売上高の推移

土方次郎氏:株式会社朝日ネット代表取締役社⻑の土方でございます。2021年3月期上期の決算についてご説明します。

はじめに、2021年3月期上期の業績についてご説明します。まず売上高についてです。2021年3月期上期の売上高は前年同期比10.1パーセント増の55億7,800万円となりました。2013年3月期から9年連続で伸びており、過去最高の売上高を記録しました。年度計画である108億円に対する進捗率は51.6パーセントとなりました。計画に向けて順調に推移しているものと認識しています。

売上高 前期比差異

続いて、2020年3月期上期から2021年3月期上期にかけての売上高5億1,000万円の伸びに関して、主な要因についてご説明します。

まずは「v6 コネクト」です。IPv6接続を他の電気通信事業者へローミング提供するサービスとして、2019年3月期から提供を開始しています。売上は2億1,500万円の増収となりました。

NTT東⻄の光コラボレーションモデルを活用した「AsahiNet 光」と「ASAHIネット ドコモ光」が1億4,600万円の増収となりました。

教育支援サービス「manaba」は8,300万円の増収となりました。大学における遠隔授業の取り組みの影響もあり、上期の受注数が増えた結果となります。

モバイル接続サービスのLTE・WiMAXは7,900万円の増収となりました。NTT東⻄と協力して提供している「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」は2,900万円の増収となりました。

その他に含まれているサービスのうち、売上が減少しているものとしては、ダイヤルアップサービスなどのナローバンドや、新規受付を停止しているADSLサービスなどが挙げられます。

営業利益の推移

営業利益は前年同期比3.7パーセント減の7億6,800万円となりました。年度計画である18億円に対する進捗率は42.7パーセントとなりました。営業利益率は前年同期比1.9パーセント減の13.8パーセントとなりました。2021年3月期上期の結果としては、計画どおりに進捗していると捉えています。

営業利益 前期比差異

2020年3月期上期から2021年3月期上期にかけての営業利益2,900万円の減少に関して、主な要素をご説明します。まず、先ほどご説明した売上の増加は5億1,000万円となりました。

費用に関しては、売上原価が4億2,700万円増加しました。増加した要因の1つ目はFTTH接続サービス、モバイル接続サービスの新規契約数増加にともなう回線仕入の増加となります。また2つ目は、増加しているトラフィックに対して、通信品質を維持するための設備増強によるものです。内訳としては、インターネット接続事業ではNTT東⻄と相互接続するIPv6ネットワークの追加契約やルーター機器等の追加、「manaba」ではサーバー増強などが該当します。

販売費及び一般管理費は1億1,200万円の増加となりました。ISP「ASAHIネット」の会員数の増加にともなう会員獲得費用が発生しています。また、一時的な費用として新型コロナウイルス感染症対策費用を計上しています。

経営成績

2021年3月期上期の損益の状況です。売上高、営業利益はご説明したとおりです。経常利益は前年同期比1.4パーセント減の8億2,300万円となりました。また、四半期純利益は前年同期比38.2パーセント増の7億9,100万円となりました。2021年3月期第2四半期に投資有価証券売却益を計上しています。その結果、1株当たり四半期純利益は28円40銭となりました。

財政状態

2021年3月期上期の財務状況です。資産は前期末比15億2,800万円増の126億2,300万円となりました。負債は前期末比4億3,300万円増の18億2,300万円です。純資産は前期末比10億9,500万円増の107億9,900万円となりました。自己資本比率は85.6パーセントとなっています。

株主還元

2021年3月期の配当です。中間配当金については、予定どおり1株当たり9円50銭としました。2021年3月期の配当金は、中間配当金で9円50銭、期末配当金で9円50銭、年間で1株当たり19円を予定しています。その結果、配当性向は42.0パーセントとなる予定です。

当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題の1つとして認識しており、将来の事業展開と経営体質の強化のために内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続していくことを基本方針としています。

朝日ネットが対処すべき課題

ここからは事業の状況についてご説明します。はじめに当社が取り組んでいる対処すべき課題についてあらためてお示しします。

前提として、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の影響により、私ども通信事業者を取り巻く事業環境は大きな変化が発生している状況であると捉えています。2020年5月に総務省が公開しているインターネットトラフィックの増加幅は、前年同月比54.0パーセントと大幅に増加しています。トラフィックの増加に関連し、通信品質に対する通信事業者が担保すべき社会的な責務が従来よりも強くなっていると感じます。

このような状況をふまえ、あらためて当社が対処すべき課題は「増加する費用を抑え、利益が出せる構造を維持すること」と「お客様に満足いただける品質のサービスを今後も提供し続けること」の2点となります。

スライドに売上高・売上原価の推移を棒グラフ、売上高総利益率を折れ線グラフ、トラフィックを面グラフでお示ししています。2019年3月期から2021年3月期にかけて売上高、売上原価は増加しています。2020年3月期の売上高総利益率は34.1パーセントとなっています。

