Voicy「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」
オープニング
飯村美樹氏(以下、飯村):「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」をご視聴いただきありがとうございます。今回の放送の司会を担当します、飯村美樹です。
この番組は、個人投資家、アナリスト、ストラテジストなどの方々へのインタビュー、対談などを通して、みなさまとともに投資の知見を深めていくための、ログミーFinance主催のラジオ番組です。
今回の「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」では、ストラテジストの糸島孝俊さんをゲストとしてお招きして、2024年全体の日本株式と世界の市場の振り返りと、2025年度それぞれの見通しについておうかがいしていきたいと思います。それでは放送スタートです。
ゲスト・糸島孝俊氏の自己紹介
あらためまして、今回のゲストのご紹介をさせていただきます。ピクテ・ジャパン株式会社ストラテジストの糸島孝俊さんです。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
糸島孝俊氏(以下、糸島):よろしくお願いします。
飯村:「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」へは初出演ということで、まずは糸島さんご自身について、ご経歴やご活動などを中心に教えていただけますでしょうか?
糸島:はい。まずはピクテ・ジャパンという、プライベートバンクを主体とするスイスの会社で、ストラテジスト、投資戦略をしています。わかりやすく言うと予想屋さんっぽい感じなんですが、じゃあ私が他の予想屋さんと何が違うのかだけ最初に紹介すると、私はもともと大手の証券会社にいて、そこの企業調査部というところでアナリストをしていました。
なのでボトムアップというか、ファンダメンタルズというか。そういったところから、社長、営業、開発、競合他社(の話)を聞いて、「この会社いいな、悪いな」というレーティングをつける仕事をしていたり……。けっこう泥くさい感じです。これがベースにある。
その後、大手銀行系の運用会社で投資信託のファンドマネージャーをしていて。その時の金額は最大5,000億円ぐらいあったので、大きな金額(の運用)をして、その時にいろいろな賞を取らせてもらいました。 それがまず投資信託。
その前は年金の運用の……。だから最初に年金をやって、その後の投資信託の時に5,000億円ぐらい(の運用をしていました)。
その後、2007年から2012年ぐらいまではヨーロッパ系のヘッジファンドをやったり、自分たちで立ち上げたりとかをやっていて。
そして2013年、アベノミクスが始まる頃ですね。ヘッジファンドって下げて儲けるイメージがあるんですが、自民党政権に代わって、「アベノミクスで、株は当分上がるよな」と思ったので、長期投資の独立系の運用会社の運用部長兼チーフファンドマネージャーを5年ぐらいして。
そして2018年の夏から、もう6年以上やっていますが、今の会社でストラテジーをしています。
そういった意味でどういうことかというと、運用はしていませんが、ストラテジストという仕事をしながら、自分が運用してるつもりで、当然リスクも考えながら発言をするようにしているので、あまり盛った発言はできないんですよ。
盛り盛りはできなくて、ちょっと渋め(の見方)でという感じでやってるということで。特にテレビとか、あとはこういったラジオも含めてできるだけメディアには出るようにして、誠実に本音でしゃべるようにしてます。そんなかたちです。
飯村:はい。ありがとうございます。
2024年の日本相場の振り返り
そうした糸島さんの視点から、今回の放送の本題である、2024年の株式相場について振り返っていければなと思っています。ではさっそくではありますが、まずは日本の相場について、2024年はどのような状況だったとご覧になっていますか?
