個人投資家向けIRセミナー
出雲充氏(以下、出雲):みなさま、こんばんは。株式会社ユーグレナの出雲でございます。本日の東京は大変な暑さで、日中は最高の光合成日和でした。すでに大変な猛暑が来ていると感じる日でしたが、我々は石垣島の豊かな自然の中ミドリムシを育てながら、「人と地球を健康にする」という事業に真剣に取り組んでいるところです。
本日は個人の株主さまと投資家のみなさまに、我々の最新の事業の進捗についてお話ししたいと思っています。
株式会社ユーグレナの紹介
本日は、初めて視聴くださっている方と、すでに何度か聞いており、もしかしたら株式も持ってくださっている方もいるかと思います。まずは、初めての方向けにユーグレナ社の歩みについてご紹介します。
我々は2005年12月16日に、世界で初めて微細藻類ユーグレナの屋外大量培養に成功しました。社名のユーグレナはミドリムシの学名ですので、株式会社ユーグレナはミドリムシそのものの名をつけてスタートした会社です。
我々が一番大事にしているフィロソフィーは「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」で、持続可能な社会を作るために事業を行っています。これをお客さまや株主、あらゆるステークホルダーの方へ最もわかりやすくお伝えするために、我々は「人と地球を健康にする」会社だとご説明しています。
2012年12月20日に東証マザーズに、2014年12月3日に当時の東証一部に上場しました。我々は日本の大学からスタートしたスタートアップ・ベンチャー企業です。今、日本には大学が作ったベンチャー企業が3,306社あります。その中で、我々が初めて東証一部に上場し、東証の市場改革を経て、現在はプライム市場に上場しています。
株主はおかげさまで10万人を超え、今では個人投資家を中心に12万人を超える方々に応援していただいています。
‟バングラデシュで目のあたりにした栄養失調の問題を栄養豊富な食材で、解決したい。”
「あなたはなぜ、ミドリムシで会社を作ることになったのか?」とよく聞かれますので、原点についてお話しします。大学1年生の18歳の夏休みに、生まれて初めてバングラデシュに行きました。この地で大勢の子どもたちが栄養失調で苦しんでいましたので、栄養失調の子どもたちが元気になれるものを見つけ、届けようと思ったことが私の原点であり、出発点です。
たどり着いた当社独自素材「ユーグレナ」
いろいろなよいものを探して出会ったのがミドリムシでした。もともとは「みなさまに健康になってもらいたい」「健康になっていただくためにはミドリムシが一番よい」と私が確信してスタートした事業です。
ミドリムシというと、ほとんどの方が1種類の生き物を想像されると思います。しかし、実は我々は100種類ものさまざまな品種・種類のミドリムシを持っています。品種の違い、培養の仕方や育て方によって、ミドリムシにもいろいろな個性があります。
さまざまなものを代謝して体内に作ってくれますので、「バイオ燃料としても活用できるのではないか?」ということで、2008年から事業開発・研究開発にも取り組んでいます。現在は、「人を健康にする会社」から「バイオ燃料で地球を健康にする会社」に軸足を広げて取り組んでいる最中です。
世界初、ユーグレナの屋外大量培養技術の確立
先ほどお伝えしたとおり、2005年12月16日に世界で初めてミドリムシを大量に育てる技術を確立しました。現在では横浜市鶴見区に中央研究所を構え、横浜市と石垣島を拠点として製造・販売を行っています。
ユーグレナ社の歩み
会社の歩みとして、17年間においてのトピックスを簡単にまとめました。2005年に会社を創立し、石垣島でユーグレナの屋外大量培養がスタートしたのも同年です。2012年にマザーズに上場し、2014年には私にとっての原点であるバングラデシュに戻ることができました。
今は70万人を超えるお客さまに、サプリメントや化粧品、ドリンクなどいろいろな商品を購入し、召し上がっていただいています。
