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小田原一誠氏(以下、小田原):本日はプリントネット株式会社、2025年8月期第3四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。執行役員管理本部長の小田原一誠です。

本日は私から当社概要と事業内容、岡元から2025年8月期第3四半期決算報告と通期計画、今後の成長に向けたビジョンについてお話しします。

会社概要

当社の会社概要を簡単にご説明します。当社はインターネットを通じて印刷通販事業を展開しており、この業界では大手4社のうちの1つです。また、自社工場を持ち印刷通販事業を行っている3社の中では、当社が唯一の上場企業です。

資本金は8億1,500万円で、従業員数は306名です。鹿児島本社にはカスタマーセンターを設け、山梨県上野原市に東京西第一工場と第二工場があり、鹿児島県に九州工場があります。2025年2月末時点の株主数は3,280名です。

当社経営理念

当社の経営理念です。「謙虚な心で皆様と共に進む」を社是とし、従業員、家族、お客さま、株主、取引先、すべてのステークホルダーが事業を通じて幸福となることを実現し、企業価値を継続的に拡大することを目標としています。

当社の歴史/沿革

印刷通販事業を通じ、「オンリーワン・カンパニー」を目指し、「低価格への挑戦」「製品品質の向上」「サービス品質の向上」に向けて企業努力を継続しています。

当社は2018年に現在の東証スタンダード市場であるジャスダックに上場し、2019年には九州工場への移転を通じて生産体制を拡充し、業績を拡大しました。その後、コロナ禍を経て業績を回復させてきました。

後ほど詳細をご説明しますが、現在、2026年の操業開始を目指し、さらなる生産体制の拡充を計画しています。

過去からの業績推移

過去の業績推移についてです。2014年3月に生産規模拡大を目指して東京西第二工場を操業し、それ以降業績は右肩上がりで推移しました。そして、2018年10月にはジャスダックにIPOを果たしました。コロナ禍の影響を受けた2021年には決算期を変更し、以降、業績は回復基調にあります。

前期は原材料費の急激な上昇により減益となりましたが、今期は採算性を重視した受注に注力するとともに、コスト削減を進め、増収増益を計画しています。また、2026年の操業開始を目指して九州第二工場の新設を予定しており、これにより売上と利益の増加を見込んでいます。

当社のビジネスモデル

当社のビジネスモデルです。Webサイト「プリントネット」と、より低価格志向の顧客向けの「プリントプロ」を通じた全国ネットの受注体制により、入稿データを受け取り、当社工場で印刷・加工し、全国へ納品します。また、印刷ノウハウを持つ印刷業者やデザイン会社から多くの注文をいただいています。

業務プロセスの違い

従来は、印刷会社が企画からデザイン制作、印刷、加工、配送までを一手に担っていました。オフセット印刷機の導入には莫大な設備投資が必要であり、印刷会社にとっては最新機器への投資が常に経済的な負担となっています。

当社では、企画からデザイン制作までの前工程をお客さまが担当し、印刷から発送までの後工程を当社が担う分業体制を採用しています。この体制により、双方のメリットを活かし、高品質、短納期、低価格を実現しています。

顧客サポートと高品質のサービス

強みの1つである本社のカスタマーサポートサービスは、オペレーター約30名の体制で、細かく迅速なカスタマーサービスを実現しています。これによりスムーズな注文が可能となり、お客さまのご相談にも対応しています。当社のカスタマーサポートは顧客満足度が非常に高く、当社の強みとなっています。

自社一貫サービス体制

一連のビジネスの流れです。当社では、自社一貫サービス体制を確立することで、お客さまに安心、利便性、丁寧なサポート、品質・納期に対する高い信頼を提供しています。

また、当社は自社工場のオフセット枚葉印刷機において、ジャパンカラー認証を取得しています。

2025年8月期 通期業績予想

岡元隆広氏(以下、岡元):管理本部管理部管理課長の岡元です。2025年8月期第3四半期の業績結果と通期計画についてご説明します。

今期の計画は、近年の原材料費高騰を受け、トップラインの伸びを追うよりも採算性を重視した受注獲得を優先し、粗利率の改善を図って二桁増益を計画しています。1株当たり当期純利益(EPS)は約66円の見込みです。

2025年8月期第3四半期 損益計算書(前年比較)

第3四半期においては、上期に続き原価改善や販管費削減の施策が奏功しました。売上高は前年同期を若干下回ったものの、売上総利益は前年同期比2.3パーセント増となっています。また、販売管理費を吸収し、営業利益および経常利益はいずれも前年同期を20パーセント以上上回る結果となりました。

採算性を重視した方針により、大口得意先の売上高は前年同期比5億3,400万円減となった一方、一般顧客の売上高は前年同期比2億7,900万円増となりました。また、原価削減の努力により、粗利率は1.3ポイント改善しています。