糸島:まず日経平均のほうで見ていきたいんですが、2024年は年初からずっと上昇したんですよね。一気に上昇して、7月11日に4万2,426円という最高値をつけて。そこまでは年初から上げっぱなし。
その後、8月5日。為替が大きく円高になって大きく株価が売られて、なんと3万1,156円をつけたと。
飯村:驚きましたね。
糸島:わかりやすくいうと9,000円下げたわけですが、大きく下げて。その後は10月15日までが高値で、4万257円をつけた後、なかなか4万円を超えずに、今は3万8,000円ぐらいというかたちになってます。
なので、状況としては年初から7月までの上昇、その後8月大きく売られて、今戻ってきてということで、簡単にブレイクダウンしていきたいと思います。
最初はそのデフレ脱却期待ということで、年初から海外投資家がワーッと買ってくれたんですよ。日銀はその中でマイナス金利を解除していくっていうことで、大型株とか、大型のバリュー株やモメンタム系が買われたと。そして7月に向かってですが、特に為替は円安になってきたということで、161円まで……。
飯村:ありました。
糸島:ありましたが、そうした中で特に大型株。当然ながら為替が円安ということなのでグロース株、小型株なんかも上がってきたということで上昇したと。
そして8月の下げですが、8月になって大きな円高になったことによって日本株は軟調が続いて、歴史的な水準(の下落幅を記録した)ということなんですけども。
その後の切り返しが、内田(内田眞一氏)日銀副総裁も含めたところ、あと植田(植田和男氏)総裁の発言も含めて、株価を意識するようなことを日銀が言ったので、切り返して、9月のFOMCの後、アメリカ株も急騰してきたということで、日本株の買い戻しが起きた。
その中でドラマがあったんですが、ここでけっこう痛い目に遭った方とうまくいった方がわかれると思いますが、自民党総裁選というものがありましたよね。自民党総裁選がこの秋にあったわけですが、その前に高市(高市早苗氏)期待で2日間で2,000円近く上昇して、15時時点、2回目の投票、決選投票で石破さん(石破茂氏)(が選出されて)その後2,000円下がっちゃったという大きな流れで。
「石破当選ということで嫌気された」と言われていますが、これは高市期待で買われて、高市ショックが起きたという、そういった流れがあった中で。逆に言うと、今、日本株がアメリカ株に若干出遅れているのは、このあたりの政治の不透明感。まだここが払拭できていないのかなと思います。
そして10月から11月にかけてですが、この上昇過程で少しもみ合って高まっているのは、11月5日のアメリカの大統領選挙。これも日本のマスコミ報道とか見ていると、まずバイデンさん(ジョー・バイデン氏)からハリスさん(カマラ・D・ハリス氏)に代わって、トランプさんが右耳を撃たれたとかありましたけが、そういういろいろなかたちでもハリスさん優勢と日本では伝わっていたので、「まあ現状維持なのかな」という中で、トランプさんが勝ったと。
でもマーケット見てる方にとっては、10月中旬ぐらいから銀行株は上がるし、ビットコインは上昇するし。あとトランプメディアとかいうトランプさん関連の値が上がっていたので、マーケットは完全にトランプ期待になっていた。賭けサイトなんかもそうでしたよね。
そこで(値が)ついたかつかなかったかに差がついてると。そして今、状況としては少しもみ合ってる感じだと思います。そうした中で、直近でいくと銀行株とかが大きく買われて、逆にディフェンシブ系が売られたという相場展開だと思います。
飯村:そして現在3万8,000円でまた止まっているような印象があるんですが、こうした水準感というのは、糸島さんはどのように感じていらっしゃるんでしょうか?
糸島:今、日本株だけでいくと非常に難しい局面で、どっちもあるんですよ。 本当にうまくカードというかピースがそろえば4万2,000円を超えて、年内にという意味で4万5,000円をつける可能性はまだ残ってるんですね。でも逆のピース、悪いピースが先に埋まってしまうと、2025年に向けて3万円台前半になるという可能性もあるので、今はそこを見極めてるというとこだと思います。
飯村:2024年は3万8,000円台に滞留している時間が非常に長いような印象がありますが。
糸島:そこを見ていくために、まだ1ヶ月ありますが2024年を振り返っていくと、まず日銀の動き。利上げをするようにやりました。今回も12月に利上げ……。12月にはやらなくても2025年1月にはやるかなということで、やはり利上げ方向に変わってきたということで。当然ながら今の足元も、先ほど言ったように物色対象が変わってきた。これが1つ。
あとは先ほど高市さんの話をしましたが、岸田(岸田文雄氏)総理から石破さんになって、でも今回の衆議院選挙で自民党は過半数を取れず、公明党と連立を組んでも過半数を取れず、少数与党ということになったので、どっかと組まなきゃいけないと。
「どこと組みましょうか」という中でいくと、国民民主党、玉木さん(玉木雄一郎氏)のところと組んで、今103万円の壁をどうしましょうかっていう中で、財政を若干増やすような感じで動いて、なんとかバランスを取っている。
こういう中なので、「どうなるのかな」とみなさん見極めていると。あとは2024年のマーケットの中で、日経平均、TOPIXの大きな下支え要因となったのは、東証の改革。PBR1倍割れが大きくなくなったということです。PBRが1倍割れてるということは、私じゃなくて海外投資家から見ると、存在価値ゼロ。
飯村:そこまでですか。
糸島:どこかのお正月の番組で、一流、二流、三流の芸能人がいて、座布団がなくなったりするような番組がありますけど。
飯村:だんだん消えていってしまうテレビ番組ですね。
糸島:座布団じゃなくってゴザになって消えていくパターンというのが、たぶんPBR1倍割れのことなんですが、残念ながら日本の一番大きな自動車会社も、あと銀行も、一時的に1倍を割ってたんですよ。それが水準を上げてきたことは良かったのかなという感じだと思います。
飯村:自社株買いが非常に増えたり、IRもみなさん積極的にやられるようになって、こうした流れはこの先も継続されていきそうでしょうか?
