エグゼクティブサマリー
佐渡島隆平氏(以下、佐渡島):セーフィー株式会社代表取締役社長CEOの佐渡島です。まずは全体の概要についてご説明します。
エグゼクティブサマリーです。第3四半期の売上高は36億8,000万円、売上総利益は18億4,000万円、調整後営業利益はマイナス5,000万円で、赤字幅が少なくなってきている状況です。
大きなトピックスとして、通期業績予想達成が射程圏内に入っており、新しい取り組みとしてソリューションの導入が拡大してきました。AIソリューションプラットフォームの構築として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金も出て、しっかりプラットフォームを構築していける環境が整ってきました。
第4四半期の業績見込みついては、通期での業績達成も見えてきていますし、さらに売上を拡大していくために広告宣伝費および販売促進費をしっかりと投下する予定です。黒字化路線は変わらないのですが、第4四半期のガイダンスとしては、一時的に損益が悪化すると、みなさまにお伝えしたいと思います。
ソリューション売上高推移及び2024年Q3実績
ソリューション売上高についてです。スライドの棒グラフのとおり、大幅に増えてきていることが読み取れます。これはひとえに、我々が出しているAIソリューションがしっかりと売れていること、遠隔接客ソリューション等の導入実績が続々と増えていること、新しいお客さま向けの遠隔対応ソリューションが拡充していることなどにより、好調に推移しているためです。
一人当たり粗利額の推移
1人当たりの粗利額の推移については、生産性を示していると考えています。今四半期の1人当たりの粗利額は第2四半期の1,480万円から1,570万円と大幅に伸びています。単価がある程度高い商品が伸びていることもありますが、黒字化達成に沿った、人材採用や育成をしっかり行った結果だと考えています。
さらに、サービスのオペレーションを強化することで、エンタープライズのお客さまがより短時間で工事も含めて導入が可能になり、これによって営業生産性は飛躍的に上がってきていると考えています。
(再掲)中期戦略アクションと財務目標値
中期戦略アクションと財務目標値についてです。2026年通期での黒字化達成にコミットメントしていますが、我々としては「防犯、遠隔◯◯を中心とした顧客基盤強化の継続」「業界・顧客課題に沿ったソリューションの提供によるソリューション売上の徹底拡大」「生産性の向上」ということが現実的に見えてきているため、2026年通期より前倒しをして黒字化を達成できるよう、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
2024年12月期第3四半期 業績ハイライト及び今期見通し
古田哲晴氏(以下、古田):取締役経営管理本部長兼CFOの古田です。スライドの業績ハイライトについては佐渡島の説明と重複するため割愛し、次ページから詳細をご説明していきます。
ARR及び課金カメラ台数の推移
最重要KPIであるARRは、前年同期比27.4パーセント増の109億円となりました。課金カメラ台数は前年同期比25.6パーセント増の27万5,000台にまで到達しています。
商流別課金カメラ台数の推移
課金カメラ台数の内訳を商流別に見ていくと、スライドのグラフの一番濃い緑の「Safie PRO(セーフィー プロ)」の卸商流は前年同期比で24パーセント増、前四半期比で9,000台の増加となり、こちらが全体の成長を牽引した四半期となりました。
「Safie PRO」の直販も前年同期比30.4パーセント増と非常に順調に増えています。「Safie GO/Pocket(セーフィー ゴー/ポケット)」についても、前年同期比22.2パーセント増、前四半期比2,000台増と順調に成長しています。
ARPC(課金カメラ1台あたりの単価)の推移
高単価な「Safie GO/Pocket」の製品構成比率が若干高まったことと、冒頭でご説明したソリューションの導入が進んだことの2つの効果により、ARPC(カメラ1台あたりの単価)が、前四半期よりもわずかに良くなっています。
売上高の推移
売上高全体の推移です。スポット収益が前四半期比で増加したことにより10億円の大台に回復しています。リカーリングの収益も順調に伸びているため、全体としては前年同期比で21.3パーセントの成長となりました。
