個別株を保有しつつ相場下落に備えるヘッジ手法

司会者:たくさん質問をいただいているので、進めてまいりましょう。「全体相場が下がると予想するけれども、個別株は売りたくない。この場合どのようにヘッジしたら良いでしょうか?」

広木隆氏(以下、広木):これはね、簡単です。株価指数先物を売ってヘッジすればいい。ポートフォリオは崩したくないけれど、短期的に下落リスクが高まっている時は、そういうデリバティブ(派生商品)を使ってヘッジするというのはプロの機関投資家の常套手段ですから、個人も同じようにやればいいでしょう。

先物なので、トレードが難しい場合は、下げに賭けるインバースのETFなど、そういうものをうまく利用する。ただやはり倍下がっちゃうんでね、そこはやはり、自分のヘッジしたい金額に合わせて調整することが必要だと思います。

司会者:個別株と同じようにETFのかたちを使って売るということですね。

広木:そうですね。プロだと、もっと細かくポートフォリオのβ(ベータ)、つまりどのぐらい指数に連動して動くかというところまで計算するんですけど、個人の場合はそこまでいらないんじゃないかと思います。

司会者:ありがとうございます。

マネックス証券の定額解約プログラム導入計画

司会者:続いて、「積立購入した投資信託などの出口戦略について、定額/定率取り崩しを導入する証券会社が増えています。マネックス証券の導入予定はいつ頃でしょうか?」

松本大氏(以下、松本):マネックス・アセットマネジメントが提供している「ON COMPASS」とか「ON COMPASS+」には、定額解約みたいなプログラムもあるのですが、マネックス証券のほうには今はそういうのはないんですね。

先ほど、清明(清明祐子氏)とも確認しました。「要望も多いので、きちんと取り組んでいきます」と言っていました。「俺、本当に言っちゃうよ」と言ったら、「わかりました」と言っていました。お客さまからいろいろなご要望がある中で、そういうご要望がずいぶん増えているんですね、なので、しっかり取り組んでまいりたいと考えています。

司会者:ありがとうございます。

日本で米国ETFが購入できない理由

司会者:続いて、「現在マネックス証券で米国株の取引をしていますが、米国版の会社四季報に載っている銘柄、例えばDBAなどの取り扱いがありません。他の証券会社も似たような話なのですが、なぜでしょうか?」 

岡元兵八郎氏(以下、岡元):まずこのDBAは、インベスコDBアグリカルチャルファンドというコモディティ系のファンドなんですね。状況を説明させていただくと、日本で海外物のETFを買おうと思うと、我々は自由にみなさんに買っていただくことができないんですね。

どういうことかというと、日本でマーケティングしようとする場合、ETFを組成している運用会社が金融庁に行って、届け出を出さなきゃいけないんですよ。それが求められているんです。

私もちょっと不思議な国だなと思うのですが、たぶんこれは投資家保護という観点でやっていると思っています。よって、その届け出をやっていないETFは、我々は扱えないんですよ。ですから、時々、私ども証券会社に買えるようにしてくださいというリクエストが来るのですが、金融庁マターなので、実は我々は何もできないんです。

むしろみなさんは日本人の個人投資家として、金融庁に対して、何でこれが買えないんですか? と問い合わせをされたほうが効果的かと思います。

我々は証券会社なので、一定のことが言えますが、非常に難しいと思います。この届け出制度をやめたほうがいいと思いますね。そうすると、アメリカなり、海外で上場されているETFを自由に売買することができます。

司会者:制度的なものなんですね。

松本:私もずいぶん昔に掛け合ったことがあるのですが、金融庁の企画市場局というところが担当局になります。要はアメリカで上場している株は、どんな株でも当社経由でそのまま買えるんですね。

ただ、アメリカで上場している投信、上場投信(ETF)は、個別に日本の金融庁に登録がされないと売買ができない。

金融庁は理由として、投信の中身がどうなっているかを確認しないと、ノミ行為的な、中身が空っぽのような投信だったら困るじゃないかと言っているのですが、そんなんだったら、そもそもアメリカで上場できるはずがないので。

司会者:はい。

松本:何を言ってるんだろうと僕も思うので、みなさまも岡元が言うように、ぜひ金融庁企画市場局にいろいろと意見をいただければと思います。ネットで調べると、電話番号がすぐ出ると思います。

金利変動時の日本株戦略 グロースとバリューの比較

司会者:続きまして、「アメリカは利下げ局面、日本は利上げ局面と、金融政策的には対極にありますが、日本株はアメリカの状況に左右される面もあります。このような局面では、日本株は利下げに強いグロースと利上げに強いバリューのどちらに優位性があると思われますか?」 

