前回説明会(2020年12月5日実施)のおさらい −当社概要
富田真司氏(以下、富田):デクセリアルズの富田でございます。本日はご視聴いただき、誠にありがとうございます。前回は昨年12月に当社のご紹介をさせていただきました。今回が初めての方には、当社にご関心を持っていただけるように、そして前回ご参加の方にはその後の当社の動向について、ご説明させていただきたいと思います。
本日の説明の流れですが、まず始めに昨年12月にご説明した内容を簡単におさらいします。続いて、1月以降の動きを中心にご説明して、最後に株主還元についてご説明します。
それでは、さっそくスタートしていきます。前回は、当社がどういう会社であるかについて、普段より時間をとってご説明しました。その点を今回は少し簡潔にお話ししますので、ご興味のある方はぜひ前回の書き起こしや当社のホームページをご覧ください。
まずは当社の概要です。私どもデクセリアルズは、一言で申し上げると、ニッチな市場ながら独自の技術で世界シェアの高い電子材料や光学材料を手掛けるメーカーです。私たちは自社のことを「機能性材料」メーカーと呼んでいます。
スライドの左側をご覧ください。当社は年間の売上高で約600億円、資本金は約160億円で、東証1部に上場している時価総額約1,200億円の会社です。
スライドの右側をご覧ください。当社の経営理念は「Integrity(インテグリティ)」で、「誠心誠意・真摯であれ」です。お客さまから信頼されるパートナーとして、何ごとにも誠心誠意、真摯に向き合うというもので、私たちの心のよりどころのような考えとして、社員一人ひとりが大切にしているものです。
また、企業ビジョンの「Value Matters」には、機能性材料メーカーとして、常に新たな価値、さらにお客さまの期待を超えるような価値や製品を提供する会社でありたいという思いが込められています。
そして「Dexerials(デクセリアルズ)」という社名ですが、少しわかりにくい、聞き慣れない言葉です。この言葉の前半は「Dexterous(デクステラス)」で「巧みな」「機敏な」という意味の言葉で、後半は「Materials(マテリアルズ)」で「素材」「材料」を表している言葉で、この2つの英単語から作られた造語です。
以上をまとめますと、私たちはお客さまの課題やニーズに対して誠心誠意を尽くして考え、優れた技術開発力に基づいた解決策をスピーディーに提供し、お客さまの期待を超えるような製品、技術を生み出すことで、お客さまから頼られるような存在になりたいと考えています。
前回説明会(2020年12月5日実施)のおさらい −どんな会社?
富田:当社の設立は1962年です。もともとは、ソニーケミカルというソニーの化学材料を担当する子会社として設立されました。その後、2012年にソニーから独立して、社名を現在の「デクセリアルズ」に変えて事業をスタートしました。
「デクセリアルズ」という名前では9年目の会社にすぎませんが、実際には50年以上にもわたって、ユニークで特徴のある製品をいくつも生み出しながら成長を続けてきました。
スライドの中段にお示ししているのが、当社の主力製品となります。当社は、変化の激しい世の中でお客さまのニーズ・課題を、独自の技術で先取りして解決するような、世界シェアNo.1の製品を生み出すことにこだわって事業を展開しています。
ちなみに、スライドに挙げている主力3製品の売上を合計すると、全体の約6割を占めています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):高いシェアを持っている3製品ですが、こちらで売上高比率が6割くらいあるということですね。3製品のシェアがどのくらいあるのかを教えていただきたいと思います。
富田:左の「異方性導電膜」ですが、我々は「ACF」と言っており、ディスプレイ向けの非常にニッチなところで使われている製品ですが業界ではデファクト・スタンダードになっている製品です。それぞれの世界シェアですが、外部の調査機関の2019年実績金額ベースでみますと、「中小型ディスプレイ向けACF」で64.6パーセント、また、中央の「反射防止フィルム」では、表面処理フィルム(ドライコート)において93.2パーセントという数字が公表されています。
八木ひとみ(以下、八木):すごいですね。
富田:後ほどご説明しますが、実は「反射防止フィルム」はある意味では世の中の「オンリーワン製品」で、この作り方でこれだけの機能を発揮するようなものはあまりないという製品です。
そして、右側の「光学弾性樹脂」は、ディスプレイの貼り合わせで使用される光学用透明接着剤において60.5パーセントという数字が先ほどの外部調査機関より公表されております。
坂本:これだけ高いシェアを占めているのは、素材が素晴らしいということもあるのですが、特許などでけっこう囲っている部分もあるのでしょうか?
