スピーカー紹介

関本圭吾氏:本日はお時間をいただきありがとうございます。IR Agentsの関本と申します。本日は、IPOの調べ方、IPOの状況などについてお話ししたいと思っています。

まず、スピーカー紹介です。元機関投資家で、いわゆる資産運用会社でアナリストを、ヘッジファンドでロング・ショートのポートフォリオマネージャーなどを行っていました。最後に勤めていた会社が日本撤退でなくなる時に、今のIR Agentsという会社を設立し、機関投資家経験を活かして、企業向けのIR支援と投資家向けの取材代行やメディア運営を行っています。

また、Twitterをフォローしてくれている方は、アイコンにしているハリネズミを見たことがあるかもしれません。Twitterでは、IRや投資についてお話ししたりしています。

はじめに①

IPOについて、知ってはいるが、株式市場でどのように扱われているのか、ファンダメンタルズ的にどうなのか、ということがわからない人もいらっしゃるかもしれませんので、あらためて、僕が調べてみた「統計から見るIPO」について最初にお話ししたいと思います。

まず、事前のDisclaimerです。思いつく限りでデータを整理してみましたが、株価データはすごく扱いが難しく、相場変動もあるため、「今データを取ってみたら、このような状況でした」ということですので、あくまで参考として見ていただければと思います。

はじめに②

今回テストしてみたのが、上場月や公募時のバリュエーション、初値のバリュエーション、公募や売出の株の比率、時価総額、業種等々です。ぜひ、どれに意味があるか確認していただければと思います。

IPOの値動き

まず、そもそもIPOの値動きはどのようになっているかということで、2013年から2022年のIPO銘柄814銘柄の価格の推移を調査しました。「公募価格を1とした時の推移」ですが、公募価格から初値で50パーセントから80パーセント上がり、初値がついてから1年程度は下げの傾向で、10パーセントから40パーセント、50パーセント下がり、そこから少しプラスに転じるような動きをします。

ただし、個別株の動きの影響が大きいため、個別によっての違いはかなり大きいことはイメージしておいてください。しかし、落ち始めてから1年後くらいに底打ちしてプラスに転じるというのは、個人的な経験と体感とも一致していると思っています。

年別中央値も出しています。その中でおもしろいのは、1年後から3年後で、例えば2013年は公募価格から初値のジャンプは100パーセントとかなり大きかったものの、後半はあまり上がっていません。

一方で、2015年などは、公募価格から初値に向けてあまり株価がジャンプしなかったのですが、1年くらい経ってから株価が上がり始めるような推移を示しています。2017年も公募価格から初値が大変高く上がっていますが、1年後、2年後の株価は底打ちせず落ちが大きかったという数字が出ています。

タイミング的にコロナ禍などもあるため、わからないこともありますが、これが基本的なIPOの動きです。

上場月とIPO①

上場月とIPOについてです。数字の取りにくさもあり、2017年から2022年のIPO銘柄528銘柄について調べています。まず、上場月については、特に3月、6月、9月、12月が多いです。

ここでは、その月の上場数、銘柄数に対するパフォーマンスとして、公募価格から初値になるまでの売上の伸び方がどのようになっているかを調べてみました。すると、銘柄数が多いほど公募価格から初値のギャップが小さいことが明確にわかりました。「銘柄数が多いと分散するから良くない」とよく言われますが、数字的にもこれは本当のようです。

上場月とIPO②

一方で、月ごとの上場数と初値がついた後のパフォーマンスについて調べた結果、どの組み合わせも大きな違いはないと見ています。初値後30日、90日、180日、1年、2年、3年のパフォーマンスのデータを取っていますが、先ほどの「初値でどれぐらい上がったか」に比べると、あまりまとまりがない状況になっている印象です。120銘柄など、銘柄数が多い月ほどパフォーマンスの落ち方が悪いところは少しありますが、公募価格から初値がつく時とは少し違うと思っています。

公募のバリュエーションと株価パフォーマンス

公募時のバリュエーションと株価パフォーマンスについてです。公募価格をその年のEPSとPERをベースにして、どのようなものが上がるか調べてみました。これは大変おもしろかったのですが、上場のタイミングでバリュエーションが高い企業のほうが初値が上がりやすい傾向にあるのではないかと思っています。

個人的な仮説としては、バリュエーションが高い、いわゆる利益の100倍くらいで取引されている銘柄は、成長率が高かったり、AIやテクノロジーなど目を引く事業を行っているため、結果として買いが集まる、という理由があるのではないかと思います。