広木:答えから言うと、どちらも五分五分、イーブンだと思います。

利下げに強いというか、利上げの場合、上値が圧倒的に重くなるのはグロース株です。逆にバリューはいろいろなファクターがあって、上がるかどうかは、何とも言えないので、2つ兼ね合わせると、どちらもあるなという感じです。

つまり、アメリカの利下げもどこまでも行くわけじゃないし、先ほどトランプの話が出ましたが、当然、財政の問題やインフレの再燃の問題で、もう1回利上げに追い込まれる可能性もあるわけです。日本だって何回も利上げを進められないので、日米の金融政策の進み方を考えれば、あまり金利の変動だけでグロース/バリューを考えないほうがいいと思います。

司会者:ありがとうございます。

NISA拡大で日本株はどこまで上がるか

司会者:「NISAが新しくなって、たくさんの方が参入したことで株価が上昇しています。日本株は、どのくらいまで上がっていくのでしょうか?」 

イェスパー・コール氏(以下、イェスパー):ゴーゴー。

司会者:5万5,000円というね、イェスパーさん。松本さんは?

松本:きりがないんじゃないでしょうかね。バブルに戻ったと言いますが、その期間にアメリカの株はもうすごい、何倍? 10倍ぐらい? 5倍? 岡元さん、30倍?

岡元:いっぱいです。

松本:上がったわけですよね。本来、株はいろいろな影響を受けて、上下には動くけれども、長く見ると上がっていくというのが、ちゃんとした国の株だったのが、日本はこの数十年間、いろいろな生産がある中で、そういうふうにはならなかった。

司会者:失われた20年ですね。

松本:今の日本の企業と日本の株は、アメリカ株と同じように、上下動はあるけれども、おおむね上がっていくというものになったと思うので。

だから5万5,000円どころか、いずれもっと上がっていくんだと私は思います。

広木:松本さんの言うとおりで、期間を区切らないでいくらまでというのはナンセンスですね。僕の持論でも最初から言っていますが、株は基本的には上がるものなので。

期間がなければ、株式市場が存続する限りどこまでも上がっていくので、いつまでにいくらと言わないと駄目ですよね。

司会者:ありがとうございます。

EVの現状と展望

司会者:続いては、「EVが定着せず、ガソリンエンジンへ戻りつつあるように見えます。この流れについてどう思いますか?」

岡元:確かに報道を見ると、今はEVの冬と言えるとは思うんですね。ただいくつかポイントをお話しすると、例えば、最初にEVを流行らせたというかドライバーになったのはテスラだと思うんですね。最初、彼らはモデルSというブランドのものを出したのですが、それはだいたい円貨で1,400万円だったんですよ。

誰が買ったかというと、高級車を買える人たちが買いました。非常にマーケットが小さかった。その後、彼らはModel 3というのを出しました。これはベースの値段が600万円です。

それを買える人たちは、だいたい買っちゃったわけですよ。そうすると次に起きなければいけないのが何かというと、値段を下げなきゃいけないわけです。低価格のEV車が世の中に出てくる。時間をかけてこれから出てくるんだと思います。

加えて、EVなので、チャージステーションが必要なわけですね。調べてみたら、アメリカには今、6万3,000ステーションあるんですよ。今、6万3,000なのに、アメリカ政府としては、2030年までに50万台を狙っているんですよね。そういうことが今起きていますよ。

加えて先ほどお話ししたように、自動運転という世界になってくる。寝ていても運転できる、非常に利便性が高い、そして値段も下がってくる。

そしてどこでも充電できるというようなことが、これから起きてくるんだろうなと思っていますので、今は冬かもしれませんが、また春がやってくると私は考えています。

松本:広木もそう思っているの?

広木:うーん、難しいんですよね。確かに可能性はあるんですけれども、EVがどこまで普及するのかどうかが本当にわからないですよね。特に日本じゃ難しいと思いますよ。圧倒的に充電の関係からしてね。

松本:AIにベース電源がもう根こそぎ持ってかれちゃう世の中が来るので、電気がすごく希少なものになってくる。

司会者:EVにまで電力が回らない?

