目次

高木信之氏(以下、高木):ただいまより、荒川化学工業の決算説明会を始めます。代表取締役社長執行役員の高木です。よろしくお願いします。

本日は、スライドに記載した目次の内容に沿って進めます。

決算概況と今期予想

初めに、決算概況と今期予想についてご説明します。2024年度は全セグメントにおいて増収増益となり、各利益項目において黒字転換しました。

スマートフォンの出荷台数の回復やデータセンターへの積極的な投資などにより、主力製品である機能性コーティング材料用の光硬化型樹脂の販売が前年を大きく上回り、ファインケミカル製品やハードディスク用精密研磨剤が過去最高の売上高となりました。

また、海外における板紙向け紙力増強剤やロジン系粘着・接着剤用樹脂の販売が堅調に推移しました。

その結果、連結売上高は802億3,600万円で前年比11.1パーセントの増収、営業利益は10億5,700万円、経常利益は8億5,400万円、当期純利益は固定資産の売却益などがあり、26億4,400万円となりました。

なお、進行中の2025年度の予想は、連結売上高は850億円で前年比5.9パーセントの増収、営業利益は28億円、経常利益は24億円、当期純利益は18億円を見込んでいます。

EBITDAについては、過去最高となる83億円を見込んでいます。

セグメント利益増減

2024年度の各セグメントの利益増減における主なポイントについてです。機能性コーティング事業では、光硬化型樹脂の需要が回復しました。製紙・環境事業では、海外での板紙向け紙力増強剤が堅調に推移しました。

粘接着・バイオマス事業では、欧州アルコン事業の損失改善、千葉アルコン製造の稼働改善とロジン誘導体が中国で堅調に推移しました。ファイン・エレクトロニクス事業では、ファインケミカル製品やハードディスク用精密研磨剤が大幅な増収となったことが挙げられます。

2025年度は、製紙・環境事業において海外での競争が厳しさを増し、減益を見込むものの、千葉アルコン製造のさらなる稼働改善などにより、セグメント利益の合計は前年比109.0パーセント増の35億4,000万円を見込んでいます。

セグメント別売上高

セグメント別の情報・経営指標についてです。各事業の内容、および2024年度における各セグメントの売上高は、スライドに記載のとおりです。

増収増益 機能性コーティング事業

まずは、機能性コーティング事業についてです。当事業の連結売上高は168億4,200万円で前年比12.8パーセントの増収、セグメント利益は12億1,900万円で前年比134.2パーセントの増益となりました。

電機・精密機器関連業界は、電子部品などの需要が回復基調で推移しており、今後の需要拡大に向け、人的・設備的な経営資源を積極的に投入している光硬化型樹脂は、スマートフォンやディスプレイ関連分野での需要回復が進み、販売が大きく増加しました。

2025年度のセグメントの見通しは、連結売上高は185億円で前年比9.8パーセントの増収、セグメント利益は16億円で31.2パーセントの増益となる見込みです。

主力製品である光硬化型樹脂の需要が堅調に推移する見込みであり、「そだてる」ミッションに位置づけている熱硬化型樹脂「アラコート」の拡販も見込んでいます。

当事業の中長期的な戦略については、引き続き、高機能化・カスタマイズによる差別化を行い、国内外での拡販、採算性の向上を目指していきます。

光硬化型樹脂(ビームセット・オプスター)

紫外線を照射することで瞬時に硬化する光硬化型樹脂「ビームセット・オプスター」についてです。スマートフォンやディスプレイ関連分野での需要回復が進み、2024年度の売上高は約61億円となりました。2025年度も引き続き堅調に推移する見込みであり、過去最高の約70億円を予想しています。

2024年2月に完工した富士工場の光硬化型樹脂設備については、顧客での認証取得を進めており、下期から量産をスタートします。

熱硬化型樹脂 (アラコート)

熱硬化型樹脂「アラコート」の売上高は、約5億5,000万円となりました。2025年度は、工程用フィルム用途において、国内外で複数の新規採用が見込まれることから、約9億円を予想しています。

増収増益 製紙・環境事業

製紙・環境事業です。当事業の連結売上高は220億4,100万円で前年比4.4パーセントの増収、セグメント利益は18億4,900万円で前年比38.1パーセントの増益となりました。

国内においては市況の低迷が続いており、海外においては競争環境が一層厳しさを増しているものの、アジアでの需要創出に注力している板紙向け紙力増強剤が堅調に推移したことなどにより、増益となりました。

2025年度の見通しは、連結売上高は224億円で前年比1.6パーセントの増収、セグメント利益は16億円で前年比13.5パーセントの減益となる見込みです。海外での競争環境がより一層厳しさを増すと予想しているものの、引き続き紙力増強剤などの拡販や、国内での収益性改善に努めていきます。

