業績の概況

小池敏弘氏:株式会社サイバーセキュリティクラウド代表取締役社長兼CEOの小池です。2023年12月期通期の決算概要およびトピックス、2025年に向けた成長戦略についてご説明します。

通期の決算概要です。業績については、売上高30億6,000万円、営業利益5億4,900万円、当期純利益4億2,700万円で着地しました。第3四半期に業績予想を修正しましたが、各段階において、その予想を上回る実績で着地しています。

ARRの推移

ARRの推移です。第4四半期は過去最高の新規受注金額を達成しました。解約率も低く抑え続けられており、最終的には前年同期比でプラス30.9パーセントと高成長を記録しました。

スライド上部に記載したとおり、第4四半期に新たに販売を開始した「CloudFastener(クラウドファスナー)」も業績に貢献しています。

攻撃遮断くんとWafCharmの解約率

解約率については、2023年12月期上半期に解約が相次ぎ、一時的に悪化しましたが、その後、お客さまとの対話や製品の改良などをしっかりと続けた結果、引き続き低位安定しています。この水準を今後も維持し続けていきたいと思っています。

売上高の推移

売上高の推移です。2023年12月期第4四半期は8億4,000万円で、非常に順調に成長しています。特に、M&Aを除く自然な増加を示す売上増加額が、四半期比較で過去最高の伸び率になっています。進行期もさらに増収を狙っていく方針です。

営業費用(売上原価・販売費及び一般管理費)の推移

営業費用の推移です。以前よりご説明しているとおり第4四半期については、マーケティング含めた広告宣伝投資や「CloudFastener(クラウドファスナー)」開発に伴うR&D投資を着実に実行した結果、費用はそれ以前に比べると大きく出ました。

こちらは今後の売上や利益に跳ね返ってくるものと考えており、今期も研究開発等の投資を積極的に行っていきます。

サイバーセキュリティクラウドの成長を支える従業員

従業員の推移についてです。2023年末現在、前年比プラス23名の120名で着地しています。特に、当社にとって非常に重要なビジネスパートナーかつコミュニティであるAWS社出身のメンバーが、日本とアメリカの双方に複数名入社しており、人数が増えたというボリュームもさることながら、社員の質も向上し、組織自体が非常に強化されてきていると感じています。

また、2024年4月には、新卒社員が初めて入社します。これにより人数が増加するだけでなく、既存社員への刺激も期待されるため、非常に楽しみです。組織としても今期、大きく成長していきたいと考えています。

「AWS re:Invent 2023」に出展し世界中のAWSユーザーに対する認知度向上へ

通期のトピックスをご紹介します。2023年11月末にアメリカのラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2023」という、AWS社のコミュニティの中で最も大きいカンファレンスへの出展を実現しました。これは日本の企業として非常に珍しいことです。私自身も1週間ずっと張り付き、ブースで多くのお客さまとお話ししました。

実績としても、それ以前のアメリカにおけるマーケティング活動と比べ、アメリカを中心とした世界中の企業のリードを獲得できました。あとは、こちらをいかに収益化していくかというところで、まさにその商談を進めています。

新たにCSOが参画しグローバルの事業展開を加速

2024年1月、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社においてセキュリティ事業を手掛けていた桐山が、CSO(Chief Strategy Officer)およびCISO(Chief Information Security Officer)に就任し、経営メンバーとして参画しました。

当社はこれまで、AWSを含めたクラウドプラットフォーム上でのセキュリティを強化することに取り組んできました。今後は彼が一緒に経営を支えてくれることにより、さらに事業が加速していくと確信しています。また、従来掲げているグローバル展開も共に進めていけますので、非常に楽しみにしています。

AWSの日本市場への投資拡大に合わせて成長を見込む「CloudFastener」

2023年リリースした「CloudFastener(クラウドファスナー)」の活用事例です。「アットコスメ(@cosme)」というECサイトを中心に大きく事業展開しているアイスタイル社が、第1号ユーザーとして当社の「CloudFastener(クラウドファスナー)」を導入し、ケーススタディを公表しています。