2021年3月期上期の足元の状況としては、トラフィックが当初の計画よりも増加していることは先ほどご説明したとおりです。その要因は、ISP「ASAHIネット」の会員数の増加、VNE「v6 コネクト」を利用する提携事業者との取り扱い通信量の増加、さらには新たな生活様式への変化などによる、一人当たりトラフィックの増加が複合的に絡んだ状況となっています。その結果、2021年3月期上期の売上原価は計画と比較して増加傾向となっています。

インターネット接続事業においては、NTT東⻄と相互接続するIPv6ネットワークの追加契約や、トラフィック増加という状況下でもお客様に満足いただけるサービスを維持するために設備増強を行っています。「manaba」においては、大学が遠隔授業を実施した結果、サーバーへのアクセスが集中してサービスが利用しにくい状態が発生したため、追加の設備投資を実施しています。このような状況もあり、2021年3月期の売上高総利益率は前年対比で横ばいまたは微減とみています。

2022年3月期以降については、引き続き売上、売上原価は増加することを見込んでいます。売上総利益率については維持もしくは改善を見込んでいます。トラフィックが増加する中でも取り組むべき課題2つを重視し、事業を継続していきます。

インターネット接続事業の構造①

続いて、各事業ごとの上期の状況についてご説明します。11ページの図は、インターネット接続事業の構造をお示ししています。インターネット接続事業は、当社がISP事業として自社サービス「ASAHIネット」を提供している「①」の部分と、当社がVNE事業として電気通信事業者へローミング提供する「②」の部分に分けてご説明します。まず「①」のISP事業「ASAHIネット」についてご説明します。

「ASAHIネット」会員数の推移

「ASAHIネット」の会員数は、2020年9月末に前年同期末比3.1パーセント増、1万9,000ID増の63万4,000IDとなりました。FTTH接続サービスの契約者数は2万2,000ID増加し、42万1,000IDとなりました。また、モバイル接続サービスの契約者数は3,000ID増加し、4万6,000IDとなっています。

2021年3月期上期は、過去と比較して会員数の伸びが強くなっていますが、その要因としては新型コロナウイルス感染症を起因とした需要と捉えています。第2四半期単体では例年に近い状況に落ち着いているとみています。

2021年3月期上期の退会率は0.76パーセントとなり、退会率は引き続き低い水準を維持しています。

「ASAHIネット」トピックス

ISP「ASAHIネット」のトピックスをご紹介します。2021年3月期上期は、前ページの会員数の状況でもご説明したとおり、新型コロナウイルス感染症を起因とした需要がみられ、FTTH接続サービスとモバイル接続サービスの契約者数が増加しました。

FTTH接続サービスの契約者の特徴としては、個人の場合であれば、従来は携帯電話の通信のみで生活していた方が自宅でテレワークを行うことになり、携帯電話の通信だけでは仕事に支障がでるため光回線を申し込むというケースが多く見受けられました。「Zoom」などのオンライン会議を利用する際には通信速度が安定しないと会議から退出させられるなど、利用者が通信速度や通信品質を意識する状況が顕著になったと感じています。

また、外出自粛もあり巣ごもり需要といわれているインターネットショッピング、動画配信サービスの利用増加やオンラインゲーム対戦など、トラフィックが増加する行動が多く見受けられました。法人の場合でも、インターネットを中心とした業務が増加したことにより、通信品質を意識する企業が増加しました。自宅からオフィスへリモートで接続するなど、オフィス特有の需要も顕在化しています。

モバイル接続サービスの契約者は、主に第1四半期には「ASAHIネット WiMAX 2+」のモバイルWi-Fiルーターの契約者が増加しました。急遽在宅勤務を迫られた企業が従業員に対して固定IP付きモバイルWi-Fiルーターを配布し、自宅からオフィスへセキュアにアクセスできる通信環境を整える動きが多く見受けられました。2020年4月から新たに提供を開始したLTE「ANSIM」の大容量プランなども、このような社会状況の変化により申し込みが増加しています。

社会全体の傾向として、デジタルトランスフォーメーションの流れは加速しています。デジタル庁の新設や新型コロナウイルス感染抑止のための非接触の取り組みなど、さまざまなかたちでインターネット接続サービスが担う役割が増加すると捉えています。

「ASAHIネット」販売チャネルの状況

続いて、販売チャネルの状況についてご説明します。2021年3月期上期は、新型コロナウイルス感染症拡大抑止の影響があり、例年とは異なる活動が多く見受けられました。その状況において会員獲得数が増加したことは、当社にとって新たな知見を得られたと感じています。

まずは、直販チャネルについてです。「ASAHIネット」Webサイト及び自社コールセンターの直販チャネル経由での会員獲得が増加しました。外出自粛により携帯電話ショップや量販店などが影響を受けたため、その代替手段として当社Webサイトへ申し込みが増加したとみています。

Web広告を活用した会員獲得施策は、広告活動やテレマーケティングの自粛を行った影響により、会員獲得は計画よりも少ない結果となりました。

また、代理店チャネル経由での申し込みは増加しました。2020年3月期から代理店開拓の取り組みを強化した結果、パートナー企業数が拡大したことが要因となります。その中でも、オフィス向け事業を展開するパートナー企業経由で、通信品質の不満を解消したい法人会員からの申し込みが増加しています。