富田:企業秘密のためあまり細かくは申し上げられませんが、重要な技術、クリティカルな部分についてはしっかり特許を持って、簡単には真似されないように備えています。
さらに、その技術だけではなく、その製品を作る方法、つまり製造の部分でも、我々が今まで長い時間をかけて積み上げてきたノウハウがあります。外の方々にはお見せしていませんので、他社さまが同じようなものを作るのは簡単ではないと思います。
坂本:仮に素材があったとしても、そのあたりはブラックボックスになっているわけですね。
富田:そうですね。製造方法にも独自のノウハウがあります。
八木:価格的にも優位ということなのですか?
富田:競合他社が少ない中で高いシェアを持っているという点では、価格競争にさらされにくいという特徴もあると思います。
坂本:御社が手掛けているディスプレイの市場規模はどんどん増えていますが、基本的には一定以上増えているというイメージでしょうか?
富田:ディスプレイそのものの数が少しずつ増えてきている印象があります。後ほどご説明しますが、例えば車の中で、針などのアナログメーターが今は電子ディスプレイになっていますよね。その流れはこれから続いていくと考えています。
さらに、バックミラーやサイドミラーが電子化されています。運転中にカメラで撮った外の映像をディスプレイで見るため、車の中でのディスプレイの枚数も増えてきています。徐々にではありますが、車1台当たりのディスプレイの枚数そのものも今後増えていくだろうと思っています。
八木:9割のシェアを持っている「反射防止フィルム」は、どういうところに使われるのですか?
富田:まさに、今私が申し上げた車のメータークラスターパネルや、カーナビを含むセンターインフォメーションディスプレイという、いろいろな情報を表示するディスプレイの最表面に付けて、朝日や西日が入っても眩しくなく、しっかりと見えるようにする用途で使われています。
こうした製品が、みなさまの身の回りで、どのようなところに使われているかを簡単にご説明します。スライドの下部にありますが、主にスマートフォン、タブレット、ノートPCといったコンシューマーIT製品を中心に、自動車のメーターやカーナビといったディスプレイまわり、さらにはコードレスの電動工具、掃除機、園芸工具、医療現場ではアイシールドなど、多岐にわたって、みなさまの暮らしや産業を陰で支えています。
本日は時間も限られているため、これら製品のうち「異方性導電膜(ACF)」と「反射防止フィルム」について簡単にご説明します。
異方性導電膜(ACF)
富田:まずは「異方性導電膜」です。我々は「ACF」と呼んでいますが、こちらについてご説明します。
この製品は、スマートフォン、パソコン、薄型テレビといったディスプレイに画像を表示させる「駆動IC」と呼ばれているICチップと基盤を接着するフィルムとして、1977年に業界に先駆けて当社が製品化しました。
「ACF」の特徴は、スライドにも記載していますが、1つの材料で「接着、導通(電気を通す)、絶縁(電気を通さない)」という3つの機能を持っています。
一度で多数の電極を接続して電気を通すといったことから、従来の電子部品実装に使われてきた「はんだ工法」に比べて、より細かい箇所で電気の接続ができます。また、はんだの場合は当然ながら高い温度ではんだを1回溶かすわけですが、高温により基板やチップに悪影響が出てくることもあり得るため、できるだけ低温で接着することが求められています。この「低温」にも対応しており、お客さまにとっても大きなメリットがあると考えています。
その他にも、スライドの左にあるように、スマートフォンのカメラはモジュール化されているのですが、モジュールを基板に接続するための接着材料として使われています。
八木:すごく小さいわけですね。
富田:そうですね、かなり小さいです。また、非接触ICカードのチップの実装にも「ACF」が使われています。
世界のディスプレイのほぼ100パーセントに「ACF」という材料が使われており、いわゆる世界のデファクト・スタンダードの製品になっています。
八木:中小型ディスプレイでは、6割強のシェアということでしたね。
富田:おっしゃるとおりです。特にここ数年は、我々が差異化技術製品として注力している、粒子を整列させたタイプの「粒子整列型ACF」が拡大しています。
反射防止フィルム(ARフィルム)
富田:続いて「反射防止フィルム」についてご説明します。この製品は、ディスプレイの最表面に貼るフィルムで、外光の反射を抑え、映り込みを防止する製品として2002年に販売を開始しました。
同じような目的の「反射防止フィルム」はいろいろあり、昔から相当出ています。一般的な製品は反射防止機能をもつ溶剤をフィルムに塗るといったものですが、当社の製品はそうした一般的な反射防止フィルムに対して、約5倍の反射防止機能を実現しています。
坂本:反射すると見にくいため、本当に助かります。安全性もありますしね。
八木:車は命にも関わるため、やはりクリアなほうがよいですよね。
坂本:このようなものがあるから「メーターなども電子化しましょう」となるわけですよね。
富田:以前はメーターなどはダッシュボードの庇(ひさし)の奥に入っていたわけですが、最近ではデザイン上、前に出すようになってきました。
坂本:もう前に出せるのですか?