現在多くの会社が、オンプレミスの環境からクラウドに移行するプロジェクトを抱えています。そもそも移行するだけでも非常に大変な作業であるため、クラウドの癖を理解したセキュリティを施すところまではなかなか手が回らないのが実態のようです。あるいは、使用経験のなさから知識や知見といったものが不十分であるという課題を抱えています。

当社としては現在、そのような課題を解決するために、各企業にこの「CloudFastener(クラウドファスナー)」を有効に活用していただき、できるだけ本業に集中してもらえるよう、支援に取り組んでいます。

また、AWS社は日本リージョンに対して大きな投資をしていくことを発表しています。当社はAWS社をはじめとしたクラウドプラットフォームを活用しているWebサービスやWebアプリなどのセキュリティを手掛けていますので、AWS社の事業規模が拡大すれば、当社のビジネスチャンスも拡大します。本年もこの事業展開を進めていくことに尽力したいと考えています。

CloudFastenerにおける包括的業務提携に関する合意書の締結

この度、「CloudFastener(クラウドファスナー)」にできるだけ早期に多くの機能を追加し、高品質化していくことを目的に、富士ソフト社と業務提携を締結することになりました。

当社は従来、セキュリティという分野で知見を蓄積しつつ、メーカーとしてサービスを自社で作ってきたため、こちらに関してはノウハウと自信を持っています。

一方で、まだ小さな会社ですので、開発リソースやスピードなどは不十分であり、常に増強しながら事業を行ってきました。この点について1万8,000人の技術者集団を擁する富士ソフト社の力を借り、共にプロダクトを作っていくことで、市場での認知獲得とプレゼンス向上を最速で目指していきたいと考えています。

将来的には、富士ソフト社の独自ブランドとしてプロダクトを提供することも含めて、提携について幅広く検討を進めています。いち早くこのプロダクトを世に広めていきたいという思いで、タッグを組み開発を鋭意進めています。

APIセキュリティの新サービスを拡充

また昨今、WebサイトやWebサービスを開発するにあたり、裏側で欠かせない技術となっているAPIセキュリティのニーズが大きく拡大しています。

そのようなニーズを解決していきたいと、この度、「sasanka(サザンカ)」というWeb APIを保護するためのソフトウェアをOSSとして公開いたしました。

OSSは一般の人が自由にソフトウェアを使うことができ、場合によってはユーザーがさらに手を加えて自由に使えるものです。価格表がついた製品とはまったく違い、日本のみならず世界のAPI保護の領域に対して貢献できる無償のソフトウェアです。

なぜ無償で出すのかといいますと、「sasanka」を無償で使う世界中のユーザーからさまざまなフィードバックをいただくことができると考えているためです。実際の使われ方のデータやログも取得できるため、さらに高精度、高品質のAPI保護サービスの開発につなげていくことを企図しています。

また従来、Webサイトの脆弱性診断は行ってきましたが、この度、正式にAPI脆弱性診断サービスをメニューに加えて、お客さまに提供することとなりました。

実際のところ、Webサイトにおいて、APIを使ったセキュリティを構築することは、当たり前かつトレンドになってきています。API脆弱性診断ついても「責任を持ってしっかりと診断できる」ということを今後アナウンスしていきたいと思っています。

「sasanka」やAPI脆弱性診断サービスを皮切りに、今後はAPIセキュリティの領域において、新たなプロダクトの開発や新たなお客さまとの接点構築を目指していきたいと考えています。

新たな顧客ターゲットを狙う脆弱性管理情報サービス「SIDfm」

「SIDfm」について、従来のソフトウェアタイプに加えて、今回新しくクラウドタイプをリリースしました。

「SIDfm」はもともと、主に大手企業向けの製品でした。歴史も非常に長いプロダクトで、言い方を変えますと、10年前、20年前に「脆弱性対策を絶対にしなければいけない」という意識を持っていたのは、ほぼ大手企業だけだったという実態があると思います。