当社の商品売上の一部からお預かりした寄付を原資として、ミドリムシがたっぷりで、1日分のさまざまな栄養素を摂ることができる給食をバングラデシュの小学校に届ける「ユーグレナGENKIプログラム」に、2014年から着手しています。今では毎日1万人の子どもたちに、累計1,300万食のミドリムシの給食を届け、彼らや彼女らの栄養失調をなくすことを推進しています。
ユーグレナグループが展開する3つの事業領域
我々は、グループ各社とさまざまな事業に取り組んでいます。ご覧の3つの柱で事業を進めており、一番大きな大黒柱がヘルスケア事業です。ヘルスケア事業に匹敵する2本目の柱としては、2025年以降必ず実用化させるバイオ燃料の事業があります。
また、この2本柱に加えて、3本目、4本目の新規の柱となって「Sustainability First」を実現するために、遺伝子検査や有機肥料、ソーシャルビジネスにも取り組んでいます。
新聞などでご覧になっていると思いますが、化学合成する肥料の材料費が非常に高騰しています。そのような中、我々は化学肥料にワンウェイで頼るのではなく、サステナブルな有機肥料の事業も新しい領域として開発を進めています。
本日は時間も限られていますので、当社の主力事業の2つをご説明します。まず、本日ご視聴の方の中で一番関心が高いと思われるSAF(Sustainable Aviation Fuel)、いわゆるバイオジェット燃料領域の事業の進捗と、我々の考えている今後の展望についてお話しします。さらに残りの時間で、大黒柱であるヘルスケア事業の着実なキャッシュフローの状況についてご案内します。
カーボンニュートラルの実現
まず、バイオ燃料領域についてご説明します。カーボンニュートラルの実現ということで、バイオ燃料は地球を健康にするという観点でどのように役立つのかを、スライドに図を示してご説明します。
今、みなさまが使っている石油由来の燃料は、もともと地中に埋まっていた化石燃料を掘り出し、空気中で燃やしてエネルギーを取り出しています。燃やしてエネルギーを取り出すと当然CO2が出てきますが、これをずっと続けていると、空気中のCO2の濃度が少しずつ上昇することになります。今、1年間で約350億トンのCO2が新たに大気中に排出されており、日本国内に限っても約11億トンが排出されています。
我が国をはじめとして、先進諸国は2050年までにカーボンニュートラル社会の達成を掲げています。これをどのように実現するのかということで、省エネルギー、再生可能エネルギー、水素、アンモニアなどいろいろな選択肢がありますが、バイオ燃料もその中の1つの重要なソリューションです。
今、空気中には約400ppmのCO2が含まれており、このCO2を植物が光合成で吸収し、固定化します。これは森林もそうですし、植物プランクトンの仲間であるミドリムシも、天気のよい日は光合成を行ってCO2を吸収することで育ちます。
そのミドリムシから油脂を抽出してバイオ燃料として活用すると、当然CO2は出てきますが、光合成によってCO2の固定化を繰り返すことで、CO2をずっと使い続けることができます。今大気中にある400ppmのCO2は仕方ないのですが、これ以上地面の下から石油を掘らなくて済みます。これが化石燃料であり、カーボンニュートラル達成の1つの考え方です。
業界動向 - 国内外におけるバイオ燃料需要の顕在化
この考え方に沿ってさまざまな分野でバイオ燃料に対する関心が高まっており、投資も非常に急激なスピードで増えています。バイオ燃料のマーケットは成長産業の1つと見込まれており、日本では2022年からSAF(Sustainable Aviation Fuel)という言葉がメディアに出てくるようになりましたが、我々はもう少し前からSAFという言葉を使っていました。
エアライン、航空会社、キャリアはいわゆるバイオジェット燃料のことをSAFと呼んでいます。バイオ燃料のマーケットは、7年後の2030年には6.5兆円の規模まで成長すると見込まれています。
また、バイオジェット燃料とバイオディーゼル燃料は、日本にはマーケットがありませんが、欧米ではすでに大量に取引されています。スライド右側に価格を記載していますが、バイオジェット燃料もバイオディーゼル燃料も昨年は1リットルあたり200円くらいで取引されていました。