もう1つは、100倍以上ではお客さまに売りにくいということで、証券会社が本来の価値より低めの価格で出していることを見過ごした投資家が、100倍以上のものはどんどん買ってもまだ安いと見ているのではないかと思っています。

一方で、初値がついた後の株価市場の動きは、バリュエーションを問わずマイナスになっています。バリュエーションが高いほうが若干、落ち幅が大きいように思いますが、初値の状況に比べてパフォーマンスに差はないように見えます。

初値のバリュエーションと株価パフォーマンス

初値の時のバリュエーションとその後の株価の動きに関係があるかどうかです。これは、今まで見てきた関係ほど強くないと思っています。赤字の企業でも同じぐらい下がっていますし、40倍くらいのバリュエーションがあった企業でも下がっています。100倍くらいの企業でもそれほど差がありません。そのようなことから、初値がついてしまった後は、バリュエーションの影響は他のファクターほど大きくないと思っています。

公募・売出の比率と株価パフォーマンス

公募・売出の比率と株価パフォーマンスについてです。「100億円で上場したが、市場での取引は5億円から10億円しかない」という時などに「売出の比率が低い」「売出が絞られている」などと言います。

売出が絞られているほど、公募価格から初値で上がる率はかなり高くなっていることがわかりますが、時価総額に対して10パーセントくらいしか売り出さなかった場合は、公募と初値のギャップが生まれます。また、時価総額の40パーセントくらいを投資家に売り出した場合、公募と初値にはあまりギャップがなくなるという統計的なデータもあります。

一方で、初値がついた後の値動きと同じですが、売出比率、公募比率は初値がついた後のパフォーマンスにそれほど大きな影響をおよぼさないというのが個人的な感覚です。「公募・売出比率×初値後パフォーマンス」は、思ったような数字が出ていないことが分かりました。

時価総額と株価パフォーマンス

時価総額と株価パフォーマンスについてお話しします。売出の規模に通じるところかもしれませんが、公募のタイミングでは、時価総額が小さいほうが初値が飛びやすいです。

一方で、初値がついた後の半年の動きとして、公開後30日のパフォーマンス、公開後90日のパフォーマンス、公開後180日のパフォーマンスを出しましたが、時価総額250億円以下の会社はマイナスが多くあり、時価総額300億円を超える会社は平均的に値を保っているようです。

僕の仮説ですが、時価総額が低い場合は、半年から1年が経つとまったく取引がなくなることを踏まえると、「最初のにぎやかで値上がりしているタイミングで売ってしまって、あとはもう知らない」という投資家が多いのではないかと思います。そうだとすると、初値が出てから半年くらいの動きとしては、株価が小さいほうがパフォーマンスは落ちやすいという状況が生まれるかもしれません。

また、時価総額が小さいと、1,000億円や2,000億円を扱っているような機関投資家は入ってこなかったりします。そのようなことから、時価総額が低いと後追い買いがないということが統計的に数字として出ているのではないかと整理しています。

業種と株価パフォーマンス

業種と株価パフォーマンスについてお話しします。この6年間で10社以上の上場があった業種を抽出しました。分類は東証33業種です。イメージどおりですが、情報・通信業やサービス業は初値が上がりやすいと思います。他はどちらかというと、全体比較で控えめです。ただし、初値がついた後のパフォーマンスを考えると、IPO全体の推移に比べてあまり注目を浴びていないような不動産業や建設業が落ち着いた値動きになっています。

「初値を1とする騰落率」を見ると、約3年間で50パーセントくらい下がっているものもありますが、不動産業は30パーセント、建設業は14パーセントしか下がっていない状況です。ですので、もしかしたら1回値段がついた後は、このあたりは堅く動くのではないかとあらためて思った次第です。

初値パフォーマンスと株価パフォーマンス

初値パフォーマンス、つまり初日に大変多くの買いが集まった銘柄は良いのではないか、人気があるということは後追いで買う人がいるのではないか、と思っていました。

しかし、実際に調べてみると、逆であることがはっきりわかります。初値と公募価格の差が100パーセント以上のところと、100パーセント未満のところ、公募が割れて寄りついたようなIPO銘柄のパフォーマンスをそれぞれ見てみると、初値パフォーマンスが良いほうが、初値がついてから半年くらいのパフォーマンスが20パーセント、30パーセント下がっています。