松本:EVじゃなくて、性能の良いガソリン車とかハイブリッドのほうが、世界全体を考えるといいじゃないというのはあると思うんですよね。とにかくAIの電気の使い方が異常。しかも、さらに異常になる。今LLM、ラージ・ランゲージ・モデルを使っていますが、これがLMM、マルチ・モーダル・モデルに変わっていく中で、電気使用量が10倍とかに増えるんですね。

そうすると電気の使い方が変わる可能性があるんじゃないのかなと僕はちょっと思います。

イェスパー:ご存じのとおり、EUはけっこう厳しい規制強化で、2030何年で、コンバッションエンジンはアウトなんですよ。

そしてもう一つ、その逆の議論で、新興国では、とりあえずEVは無理、インフラとしてチャージステーションは、グローバルサウスとかBRICSでは無理ではないかということで、だからやはりグローバルサウスでは、コンバスティオンエンジンが成長するというのが、可能性として非常に高いんですね。

司会者:岡元さん、テスラはEVよりは、無人運転のテクノロジーで伸びていくという話でしたね。

岡元:そうだと思いますし、やはり世の中って、これまで我々の歴史を見ても、新しいものが流行り始めて、マスアダプションという、誰でも使うようになるまでというフェーズがあって、こうはならないわけですよ。こういうサイクルでくる。今ちょうどボトムのところだと思っています。

司会者:ありがとうございます。

半導体セクターの今後の動向

司会者:続いては、半導体についての質問をいくつかいただいています。「半導体バブルと言えるほどの状況ですが、いつまで続くと思いますか?」という質問と「今はセクターが円高への転換で、それからトランプ優勢の中で直近でものすごく売られています。シリコンサイクルなどを考慮するとまだ1年ほどは上がってもいいと思うんですが、この直近の値動きは一時的な調整になりますか?」 

広木:ひと口に半導体と言っても、それこそNVIDIAから日本の信越化学(4063)のような半導体の素材部材を作っているところまですごく幅広いので、業界によっても、いろいろな強弱のものがあると思います。

一つは、やはり半導体という、テクノロジーとしての有効性、有用性は、電力と同じようにAIの普及と一緒にまだまだずっと伸びていくのですが、それと株価の付き方がやはりかなり乖離してる部分があります。そうすると、その株価はバリエーションだとか、それこそ市場のセンチメントですごく上下動します。ですからそればかりはもう読めないですよね。

単純に利益が伸びれば株価が上がるというフェーズはとっくに越えている。ある意味バブル的な動きだったというのはそのとおりだと思います。しばらくこの半導体関連は上がったり下がったり、半導体のアナリストだろうがなんだろうが、こればっかりは誰にも予測できないと思いますよ。

しかも今回足元で出てきたような、米中の貿易戦争がもう1回クローズアップされるタイミングだと、余計にボラティリティが高まってくる、そういうセクターだと捉えるべきじゃないでしょうかね。

株と安全資産のバランスはどう取るべきか

司会者:「半導体がものすごく湧きましたが、次に来るトレンドやテーマは何だと思われますか?」という質問もあるんですね。

広木:いやあ、これはわかんないですよね。占い師じゃないですからね。

司会者:ありがとうございます。続いては「投資信託について、若い世代と違って時間が限られていますが、55歳から投資信託を選択しても無理な選択ではないでしょうか?」ということで、年齢ですね。塚本さん、いかがですか。

塚本憲弘氏(以下、塚本):ぜひ投資信託を選択いただければと思います。先ほどパンフレットをもらってきたんですけど、ちょうど50歳からの投資信託というものもあって、たぶんご説明もあったかと思うのですが、これはバランスファンドなんですよね。

株だけじゃなくて債券も含んで、安定的なリターンを狙うというものですが、ご質問に関しては決して無理な選択ではないと思っています。先ほども株は上がるものだというお話がありました。そういった意味ではやはり株式を保有するというのは、資産運用の最も大切なコアになると思っています。

一つだけ運用において気をつけたいのは、10年に一度、株は急落が来るものだと思っています。運用の最終局面にそのドローダウンを食らってしまうと、取り返す時間がなくなってしまうんですよね。

若い方であれば、急落を食らってもそれを取り返す時間があります。ただ、ご年配になればなるほどその時間が限定的になってしまうということが、一つ気をつけたいことであって、私もよく申し上げるのですが、年齢が安全資産の比率になるという一つの目安があります。

20歳の方であれば20パーセントが安全資産で、80パーセントはリスクを取れる。逆に80歳の方であれば、80パーセントが安全資産で20パーセントでリスクを取りましょうというのは、まさに急落をヘッジするという部分もありますし、資産運用というのはだんだんと保守的になるものなので、やはりそういった観点でリスクは取るべきであって、ご自身のライフプランに沿ってリスクと安全資産のバランスをご検討いただければと思っています。

広木:だったら、120歳の人は20パーセント株をショートするということですね。

塚本:そうですね。

広木:真面目に答える必要はないから。冗談、冗談(笑)。

(会場笑)

塚本:一つの目安として、人生100年というベースで申し上げました。今は、どんどん平均寿命が延びているので、年齢以上にリスクを取っても良いのかなと、言えるかと思います。

司会者:ありがとうございます。

(次回へつづく)