糸島:はい。その話は2025年の話の時にということで。
飯村:あ、そうですね。また後ほどうかがいましょうか。
2024年の主要国株式相場の振り返り
では続いて、世界の市場についてもおうかがいできればと思いますが、まず、2024年の主要国株式の相場はどのような状況だったと言えるでしょうか?
糸島:はい。世界の株式ということでいくと、たぶんみなさんが思ってるイメージと違うんですよ。まず、日本株は堅調でした。特に11月20日までの日経平均で言っても15パーセント近い上昇。昨日(11月20日)時点で14.6パーセント。TOPIXも14.02パーセントということなので、大きく上昇したと。
そうした中で、世界株全体でいくと18.3パーセントなので、大きく上がっている。その原動力はやはりアメリカ株なんですね。S&P500は11月20日までで24パーセント上昇しているので、まずアメリカ株が良かったと。
ただS&P500よりも、やはりマグニフィセント・セブンとかね。そういった今AIの関係、半導体関係の7銘柄主導で上がったということで、ここが強かったということがまず1つあります。その中で、逆に弱かったところもあるんですよ。
ヨーロッパの株、CAC40というフランスの株は、直近までで5パーセントマイナスなんです。ヨーロッパ全体で見ても今で2パーセントの上昇ということで。これはドイツががんばっていて、足元13パーセント台の上昇をしている。ドイツが引っ張って、フランスが足を引っ張って、平均的に今2パーセントぐらいの横ばいと。
なので、ヨーロッパ株は横ばいで、アメリカ株が大きく上がって、日本株は追随というかたちで全体をくくれるんですが、一番大きな中国。年間で見たらそこまででもないんでしょうけれども、この9月、10月の動きはですね……。年の前半、9月ぐらいまで、中国株は弱かったんですよ。
飯村:中国は特に景気後退懸念が言われて、それがさまざまな世界にも波及していたような印象がありますけれども。
糸島:はい。その中で、中国は不動産に対する規制の緩和、あと当然ながらローンの金利も下げる。そして株式についても対策を打ってきたということ。こういったところが評価されて株が一気に上がって、今は19パーセントの上昇と。
飯村:年後半だけで19パーセント上がったということですね。
糸島:一応年間で19パーセントなので、年後半だけで言うともっと上がってるんですかね。
飯村:なるほど。
糸島:なので、世界株について勝とうと思ったら、当然ながらアメリカ株と日本株を持っていて、かつ、年前半は中国株を持たずに、年後半で一気に中国株を買えば勝てていたと。非常に難しいマーケットだったと思います。
飯村:そうですね。中国に関してはなかなかそういった印象がなかったもので、驚きがありました。
糸島:ただ中国は抜本的な解決にはなってないんですよ。習近平さんの状況を見ていても、抜本的に大きく改革しようというよりも、まずは現状をキープしようと。要するに、今(中国は)GDP5パーセントの成長をなんとか目指していて、そこをがんばれるようにしようというところ。ただ、株はその先を行っちゃったというところだと思います。
飯村:はい、ありがとうございます。
2025年の国内株式と主要国株式の相場見通し
ここまでうかがってまいりました。ここからは2025年についてうかがっていきたいと思います。2025年の国内株式と主要国株式の相場、本放送を収録しているのは2024年11月21日ですが、今日この時点でそれぞれどのような見通しでしょうか?