当事業の中長期的な戦略については、国内での需要減少に対応するため、サイズ剤事業における製造拠点の統廃合を2025年3月末で完了しています。

今後も、国内事業は必要に応じ、品種や生産拠点の統廃合による収益性の改善を進めていきます。海外では、古紙のリサイクル促進に対応した紙力増強剤の販売地域の拡大を目指していきます。

また、脱プラスチックや環境対応の流れに対応できる紙の高機能化に貢献する薬品の開発にも注力しています。

紙力増強剤(ポリストロン)

主力製品である紙力増強剤「ポリストロン」の2024年度の売上高は、荒川ケミカルベトナム社を中心とした東南アジアの販売が通期で寄与したことなどにより、約155億円となりました。

2025年度の売上高は、海外での競争環境は厳しさを増しているものの、ASEAN地域を中心とする拡販を見込んでおり、売上高は約165億円を予想しています。

今後も引き続き、経済発展が目覚ましいASEANを中心に、古紙リサイクル促進に貢献するとともに、さらなる地域の拡大を図っていきます。

増収増益 粘接着・バイオマス事業

粘接着・バイオマス事業です。当事業の連結売上高は278億円で前年比10.6パーセントの増収、セグメント損失は22億4,100万円となりました。

千葉アルコン製造の稼働率は改善傾向にありましたが、想定以上に機器の不具合等や修繕費も大幅に増加し、水素化石油樹脂事業の収益を押し下げる要因となりました。一方で、ロジン系の粘着・接着剤用樹脂は、中国を中心に販売が堅調に推移しました。

2025年度の見通しは、連結売上高は290億円で前年比4.3パーセントの増収、セグメント損失は7億円となる見込みです。ロジン系の粘着・接着剤用樹脂の需要は、中国での需要が引き続き堅調に推移することを見込んでいます。

また、千葉アルコン製造における水素化石油樹脂の稼働の改善により、セグメント利益は赤字幅の縮小を見込んでいます。

当事業の中長期的な戦略については、C9留分から得られるアルコンの特徴を活かした高付加価値用途での拡販を進め、バイオマス素材のロジンを活かした用途開発による社会貢献を通じ、「Global Pine Chemicals Partner」への深化、松脂資源と関連事業の持続性確保を目指していきます。

水素化石油樹脂(アルコン)

水素化石油樹脂「アルコン」の2024年度の売上高は、約75億円となりました。千葉アルコン製造での販売を2024年3月から開始しているものの、装置の不具合等が想定より多く、生産・販売ともに目標から大きく乖離しました。2025年度はまだフル生産・フル販売には至らず、約81億円にとどまる見込みです。

アルコン事業については、荒川化学グループの最重要課題と認識しています。私を委員長とする「アルコン特別委員会」を設置し、グローバル販売戦略の再構築と高付加価値用途での拡販、千葉アルコン製造の稼働率の向上、さらには石油化学コンビナートの再編を見据えた取り組みを強化しています。

ロジン誘導体(パインクリスタル・ロジンエステル等)

ロジン誘導体は、当社が創業当初から扱うバイオマス素材であり、ラベルやテープの粘着剤、医療用貼付剤やはんだ用途などに使用されているほか、3Dプリンター関連や光学フィルム関連部材など、さまざまな用途で使用されています。

2024年度の売上高は、約157億円となりました。2025年度の売上高は、約160億円を見込んでいます。

増収増益 ファイン・エレクトロニクス事業

ファイン・エレクトロニクス事業です。当事業の連結売上高は134億5,900万円で前年比22.9パーセントの増収、セグメント利益は8億4,700万円となりました。

電子部品などの需要の回復や、生成AIの需要増加に伴うデータセンターへの積極的投資が進んでいることを背景として、当社が将来に向けて生産能力の増強を進めてきた半導体関連先端材料のファインケミカル製品や、ハードディスク用精密研磨剤が大幅な増収となり、過去最高の売上高となりました。

2025年度の見通しは、連結売上高150億円で前年比11.4パーセントの増収、セグメント利益は10億円で18.0パーセントの増益となる見込みです。

当事業の中長期的な戦略については、データセンターや半導体関連市場の将来の需要増加に素早く対応・連携し、事業のさらなる拡大を目指していきます。

精密研磨剤(Neopolish)

精密研磨剤は、ハードディスクのアルミ磁気ディスク用を主用途としており、その他にも各種基板の研磨剤も開発しています。

2024年度の売上高は、データセンター投資が積極的に進み、過去最高の約34億円と大幅な増収となりました。2025年度は引き続きデータセンター投資が堅調に進むと見込んでおり、売上高は2024年度を上回る約36億円を予想しています。