したがって、従来版の「SIDfm ソフトウェアタイプ」はシステムの観点から、大手企業にフィットしたものになっていました。一方で最近は、企業規模にかかわらず、脆弱性対策をしなければなりません。

例えば、非常に多くのテック系ベンチャー企業は、製品そのものに個人情報・機密情報が入っており、会社の重要な資産となっています。そのようなものを保護したいという時に、従来のソフトウェアタイプでは使い勝手が悪い部分がありました。

そこで今回、「SIDfm クラウドタイプ」をリリースすることで、企業規模にかかわらず、好きなタイプを選んで使い勝手を良くすることが可能になりました。SIDfmブランドは全体として今後の売上拡大に大きく貢献できると考えています。

2024年12月期 通期業績予想

2024年12月期の通期業績予想、および2025年に向けた成長戦略のアップデートについてお話しします。

2024年12月期の通期業績予想です。数字はスライドに記載のとおりです。今回はレンジでの開示としており、売上高は38億円から40億円、営業利益で6億5,000万円から7億5,000万円、最終的な純利益で4億5,000万円から5億2,000万円としています。

当社は2025年に向けた成長戦略を掲げ、こちらに向けて事業成長を毎年重ねてきました。そのような中で、2024年は非常に大きな転換期だと捉えています。

2024年はこれまでお話ししてきたとおり、新しいプロダクトである「CloudFastener(クラウドファスナー)」のリリースやグローバルにおける「WafCharm」の成長加速といった大きなトピックスがテーマになっています。新しい領域に新しいプロダクトを売っていくことになりますので、現在はいろいろな可能性を探りながら進めているところです。

また社内に関しても、全体の人材数が増えていく中で、最適な人的配置を常々検討しています。そのような過程において、売上高の伸び率の変化や投資対象の変化などが予想されると考えています。

そこで現時点では、少し幅を持たせたかたちで業績予想を開示しています。増収増益を基本的なコンセプトとすることは以前と変わっておらず、その上でしっかりと成長を遂げ、成長率をより高めていくために、試行錯誤しながらさまざまな打ち手を見出していきたいと考えています。

現時点で一番大切な「2025年の財務目標の達成」に対しての目線はまったく変わっていません。ここに向けた戦略、戦術、打ち手が、よりクリアになってきたタイミングで、このレンジの開示も修正し、新たな戦略の概要をお伝えしていきたいと考えています。

2025年に向けた成長戦略

2025年に向けた成長戦略です。大きなテーマは特に変えておらず、Webセキュリティ分野において国内で盤石な地位を築いていきます。売上高50億円、営業利益10億円を目指します。

また、グローバル展開における海外売上比率を10パーセントに引き上げます。2年前に掲げたこれらの目標に向けて、今年も走っていくことになります。

2023年12月期の重点施策トピックス

こちらのスライドは、2023年12月期は取り組んだ具体的な内容の一覧です。基本的にすべて過去に取り組んできたことですが、簡単にご紹介します。

「パートナー支援の強化」として、パートナー制度を変えたり、新しい製品にパートナー制度を構築したりしました。また国内外でも多くの販売パートナーや技術パートナーとのパートナーシップ締結などを行ってきました。

先ほどもご紹介したアイスタイル社においては、単なる販売先やメーカーというポジションにとどまらず、サイバーセキュリティ分野においてさまざまな情報交換や支援などを提供する戦略的なパートナーシップを締結しました。このようなことも新しい取り組みです。

「WafCharmのグローバル展開」については、昨年はまさに準備の最終年という年でした。販売しやすくするために、製品プランへさまざまな改良を施し、各国の法令への対応などを行いました。

実績やブランド力をしっかりとつけるために、AWSコミュニティにおけるパートナーのランクを最上位まで引き上げることにも取り組みました。また、アメリカ本国のイベントにも出展をするなど、本当に多くの打ち手を講じています。