このようなことを考えると、実は公募価格から初値がジャンプしてついた銘柄は、半年くらいはパフォーマンスが悪い、予後が悪いというデータの整理ができます。

ただし、1年後、2年後、3年後と見ていくと、同じように初値でかなりジャンプした銘柄は良くないことは多いのですが、最初の半年までほどには大きな差は生まれていないと思います。とは言え、最初のところで一気に上がって値段がついたものは、その後は上がりにくいとは見ています。

初値後30日パフォーマンスとその後パフォーマンス

では、初値でジャンプすることが良くないのだとしたら、「初値がついた後、後追いで買ってくる人が多かった場合はどうなるのか?」という疑問が起こると思います。

実際にどうなっているのかをご説明します。初値から30日経った頃のパフォーマンスをベースに、公開後30日のパフォーマンスを調べました。初値がついてから30日で40パーセント落ちた銘柄はどれくらい落ちたか、また、初値がついてから30日で30パーセント落ちた銘柄は、その後どれくらいパフォーマンスが出たかという統計の資料を作りました。

初値がついてから30日のパフォーマンスがマイナスだった企業は、比較的継続して下げ、30日以降も継続して下げるタイプです。

逆に、初値がついてから30日以内で上がった銘柄については、実は、初値がついてから30日以内で、20パーセント、30パーセント、40パーセントと上がった会社も、公開後30日以降では株価を下げています。

すると、結局1番良いのは、10パーセント、20パーセントとじわじわ上がっていくかたちだと思います。結論としては、売られている銘柄がさらに下がる可能性はあると言えます。

ただし、30日で上がったところも、上がり過ぎると落ちてしまう可能性があります。初値から30日と、そこから先の1年間、2年間、3年間のパフォーマンスを見ると、結局、軒並み落ちていたりします。

したがって、今回は、初値の後に買われた・買われなかったという動きは、長期的なパフォーマンスには関係ないだろうという整理をしています。

営業増益と株価パフォーマンス

株価に関してお話ししてきましたが、ここからは利益が動いた時にどうなるのか、ファンダメンタルズについてお話しします。

わかりやすいのが営業増益率です。公募から初値のパフォーマンスについては、上場してから2年くらいで利益が半分以下になった会社があります。公募から初値にかけて、50パーセントから60パーセント弱くらいしか上がっていません。一方で、上場から2年から3年かけて利益が倍以上になると期待されている銘柄は、公募価格から初値の価格が倍以上になっていたりします。

また、黒転、赤転、赤継があり、それぞれ「もともと赤字だった企業が黒字になった」「黒字だった企業が赤字になった」「赤字だった企業が赤字を続けている」という内容を意味しています。

上場から2年から3年かけて赤字を拡大している企業は、マイナス25パーセントとなっていますが、こちらは公募から初値はあまり上がっていません。これに対して、黒字に転じていたり、かなり利益を伸ばしている企業は、公募から初値のジャンプ率がかなり高く出ると整理できます。

では、初値がついた後どうなっているかについてです。黒転、赤転のところは除いて考えるとわかりやすいのですが、数年経って赤字が続き、減益となっています。業績の推移からも、初値から30日経っても、90日経っても、180日経っても、他の銘柄と比べてかなり株価が落ちているケースが統計的に出ています。

一方で、ご覧のとおり、50パーセント以上あるいは100パーセント成長する企業は、減益となる企業に比べれば落ちが少ないことがわかります。むしろ利益が伸びている会社も出てきます。もともと赤字だったのが黒字になる企業だったり、株価が逆に上がるような状況もけっこうあるところを見ると、株式市場は利益を見越して動いていると思うところでもあります。

公開後1年から3年のパフォーマンスでは、もう少し長く見た時の株価の動き方がわかるのですが、よりクリアになっており、3年弱で利益が半分以下になった会社と倍になった会社が明確にわかります。

3年弱で利益が半分になった会社は、株価は50パーセントくらい初値からさらに落ちてしまいます。一方で、利益が倍以上伸びている会社は、40パーセントから50パーセントほど株価が上がっています。

そのような動向から、利益が伸びたら株価が上がるという明確なプラスの関係があると思っています。

逆に、公開後1年から3年のところで、もともと黒字だったが投資などを踏んで赤字になった企業は、かなりパフォーマンスが悪いです。

ここからもわかるように、赤字になるような投資をする企業は、どれほど良い会社で先行投資に取り組んでいても株価が振るわない可能性があります。データを整理して、このように思った次第です。