富田:ですので、このような機能が求められるわけです。
坂本:デザインも自由度が上がり、安全性も高まるわけですね。
富田:おっしゃるとおりです。
坂本:確かに、ディスプレイの枚数は増えていますよね。僕も最近新車を試乗したのですが「こんなに増えているのか」と思いました。
富田:そうした車が増えてきて、当社の「反射防止フィルム」に対しても引き合いが増えてきています。
「反射防止フィルム」が持つ高い機能性は、半導体を製造するスパッタリングという技術を使っており、この製造方法で量産できている会社は、世界でもおそらく当社だけではないかと思っています。これが、先ほど私が申し上げた「オンリーワン」の根拠になります。
また、「耐擦傷性」と言ったりもしますが、摩擦に強いわけです。さらに、汚れのあとがつかない「防汚性」といった性能も追加しており、ノートPCの大手メーカーさまからも採用いただき、この数年で事業として大きく成長を遂げています。
そのノートPCに加えて、さきほどお話ししたとおり、今まさに車載ディスプレイ向けが順調に拡大しており、今後も安定した成長が続くと考えています。
前回説明会(2020年12月5日実施)のおさらい −中期経営計画2023
富田:少し話題が変わりますが、当社の中期経営計画とその取り組みについてご説明します。まず前段として、中期経営計画を立てるにあたって我々が考えた当社の成長機会ですが、高齢化社会、都市化の進行によって起きている交通インフラ、交通事故の問題や、医療の高度化ニーズの高まりがあります。
これに対する解決の鍵の1つとして考えているのが、自動運転技術、再生医療、IT、AI化といった技術革新です。もっと言えば、あらゆるものがインターネットにつながり、社会全体がIoT化していくことで、これら社会課題を少しずつ解決していけるのではないかと考えています。
私たちがこれまで培ってきたエレクトロニクス向けの製品や技術をこうしたところで活かして、社会課題の解決に貢献できるようなビジネス展開ができるのではないかと考えています。
一方のリスクとしては、我々が想定もしないようなことが起こり、外部環境がもっと悪くなるのではないかということも想定していました。
この中期経営計画を公表したのが2019年でした。その後、米中貿易摩擦、新型コロナウイルスなど、想定しなかったものが次々と発生して大変なことになっているのですが、それでも私たちが大丈夫なように、自分たちでできることはしっかりコントロールできるようにしていきたいと考えています。
今回の中期経営計画でも、事業基盤をしっかり強化して、外部環境が変わってもちょっとやそっとでは揺るがない企業体質を目指して、重点施策を作って織り込んでいます。これらを踏まえた今回の中期経営計画の基本方針として2点あげさせていただきます。
1点目が、新規領域での事業成長の加速です。この新規領域で、特に自動車の領域を新たな成長の柱として重点的にリソースを集中し、新規領域全体の成長を牽引したいと考えています。
2点目が、既存領域における事業の質的転換です。既存領域は、いわゆる今までのITモバイル向けの事業が中心となりますが、そこでも当社が他社に比べて差異化できる独自の製品、技術を徹底的に強化します。その中で競争力、生産性を向上させて業績拡大を目指していきます。
前回説明会(2020年12月5日実施)のおさらい −中期経営計画2023
富田:こちらが、今ご説明した前提を踏まえて作った中期経営計画2023「進化への挑戦」の全体像になります。
2019年度から2023年度までの5年計画となっており、2020年度の今期は2年目にあたります。今ご説明した基本方針に沿って施策を展開し、最終年度の2023年度、2024年3月期には売上高800億円、営業利益100億円、ROE10パーセントを達成する目標を掲げていました。
駆け足となりましたが、ここまでが前回のおさらいとなります。
FY20 主要最終製品の需要動向
富田:前回の説明会後のお話として、1月以降の動きと今期の業績の着地点、来期業績の目線についてご説明します。
まずはこちらのスライドで、当社の製品が使われている主要な最終製品の需要動向について、市場全体と当社製品の動向をご説明します。