「サービスラインナップの増強」では、昨年10月にAWS向けの「CloudFastener(クラウドファスナー)」を販売開始したほか、「SIDfm」においてもいくつかの新プランをリリースするなど、より広範囲にお客さまのニーズに応えられる体制が整いました。

成長戦略の達成に向けて重点施策をアップデート

これらの取り組みを受けて、2024年は重点施策をアップデートしています。大きなところでは、重点施策の1つ目を「大手顧客への価値提供強化」とアップデートしました。「CloudFastener(クラウドファスナー)」という新製品自体が、非常に幅広い規模のお客さまに価値を提供できるものです。特にこれまでも、大企業のお客さまに「攻撃遮断くん」をはじめとして多数のご利用をいただいていました。

さらに多くの価値や製品を提供し、当社でも重点施策としてテーマづけをすることで、今後このマーケットに向き合っていきたいと考えています。

もちろん、それに見合う製品を提供することだけでなく、アライアンスやパートナーシップなども強化していく必要があります。自社の営業組織自体も大きく改革をしている最中です。

重点施策の2つ目も「AWS経済圏でのグローバル展開を強化」に変更しています。「WafCharm」のグローバル展開から「CloudFastener(クラウドファスナー)」を含めたグローバル展開へと強化していきます。

3つ目については大きく変えていません。引き続き「サービスラインナップの増強」を進めていきます。このような重点施策にアップデートします。

財務目標① 売上高50億円の達成

財務目標に関しては、引き続き売上高50億円の達成、グローバル展開に関しても海外売上比率10パーセント以上を目指していくことを掲げています。

2年前にこの計画を立てた当初、グローバル展開するプロジェクトは主に「WafCharm」しかありませんでした。そこからビジネスの環境だけでなく、当社の価値提供の仕方も大きく変わってきました。

全体の海外売上比率10パーセント以上という目標は変えず、その対象としてグローバル展開ができる「WafCharm」「CSC Managed Rules for AWS WAF」「CloudFastener(クラウドファスナー)」などのプロダクト全体で、しっかりと国外でも稼いでいけるようにしたいと考えています。

財務目標② 2025年の営業利益を10億円へ

営業利益に関しては引き続き10億円、営業利益率は20パーセントの達成を目指します。

【重点施策①】大手顧客への価値提供強化

重点施策は先ほどお伝えしたとおりですが、大手顧客への価値提供を強化していくことなどにしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

【重点施策②】AWS経済圏でのグローバル展開を強化

「AWS経済圏でのグローバル展開を強化」に関して、より加速させていきたいことは「AWS Marketplace」での販売を強化していくことです。

こちらは、マーケティングや広告を打ち、営業担当が商談し、技術営業が納品するという一般的なプロセスをすべて省き、お客さまがよいと思えばAWS上でその場でボタンを押して購入することができるものです。

今はこの販売チャネルが「Managed Rules」を中心として非常に好調です。これから当社がグローバル展開を進めていくにあたって、世界中すべての国に人員を配置することや販売パートナーを置くことは、あまり効率のよいものではないと考えています。

最適な販売チャネルの1つとしてこの「AWS Marketplace」を重要なものと捉え、積極的に拡販を進めていきたいと考えています。

【重点施策③】サービスラインナップの増強

「サービスラインナップの増強」です。スライドはこれまでの事業の広がりを示したものです。

もともとはWAFに始まり、脆弱性管理の領域に進出しました。昨年にはマネージド・セキュリティ・サービス(MSS)領域の製品もリリースし、さらにはAPIセキュリティ領域へと領域が広がっています。

この成長戦略を発表してからの2年でも、領域が大きく広がってきています。新しいプロダクトを一つひとつ筋肉質なものにして収益を上げていくことはもちろんですが、さらにこのサービスラインナップを増やしていく精神を常に忘れず、今後も継続的に開発を続けていきたいと考えています。