今後の需要増加に対応すべく投資を行った第2工場は、顧客認証を取得し、量産化を進めており、今後の需要増加を確実に取り込んでいきます。

ファインケミカル製品

ファインケミカル製品は、高度な有機合成技術と品質管理のもと、半導体関連用途や医薬品用途などの受託製造をメインとしています。

2024年度の売上高は約32億円で、過去最高となりました。2025年度の売上高は、半導体関連でのさらなる需要増加が見込まれており、約43億円と過去最高を大きく更新すると見込んでいます。

2024年12月に完工した水島工場のファインケミカルプラントは、量産化に必要な顧客での認証取得に向けた試生産を開始しており、引き続き注力していきます。

海外売上高・比率 推移

海外売上高についてです。2024年度の海外売上高は、紙力増強剤のアジア地域での拡大、中国でのロジン系粘着・接着剤用樹脂の需要回復により、346億2,400万円で前年比13.5パーセントの増収となり、海外売上高比率は前年同期の42.2パーセントから43.2パーセントに増加しました。

2025年度は、千葉アルコン製造の水素化石油樹脂の輸出や、中国でのロジン系粘着・接着剤用樹脂の拡販により、過去最高の366億円となる見込みです。

地域別・セグメント別売上高比率

各事業セグメントにおける地域別の売上高比率は、スライドにお示ししたとおりです。

配当金の推移

配当金についてです。当社は、安定的かつ継続的な配当を維持しつつ、積極的な株主還元策に取り組むことを基本方針としています。

配当金については、第5次中期経営計画における成長戦略の実現による利益の拡大を通じた配当額の増加と、配当性向40パーセントを目標として、株主還元策に取り組んでいます。

これらの方針のもと、業績を総合的に勘案し、また、株主さまの日頃のご支援にお応えするため、当初の予想から1円増配の1株当たり25円に増配し、中間配当金24円と合わせた年間配当金49円を予定しています。

なお、2026年3月期の配当については、引き続き不透明な経営環境が見込まれますが、事業ポートフォリオ改革と、成長分野への投資による高付加価値製品のさらなる伸長で、積極的な配当を目指し、1株当たり年間配当50円を予定しています。

設備投資および研究開発費

設備投資の状況です。2024年度の連結設備投資額は、水島工場の半導体関連先端材料用のファインケミカルプラントが完工し、完工ベースで54億2,900万円となりました。

2025年度は成長市場に向けた投資が一段落したことから、定常的な投資が中心となり、約40億円となる予定です。

減価償却費については、千葉アルコン製造や富士工場の光硬化型樹脂プラント、水島工場のファインケミカルプラントの償却費計上のため、2024年度は前年並みの高水準で57億2,000万円となりました。2025年度は、55億円となる見込みです。

総資産・有利子負債推移

総資産、有利子負債の推移についてです。有利子負債は、2024年度において393億8,100万円となり、前年同期から30億700万円減少しました。2025年度は、約11億円増加する見込みです。

重点課題の進捗① 事業のSHIFT推進

重点課題の進捗についてご説明します。事業のSHIFT推進については、「そだてる」ミッションに位置づけている熱硬化型樹脂「アラコート」について、2026年度での「のばす」へのSHIFTを目指し、取り組みを加速させていきます。

一方で、ロジン誘導体・サイズ剤事業などにおける製造拠点の統廃合は2025年3月に完了しており、今後、収益性の改善効果を発揮していきます。

また、現在の5次中期経営計画期間中に、いくつかの事業においては不採算少量販売事業の撤退など、「やめる/わたす/すてる」へのSHIFTを決断しました。これらの事業の新陳代謝を進め、事業ポートフォリオ改革をさらに加速させていきます。

重点課題:ライフサイエンス事業に向けて

ライフサイエンス分野での新規事業創出についての取り組みです。当社は、ヘルスケア、アグリ、コスメなどの分野において、積極的な産官学連携により、マツや微細藻類などのバイオマス素材を活かし、人と自然素材をつなぐ新規事業の展開を加速しています。

その中から2点、具体的な検討状況についてご説明します。

重点課題の進捗② 新規事業関連(マツ)

まずは、マツ由来成分を活用した取り組みについてご説明します。マツ由来のバイオスティミュラントの開発では、果物や野菜の収穫量改善などの効果が確認されており、岡山県のJAと連携し、研究栽培を実施しています。マツ資源の機能を深掘りし、新たな事業に育てるべく取り組んでいます。