スライド左上のスマートフォンについてです。市場全体は一般的には鈍化傾向と言われていますが、一方で5Gのスマホは堅調に増加しています。そのような中、当社も5Gを中心としたハイエンドのスマートフォン向けに製品の採用が進んでおり、好調に推移しています。
右上のタブレットPCですが、こちらはここ数年、マーケットは成熟市場とも呼ばれていました。しかし、COVID-19を起因として、世の中の行動様式、人々の生活様式が大きく変わり、在宅でインターネットをつなぎ勉強や仕事をする機会が増えました。これによって需要全体も持ち上がり、それに伴って当社製品の売上も好調に推移しています。
左下のノートPCですが、マーケットとしては、そもそも安定した需要がこれまで続いていました。やはり、COVID-19で使われ方がガラッと変わり、使う人も増え、使う頻度も増えました。このようなところから、当社製品も増加しています。
最後に、右下の自動車になります。ここもCOVID-19の影響で今年度前半は生産も含めて、全体ベースでもさすがに大きく減速していましたが、下期からは急回復と申し上げてもよいペースで回復が見られています。
当社の製品においても、市場減速の影響を一定程度は受けていますが、先ほどお話しした「反射防止フィルム」などは着実に増加して、トータルで見ても当社の自動車向けの売上は、今期はほぼ前年並みを見込んでいます。
差異化技術製品が業績をけん引
富田:当社の差異化技術製品についてです。我々が今、イチオシで注力している差異化技術製品の、為替変動による影響を除いた過去3年間の売上高と営業利益をお示ししたグラフです。
先ほどご説明したとおり、世界ではコロナ禍で大きな変化が起きていますが、私たちは中期経営計画の下、差異化技術製品の強化に一生懸命努めてきました。
その結果として、製品の競争力アップによる売上拡大や生産性改善による利益改善が進み、記載している4製品の営業利益は、2年前に比べて2倍を超えるところまで成長してきています。
FY20 連結業績見通し
富田:こうした取り組みや最終製品の需要好調から、今期の業績見通しは前回の説明会の時点から再び上方修正して、営業利益は上場来最高益というレベルを見込んでいます。これは2月に公表しました。
株価と営業利益の推移
富田:こちらのスライドでは、緑色の線で当社が上場した2015年7月からの株価をお示ししています。棒グラフは毎期の営業利益ですが、ご覧いただきたいのは右側のオレンジ色のところです。
この中期経営計画が始まってからの動きですが、営業利益も順調に戻ってきており、それに伴って株価も戻ってきています。
八木:すごいですね。
富田:2月に今期業績の上方修正を発表したあとも、株価は順調に推移しており、上場来高値を超えるような評価もいただいています。
中期経営計画2023 営業利益達成状況
中期経営計画の達成状況について、ご説明します。
先ほどお示しした営業利益の目標額に対しての進捗となりますが、2019年度、つまり2020年3月期は41億円の計画が46億円、2020年度、2021年3月期は62億円の計画が100億円と、当初の計画を上回るペースで進んでいます。
特に今期、2020年度では、最終年度の2023年度の営業利益100億円を目指します。ある意味、3年くらい前倒しで達成する見込みです。ここまでくると、普段やり取りをさせていただいている機関投資家の方々からは「今期は強すぎですね」「今期で業績はピークアウトじゃないですか?」というお話もいただきます。
坂本:そのような質問が来るのですか。
富田:「もうこれ以上ないでしょう」「よくよく考えてみると、在宅特需があるので、来期はこの反動で減益になるんじゃないですか?」といったご意見も、けっこういただいています。
中期経営計画2023の見直しについて
富田:しかし「そうではございません」というのが、本日、私がここに来た理由です。「今期が業績のピーク」「来期は一旦お休み」といったことはなく、私たちは、その次の成長を前倒しで進めてまいります。
