J-REIT低迷の背景と今後の展望
司会者:「J-REITの低迷が続いています。反転の兆しはあるのでしょうか? 今後の見通しについてお聞かせください」ということで、塚本さん、J-REITはなぜさえないのでしょうか?
塚本憲弘氏(以下、塚本):これまでは、株に好材料がすごく多かった、テーマが多かった、そういった意味で、REITよりも株のほうが先行されてきたというふうには見ています。
あと、金利が上昇するのではないかという話も、やはりREITにとっては良くないと見られていて、基本的にはREITを買うのであれば、不動産株を含めた株のほうにという流れで来ていたんだと思うんですよね。
なので、株がちょっと不安定になれば、REITのほうが堅調に見える日もあるとは思いますし、短期的に反発するのであれば、そういう見方も可能かなとは思っています。
ただ、もう少し長い目でREITを見た時に、現在、株で言うPBR、NAV倍率が、歴史的に安い状況になっています。加えて、利回りがインデックスで4.5パーセントを超えていたかと思います。
そういった点を踏まえると、下値が限定的であると期待される利回り商品と、債券に近いポジションとして、株とは違う値動きを期待する部分としての、ポケットというんですかね、そういった用い方になるのかなと思っています。
司会者:ありがとうございます。
政策保有株の売り出しに市場は「買い」で対応
司会者:「最近、政策保有株の売り出しが盛んに行われています。これは買いでしょうか?」
広木隆氏(以下、広木):マーケットはもう買いで対応していますね。典型的なのはアシックスで、政策保有株を全部売却する。
問題は、その政策保有のものを売った後の現金の活用方法ですね。アシックスは自社株買いに充てるんじゃないか。たいがいは、そういう期待で買われていますし、やはりその資金の有効活用ですよね。
あと、損害保険会社なんかも全部、金融庁の指導で政策保有株を売る。地銀もそうですし、今はもうそういう流れになっているので、やはり海外投資家から見ても、持ち合い解消というのは買いということでいいんじゃないかと思います。
円高に対する今後の見通し
司会者:「今後、日銀の利上げ、アメリカFRBの利下げによる円高ドル安が予想されますが、円高はどの程度まで進むでしょう?」。吉田さん、いかがですか。
吉田恒氏(以下、吉田):110円とか120円とか、そんな感じなんだろうなと思います。要するに100円を割るとか、そういう感じには、もうならないんだろうなと思います。
最近でも、なかなか円安が止まらない、日本の貿易収支がもう黒字にならない、そういう日米の構造変化によって起こっているんだみたいな話がありますが、それは違います。
為替はやはり循環するものです。かつてほど円高にならなくなるとか、かつてよりも円安になりやすくなるとか、そういう中長期的な変化が起こることが構造変化であって、急に突然、構造変化で円安が止まらなくなるとかそんな話ではありません。
ですから、貿易黒字大国であった日本の貿易黒字がもうそれほど増えないということは、かつてほど円高になりにくくなっているということだと思います。
そうであれば、今の円安が終わって循環的に円高に戻しても、かつてのように100円を割れてドル安円高になることはないだろうと、せいぜい110円、120円とかそんなもんなのかなと思います。
司会者:ありがとうございます。
NVIDIAの株価の上昇は続く見込み
司会者:お時間的に最後です。岡元さん、「NVIDIAはまだ数年持っていても大丈夫?」
岡元兵八郎氏(以下、岡元):私のプレゼンの中でお話ししましたが、生成AIって始まってまだ2年も経っていないわけですよ。
広木も先ほど言っていましたが、半導体、特にNVIDIAの場合は、これまでも非常にボラティリティ高く取引してきました。でも、その間ずっと上がってきたわけです。なので、7月末に決算発表がありますが、それでまた大きく乱高下すると思います。
ただ、成長が止まったというわけではないので、私は少なくとも来年までは上昇はあるんだろうなと思っています。来年になった時に、新しくいろいろなことが起きるので、その時にまた判断をしなきゃいけないのですが、現時点において、NVIDIAの株価の上昇がここで止まることはないと思っています。