しかし、みなさまもご存知のとおり、ロシアのウクライナ侵略に伴う原油価格の高騰により、バイオジェット燃料もバイオディーゼル燃料も世界的に高騰しています。先月の平均的な取引の価格では1リットルあたり300円で売買されており、そのようなマーケットが、欧米ではすでに成立しつつあるという状況です。
バイオ燃料の製造・供給の体制
ここに追いつけ追い越せということで、我々は産業廃棄油とユーグレナなど、さまざまな原料リソースを活用して、バイオ燃料を安定的に作る技術開発に2019年から取り組んできました。
横浜市鶴見区に実証プラントを構え、毎日原料を投入し、バイオ燃料を作るプロセスについてトライアルを繰り返し、技術の習熟度を高めています。日本では他社に先駆けて、我々が毎日ノウハウを吸収しており、先行者のメリットを積み重ねているところです。
実証 - 「空」における供給先
我々の工場から出てくるバイオ燃料で、昨年ようやく飛行機を飛ばすことができましたので、その動画をご覧ください。
(こちらに掲載している動画の17:10〜19:20で視聴いただけます)
ご覧いただいたように、日本のメーカー同士の力を合わせ、ホンダジェットを鹿児島空港から羽田空港までフライトさせました。
また、それに先駆けて2021年6月4日に、我々は国土交通省の飛行検査機である、通称ドクターホワイトによって、日本で初めてバイオ燃料でのフライトに成功しています。
本日聞いてくださっている方で乗り物に詳しい方もいるかもしれませんが、新幹線の検査を行っているのはドクターイエローと呼ばれている黄色の新幹線です。同じように、飛行場の安全性を確認するための国土交通省の飛行検査機として、ドクターホワイトと呼ばれている真っ白な飛行機のサイテーションがあります。
当時の国土交通省の赤羽一嘉大臣にご視察・ご臨席いただいて、国の保有するドクターホワイトに初めてバイオジェット燃料としてご活用いただき、羽田空港から名古屋市の中部国際空港まで飛行しました。同月に鹿児島から羽田までホンダジェットが飛んだということです。
実証 - 「陸」「海」における供給先
タイミングはいくつか前後しますが、これを皮切りにして、陸・海・空のあらゆるところで我々のバイオ燃料「サステオ」を使っていただいています。「サステオ」は、もちろんサステナブル・オイルから名づけました。我々の商品は「サステオジェット燃料」だけでなく「サステオディーゼル燃料」もあり、こちらも陸・海・空のあらゆるところで、みなさまにお使いいただいています。
中でも、かなり早くに導入いただいたのは、商船三井グループのバージ船です。大きなタンカーが港に停泊する時にそのタンカーを押してくれる船があるのですが、そのような小型のところからテストしていただきました。
また、東京都内のガソリンスタンドにおいてもテスト販売を実施しました。2021年4月にライフ白銅のガソリンスタンドにて、一般のお客さまがお乗りの車、バス、トラックに供給し、改造することなくそのままお使いいただける品質の商品であることをアピールしました。
ガソリンスタンドで販売しているということで、「サステオ」は普通のバイオ燃料ではなく、JIS規格上は軽油となっています。揮発油の品質を確保する法律がありますが、この法律上でも石油から作った軽油と、我々が作った「サステオディーゼル燃料」は同等のものということになります。
法律上や規格上、また、エンジンテスト、排ガス試験においても軽油と同等と認められていますので、市販してみなさまにお使いいただいても何も問題がないということを実証しました。それでも、「品質に問題があるのではないか?」「『サステオ』を満タンにして車が故障したらどうするのか?」といったご意見がありますし、心配に思う方は大勢いらっしゃいます。
最もシビアに判断されるのは、車のレースです。昨年の岡山国際サーキットにおける「ENEOS スーパー耐久シリーズ2021」で、マツダが「Mazda2」という車で参戦された際に、「サステオ」を100パーセント使って、3時間半という長時間のレースを無事故で走り抜きました。