この中計目標は今期で達成してしまうため、その先を見て「もっともっと成長するんだ」という考えを持っており、中期経営計画の残り3年間について、現在見直しを進めています。その詳細については、今年5月に公表しますので、それまでお待ちいただきたいと考えています。
FY21以降の業績について
富田:本日は、2021年度、つまりこの4月から始まる2022年3月期の業績を含めた方向性について、可能な範囲でご説明します。
まず現状認識ですが、今期はいわゆるパンデミックがもたらした人々の行動変容によって、社会全体のデジタル化が加速したと言われています。結果として、5GのスマホやノートPCといった最終製品の利用機会が広がり、その利用者も増えたことで、当社の製品の需要も増えていると考えています。
もともと、2019年4月に公表した中期経営計画では、コンシューマーIT製品の需要動向はやや厳しく見ていました。しかし、世の中の様相がガラッと変わり、デジタル化の加速を起点として、それらを支える当社の製品はシェアのアップもあって順調に拡大しています。
2021年度以降も、人々の行動変容はニューノーマルとして継続し、コロナ前に戻ることはないと思っています。
さらに、現在「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ということも言われています。このようなものも加わり、この変革はむしろ加速していくのではないかと考えています。
それを踏まえての、5月に公表予定の見直し後の中期経営計画ですが、重要なポイントは、これまで取り組んできた私たちの施策の刈り取りが始まるということです。
例えば、2020年度に上市した新製品の拡販です。さらには、車載ディスプレイ向けのグローバル案件はもともと私たちの中期経営計画の中でも織り込んで、みなさまにお伝えしていましたが、予定どおり2021年度の下期から始まります。
さらには、「反射防止フィルム」とは異なるディスプレイ向けの新たなフィルムもあります。これはまだ公表していないものですので、詳しい話は、またの機会にお伝えします。
八木:5月の段階ですね。
富田:はい。こちらの製品はすでに採用も決まっており、一部量産が始まっています。2021年度から業績に貢献しはじめて、少なからぬ売上・利益をもたらすところも見えてきています。
中期経営計画でこれまで行ってきたさまざまな収益改善策が、約10億円を超えるレベルの固定費削減効果として出てくることも予定しています。
最後になりますが、来期の特別損失の計上額についてとなります。今期、2020年度には32億円強の特別損失を計上すると公表していますが、来期はそれと比べると大幅に減る予定です。
八木:それで、スピーディーにROEの改善が見えるということですね。
富田:おっしゃるとおりです。このようなところの改善も見込めるだろうと思います。
八木:今期リリースした商品拡販との記載がありますが、どういった分野向けのものなのですか?
富田:2020年度は立て続けていろいろな製品を出しており、例えば先ほどお話が出た「反射防止フィルム」では、引っかきに対する耐久性を、これまでの我々の製品の40倍以上に高めたものを新製品として出しています。
坂本:車載ものは触りますからね。
富田:まさに、そのとおりです。また、タッチパネル式のパソコンなども引っかいたりすることもありますよね。そのようなところでも、この製品のニーズは高いと考えています。
また、光学弾性樹脂の新製品として、今まではスリットで塗っていたのですが、プリンターでも使われているインクジェットを使ったことで、今まで対応できなかった複雑な形状のディスプレイにも適用できるようになりました。まさにディスプレイのデザインの自由度を高めるような製品を上市しました。
坂本:「ここがピークじゃない?」という意見を打ち消すようなご説明をいただきました。新製品の回収期に入っている部分も当然あり、かつ次の「弾」もあるわけですね。非常に楽しみなところだと思っています。
また、リフレッシュされる中期経営計画は、2023年度までの分が次の5月に出るということですね。中身は「お楽しみに」ということです。加えて、車載のグローバル案件とは数社が決まっているというかたちですか?
