそういうことですね。

60歳から始める外国債券投資の注意点

司会者:続いては「現在60歳、外国債券を始めたいが、残命年数と投資必要期間の関係、このアドバイスが欲しいです」ということです。塚本さん、いかがですか。人生100年時代というフレーズは内閣府とかで検索すると出てきますが。

塚本憲弘氏(以下、塚本):ご年齢と安全資産としての債権という意味合いで申し上げているのですが、60歳であれば、やはりそれぐらいの債券で良いのかなと思います。ただその運用で良いのは、利回りが出ているということなんですよね。

3パーセントの債券なのか5パーセントの債券なのか、それによって投資の年数が変わってくるのですが、それがご自身のライフプランに合っていると確認して債券を選ぶということですね。そうすると、例えば金利が上がれば債券価格は下がりますし、その逆もありますが債券は持ち切ることで、しっかりとリターンのフローが見えてくるので、そういう観点で見ていただければ良いのかなとは思っています。

司会者:ありがとうございます。

中国株投資の魅力と注意点

司会者:「中国経済が低迷している中で、今、中国の人民元、中国株への投資を始めてもいいでしょうか? また投資をする場合、どういう視点で投資をするのが良いでしょうか?」ということで、中国株です。岡元さん、いかがですか?

岡元兵八郎氏(以下、岡元):特に日本人の人たちの中で、中国株に投資したくないという意見が今非常に強いと思うんですよね。どちらかというとネガティブな意見が多いように見受けられます。逆張り的に考えると、世の中の人たちがあまりにもネガティブになっているゆえに、そこに何らかのチャンスがあるのではないかなと思っています。

これはまったく根拠がないわけではなくて、中国の株式市場の時価総額って、世界の株式市場の17パーセントあるわけですよ。

日本株6パーセントの2倍、3倍あるわけです。そして、中国人口14億人のうち、ミドルクラスが5億人と言われています。東京に中国の人たちが旅行で来て、大金を使っているというのがありますよね。結局お金を持っている人がいるわけです。

それは紛れもない事実であり、ミドルクラスはお金を使うことができる。ひょっとすると日本人よりも多くのお金を使うことができる国になっていますよ。

加えて、フィンテック的には日本をはるかに超えて進んでいます。キャッシュレスでスマホですべてのことが完結する国になっている。そんな国になっちゃっているわけです。あと、例えばBaiduとか、アリババみたいな会社もあるわけで、そういった意味では、中国は意外と侮っちゃいかんなというのが私の正直な気持ちなんです。

中国にすべてかける必要はないと思いますが、少しでもいいから時間の分散で、中国株に投資をし始めるというのは、最終的にあの時やっておいてよかったなと思う時がくるんじゃないかなと思っています。

司会者:注意点はどうでしょうか。

岡元:これはいかなる国の投資をするにあたっても同じですが、当然リスクはあるので、そこを踏まえた上で、取れるリスク分の金額を投資するということだと思います。

松本:中国はどうしても会計とかに不正があったりとか、そういうこともあるので、個別株だといろいろとリスクもあるから、やはりプロの運用しているファンド経由でというのが普通だと。

岡元:ごめんなさい。ここで言っているのは投資信託ということです。

司会者:投資信託をセレクトするといいということですね。

暗号通貨ETFの認可の見通しは?

司会者:続いて、「暗号通貨のETFはアメリカで認可されていますが、日本で買えるのはいつ頃になりますか?」

松本:投信法というのがあって、ETFは上場投信なので、まず投信でなければいけなくてそれが上場するということなんですね。日本の投信法上は、暗号資産は中に入れられないんです。

ご存じの方も多いと思いますが、今、暗号資産は買って売って儲かると雑所得として総合課税がかかっちゃうんですね。分離課税じゃないんです。

まず、そこから直らなければいけなくて、その次に、じゃあこの資産はそういう金融商品である投資信託に入れられますか? ということになると思うので、裸の暗号資産の売買に伴う税制が変わることが最初です。実は今これが議論されていて、金融庁もいろいろヒアリングをしているので、いつかは変わると思います。

司会者:時間の問題ですかね。

松本:時間の問題だけど、その時間が半年、1年という話なのか、3年、5年という話なのかはちょっとよくわからないという。

司会者:でも税制が進んではいるんですね。

松本:トランプさんは、かなり暗号資産に前向きな人です。アメリカは民主党で、ずいぶん反対の向きが多かったのですが、それでもやはりETFは認めなきゃいけなくなったんです。これがトランプに代わり、SECの委員長とかも変わると、ずいぶん進むと思うんですよ。

司会者:まずはアメリカから。

松本:アメリカから。そうすると、日本の金融はどうしてもアメリカの後追いをするところがあるので、日本も変わってくる可能性が上がるんじゃないかなと思います。

司会者:続いては、「マネックス・アクティビスト・ファンドとほかのファンド、日経平均、TOPIXとの比較についておうかがいしたい」ということです。

松本:マネックス・アクティビスト・ファンドのパフォーマンスは、手数料や信託報酬、成功報酬を引いた後で、今のところTOPIXとだいたい同じぐらい。

それを引かなければTOPIXよりもはるかに良いリターンを出しているのですが、フィーを引いた上でも、TOPIXをはるかに上回るようにしなければいけないと考えて運用しています。

全部で20銘柄ぐらいのファンドで、私も毎日内容を見て、リスク管理をして、株を選んで、リサーチして、発行体に会って、社長とかに会って対話をしてということを毎日のようにやっているので、本当にかなりのエネルギーをかけて見ています。

自分の子どものようにという表現もおかしいんですが、責任を持ってすごく近くで見てやっています。インデックスというのは全部ですよね。アクティビスト・ファンドは今18銘柄だけですが、しっかり見ています。

インデックスだと、値動きは今のところそんなに大きくは変わっていませんが、個性のあるファンドだと思います。

司会者:ありがとうございます。

災害に備える資産運用術

司会者:続いて、「本日、静岡市から参加しました。名古屋も含めて、今後30年以内に必ず南海トラフ巨大地震が来ると言われています。日々、常に頭のどこかでその日を意識しながら生活する毎日ですが、災害発生時に起こりうる株価の変動について、また今から対策できるリスク分散方法などをご教示お願いします」。

広木さん、リスクとして日本は地震が多いですね。

広木:はい。もう記憶に新しいところで、言うまでもないですが、東日本大震災を我々は経験していますし、今年初めの北陸の能登とか、あらためて災害というものを意識して、我々日本人は暮らしてきたと思うので。

もうこれは言うまでもないことですが、日本以外のアセットクラス、アメリカ株でもいい、ゴールドでもいい、に分散するのが、一番いいリスク分散方針だと思います。

質問者の方も、常に頭の片隅にそういう日が来ると想定されているので、一番重要なのは気の持ち方ですね。最悪を想定して、最善を望むということです。

こういうこともある、ああいうこともあると、すべて最悪の状況を想定しつつ、そうならないことを希望しながら日々生きていく。そして、外国株やほかの外貨など、日本と関係ないエクスポージャーを持つことがベストだと思います。

司会者:資産を分散しておくということですね。ありがとうございます。

(次回へつづく)