石油を1滴も使わず、我々がご用意した「サステオ」のみで、レースを見事走り抜いているわけです。これをもって、品質上はまったく問題がないものだとご理解いただけるのではないかと思います。
ご視聴の方の中にも、お車好きの方がいらっしゃることと思います。今週は「ENEOS スーパー耐久シリーズ2022」が富士スピードウェイで開催されますが、これは日本で一番シビアな24時間の耐久レースです。このレースでも「サステオ」100パーセントで、石油を使わずに「Mazda2」ががんばって走りますので、ご興味ご関心のある方はぜひ応援していただければと思います。
実証 - 2022年における供給先
他にも、陸・海・空のあらゆるところで「サステオ」を安全に、安心して活用いただいています。2022年3月には、フジドリームエアラインズ(FDA)において、77人のお客さまおよび関係者さまに搭乗いただき、静岡富士山空港から県営名古屋空港までのチャーターフライトを実現しました。ここでも、法律上および品質上で問題ない「サステオ」のクオリティーについてご理解いただけると思います。
商業化 - 進捗と計画
極めてハイクオリティーで、みなさまに使っていただくことに問題はないのですが、商用化には1つの課題があります。それは、まったく量が足りないということです。
テストを通じて、お客さまは品質に問題がないことを知ってくださっていますし、飛行機や船、車、バス、トラックにも問題なく使えるということで、「もっと広く使いたい」というお話になりますが、量がないのです。我々の工場では、1年間の生産量のキャパシティーが125キロリットルと決まっており、これでは、みなさまに毎日お使いいただける量に至りません。
そのため、2025年には生産キャパシティーを2,000倍に拡張します。つまり25万キロリットル以上作るということですが、それだけあれば膨大な量になりますので、お試しで使っていただいた潜在的なお客さまにも、しっかりとした量を供給できるようになります。
商業化 - 収益ポテンシャル
25万キロリットルという生産量が、バイオ燃料の領域でどのくらいの規模感のビジネスなのかということが、みなさまに一番お伝えしたい点です。先ほどお話ししたとおり、現在バイオ燃料は、1リットルあたり300円で取引されています。2025年の段階で1リットルいくらかというのは、正直に言いますと私もわかりません。
昨年の平均価格が200円、先月の取引価格が300円ですので、世の中の情勢を見ても、このバイオ燃料に対する需要は高まる一方です。大幅に安くなることは想定しづらいのですが、保守的に見積もっても1リットルあたり200円ということで、需要は相当あるだろうと考えています。
25万キロリットルの生産を目指す中で、できるだけ高く販売できるように努力しますが、仮にサプライの平均価格である200円で販売したとしても、売上高は500億円、EBITDAマージンについても20パーセントとなります。
この業界ではフィンランドのネステ社が先行しており、ナンバーワンのプレイヤーです。彼らはEBITDAのマージン比率が40パーセントと、高い利益率を確保しています。これはひとえに、SAFとバイオ燃料に対する需要家サイドのデマンドが非常に充実しているためです。
我々としては、単価200円でEBITDAマージンが20パーセントと、両方とも堅実に見積もっても、年間の会社に対するキャッシュフローの貢献で100億円規模になるとして、このビジネスを2025年には実現すべく、エネルギーカンパニーとして一歩一歩着実に進めています。このような展望のもと、これを実現することが私の使命ですので、ぜひ進捗にご期待いただきたいと思っています。
ビジネスモデル - 3つのチャネル展開
我々の現在の大黒柱であるヘルスケア領域についてご説明します。売上の規模としては、昨年は344億円、今年は480億円を目指して進めています。売上の99パーセントは、今はヘルスケア領域から生まれています。
このヘルスケア領域については、3つのチャネルで展開しています。直接お客さまに商品をお届けするBtoCの中でも、ダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C)通販を主力に、あらゆるチャネルでお客さまに商品を提供することに取り組んでいます。