富田:お客さまとしては1社なのですが、採用される車の車種が多岐にわたっています。
坂本:最近、プラットフォーム化が進んでいますので、1社が決まれば「ドカン」という流れでしょうか?
富田:そのようなかたちです。
坂本:今までは、車種ごとにコンペをするようなかたちだったのが、そうした流れになるわけですね。
富田:ですので、数多くの需要を見込んでいます。特に再来期、2023年3月期から本格的に大きくなってくると思っています。来期の下期からスタートということで、フルに効いてくるのは2023年3月期です。
八木:楽しみですね。
坂本:確かに、車載は海外のほうがパネル化が早いですからね。外車を見ていると、やはり多いです。そのあたりも含めて、日本車のキャッチアップも期待して見ていきたいと思います。
株主還元
富田:株主還元についてです。当社は、企業価値の向上が株主のみなさまの共通の利益であると考えています。持続的な企業価値向上につながる事業投資を優先し、同時に株主還元をバランスよく実施していく方針です。
株主のみなさまへの還元は、のれん償却前の当期純利益に対して40パーセント程度を目処に、利益成長に応じて行う方針です。具体的な配当額については、財務の健全性、成長投資、配当の安定性などを総合的に勘案して、今期は年間で34円を予定しています。
経営目標として掲げるROEが10パーセントです。これを目指しながら、事業成長、ひいては事業価値の向上に努めていきます。
スライドの右側に、ご参考として3月19日時点での株価をもとにした指標を記載しています。のれん償却前のPERは18.9倍となっています。
坂本:国際会計基準ではのれんは気にしないということもあり、最近の機関投資家はそこを見ると思います。その中で「40パーセント」を掲げているのは、個人投資家としては注目するところですね。
富田:のれんの償却は非常にテクニカルなところで、わかりにくいところだと思うのですが、実際はキャッシュアウトがない費用で、会計上だけの費用のため、実態としては我々の稼ぐ力の中に含められるものだと考えて、足し戻した上でみなさまに還元を行うことを考えています。このベースで今年度のEPSを見ますと、100円近くに迫ってきています。
持続可能な成長を続ける企業へ
富田:まとめになります。当社は機能性材料メーカーとして、独自の技術や強みを生かして、またESGと呼ばれる環境、社会、ガバナンスにもしっかり取り組みながら、世界で起きている大きな変化によって生まれるような社会課題の解決に貢献することで、将来にわたって成長を続ける企業を目指してまいります。
もっとよく知る デクセリアルズ
以上がご説明になりますが、実は、もっともっとお伝えしたいことがあります。残念ながら時間の関係ですべてはお伝えできませんので、ぜひ当社のホームページに来ていただいて、もっともっといろいろな情報をご覧いただければと思っています。
本日お話しした内容を含めて、随時更新して、みなさまにはフレッシュな情報をどんどんお届けしてまいります。駆け足となりましたが、私からのご説明は以上になります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:充実したHPや自社メディアについて
坂本:最後にお話しされたところで、「個人投資家のみなさまへ」というページがリニューアルされたということですが、すごい情報量ですよね。
富田:ありがとうございます。
坂本:全部見たのですが、見るのが大変になるくらいです。僕はこのような仕事もしていますし、評論もしているのですが、そうした仕事の中で「この会社、何しているのかがわからない」ということがすごく多いです。特にBtoBの会社ではブラックボックスになっている部分も多いわけですが、そういう場合は「新卒採用のサイトを見ればわかる」と思っています。
しかし、デクセリアルズはそうではなく、「個人投資家のみなさまへ」というページを見れば情報が1から全部あり、ワンストップでわかると思っています。ぜひ、みなさまにも見てほしいです。今日も、3つの製品についてのお話もあったのですが、その用途などもかなり詳しく書いてあります。
また、御社のページには技術解説のポータルのようなもので、「TECH TIMES」というメディアもありますが、かなりおもしろいと思っています。御社のお話が書いてあるのですが、業界分析にもなると思います。