マーケットから逃げ出さず、ステイし続けることが大事
司会者:ありがとうございます。あっという間にお時間になってしまいました。最後に、講師陣のみなさまから、今日、名古屋会場にお越しのみなさん、オンラインのお客さまへ、一言ずつメッセージを頂戴したいと思います。
広木:僕の朝一番の講演から、このパネルまで共通しているテーマは、株は基本的に上がるものだということです。
ただ、時に上がりすぎるので、そういうバブルの時は売らなきゃいけないし、もちろん急落局面も何度もあるだろうけども、そういうところに動じずに、決算期とかを気にしないで、基本的にはバイ&ホールドで持っていくのが、時間を味方につけて資産を形成できる個人投資家にとってベストな方法だと思います。
その代わり、気をしっかり持つためには、こういうリスクがあると、リスクを把握することが重要です。今回のパネルではあまり出ませんでしたが、日銀が国債買い入れをやめることで、けっこう大きな波紋が、今後じわじわじわじわ出てくると思うんですよ。
自分のパートでも言いましたが、クラウディングアウトの問題だとか、思わぬ金利上昇だとか、マネーの奪い合いになって預金が取れない銀行の破綻とか、シリコンバレーバンクの破綻と同じようなことが日本の弱小金融機関で起きてくる、ゾンビ企業が簡単に潰れてしまう、そういう変化の時代をこれから迎えるわけで、当然、金融市場にも少なからずショックが走ります。
でも、基本的には日本の上場企業は大丈夫ですから、一時的なショックに狼狽売りとかせず、マーケットから逃げ出さず、岡元がいつも言っているマーケットにステイし続けるというのがやはりベストな選択だろうと思います。ありがとうございました。
司会者:ありがとうございました。
アメリカ抜きで投資はしてはいけない
司会者:では、岡元さんお願いします。
岡元:今、広木に言われちゃったのですが、ちょうど1年前ですかね、名古屋のみなさんにお話ししたメッセージとまったく同じです。
みなさん、もしも株式のポートフォリオが日本株だけでしたら、その一部でもいいから、やはり海外、特にアメリカの株式を持ったほうがいいんじゃないかなと思います。
今回はお話ししていませんが、2030年、2050年の世界を考えた時に、やはりアメリカは人口も増えるし、GDPの規模、伸びも日本より高いですし、あとアメリカの企業のイノベーションですよね、そういったことを考えると、やはりアメリカ抜きで投資はしちゃいかんのだと思うんですよ。
ただ、タイミングを狙って買うのではなく、無理せずに積立投資でいいから、少しずつ資産を築くということで始めるということを、やっていらっしゃらない方がいたら、おやりになったほうがいいと思います。
そして、繰り返しになりますが、ステイ・インベスト、投資を継続するということが非常に大切なので、それをぜひやっていただきたいと思っています。今日は長い間どうもありがとうございました。
司会者:ありがとうございました。
バブルが破裂した後に、いかに速やかに動くかが重要
司会者:続いて吉田さん、お願いします。
吉田:今日はありがとうございました。僕は1年前のこのセミナーで、円安は150円を大きく越えないだろうとお話ししたんですけれども、結果的には150円どころか160円も超えました。
じゃあ何か見込み違いがあったかというと、見込み違いともまたちょっと違って、言い方は変ですが、今日の本編でも言ったとおり、大幅な金利差が長期化する中で、投機的な円売りがバブル化するということは、僕はよくわかっていました。
ただ、それがどこまで円安をもたらすのかというのは、なかなか判断するのが難しいところです。僕はそれを考える上で、グリーンスパン(Alan Greenspan氏)という、かつてFRB議長を19年間勤めた人の名セリフの1つを、常に頭の中で振り返ります。
「バブルを事前に指摘することには、あまり意味はない。100万人、1,000万人という投資家が売買した結果を間違っていると言うことは、それほど重要ではない。バブルが破裂した後に、いかに速やかに対応するかが最も重要である」という言葉があるんですけども、僕は円売りバブルだなと思った時も、常にこの言葉を頭の中に入れるんですね。