売上高構成比およびスポット/リカーリング粗利率推移
商材別の粗利率推移です。リカーリング収益は売上高構成比73パーセントと高い水準で安定推移しています。リカーリング粗利率は前四半期よりもわずかに改善しました。改善の一番大きな理由は、この3ヶ月における円安の影響です。一時的に円安が緩和されていたためクラウドコストを抑制することができました。
一方、スポットについては、大規模なキャンペーンなどを行ったことで粗利率が悪化しています。
売上総利益の推移
売上高構成比率とそれぞれの粗利率の結果、全社の粗利率は前四半期と同じ50.2パーセントと据え置きになりましたが、売上成長があったため、粗利益の額としては前四半期比で1億4,000万円増の18億4,800万円となっています。
販売費及び一般管理費の推移
販管費については、前四半期と同水準となっています。内訳としては、広告宣伝費に関しては、第2四半期では大型の展示会や「Safie Future Resolution Summit(レゾサミ)」といったイベントが多くありましたが、今四半期はその部分が少し減りました。
代わりに人員がわずかに増えたことによる人件費の増加により、全体としては横ばいとなりました。一方、売上高が増加しているため売上高構成比が下がっている状況です。
調整後営業利益の推移
結果として、第3四半期調整後営業損益は5,000万円まで減少してきている状況です。ただ第4四半期では、しっかりと広告宣伝費、販促費などのコストをかけ、売上をさらに前倒しで刈り取りに行こうとしているため、最終的な第4四半期の数字としてはこれよりは悪化すると見ています。
成長戦略のテーマは不変
佐渡島:ビジネスアップデートについてご説明します。当社は成長戦略として「現場DX」を継続していきます。
(再掲)人口減少と労働力不足
現場DXにおいては、社会的な背景がとても大事になります。スライドのグラフは、1995年から2060年までの日本全国の人口推移を表したものです。ご覧のとおり青色で示した生産年齢人口が8,500万人から5,000万人に急激に減少しています。
いわゆる老齢人口が増え、生産年齢人口の加速度的な減少が起こっているわけですが、お客さまの各現場でも起きているというのが我々の実感としてあります。
(再掲)8掛け社会:現場をもつ主要業界における労働供給不足
我々は「8掛け社会」と呼んでいますが、2040年には労働需要に対して労働供給が不足することが課題になっています。今までは主に建設や物流での話でしたが、販売・飲食・医療・工場・介護などすべての現場を持つ分野で、潜在的だった労働力不足が顕在化してきています。こちらはまさに深刻な社会課題であり、我々のニーズに変容してきていると考えています。
(再掲)アナログ規制撤廃による"現場"DXの推進
そのニーズを先取りするかたちで、アナログ規制を緩和・撤廃するなどDX化を推進していくための法・規制改正や整備がどんどん進んでいます。
アナログ規制とは、目視点検や実地監査、検査など9669項目に対し、人や紙を介して行うべきであると定めた法律・規制です。この規制の緩和・撤廃により、今まで人が行っていた作業を、カメラやAI、ドローンといったデジタル技術の作業への代替が進みつつあります。我々はそのようなデジタル技術へどんどん投資し、成長していきたいと考えています。
アナログ規制撤廃による"現場"DXの主な具体例
アナログ規制撤廃による我々のお客さまの具体的な事例をご紹介します。建設・住宅業界については以前もお話ししましたが、ゼネコンや住宅メーカーでは「毎日現場に訪問しなければならない」と従来は定められていました。しかし規制緩和によって「カメラを活用すれば直接の訪問は週1回でよく、それ以外の日はカメラで遠隔からの実施も可能になる」というルールに変更されました。そのため「遠隔巡視」の需要が拡大しています。
NEXCOさんなどの道路インフラでは、道路の点検は5年に1回の近接目視が必要でしたが、こちらも緩和によってカメラを用いた遠隔での定期点検が可能になり、需要が増えてきています。
他にも水道・電気・ガスといったインフラの大手企業でも同様にカメラを用いたDXの導入が増えてきています。このような巡視、点検という項目の緩和が進むほど、我々のカメラの需要が増えていくという事例です。
水道・電気・ガス業界のアナログ規制緩和について
