会社概要

間山一典氏:本日はお時間をいただきましてありがとうございます。社長の間山です。これから日水コンの会社説明をいたします。

当社は水に特化したコンサルタントです。設立は1959年。水道・下水道の普及整備のため、設計をする会社として設立されました。官をサポートする技術の会社として誕生しています。

事業内容

設計は創業当初からのコア業務ですが、現在はその上流の調査・計画、あるいは下流の維持・管理にも領域を広げています。事業全般に関わっているのが、当社の強みの1つかなと思っています。

また最近は、宮城県のコンセッション事業、あるいは秋田県での官民出資会社にも参画しており、事業への関わりも始めたところです。

水道・下水道に加えて、河川部門を持っているのも特徴の1つです。山に雨が降って海に出るまでの水循環をフィールドとしています。現在従業員数は約700人、売上は約220億円という規模感です。

これからの展望

設立の目的としてきた水道・下水道の普及整備が一段落しました。今後は、その事業の維持が求められるところです。一方で、高度経済成長期に整備した施設管路は、今後大量更新の時代を迎えます。正月に発生した能登半島地震でも、水道・下水道の耐震化の遅れ、あるいは更新の遅れが指摘されています。

今後、ヒト・モノ・カネの制約がますます厳しくなる中で、従来型の単純更新や事業手法では限界があります。広域化による事業再編、あるいは施設の再構築、さらには官民連携といった事業手法自体の工夫が求められます。

我々としては、今後、事業そのものへの関わりも深めていきたいと考えています。さらに下水道について言うと、今、創エネ、再エネ、あるいは下水汚泥の肥料化など、資源としての活用も期待されています。

我々としては、そういう付帯事業にも挑戦していきたいと考えています。そのためには多様な人材の確保、あるいは地域、ステークホルダーからの信用が不可欠のため、今回上場に踏み切った次第です。今後とも、どうかよろしくお願いいたします。

質疑応答:日水コンの強み

質問者:2点おうかがいします。まず、目論見書にも書いてありますが、同業他社と比べた時の御社の強みをあらためてご説明いただけますか?

間山:はい。これまで65年間、水道・下水道の普及整備の他、数々の技術的な相談に応じてきました。先ほどお話ししたとおり、水循環全体がフィールドのさまざまな技術者を確保しています。そういう技術力、あるいはこれまで培ってきた官からの信頼が強みだと思っています。

河川部門を持っていると、この総合力もこれから活きてくるのではないかと思っています。最近は雨の降り方が変わってきていて、ゲリラ豪雨などと言われています。

これまで雨対策は、河川と下水と分けて行われてきましたが、最近では一体で考えないといけない流域治水、あるいは流域水管理と言われています。当社は河川部門も下水部門も持っているので、一体で水管理をサポートできることが強みだと思っています。

質疑応答:既存株主との関係

質問者:既存株主のクボタさん(6326)や、親引けを要請した栗本鉄工さん(5602)など、そういった企業との事業上の関係はどうなっていらっしゃいますか?

間山:通常のコンサルティング業務で特に関係を持つことはございません。ただ今後、PPP(官民連携)の民側の場合、SPCを組むコンソーシアムとして一緒に組成をすることはあろうかな思っています。事実、栗本さんとは、北海道で今ラピダス社の半導体工場が誘致されて、大量の水を使うので早く水を手配しなきゃいけないと。

通常の事業の場合、何年もかかるところを1年でやってくれということで、栗本さんとJV(共同企業体)を組んで、デザインビルド・設計施工一体型の発注ということで、今、工事をしています。

今回、親引けに応じていただいた企業さまとは、それぞれ今後、官民連携の中でシナジーを考えてお引き受けいただいたものと思っています。

質疑応答:野村キャピタルパートナーズの資本参加の効果

質問者:同じく2点おうかがいします。1点目ですが、野村キャピタルパートナーズさんの資本参加の効果について教えてください。

間山:今回上場するにあたって、個人株主をどう整理するかというのが1つの課題でした。そこで、ファンドである野村キャピタルパートナーズのお力を借りました。

これまで我々は、あまり外部を意識しない、官からの信頼を得て、それでよしとしてきた部分がありますが、外部からの視点からのさまざまなご指摘、ご指導いただく中で、ある種、我々の視野が広がりました。あるいは、違う世界からの人材確保。そういうことにもご協力いただいたと思っています。

質疑応答:IoTに関する考え方

質問者:もう1点ですが、水道の管理にクラウドシステムを使っているというようなことが書いてあったので、IoTに関する考え方についておうかがいできればと思います。

間山:人口減少の中で、いかに維持管理の効率化を高めるかというのは、我々自身もそうですし、水道・下水道の持続にあっては不可欠だと思っています。

我々は昔から台帳整備や図面の整備にITを使ってきました。通常、注文生産でシステムを作ると、かなり高額になるんですね。

億単位の金がかかったりするので、ある種、標準化されたシステムでシステムを納めるのではなく、サービスを提供するというかたちで、今は月数万円の利用契約で台帳サービスを提供しています。

現在、140ヶ所ほど契約を結ばせていただく中で、こういうサービスを提供しています。こういったクラウドでの図面や情報を持っているということが、先ほど申し上げた流域水管理、あるいは他の分野と一緒にやっていく際のプラットフォームになると思っており、今後の成長戦略の1つの基盤かなと考えています。

質問者:わかりました。ありがとうございます。

質疑応答:初値の受け止め

質問者:3点質問があります。順番に1つずつ質問させてください。まず1点目ですが、本日の初値が公開価格を6.2パーセントほど下回った1,341円でした。こちらについて、受け止めをお願いできますか?