2021年度のトピック - キューサイが当社連結グループに仲間入り
昨年は、56年の歴史を持つ健康食品と化粧品の大手通販事業者であるキューサイが、当社連結グループに加わりました。キューサイには現在47万人の定期顧客がおり、昨年から一体となって、企業価値向上に邁進しているところです。
業績推移 - 売上高
直近の売上高ですが、昨年度で344億円を達成しました。みなさまには「キューサイと一緒になったら、売上が過去最高なのは当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、そうではないです。もちろんキューサイの寄与する部分は非常に大きいですが、一緒になったから売上が最高になったわけではありません。
現在、ユーグレナグループも再成長のステージに入ってきており、キューサイを除いたかたちで、2021年度に過去最高の売上高を達成しました。なお、通年12ヶ月でキューサイが寄与するのは、2022年度からとなっており、今までと比べると飛躍的な売上の成長になりますが、現在は480億円を目指して取り組んでいる最中です。
成長戦略 - 3つの柱
チャネルの数と同様に、成長戦略についても3つの柱があります。1つ目がマルチブランドの育成、2つ目がデジタライゼーション、3つ目がマルチチャネル展開です。
成長戦略 - 1.ブランド群の拡大と強化
マルチブランドについてです。現在はお客さまのニーズに関して、多様化と変化のスピードが非常に速いです。そのため、我々としては常に新しいブランドや商品ラインナップの開発に、いろいろなラインで取り組んでいます。変化の激しいお客さまのニーズをつかみ続けるために、新しいブランドや商品を常に投入し続けるということです。
我々の主力ブランドである「からだにユーグレナ」も、中核として着実に育てていきますし、これまでの成功例とは別に、まったく新しいラインナップの商品群の開発も行うということです。常に両方取り組むことによって、着実な成長を続けることを実現していきます。
成長戦略 - 2.デジタル化
ユーグレナグループの中でも、キューサイを除いたデジタライゼーションは、同じ業界の中では日本最速のスピードだったと思います。DXがこの3年間で順調に進み、結果として成功しました。
今、ちょうど50パーセントのお客さまが、ピュアにオンラインだけの接点を持っています。残りの50パーセントがオフライン接点で、新聞広告やテレビCMをご覧いただいたお客さまから、コールセンターやお葉書でご注文をいただいています。
これは非常によいバランスだと思っています。100パーセントデジタルになると取り残されてしまったり、かえって不便になったりするお客さまも一定層います。これからは、広告に対する反応や効率、収益率などをしっかりと見定めながら、よりよい方法に注力して、オンライン、オフライン構成を活かして全体のバランスを取りつつ、しっかりと成長させていきたいと考えています。
他方、キューサイについては、我々と一緒になってまだ間もないということで、これからDX、デジタライゼーションにより効率が改善する余地が非常に大きいと思っています。ユーグレナグループと同じ水準、つまりオンライン、オフラインの構成が半々というところまで一気にDXを加速させ、バランスが取れるところが見えてきた段階で、効率のよいほうにアクセルを踏めるような柔軟な方策の実現に、今後数年は注力していきたいと思っています。
成長戦略 - 3.マルチチャネル展開
マルチチャネル化についてです。先ほどオンラインとオフラインのバランスについてお伝えしましたが、現在はお客さまニーズの変化に対応することが、本当に重要な時期に来ています。
ある月はスーパーやドラッグストアなど店舗販売の調子がよくても、その翌月にまったく同じことが起こるかと言いますとそうではなく、インターネット通販での販売数のほうが多いこともあります。このように月単位で、新規もしくは既存のお客さまの買い回りを見定めたり、他の商品を買っていただけるよう働きかけたりすることについて、スピーディーにPDCAを回していかなければなりません。我々もお客さまの変化に対応して、付いていかなければならない時代に来ています。