糸島:まず、12月末までが非常に読みにくいんですよ。現時点でいくと、スタートが1月の大発会ということで、それまでにけっこう上下があるんですが、それも含めて申し上げると、まず、この年末年始のところ。来年の年の初め、1月ぐらいまでに直近あった7月の高値、4万2,000円を超えられれば、4万3,000円、4万4,000円、4万5,000円も夢ではないんですが、そこは不透明。
逆に、今は3万8,000円で止まってますが、ここから先、12月、1月に割ってしまうと、3万7,000円とか3万6,000円まで下がってくる可能性もある。
非常に悪いピースというか、悪い条件が重なると、2023年の3万1,000円に近づく展開、3万2,000円ぐらいまであるということなので、2025年の見通しは、現時点では横ばいなんです。中立で、けっこう上下の両方あるかもなと。ただし悪い状況になると、上値は重たくて、基本的に横ばい。押し目買いになるような感じでイメージを持ってます。
飯村:なるほど。材料次第で急騰も急落もあるけれど、基本的には中間のところに戻ってくるのではないかという見立てなんですね。
糸島:はい。ここはいくつか分けなきゃいけないんですけど、1つはまず金利のところ。その次は政治。それ以外のマーケットのファンダメンタルズのところで語りたいんですが、まず金利でいくと、アメリカは今ずっと利下げをしていますよね。
飯村:はい。
糸島:利下げをしていましたと。その中で、利下げペースがこの12月に(さらに)やるのかやらないのか微妙だなとか、年内やったとしても来年2回ぐらいなのかなっていうことで、0.5パーセント、50ベーシスっていうんですが、50ベーシスか、75ベーシスぐらいじゃないかと言う人がけっこう増えている。
利下げの角度がだんだんなくなっていくと、今言った成長株が上がりにくくなるんですよ。金利が下がってから成長株は上がると。「その要因は何ですか」というと、難しい話になるので簡単に言うと、トランプさんがどんな政策を打つのか。
まず彼は、法人税減税とか所得減税とかをします。減税をすると当然景気がいいですよね。たぶんそこからやってくると思うので、今マーケットではポジティブに評価されている。ここはいいんですが、ご承知のとおり、中国をはじめとする各国に、その減税した部分のお金を持ってこなきゃいけないですよね。
逆サイドで持ってくるために、「世界に税金をかけよ」と。わかりやすく言うとそういうことなんです。まず中国に対しては5割ぐらい税金かけちゃおうと。日本とかヨーロッパ諸国も1割から2割ぐらいかけちゃおう。それで釣り合いをとるようにということなんですが、たぶんこれもディールで、税金かけると言っても、何か見返りがあれば少し下がるかもわかりませんし、マーケットはまだそこまでわかんないんですよ。
飯村:交渉次第、やり取り次第という中、やはり不透明であるということですね。
糸島:まず彼は今回2025年1月20日にスタートします。スタートすると、まず大統領令でできることをザッとやってくると思うんです。その後、上院と下院の議会で決めることは時間がかかりますよね。
今度の上院のトップは、トランプ寄りなんだけれど中立派なので時間がかかりそうということで、このあたりがどうなるか、どういうピースで来るのかなということがまず読めないので、今は良いこと(だけ)を読みます。なので、今(言われている)「トランプラリーはどこまで続きますか」ということは、そういうことだと思います。
なのでトランプさん次第。もうちょっと言うと、トランプさんと対応する国がどういう対応していくのか、特に中国の対応がポイントになってくると思います。
飯村:アメリカで言うと、インフレ再燃懸念もなかなか警戒されてるところはあるようですが。
糸島:はい。それも今お話ししたとおり、まず関税を上げてしまう。
もう1つは言ってませんでしたが、移民を止めるということになります。そうすると当然ながら安い賃金の方が減っていくわけですから、インフレは収まりにくい。ものの値段も上がっちゃうよねと。そうすると先ほど申し上げたとおり、「利下げできないんじゃないんか」「もしかしたら利上げかも」と言う人も一部います。
もしかしたら年後半にこれが出てくる可能性があるので、年前半まではある程度見えるんですが、1月20日までと、年の前半と、あと年後半を分けてみると、年後半は(動きが)見えないので、もし上がっていたとしても、少し調整する可能性を持っているということが、アメリカについては思っていることです。これが1つ。