また、筑波大学発のベンチャーであるMED R&D社との共同研究においては、うつ状態のマウスに松葉抽出物を与えることで、抗うつ成分と同等の結果が得られることがわかりました。パテントも公開済みであり、BtoC向けも視野に入れた商品化に取り組んでいます。

重点課題の進捗③ 新規事業関連(微細藻類)

微細藻類事業についてご説明します。2024年1月に資本参加を行ったSoPros社では、「ω-6DPA」を含有する微細藻の薬理作用に注目した事業を展開しており、まずは温活フードとしてフリーズドライ味噌汁「MISO CUBE」の販売を開始しました。本日、お手元にも配付しています。

また、2025年2月には、同じく微細藻類を活用する技術を持つガルデリア社へ資本参加しました。ガルデリア社が取り扱う「Galdieria(ガルディエリア)」という微細藻は、金やパラジウムといった貴金属を選択的に吸着するほか、高機能の食品・医薬品成分としても注目されています。

当社では、大阪工場に微細藻類のベンチプラントを建設中であり、今後も引き続き、当社が目指すライフサイエンス事業とのシナジー効果を発揮できるよう取り組んでいきます。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてご説明します。当社のPBRは2017年以降、業績の低迷とともに低下し、不本意ながら0.5倍を下回る状態が続いています。

当社の資本コスト(WACC)は4パーセントから5パーセントと認識しており、中期経営計画における各施策を推進して実現することで、まずはマイルストーンとしてROE7パーセント、ROIC5パーセントを達成すべく取り組んでいきます。

ROICについては重要なKPIと認識しており、次期中期経営計画に取り込むことで、事業の収益性の回復と安定性や成長性、ならびに積極的な情報開示などによる企業価値の向上につなげていきます。

サスティナビリティへの取り組み

荒川化学グループのサスティナビリティへの取り組みについてです。当社は、経営理念に基づいた持続可能な成長の実現に向け、社会的課題に対応すべく、さまざまな施策に取り組んでいます。

CO2排出量は、引き続き50パーセント削減目標の達成を継続すべく取り組んでいきます。今後、需要の回復や生産数量の増加が見込まれますが、2030年度におけるCO2排出量は50パーセント以上の削減の継続を目指します。

引き続き、安全文化の醸成、働きがいと生産性の向上、経営指標を支える人的資本投資などを通して、個人と会社がともに成長できる環境づくりに取り組んでいきます。

健康経営の取り組み

荒川化学グループは、経営理念の「個性を伸ばし 技術とサービスで みんなの夢を実現する」に基づき、すべてのステークホルダーの期待に応え、持続的な成長を実現していきます。

そのためには、従業員一人ひとりが健康な状態で仕事に取り組み、能力を最大限に発揮できることが最も重要との考えから、健康経営の取り組みを積極的に実施しています。

当社は「健康経営優良法人2025 大規模法人部門」に認定され、グループ会社でも取得を進めています。

今後も、一人ひとりの従業員が心身ともに健康で生き生きと活躍できるよう、バックアップしていきます。

次代へつなぐ取り組み

次世代へつなぐ取り組みについてです。2024年度は、当社が2016年から植林活動を行っている岡山県矢掛町の「マツタロウの森」を舞台に、引き続きYUNGA Forests Challenge Badgeプログラムを実施しています。

また、大阪工場・研究所でこども参観日「KIZUNA (Kidsな)Day」を開催しました。当社社員の働きやすさと子どもたちへの学びの機会を提供することを目的としており、今後も「楽しく化学する」を基本に、体験学習などを提供していきます。

見通しに関する注意事項

2024年度は2期連続の赤字から脱却し、黒字化を達成することができました。しかしながら、過去最高水準の営業利益50億円台には遠く及んでおらず、まずはその水準への回復を早期に実現し、さらにその上を目指していきたいと考えています。

第5次中期経営計画における2025年度の目標に対しては、下振れの業績予想となっていますが、当社の「ありたい姿」を目指し、引き続き既存事業の新陳代謝の加速と収益力の回復、成長分野への投資やスタートアップ企業とのコラボなど、新規事業のステージアップに注力し、事業ポートフォリオ改革の加速による収益性の向上を推し進めていきます。

ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:増益要因の内訳とその持続性について

質問者:黒字転換、おめでとうございます。2025年度も大幅増益とのことですが、その原動力は、中国・アジア地域の数量増およびエレクトロニクス関係がようやく回復が見えてきたことに加えて、千葉アルコン製造の赤字縮小かと思います。

千葉アルコン製造の赤字縮小については、13ページのグラフから若干見えてくるのですが、ほかの2つの利益貢献と持続性についてはどのようにお考えなのか、教えてください。

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