販売チャネルについても、オンライン一辺倒ではなく、いろいろなかたちでお客さまに柔軟にお求めいただけるように、とにかくスピーディーに変化に対応できるように努めます。お客さまに一番便利なかたちで商品やサービスをお届けできるように、マルチチャネル化も同時に進めていきたいと思っています。
ソーシャルビジネス - バングラデシュにおける取組みと外部からの評価
ESG対応と、新規のサステナビリティの領域について簡単にご紹介します。我々はサステナビリティファーストの会社です。ESGのソーシャルの取り組みについては、冒頭にお話ししたとおり、私にとって原点となるバングラデシュでの事業がきっかけとなっています。みなさまから商品を1個購入いただくたびに、代金の一部を寄付としてお預かりし、それを原資として、毎日1万人の小学生に、累計1,300万食のミドリムシの給食を届けることを中核で行っています。
この事業を日本国政府、バングラデシュ国政府、国際連合の関係機関であるWFP、UNDP、FAO、IFADなどさまざまな関連機関から強力にサポートいただいています。昨年は、第5回ジャパンSDGsアワードのSDGs推進本部長賞、これは内閣総理大臣賞にあたるのですが、ソーシャルの領域において、先進的なことに取り組むスタートアップとして受賞することができました。
サステナビリティに関する取り組み
ESGの取り組みについては、TCFDへの対応、サステナビリティに関する情報発信ともに、グループ一体となって進めています。サステナビリティに関する我々の情報開示は、トランスパレンシー要素を高める取り組みの一環として、ホームページ上で発信する情報の充実を図っています。同時に、TCFDのフレームワークに基づいたIRの情報開示についても、今後も積極的に進めていきたいと思っています。
また、最高未来責任者であるChief Future Officer(CFO)を、18歳以下の方限定で全国から公募しています。今は3代目のCFOの選考を行っており、結果は来月発表する予定です。
業績 - 売上高
業績の進捗のご報告です。我々は昨年に決算期を変更して、フィナンシャルイヤーとカレンダーイヤーが一致し、12月期決算になりました。3月に第1四半期が終わり、売上高は108億円で、前年同期比2.8倍と順調に進捗しています。
業績 - 調整後EBITDAと経常利益
我々の経営指標として、最も重視しているのが調整後EBITDAです。EBITDAについては、通期の予想でも第1四半期でもしっかり黒字を達成しています。
そして、ご質問が一番多いのが経常損益で、我々としても丁寧にご説明しなければいけないと思っています。昨年のP/Lをご覧いただくと、「64億円の経常損失が出ていて大丈夫なのか?」とお問い合わせいただくのですが、ご安心ください。
私どもの会社からキャッシュが流出しているわけではありません。我々が一番重視しているのは、キャッシュがどれくらい出入りしているかです。そのため、我が社の在り様をご理解いただける数値として、売上高と調整後EBITDAを毎回発表しています。
この経常損失はキューサイのM&Aに伴う一過性のもので、会計基準に従って記載すると64億円の赤字となりましたが、当社からの現金での流出を伴う赤字ではありませんので、調整後EBITDAでは15億円の黒字です。
そのため、ここについては丁寧にご説明して、投資家のみなさま方にご理解・ご納得いただけるよう努力していかなければならないと思っています。あらためて、キャッシュが64億円流出しているわけではありませんので、どうかご安心いただければと思います。
中長期的な成長イメージ
中長期的な成長イメージについてです。我々は今、ヘルスケア領域で99パーセントの売上が立っていますから、ヘルスケアの会社だと言えます。しかし、2025年には今の工場の2,000倍となる25万キロリットル、500億円規模のバイオ燃料を製造するビジネスにチャレンジします。