それらの中から、水道のアナログ規制緩和についてご紹介します。漏水対応や定期点検において今までは人による目視が必要でしたが、そちらが緩和され「遠隔巡視」「遠隔点検」の需要が拡大しています。
そこで当社の「Safie Pocket」を導入し、水漏れの対策の工事の施工管理、または定期点検を行う自治体や企業が増えてきています。水道だけでなく、電気・ガスの領域でも同様の現象が起きていますので、我々としては商機拡大と見て精力的に営業しています。
2024年Q3ビジネスアップデート
2024年12月期第3四半期のビジネスアップデートについてご説明します。こちらは以前からお伝えしているとおり、映像×AIが重要になってきます。「業界ごとのカメラの台数を増やす」「ソリューションを拡大させて単価を増やす」「AIを機動的に生み出せるようなプラットフォームを作る」という3点をビジネスの中心におき、アップデートを進めています。
建設&インフラ業界
カメラの台数増加についてご説明します。NEXCOさんで大規模な台数が入り始めています。スライドの導入事例にあるように、400キロメートル以上に及ぶ高速道路の管理すべてをAIや映像で実施していこうという流れがあります。
具体的には、「Safie Pocket」を車載し、通常は道路のパトロールに使用し、何か異常があった場合は復旧のための情報共有に使用します。こちらにより、現場への移動時間を0分にできるため、実際に大幅なDXに成功しています。このような活用を行うかたちで、カメラの台数が増えていくと考えています。
NEXCOさんでは、冬季の除雪車等に我々のカメラを標準的に搭載する流れがあり、徐々に当たり前のオペレーションになってきていると思います。
関西エリアでの営業活動を強化
関西エリアでの営業活動の強化についてです。今回、大阪駅前のグラングリーン大阪の「JAM BASE」に関西支店を置き、ショールームもオープンしました。営業活動の拡大を図っていきます。
関西支店のあるうめきた地区では、都市開発が現在行われています。駅前の再開発で、スライド左の画像のような大きな公園が作られました。こちらの公園および建物についても当社のカメラで管理しており、街全体をDXする1つのショーケースといったかたちになっています。
関西電力グループさん、関西エアポートさん、大和ハウスグループさんなど、大阪にはさまざまなお客さまがいます。当社はうめきたに拠点を構え、商圏拡大に寄与していこうと考えています。
大阪では2025年に大阪・関西万博が開催されます。万博跡地および隣接地にはカジノができる予定ですが、当社株主でもあるオリックスグループさんが運営するかたちになります。
このように関西では大型投資が目白押しで、そのあとにもリニアモーターカーの乗り入れ、うめきたから伊丹空港までの鉄道直結など、新しい大型のインフラ投資が続々と控えています。当社もそちらに注目しており、新しいソリューションをどんどん展開していこうとしているところです。
小売/サービス業界で遠隔接客を実現、店舗運営の業務生産性向上に貢献
単価アップについてです。遠隔接客ソリューションの「RURA(ルーラ)(SF)」についてご説明します。当社は、「RURA(SF)」を共同開発しているタイムリープ社に出資していますが、そこでも大型の受注がいくつか決まり始めています。
その一例が、スポーツクラブ、ルネサンスさんです。スポーツジムの店舗受付業務を遠隔で行うことができます。在宅でも店舗の受付ができるため、現場スタッフがいない場合も業務が可能です。サービスの質と量を良くするということで、無人店舗での活用が広がってきています。
小売/サービス業界で高付加価値ソリューションの導入拡大中
GiGOグループを運営するGENDA GiGO Entertainmentさんは、スライドにあるようなゲームセンター並びにアミューズメントの施設をM&Aしながら成長している会社です。
これまでのアミューズメント施設では、どの程度の滞留時間で、どのような人が来て、どのようにクレーンゲームを楽しんだのかが、ゲームのログからしかわかりませんでした。そのため、利用していない人や並んでいる人などの情報は知ることができませんでした。
そこにエッジAIカメラ「Safie One(セーフィー ワン)」が登場したことで、お店全体が可視化され、マーケティングデータが取れるようになりました。これにより、データドリブンな店舗運営が当たり前になってきました。「GiGOグループのお店」では、全店舗で導入されています。