販売費および一般管理費については、発送運賃コスト削減効果などにより、売上高に対する構成比率を下げることができ、前年同期比でコストダウンを実現しました。四半期純利益については、前期における減損損失の解消および今期の保険解約により、大幅な増益となっています。

通期業績予想に対する進捗も、想定どおり順調です。

四半期毎の業績推移

四半期ごとの売上高と営業利益の推移についてです。第2四半期では、売上高の伸びが第1四半期と比較して緩やかになり、それに伴い営業利益も前年同期比で若干のマイナスとなりました。しかし、第3四半期では売上高が前期並みを確保し、営業利益は増益となっています。

第3四半期が終了した時点で、前期の通期業績予想の達成率が82.4パーセントであったのに対し、今期第3四半期の通期業績予想に対する営業利益の達成率は87.1パーセントとなっています。

引き続き、採算性を重視した受注獲得に注力し、通期業績計画を上回ることを目指していきます。

2025年8月期 利益向上に向けて、大口得意先以外の比率向上を推進中

スライド左側のグラフは、前期と今期の四半期ごとの累計売上高における大口得意先と大口得意先以外の推移を示しています。スライド右側の売上構成比のグラフのとおり、大口得意先の比率は四半期ごとに低下しています。

採算性を重視した方針により、大口得意先の売上を抑えつつ、採算性の高い大口得意先以外の顧客の獲得が奏功しました。さらに原価削減の努力が加わり、結果として粗利率の改善につながっています。

2025年8月期 第3四半期の営業利益の増減分析

第3四半期の営業利益の増減要因についてです。採算性を重視した売上高の獲得により、売上高は2億5,200万円減少しましたが、原価削減を進めた結果、材料費で2億5,100万円の改善が見られました。

さらに、外注費の内製化や発送運賃の削減といったコスト抑制効果も加わり、営業利益は前年同期比約8,000万円の増益となりました。

売上高 四半期ごとの推移

四半期ごとの売上高の推移です。大口以外の得意先の売上高は前年同期比で2億7,800万円増加しましたが、大口得意先の売上高が5億3,400万円減少したため、全体では前年同期比3.5パーセント減となりました。

第2四半期では、売上高が前年同期を11パーセント下回りましたが、第3四半期では前年同期並みの売上を確保しました。また、大口売上の減少と一般売上の増加によって採算性が改善しています。

各四半期ごとの売上総利益/売上総利益率推移

売上総利益率については、第1四半期および第2四半期に引き続き、第3四半期も前年同期比で改善しています。付加価値の高い商品の受注増が売上総利益率の改善に寄与しており、今期の上期に続いて第3四半期でもその改善効果が継続していることがわかります。

各四半期ごとのEBITDA推移

EBITDAは、第1四半期と比較すると第2四半期では減少しましたが、第3四半期では前年同期を上回る結果となっています。

2025年8月期第3四半期:BS、キャッシュフロー

貸借対照表についてです。利益の積み上げにより、現預金が前期末比で4億8,700万円増加しました。負債に関しては、前期末比で長短借入金が5億6,100万円減少しています。自己資本比率は55.9パーセントとなり、前期末比で3.1ポイント上昇しました。

3Qトピックス:従業員向け株式報酬制度の導入

第3四半期のトピックとして、従業員向け株式報酬制度を導入しました。社員の帰属意識を高め、経営への参画意識を持たせること、さらに当社の業績や株価上昇への社員の意識を高めることを目的としています。この導入により、従業員のエンゲージメント向上と企業価値の向上が図れると考えています。

また、従業員には規定に従い、所定の数の株式を株式報酬として付与していきます。

株主還元

株主還元については、業績に応じた継続的な安定配当を目指しています。今期の配当は、さらなる成長投資を行う中で前期実績の13円を計画しています。

株主優待については、7月14日に「株主優待制度の一部変更に関するお知らせ」で開示したとおり、従来の「QUOカード」の配布から、スマートフォンやパソコンで受け取れるデジタルギフトに変更しました。

1,000株以上保有の株主に贈呈している「黒豚しゃぶしゃぶ+出汁1本セット」については今年も継続します。さらに、早期保有の株主向けに、株主優待デジタルギフトの贈呈額をグレードアップする施策も実施しています。

今後のビジョン:経営環境認識

小田原:今後の成長戦略とビジョンについてご説明します。まずは外部環境についてです。国内では少子高齢化による人口減少が進む中で、人手不足のさらなる深刻化や国内市場規模の縮小が想定されています。一方で、デジタル化の促進やインフレ傾向の強まりにより、原材料価格や人件費の上昇が見込まれます。

このような原価コスト増に対応するため、DX化の推進などを通じて生産性の向上を図り、収益力を高めていく必要があります。また、持続的な成長を目指す上で、SDGsの推進やCO2削減、健康経営やガバナンスの強化が引き続き求められています。