今期の売上高は約500億円で、2025年のバイオ燃料事業商業化により売上高500億円を目指していますので、この2つの柱を両輪として、2026年以降もますます成長を加速させていきます。また、新規のサステナビリティ領域の開発も進めて、3本目・4本目の柱を立てることで、投資家や12万人を超える個人株主の方に引き続きサポートしていただければと思います。
2025年以降に大いに喜んでいただき、よい意味で驚かれるような業績をお見せできるように、私が先頭に立って取り組んでいきたいと思っています。引き続き、関心を寄せていただければと思います。
本日は初めて聞いてくださっている投資家の方も大勢いましたので、最初に我々の会社の由来と創業からの経緯について簡単にご紹介しました。さらに、投資家のみなさまの一番の関心事であるSAF、バイオ燃料を中心としたエネルギー領域、また当社の安定的なキャッシュフローを創出している大黒柱であるヘルスケア領域についてご説明しました。
以上となります。どうもありがとうございました。
質疑応答:ミドリムシ燃料の競争優位性について
司会者:「ミドリムシ燃料は、他の再生燃料と比べてどのような競争力がありますか?」というご質問をいただいています。
出雲:この質問は大変多いのですが、今みなさまの周りにバイオ燃料はあるでしょうか? 各地域ではバイオディーゼル燃料を使っていろいろな車などを動かしていると思うのですが、それらはすべてB5、つまり5パーセントのバイオディーゼル燃料を使っているはずです。残りの95パーセントが何かというと、石油になります。日本のバイオ燃料は、5パーセント以上を混ぜると車が故障したり、排ガスの規制値内に入らなかったりという問題があり、なかなか普及が進んできませんでした。
しかし、我々は、今回、一番難しいと言われているSAF、つまりバイオジェット燃料の開発に成功しました。また「サステオ」はJIS規格上も揮発油の品確法上も軽油と同等であると認められており、5パーセントという規制を超えて100パーセント混ぜても問題がない、革新的なバイオディーゼル燃料になります。
今週末も、石油を1滴も使わないB100車の24時間耐久レースが富士で開催されます。がんばって走りますので、今までのバイオ燃料とは質的にも全く異なる新しい第2世代のバイオ燃料だとアピールしたいと思います。
質疑応答:バイオ燃料の商業化の進捗について
司会者:「バイオ燃料の商業化の進捗についてです。航空会社やエネルギー会社など規模の大きい会社がSAFの自家調達に取り組む中、開発・製造・普及において資金力の差でスピード負けしてしまわないのでしょうか?」というご質問をいただいています。
出雲:資金力の競争で決まる場合には、我々のようなスタートアップやベンチャー企業はなかなか厳しいことになると思います。日本のバイオ燃料についてはいろいろな企業が計画を発表していますが、我々は横浜の鶴見でコツコツとバイオ燃料を作り続けてきました。製造の際には毎回いろいろなことが起きますが、この経験やノウハウを活かして工場を2,000倍に大きくしようと考えているわけです。
何を言いたいかというと、我々よりお金を持っている会社はたくさんあると思いますが、お金があればできる事業ではないということです。我々は、通年で125キロリットルという非常に小規模とはいえ、法律的にも規制値をクリアするバイオ燃料を2年以上安定的に作り続けています。こういった、いろいろなアジャストメント・ノウハウを使って規模を大きくすることができます。
資金力を元手に大きい工場を作って、その工場がなかなか運転できなかったら大変なリスクになりますので、さすがにそのようなことはされないと思いますが、技術のノウハウの蓄積という観点で、我々のほうが先に進んでいるのは間違いないと自信を持っています。
また、我々の目標は25万キロリットルだとお伝えしていますが、日本全体、ましてやアジア全体・世界全体で見たら供給量が本当に少ないです。航空会社や運送会社、トラック会社、バス会社などの需要は世界中・日本中に存在しています。一方で、ネステや我々のように工場を建てて、SAF、つまりバイオ燃料を供給するにはすごく時間がかかりますし、供給量をいきなり10倍、100倍に増やすのはそんなに簡単ではありません。