プラスの話でいくと、アメリカではAI革命が続いてますよね。日本にはこういう部分は少ないじゃないですか。それに関係するような半導体製造装置、半導体の素材、あとはソフトバンクグループのようにAI関連全部やってる会社がありますが、そことの絡みでいくと、やはりアメリカの会社に比べたら(日本は)弱い。
その差があるということなんですが、そこでさらにアメリカでAIが実態的に使われて広がるかどうかを見極めたいということで、今朝NVIDIAの決算ありましたが、たぶんみなさんそこで一喜一憂していくかたちになるんですが、日本株はたぶん徐々にNVIDIA離れをしていくのかなと見てるということ。これは世界全体見たほうがいいですね。
で、日本を見ていた場合。日本はどうですかというと、植田日銀総裁はやはり利上げをしていく方向だと思います。今利上げをしたとしても、50ベーシスぐらいまでは実質的に利上げではない。まだ緩和状態だっていうことでしょうから、12月にはなくても1月やってくるということでいくと、日本的に短期的には円高方向になりやすいという流れもあるということ。
それと、日本の場合でいくと、まさに国民民主とあるとおり、これからどういうふうに政策が変わっていくかということと、2025年7月の参議院選挙で与党が大勝できるのか。それとも本当にまた少数与党になるのか。参議院選挙で大きく負けてしまうと、3年間で半分ずつ入れ替えるので、6年間戻せないんですよ。
飯村:そうですね、時間かかりますね。
糸島:そうすると、海外投資家もそのあたりの政治面で不安を覚えるかもわからないというところを見ていくと、年前半ぐらいまではいい感じなんですけが、年後半はこのパズルがどのように出てくるか見えないので、一応下のレンジも申し上げたということになります。
2025年に特に注目しておきたいこと
飯村:そうした中で、イベントとか具体的なセクター。2025年に特に注目しておきたいことが何かありましたら、ぜひ教えていただければと思うんですが。
糸島:はい。まず今申し上げた日銀です。日銀が金利を上げていくってなると、日本の考え方としては円高方向。内需。で、賃金が上がる。物価よりも賃金が上がる状態が続くから金利を上げれるというふうな方向でいきたいと思っているので、それがいけるのであれば当然、内需関連が買われます。今すごく買われてますが、メガバンク中心に、銀行セクターは比較的いい環境が続く。
足元で証券会社の株も上がってますが、当然ながら内需が動いていくということになれば株も上がるということも踏まえて、証券会社で金融株が注目されるというのは……。まず、日銀が良い方向で利上げをできるんだったら、やはり金融株は目を離せない。
加えて、今トランプさんが言っている暗号通貨的なこともあれば、まさに金融ですよね。特にアメリカは金融の規制を緩和すると言っていると。M&Aなんかもしやすくなる。BIS基準も緩くなるということになると、世界的にはやはり金融株が買われるということだと思います。これが1つ。
2つ目は選挙のところ。参議院選挙で、これは与党が勝つか負けるかってとこなんだよね。一応政治には中立でいたいので、非常に難しいですが、キーワードとなっている国民民主の玉木さん。103万円の壁というところがさらに躍進するのであれば、もっと与党に対して言う力が強くなります。そうするとますます働く人が増えていくということでいくと、やはり女性とか、あとは学生とか。そういった方々もより働きやすくなるということなので、消費関連。
飯村:あー、なるほど。消費関連はインバウンドで注目されることあっても、国内のみなさんがということだと、また社会全体が明るくなりそうですね。
糸島:はい。若い人は最低賃金も含め、初任給も上がってるのでけっこう楽観的なんですが、シニア層になればなるほど将来不安で使ってなかったりするわけです。その方々が負担なく「130万円とか170何万円まで働いても影響ないわ」「年金とかも関係ないわ」となると働きやすくなります。そうすると安心してお金が使えるということになるので、そのあたりが良くなる。
あとは先ほどAI革命と言いましたが、世の中変わっていくので、リスキリングというと、「リストラか」という人もいるかもわかりませんが、やはりそういったことを学ぶことが増えていくと思うので、このあたりもやはり引き続き注目だと思います。
あとは底上げの話ですが、今までは東証の改革、先ほどお話しした、要するにPBR1倍の改革があったんですけど、ここからはTOPIX改革なんですよ。
これから2025年1月までに、今2200近くあった銘柄が、1700銘柄ぐらいまで下がるんですよ。(この影響で)1月までずっと売られ続けています。流動性時価総額で100億円ぐらいの会社、「なんかプライムのちっちゃな会社が売られてるな」というのはこれの影響なんですね。これが終わります。