さらに、各地で起きている地域紛争による地政学リスクや、アメリカ・トランプ政権による保護主義政策が世界経済の停滞を招く懸念があり、中期的な大きな課題となっています。

このような外部環境のもと、当社は成長を継続的に進め、すべてのステークホルダーに利益をもたらす経営を推進していきます。

今後のビジョン:印刷通販の市場規模とシェア

印刷通販市場は、全体の印刷市場が縮小する中、デジタル化の進展やコスト削減、利便性向上により市場規模が拡大しています。「印刷白書2024」のデータによれば、2023年は2022年比で25パーセント以上の成長が推測されます。

また、矢野経済研究所のデータによると、国外の印刷通販市場は全体の約30パーセントを占めており、日本の印刷通販市場は約5パーセントにとどまっているため、今後の成長ポテンシャルがあります。

当社を含む大手4社が寡占する市場において、その1つであるラクスルとは2012年8月に業務提携を結んでいます。他の2社は非公開企業で、当社同様に自社工場を持ち、業容を拡大しています。

今後は、自社工場を持つ印刷通販企業として唯一の上場企業である強みを活かし、このマーケットシェアの拡大を目指していきたいと考えています。

今後のビジョン:戦略骨子

持続的な成長に向けた戦略骨子の4つのポイントです。成長に向けては、35億円を投資して九州第二工場を新設し、中長期的な成長に向けた多角的な投資を推進していきます。投資資金については、自己資金と借入により調達する計画です。

人材育成投資としては、若手採用の促進と育成、賃金の継続的な引き上げや職場環境の改善による離職率低減を図り、ベテラン社員の技術継承を推進していきます。

サービス・サポート体制強化においては、オンライン発注システムの改善やDX化による顧客データ分析、カスタマーサポートの拡充に取り組むとともに、低価格・小ロット対応や高品質・短納期の実現を推進していきます。

また、ESG経営の推進においては、太陽光など再生可能エネルギーの比率向上を通じたCO2削減を図り、環境に配慮したノンVOCインキの100パーセント使用など、環境に配慮した事業運営を行っていきます。

今後のビジョン:成長投資(九州第二工場の建設)

成長投資の目的は、需要増に対応する生産能力の拡大です。最先端設備の導入による生産性向上とコスト削減効果も期待されています。

既存の九州工場に隣接する用地に新たに建設し、オフセット印刷ラインを2ライン導入します。総額35億円を投資し、現在の2ラインから合計4ラインとなることで、生産能力が現在の倍以上に向上する見込みです。同時に、資材コストの削減により3,000万円以上の原価削減も見込んでいます。

今後のビジョン:人材育成投資

続いて、人材についてです。地域社会からの新卒を含む優秀な若手人材の新規採用を促進し、研修体制を整備して人材の育成を進めます。

また、賃金上昇と職場環境の継続的な改善により健康経営を推進します。さらに、ベテラン社員のノウハウや技術を若手に継承するとともに、社員と経営層のエンゲージメントを高め、経営理念の浸透を通じて、やりがいのある職場環境を構築することを継続的に推進していきます。

今後のビジョン:ESG経営の推進

ESG経営の推進についてです。まず環境対応については、事業を通じた環境改善を目指し、工場への太陽光発電設備の設置や再生可能エネルギーの活用を促進します。また、環境に優しい原材料の使用にも注力します。

社会については、地域社会に根づいた事業拡大を目指し、雇用創出や地域のスポーツ振興、イベント協賛などを積極的に行い、地域で愛される企業を目指します。

ガバナンスについては、上場企業として、企業価値拡大に向けた執行と監督の分離によるベストプラクティス体制を実現すると同時に、コンプライアンス体制の強化に努めます。また、IR活動をはじめ、ステークホルダーのみなさまとの対話も継続していきます。

今後のビジョン:展示会への出展

当社の全国規模での認知度向上に向けて、今期は展示会への出展を積極的に進めています。7月には「SOPTECとうほく 2025」に出展し、8月には「営業・マーケDXPO」に出展予定です。さらに、9月には「HOPE(HOKKAIDO PRINT EXPO)」にも出展する予定です。

今後のビジョン:紙以外への印刷や活用シーン別の新商品の開発

当社は、紙以外への印刷や活用シーンに応じた新商品の開発も進めています。スポーツ関連市場向けの応援グッズや、推し活・同人誌市場向けのトレーディングカード印刷、オリジナルフロアマット、選挙関連印刷などにも積極的に取り組んでいきます。また、短納期印刷やノベルティグッズへの印刷の組み合わせも、当社の強みです。

みなさま、引き続き当社へのご支援をよろしくお願いします。

質疑応答:国内外の印刷通販市場について

岡元:「日本のネット印刷市場は海外と比べて差はあるのでしょうか? 印刷業界全体の市場環境とあわせて教えてください」というご質問です。

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