このメディアは化学者向けとして使われているのですか? それとも、お客さまが見るためのものとして作られているのですか? そのあたりも含めてご説明をお願いします。
富田:ご評価いただき、本当にありがとうございます。おっしゃったとおり、「TECH TIMES」は、もともとはマーケティングを目的として、これまで当社が培ってきた技術をお客さま向けにわかりやすく解説しているサイトです。
昨年4月のオープンから、毎月新たなコンテンツを掲載しており、ページビュー数も順調に増えてきています。
我々の営業サイドからすれば、コロナ禍ということで行動が制限されていますが、お客さまも同じで、お客さまもインターネットで情報収集を行う機会が増えてきています。そうしたこともあり、「TECH TIMES」を見て、ホームページ経由でいろいろな問い合わせをいただくことが増えてきました。1年前から見て、2割くらい増えてきています。
特に、この「TECH TIMES」を見たお客さまは、今まで我々がリーチできなかったような新しいお客さまで、そうしたお客さまと取引がスタートするきっかけにもなっています。
八木:新たな営業ツールになっているということですね。
坂本:本当におもしろいので、ぜひ見てほしいです。僕は文系なのですべてはわからないですが、化学のかなり入り組んだところもおもしろいですよね。
どのようなものが使われているのかがわかりますので、みなさまもぜひ、銘柄分析、業界分析にお使いいただくと、また魅力がわかるのではないかと思っています。
富田:マーケティングと言っても、「新しいお客さまに」ということで作っているため、最初から難しい話というよりは、できるだけわかりやすく書いています。
今おっしゃったように、投資家のみなさまにもぜひご覧いただいて、当社が持っている技術がどのようなものなのかを知っていただければと思います。
質疑応答:5Gの普及について
坂本:今後の成長についてです。今回は新型コロナウイルスによるニューノーマルの部分で業績がある程度伸びたということでした。
今後の業績について、車載関連もあるのですが、スマートフォンも5Gに切り替わるため、日本は特に遅れていて2年から3年は切り替わらないと思いながらも、この部分の御社の見通しと言いますか、どのあたりから加速してくるのかについて教えてください。
富田:なかなか難しいお話だと思いますが、ベースとなる基地局の整備は国内外で着々と進んでいるのは事実だと思います。さらに、多くのメーカーが5Gに対応したスマホも発売しています。
その意味で着実に普及していると思いますが、勢いをつけてガラッと変わっていくタイミングは、私見ではありますが、5Gという高速通信の良さを生かしたサービスやアプリケーションが登場して、火がつけば一気にシフトが進むのではと思っています。
八木:ソフト系のところからということですね。
富田:どんなによいものであっても、それを使いこなして「今までできなかったことができる」といった新しい価値が出てきて初めて、加速が進むのではないかと思います。
質疑応答:車載ディスプレイの今後の広がりについて
坂本:前回、そして今回のセミナーでも、車載ディスプレイの枚数が増えるお話がありましたが、おそらくここが業績のポイントになると思います。
新型車である程度の価格のもので、日本であれば300万円以上の車でディスプレイ化されていると思います。そこで、安い車や軽自動車などもディスプレイ化は進んでいくのでしょうか? その見通しをいただけると個人投資家もイメージが湧くと思いますので、教えてください。
富田:運転の安全性という観点で、位置情報であったり、センサーで制御するなど、安全に関するものがどんどん増えてきています。「反射防止フィルム」は、確かに、ハイエンドの車から入ってきたのは事実ですが、車の安全そのものを考えた時に、いずれはいわゆる一般的な車、ミッドエンドの車にも必ず広がると思っています。車の安全性を考えると、これはハイエンドだけのものではないと思います。
安全情報を表示するディスプレイそのものも、一般車、ミッドエンドの車にも増えてくるのではないかと考えていますが、もちろんその時には、コスト面も関係してくるため、当社としては今後を見据えてしっかり増産投資や生産性改善などを行います。そして価格競争力もつけて、将来のビッグチャンスをしっかり掴んでいきたいと思っています。
坂本:安い車も捨てずに、ある程度、今の技術で量産してコストを抑えることで「総取りしていこう」というイメージでしょうか?