その後、2028年の秋までに、TOPIXはさらに500銘柄減るんですよ。要するに1700から1200になると言われています。すると、流動性時価総額で250億円、ザクっといくと時価総額で500億円ぐらいの会社は半分ぐらいが安定株主というイメージなので、そこぐらいの会社はもう崖っぷちなんですね。何もしない会社、IRをしないとか、あとは企業改革しないとか、成長戦略出さないとか、そういう会社はたぶんずっと下がっていって。
その流動性時価総額の分母を決める基準が、2025年3月末に決まるんです。だから、それまでは株価が下がっても、分母を増やすことをしなきゃいけないんですよ。大きな会社は自社株買いでいいんです。ちっちゃな会社は、今自社株買いしてる場合じゃなくて、株数を増やして、そして2025年3月からは、今度は2028年に向けて株価が上がっていく状況。もっというと2026年から改革がスタートするので、そこから約1年半ぐらい株価上げるようなことが起こってくるということで、たぶんこういった会社群からは改革が起こってくる。
そういった意味では企業の変革が起きてくるので、アクティブ投資としては非常におもしろい。ログミーとかでも出てくるIRする会社とかは、やはりチェックしていくのがいいのかなと思います。
あとはそれ以外にグロースとかスタンダードの企業。ここも流動性時価総額が250億円以上あればTOPIXに入れるんです。要するにJ2からJ1に上がるようなかたち。
飯村:そうですよね。
糸島:これにはすごくいいことがあって、TOPIXに買われるということは、無機質に売り買いする方々が買ってくれるので、株価が爆上げするんですよね。
飯村:機関投資家のみなさんが(株を買う)ということですよね。
糸島:なのでそういった意味でいっても、やはり小さな会社、これから大きくなるような会社を応援していくという楽しみが増えます。
2028年以降は毎年1年経つと入れ替えがあるんです。96パーセント上位に入っていると毎年選ばれるので、「(今年)入れなくても来年入れるかもしれない」ということで、そういった意味では2025年の春から、中小型株の逆襲がたぶん始まるんじゃないのかなと思っています。
飯村:中小型株にとってはなかなか日の目を見る時間が2024年は少なかったですからね。2025年以降すごく活性化が進みそうな気がしますね。
糸島:そういう意味ではそこを睨みながらなんですが、今、申し上げた金融がどうなるかとか、参議院選挙どうかとか、アメリカでいけばトランプさんが1月20日以降、どういう順番でカードを切ってくるのか。
そして忘れてはいけない。最後、一言どうしても言いたかったんですけど、地政学なんですよ。トランプさんが2025年1月20日に大統領になった。なった後、例えばウクライナの問題は解決するって言ってましたね。どう解決してくるのか。あと、彼はイスラエルを基本的に応援してますから、どのように応援するのか。
そうした中で、ロシアでちょっと不穏な動きが出てるじゃないですか。ウクライナがミサイルを打ったことによって、核も使うかもということを言っている。そのあたりの地政学は波乱要因になるので、ここには注意してほしいなと思ってます。
飯村:はい、ありがとうございます。注意しておくべき2025年の動向、そしてポジティブな未来についてのお話をうかがってまいりました。糸島さん、ありがとうございます。
残念ながらお時間となってしまいましたので、本日はこちらで締めさせていただきたいと思います。あらためまして、本日のゲストはピクテ・ジャパン株式会社、ストラテジストの糸島孝俊さんでした。糸島さん、ありがとうございました。
糸島: どうもありがとうございました。
エンディング
飯村:今回はピクテ・ジャパン株式会社、ストラテジストの糸島孝俊さんをゲストとしてお招きし、2024年全体の日本株式と世界の市場の振り返り、そして2025年のそれぞれの見通しについてうかがいました。みなさま、いかがだったでしょうか? 本放送につきましては書き起こし記事も公開されますので、気になる方はログミーFinanceのWebサイトをぜひご覧ください。
なお、書き起こし記事内では、次の放送テーマや出演者の募集も行う予定です。「こんなテーマを聞いてみたい」「こんな人に出演してほしい」などご希望がありましたら、ぜひご意見をいただければと思います。それでは今回は以上になります。また次回の放送でお会いしましょう。さようなら。