バブルだとわかったからすぐに逆方向に動くというわけではないので、バブルだと認識したら、破裂した後にいかに速やかに動くか、やはりそこにとにかく注意しなきゃならないなと。
その気持ちは、ぜんぜん変わらないです。そういうつもりで今の円安も見ています。少しでもみなさんの参考になるように、役立つ情報提供をしていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
司会者:ありがとうございました。
分散投資も意識して安定的なリターンを築き上げていくことが大切
司会者:続いて塚本さん、お願いします。
塚本:今日、私はリスクにフォーカスする話をさせていただきました。マーケットが今高値圏にあります。だからこそ、リスクを意識すべきだとも思っています。
過去、利下げ局面では、マクロ経済もマーケットも不安定になりがちです。今年は選挙イヤーと言われますが、政治というファクターが入ってきたり、地政学というファクターが入ってきたり、不透明感というのがいくらでも指摘できる、そんなタイミングに来ていると思っています。
そういった意味で、繰り返しになるオーソドックスですが、分散投資も意識して安定的なリターンを築き上げていくことが、1つ大切なことかなとは思っている次第です。ありがとうございました。
司会者:ありがとうございました。
「Believe in JAPAN」 日本には大きなチャンスがある
司会者:ではイェスパーさん、お願いします。
イェスパー・コール氏(以下、イェスパー):1つだけです。「Believe in JAPAN」。不透明なところは不透明ですが、なぜ日本ではアップルができなかった、なぜ日本ではGoogleができなかった、なぜ日本ではNVIDIAができなかった……その話を止めていただきたいんです。
まず、日本全国は、やはりアナログ天国であると。そしてAI2.0、プラス米中の新しい冷戦は、世界最大債権国である日本、世界最大のアナログ技術である日本にとっては、大きなチャンス。Go, Go.
司会者:ありがとうございます。
日本株の未来に大きなチャンスを期待
司会者:それでは最後に、マネックス証券松本大より閉会のご挨拶です。松本さん、お願いいたします。
松本大氏(以下、松本):本日は、長い時間本当にありがとうございました。みんなの話を聞いていたら、一言だけ投資の話をしたくなっちゃったんですけれども。
最後にイェスパーが言ったように、やはり日本株にはすごいチャンスがあると思うんですね。日本は世代交代を背景に、本当に大きく変わろうとしていると思います。
おそらく、株式市場、上場企業の間で、これからM&Aと値上げが増えてくるんだと思います。M&Aをして値上げをするだけで、急に儲かる会社が、日本にはゴロゴロあると思うんですね。そういうことがこれから日本で起きてくる。
そういう時に対して生活を防衛するためにも、日本株投資というのはすごく重要な投資戦略の1つではないかと思います。
みなさまの投資体験をよくすることが、私たちの企業としての存在意義で、このようなセミナーであるとか、あるいは商品、サービス、情報、みなさまが欲しいもの、我々がプロとして考えて「これをどうぞ」というふうに、いろいろご案内するのがすごく大切だと思うのですが、同時にみなさまからのいろいろなご要望に応えていくのが大変重要な指針だと思っておりますので、いろいろなかたちで、ご要望を当社までお寄せいただければと思います。
そして、岡元が途中で1回言っていましたが、ETFの件で金融庁に何か意見を言いましょうと。みなさまが議決権を行使したり、いろいろなところで投資環境とか上場企業などに関して意見を言うことは、みなさまの投資の成績を良くすることに必ずつながると思うんですね。なので、そういったことにもぜひ声を上げていただきたいし、それのお手伝いもこれからしていければと思っています。
本日は、午前中から本当に長い時間、今までありがとうございました。今後ともぜひよろしくお願いいたします。