M&Aで拡大していくような会社・店舗に導入されることで、当社の勝ちパターンは深くなっていきます。加えて、同様のDXの事例が増えていくと、他店舗の運営者にもノウハウを共有しながらDXが進んでいくため、現在はこのようなところに注力しています。
映像プラットフォーム基盤を強化しAI開発・普及を加速
映像プラットフォーム基盤を強化し、AI開発・普及を加速させていく取り組みについてお話しします。従前から説明しているとおり、家から街まで映像データが大量に、しかもリアルタイムに集まってくるため、そちらの映像データをもとにAIをたくさん生み出せるのではないかという仮説をもち、これまで取り組んできました。
そのような、より迅速かつ容易に個別最適化したAIを生み出すプラットフォーム構築事業が、NEDOが公募する「データ・生成AIの利活用に係る先進事例に関する調査」に採択されました。NEDOと経産省が行う「GENIAC」という、LLMやAIを生み出していくプラットフォームを育成していくプログラムより、2025年に最大約9億円の委託費を受ける予定です。
当社が採択された理由としては、27万台以上のカメラがクラウドにつながっていること、さらには多くのお客さまに建設・小売現場等ですでに導入されていること、その上で膨大なデータ並びにAIの実装という基盤開発能力をもっていることなどが大きいと考えます。
AIerとの協業もできるようになってきているため、そのようなところが評価されて今回の採択となりました。
映像プラットフォーム基盤を強化しAI開発・普及を加速
それぞれの業界には、業界ごとの課題があります。例えば建設業界で言うと、ヘルメットをしていない、安全帯を着けずに高い場所に上っているなどの不安全行動など、さまざまな課題があります。
そのような課題について、当社はプラットフォーム上でデータからAIを生成し、AIを使って簡単にソリューションを作っていきます。したがって、当社のカメラに対しての単価アップにもつながっていくような取り組みとなっています。
他にも、小売業界では万引き防止、警備業界では無人警備、道路業界では混雑状態が自動的に可視化されデータ化されることなど、あらゆる産業に対してインパクトのあるプラットフォームになります。
データ利用し、AIを作り、再学習し、それを実装するサイクルを迅速かつ容易にしていく。さらにAIerのみなさまがビジネスを簡単に実現できる。そのような「三方良し」のプラットフォーム開発を着実に進めており、今回委託費をいただくことでさらに加速すると考えています。
映像プラットフォーム基盤を強化しAI開発・普及を加速
AIソリューションプラットフォームの活用により、当社がビジョンとしている映像から未来を作ることと、家から街までをしっかりとデータ化し、さまざまなお客さまのニーズに沿ったアプリケーションを大量に生み出すことを実現していきます。
大量に生み出したアプリケーションによって業務が改善され、DXが進んでいきます。そちらによって当社も収益が上がっていくというプラットフォーム戦略が徐々に現実味を帯びてきました。
2024年12月期第3四半期サマリー
まとめになります。「8掛け社会」の到来に向け、アナログ規制緩和がどんどん進行していき、その労働力不足を補うためのAIが当たり前に実装されるようになってきました。それに伴い、当社の業界攻略やカメラの大量導入が現実のものとなってきています。
今後はクラウドだけではなく、いわゆるオンプレミスのカメラに対しても広げていく予定です。台数増加やソリューションの導入による単価向上が可能であると立証できた第3四半期だと思います。
2024年度の業績予想は達成圏内に入りつつ、第4四半期についてはしっかりと投資していこうと考えています。黒字化達成等の時期、2025年以降の事業戦略については、次回の発表時に行いますので、ご期待いただければと思います。
質疑応答:第3四半期のソリューション売上が伸びた背景について
質問者:今回の第3四半期はソリューション売上高も好調ですが、背景について教えていただけないでしょうか? 例えばソリューション売上の営業体制を強化した、あるいはよく売れた商材があったなどお聞かせください。
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