富田:「総取り」は言い過ぎかも知れませんが、そういった気持ちです。
坂本:御社のシェアを考えると総取りになりそうです。ミッドエンド以下の車では、おそらくコストを落とした製品が出てくるというのが、これまでの液晶なども含めてそういった流れだったため、そのあたりのイメージをお伺いしたかったわけです。
富田:安全性という観点で、どこまでコストを犠牲にするのか、難しいバランスがあると思います。ただし我々は安全性を重視して製品を作っているため、そこは妥協しません。みなさまに安心して使ってもらえるものを出したいと思っています。
坂本:やはり、ベースの技術が生きますよね。
質疑応答:半導体不足の影響について
八木:会場からの質問にもあったのですが、最終製品は半導体に関連しているもの、半導体が入っているものが多いと思います。直近の半導体の生産が不足していることによる御社への影響はどれくらいありますか?
富田:おっしゃるとおり、巷では半導体が不足しています。最近では、アメリカの寒波で半導体工場に影響が出たというお話もあります。ここに関しては、今の時点では我々には影響は出てきていませんが、今後どのような影響が出てくるかは一生懸命注視して、リスクに備えています。
質疑応答:「反射防止フィルム」の用途について
坂本:個人投資家から事前に頂戴した質問です。「反射防止フィルム」について、車載ディスプレイに関するお話はいただいたのですが、そのほかにも使える用途があると思いますので、ご紹介いただければと思います。
富田:高い反射防止機能を生かして、例えば我々が狙っているのは、いわゆる公共のディスプレイで、デジタルサイネージなどでの用途も考えています。また、先ほどご説明したとおり、耐久性を40倍に高めた「反射防止フィルム」を上市しましたが、引っかきに強いところを生かして、自動車だけではなく、ノートPC等でもタッチパネルやペンで操作するところなどへの用途が広がるのではないかと思います。
八木:最近、ショッピングモールなどで「ピッピッ」と押したりするものを見かけますよね。あれはたくさんの方が何回も触ったりしますからね。
坂本:だから、耐久性が必要ですよね。子どもが「バンッ」と押したりもしますからね。
富田:例えば、お菓子を食べた手で触ったりすると油が付いたりしますが、あれはけっこうダメージがあります。そのようなところをしっかりガードするくらいの性能を兼ね備えています。
質疑応答:ESGに関する取り組みについて
坂本:機関投資家がよく聞く質問かもしれないのですが、最後にSDGsのお話をお伺いします。御社は素材の会社のため、環境についてもかなり考えていると思いますが、SDGsでもESGでもかまいませんので、御社独自のものについて教えてください。
富田:ESGと言われる領域に関して、我々も一生懸命取り組んでいます。本日は時間がなかったため説明できなかったのですが、我々の製品で世の中に貢献するという観点で、リチウムイオン電池向けの表面実装型ヒューズという製品があります。
みなさまもご存じかと思うのですが、省エネルギーや脱炭素ということで、そうした社会課題の解決に向けてリチウムイオン電池を使う製品が増えています。
一方で、この安全性をしっかり担保するために、足元では各国で法規制の強化が進んでいます。当社のヒューズはリチウムイオン電池の過電流や過充電を防止する、もしくはそれが起きた時に止めるといった機能があり、その製品への引き合いが非常に増えてきています。
八木:このページにある差異化技術製品の表面実装型ヒューズとは別のものということですか?
富田:いえ、まさにこれです。
坂本:確かに、グラフを見ると増えていますね。
富田:ヒューズは、これまでご説明した、樹脂やフィルムとはまったく違う製品で、いわゆる電子部品のようなもので、電池パックの回路に使われています。
リチウムイオン電池は、過電流や過充電で膨らんで熱くなることがありますが、そのままでは爆発したりします。そうならないようにヒューズが機能して、電池を止めるというものです。
このような製品が、いろいろなところで使われています。さきほど電動工具や園芸用品についてお話ししましたが、それらのコードレスタイプのものであったり、電動バイクやドローンなどにもリチウムイオン電池が使われています。
坂本:用途が広がっていますね。
富田:この製品によってリチウムイオン電池の安全性を高めて普及を後押しすることで、広い意味で社会課題の解決に貢献できるのではないかと考えています。
八木:「シェアはどれくらいか?」という質問が来ています。
富田:競合他社は多くはないのですが、製品によって少し変わってきます。ノートPC向けは長い期間にわたって手掛けているため競合他社がいますが、今、私が申し上げたコードレスの電動工具や園芸用品、掃除機といったところには、まだあまり競合他社も多くなく、非常に高いシェアを保っています。