間山:正直に申し上げて、高い安いという感覚はほぼ持っていません。今回上場して、こういう値がついた。これは投資家の方々、あるいは株式市場からの評価値なり期待値だと思っています。これが出発点なんだろうなと。

我々としては、この期待値を少しでも高める、あるいは評価を上げていくために、企業価値の向上に今後、努めていく。そのスタートラインに今、立ったんだなと思っていて、その責任も感じているところです。

質疑応答:流域治水に対する取り組み

質問者:2点目です。官からの受注や、PPPの民側での案件作成支援など、いろいろな局面で流域治水に関わることがあるかと思いますが、受注の側面で、どのような長所が御社にあるのか、少し具体的に教えていただけないでしょうか? 今後、流域治水にどのように取り組まれていくのか教えてください。

間山:流域治水においては、PPP案件までの発展はまだちょっと早い段階かなと思っています。我々、社内では下水道に対して内水という言葉を使います。堤防の中の水の話と、外水、堤防の外の河川の水。これを一体的にシミュレーションできるところまで技術的には持ってきています。

雨が降った時、下水にどう水が流れて、河川の流量がどうなって、というところまでは、シミュレーションできます。

さらに、衛星画像でのデータ取得が可能になってきているので、そこと組み合わせて、本来的な現象解析をまず切り口にしていきたいなと思っています。それで、ゆくゆくはPPPをやる際にも、技術的なアドバンテージ、あるいは付加価値の提供につながっていくだろうなと思っています。

質疑応答:株主還元の方針について

質問者:3点目の質問です。株主還元の方針について、配当性向という数字を踏まえて、あらためて具体的に教えていただきたいです。例えば、優待など、会社によってさまざまな手段を用意していますが、株主還元の方針を特に考えていないのであれば、そこもお願いします。

間山:株主還元は目論見書に記載したとおり、配当性向50パーセントで考えています。さらにそこに上積みした還元策については、今後の業績などを見ながら、これから考える段階です。方針はございます。情報は速やかに投資家のみなさまにお知らせしていくと、考えています。

質疑応答:海外市場について

質問者:海外市場は、どうご覧になっているのでしょうか?

間山:海外市場については、これまでODA案件を中心にやってきました。むしろ、仕事を追いかけていった、プロジェクトを追いかけていったという仕事の取り方であったと思います。今、中期経営計画では、「壁を越える」「地域に根差す」「足元を固める」という考え方を3本柱にしています。

ODA案件はこれからもやっていきますが、やはり「地域に根差す」という考え方が必要ではないかと思っていて、今、フィリピン、インドネシア、シンガポールに拠点を置いて、人を置いて、地域と話をし始めたところです。今回、宮城県でマイクロ水力発電を始めましたが、海外案件での小水力発電は、もう少し先かなと思っています。

むしろ海外だと、経済成長に伴って、排水処理の規制が高度化されるだろうと思っています。かつて日本では、高度経済成長期に公共用水域の水質汚濁が問題になって、隅田川で早慶レガッタが中止になりました。今回、パリ・オリンピックでもセーヌ川はどうなの? という話がありました。豊かになった分、公共用水域の水質保全が、やはり問題になるだろうということで、排水処理の部分で、私たちのノウハウを海外で活用できないかと考えています。

ただ、成長戦略の中に占める海外事業の割合は、かなり小さい部分で、中長期の、将来を見ての取り組みとお考えいただければなと思います。

質疑応答:新規人材確保について

質問者:新規人材確保が命題ということですが、やはり今回の上場でだいぶアピールポイントが増えたと考えますが、いかがでしょうか?

間山:そうですね。人材は私たちにとって、資本、生命線です。その獲得競争はますます激化していくと思います。官に対する私たちの知名度はかなり高いと自負していますが、一般の方はやはり知りません。

知っていただく努力もしますし、ある意味、自らが社会的な責任を負っているんだということを示さないといけない。さらに、付帯事業に関わっていく、「壁を越える」というのを、中期経営計画の戦略にしていますが、水道だけで持続可能か、下水道だけで持続可能かという時代ではありません。

異業種との抱き合わせというか、今、バインディングという言葉を使われていますが、そういった場合に異業種の方に来ていただくためには、どういうことが必要かと考えた時に、やはり上場が必要条件の1つではないかと考えた次第です。

司会者:その他、いかがでしょうか? 他にないようでしたら、これで本日の記者会見を終了させていただきます。ありがとうございました。