なので、他社が競争相手になり、ユーグレナが先行者の利潤を確保できないのではないかと言われることがありますが、今は「とにかく早く物を持って来てほしい」という需要が高い産業構造になっているため、サプライヤー側で喧嘩している場合ではないのです。我々の場合はSAFですが、水素もアンモニアも再生可能エネルギーも、それぞれのサプライヤーが全力で供給して、最終的に2050年のカーボンニュートラルが達成できるかどうかという瀬戸際にあると思います。
資金力のあるプレイヤーと同じフィールドで戦っているように見えるかもしれませんが、我々はノウハウの蓄積の部分で先行しています。また、膨大な需要がある産業ですので、我々の供給する製品が売れなくなるとか、資金量の差で劣後するということは考えにくいと思っています。
質疑応答:ユーグレナ食品のバリエーションについて
司会者:「ユーグレナ食品のバリエーションを増やす予定はありますか? トロピカルジュースが想像よりずっとおいしかったため、大容量のものなどが発売されれば生活に取り入れてみたいです」というご質問をいただいています。
出雲:お客さまのニーズの変化に対応して、商品ラインナップを拡充していくのが重要だと再三お伝えしました。そのため、このようなご要望はどんどんお寄せいただければと思っています。マーケティングの担当者はみなさまからのお声をいただきたいと思っていますので、今のご質問にあった大容量の商品についても真剣に検討したいと思います。
すでに気に入って飲んでくださったり、ご使用になられたりしているお客さまからは、大容量のものや、エコパックなどリサイクルしやすいパッケージにしてほしいというお声が多いです。一方で、新規のトライアルのお客さまの中には「1回試したが、あんまりおいしくないから2回目はいいや」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
中身や栄養素についてはお客さまにだいぶ浸透してきました。認知度も40パーセントまで高まっています。しかし、おいしくなければ飲み続けていただくことはできません。そのため、テレビやYouTubeで大人気の「sio」のオーナーシェフである鳥羽シェフをコーポレートシェフに迎えました。ユーグレナ、ミドリムシ入りのあらゆる商品を、やみつきになるくらいおいしくするプロジェクトを急ピッチで進めています。
1回試してくださった方に「こんなにおいしいなら、続けない理由がない」と思ってもらえるような、やみつきになる、おいしい商品の開発に力を入れて取り組んでいきます。今日いただいたご意見も大切にしますが、既存の商品もどんどんアップデートしていきます。
今飲んでくださっている方が、ご友人やご家族に勧めたくなるような商品を今年どんどん投入していきたいと思っていますので、その節にはぜひ1度お試しいただきたいです。また、既存の商品を召し上がってくださっている多くのお客さまにも「鳥羽さんが味付けするとこんなにおいしく変わるんだ」と驚いてもらいたいと思います。
出雲氏からのご挨拶
出雲:本日はどうもありがとうございました。また、最後に大変よいご質問をいただき、ありがとうございます。
最近、私どもの商品は急激に変わってきています。鳥羽さんにコーポレートシェフになっていただき、リニューアルした商品はびっくりするくらいおいしくなっています。ですので、昔飲んで「あまりおいしくなかったじゃないか」という方にこそ、新商品をお試しいただきたいと思っています。そのため、最後まで聞いてくださり、アンケートにお答えいただいた方には、どの商品でも500円オフになるクーポンをご用意しています。
このあと少しだけお時間をいただきますが、アンケートにご回答いただき、我々のサイトで証券コードを入力すると、どの商品でも500円オフでお買い求めいただけます。ぜひこの機会にクーポンを活用して「こんなにおいしくなったんだ」というのを感じていただければと思います。どの商品も自信がありますので、騙されたと思ってぜひご活用ください。よろしくお願いします。