インターネット接続事業の構造②

続いて、「②」で示したVNE事業「v6 コネクト」についてご説明します。

「v6 コネクト」提供状況

2021年3月期はサービスを提供している電気通信事業者との協業関係を高めること、新たに「v6 コネクト」がフィットする業界を開拓すること、この2点をポイントとして活動しています。

2021年3月期上期は新たに電気通信事業者3社と提携を開始し、累計での提携事業者数は10社となりました。上期に追加となった電気通信事業者はアライドテレシス株式会社と集合住宅向け事業者2社となります。

アライドテレシスはネットワーク機器の総合メーカーです。一般企業、官公庁や医療機関などの公共機関にネットワーク機器とネットワークを組み合わせてセキュアな通信インフラを提供している企業となります。企業や公共機関に拠点間の業務インフラとして「v6 コネクト」をバックボーンとする、安定した通信品質の高いサービスを提供します。相互に協業し、法人向けソリューションにおけるインターネット接続の高品質化を目指しています。

「v6 コネクト」を取り巻く環境としてはトラフィック増加の影響が大きくありました。当社と提携している各電気通信事業者は自社顧客向けの通信品質を維持、または改善するために「v6 コネクト」を積極的に活用していただきました。さらに、2020年3月からNTT東⻄が提供するホームゲートウェイに「v6 コネクト」が対応したことにより、「IPv4 over IPv6 接続機能」の利用者が増加しています。

2021年3月期下期も引き続き新たな提携事業者を開拓することと、サービスを提供している電気通信事業者の通信コストと通信品質の課題に対して一緒に取り組み、お互いにプラスとなるような協業関係を構築していきたいと考えています。

教育支援サービス「manaba」の概要

最後に、教育支援サービス「manaba」についてご説明します。「manaba」は教育機関、主に大学に対して当社が開発、販売、サポートを行っているクラウド型のアプリケーションサービスとなります。

教育支援サービス「manaba」契約ID数の状況

「manaba」の2020年9月末の契約ID数は前年同期末比7万9,000ID増の74万2,000IDとなりました。全学導入校は前年同期末比18校増の109校です。2021年3月期上期は茨城大学、獨協大学、明海大学など、新たに13校が利用を開始しました。そのうち10校は新型コロナウイルス感染症の感染抑止の取り組みとして、文部科学省が推奨するインターネットを活用した遠隔授業を実現するための導入となります。

「manaba」の取り組み

2021年3月期上期は新型コロナウイルス感染症の影響で授業の実施方法が対面から遠隔へと大きく変化しました。

「manaba」の取り組みとしては、LMS未導入校に対して新規導入提案とともに、導入校に対する活用支援に注力しました。遠隔授業をきっかけに初めて「manaba」を利用する教員が増加したことにより、使い方講習会の実施やサポート体制の強化など、活用支援の取り組みを行っています。

また、遠隔授業の実践方法をテーマとした「私の遠隔授業」や、学校の体制や取り組みをテーマとした「学生の学びを止めないための体制整備」についてのWebセミナーを開催するなど、教職員に向けて積極的に情報発信を行っています。

文部科学省が2020年9月に公開した情報によると、前期に引き続き後期も大学、高等専門学校の約8割が対面授業とインターネットを利用した遠隔授業の併用を予定しています。遠隔授業を支えるインフラとして、大量アクセスに耐えうるためのサーバー等設備の増強や授業支援サービスとしての機能の拡充を実施していきます。

2021年3月期 上期決算まとめ

2021年3月期上期決算のまとめです。1点目は業績についてです。2021年3月期上期の売上は前年同期比5億1,000万円の増の55億7,800万円となりました。2013年3月期上期から9年連続で過去最高の上期売上高を更新しています。

営業利益は前年同期比2,900万円減の7億6,800万円となりました。NTT東⻄と相互接続するIPv6ネットワークの追加契約による売上原価増加などを含め、計画どおりに進捗していると捉えています。

2点目は事業の状況についてです。ISP「ASAHIネット」の会員数は63万4,000IDで、前年同期末比1万9,000ID増となりました。VNE「v6 コネクト」は新たに電気通信事業者3社と提携を開始し、累計での提携事業者数は10社となりました。既契約の電気通信事業者のトラフィックが増加していることにより、「v6 コネクト」の取り扱い通信量が増加しています。

教育支援サービス「manaba」は全学導入校が109校となり、前年同期末比18校の増加となりました。契約ID数は前年同期末比7万9,000ID増加の74万2,000IDとなりました。

以上、2021年3月期上期についてご説明しました。

新型コロナウイルス感染症の影響により社会を取り巻く状況は刻一刻と変化し、依然として予断を許さない中、当社は従業員の安全確保をはじめとした感染拡大抑止の対策を最大限実行しつつ、当社の社会的責務としてインターネット通信サービスを安定して提供し続ける役目をしっかりと果たしていきます。ありがとうございました。