営業増益と初値バリュエーションと株価パフォーマンス①

もう1つ踏み込んでお話しします。初値の時のバリュエーションのところで、あまり株価に関係ない気がするとお伝えしたのですが、逆に、利益成長を踏まえるとどうなるのかを調べてみました。

ヒートマップを作成したところ、公募から初値のパフォーマンスは、増益はわかっていないためよいのですが、初値から先の、公開後30日のパフォーマンスについては、バリュエーションが低く利益成長が見込まれる会社は、着実にプラスの影響を受けていす。

また、上場時に赤字だった会社でも黒転が期待される会社は、株価が上がっている傾向があります。

全体を見ても、増益であるほど、あるいはバリュエーションが低いほど、株価がプラスになる状況が出ていると思います。

営業増益と初値バリュエーションと株価パフォーマンス②

公開後半年、1年、2年、3年と見ても、基本的にはバリュエーションが低ければ低いほど、また、黒転する関係が見えれば見えるほど、相対的に増益になる環境になっていると思います。ただし、こちらのデータではサンプル数が少ないので、あくまでも参考程度に捉えています。

まとめ

まとめると、小賢しいことは考えていないで「ちゃんと増益してバリュエーションもまとも」なIPOを探すことが、基本的に大事なところだと思っています。

ただし、あらためてご説明したいのですが、今回はデータがないため、ロックアップやIPO後の需給の動きなどについてはあまり触れていません。このあたりは、分析が得意な方は得意だと思うのですが、今回は触れないということでご理解ください。

まとめとしては、「月内上場銘柄数は関係ありそう。公募価格のバリュエーションも関係ありそう。初値のバリュエーションはあまり関係なさそう。公募売出比率は関係ありそう」としています。

以上が、この20年から10年くらいで見た時のIPOの状況です。

IPOの流れ

では、これらを踏まえた上で「ちゃんと増益してバリュエーションがまともなIPOってどうやって探すのか?」という内容についてお話しします。

まず、IPOの流れについて簡単にご説明します。実は正直なところ、IPOを調べるための情報ソースはかなり少ないと思っています。かつ、上場承認というプロセスが問題になってきます。

東証から「この会社を上場させます」というアナウンスがあってから、企業は投資家回りをするのですが、その時に個人投資家は、この投資家回りには入れません。ロードショーと言うのですが、このロードショーを受けられない投資家が集められる情報には限界があるというのが、もともと機関投資家にいた身からすると強く思うところです。

僕は実は2020年から2021年までのIPOロードショーにほぼ全部出ており、お話を聞いているのですが、その経験から、ロードショーに出ている方に、情報量ではまず勝てないというのが実情だと思っています。

ロードショーに出ている方は、社長と1対1で話し、詳細なビジネスモデルや中長期の見通しを聞いているため、書類だけで調べた方とは考えの深さが違ってきます。ここはもう勝てないところだと踏まえた上で動いたほうが良いと思っています。

あらためて、プロセスについてご説明します。上場承認があり、「この企業を上場させます」というアナウンスがあったら、東証の新規上場一覧に、「会社概要」「Iの部」「確認書」などが掲載されるようになります。また、「EDINET」にも資料が掲載されます。そしてロードショーがあり、機関投資家とあって、価格が決まります。

そして企業が「OKです」と言ったら、上場になります。グロース市場であれば、みなさまもよく見たことがあるかもしれませんが、成長可能性説明資料が当日の朝に掲載されます。

目論見書

では、IPOを上場前に調べようとした時に何で調べれば良いのかについてですが、今日は「目論見書を読んでいきましょう」というお話をしたいと思っています。見る情報は人それぞれですが、個人的にどの情報をチェックしているかについてご説明します。

みなさまも見たことがあるかもしれませんが、「新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)」は、証券取引所が企業を上場させるかどうかを決める審査のために、企業に提出させる資料です。

なお、「IIの部」もあり、「Iの部」以上に細かい内容も書かれているのですが、これは投資家が目にすることはあまりないため、気にしなくて大丈夫です。

この「Iの部」に、「証券情報」というIPOに関する情報、例えば「何株売り出します」「どれくらい調達します」「誰が売ります」という情報を加えて書いたものが、目論見書になっています。僕は「Iの部」よりも、この目論見書のほうが好きです。では、なぜ目論見書が好きなのか、その理由についてご説明します。

目論見書の良いところ①

目論見書の良いところは、「Iの部+証券情報」が基本になっている点です。この「証券情報」がいろいろな箇所に掲載されており、「何株新しく発行するのか」「誰が何株売り出すのか」「ロックアップの状況はどうなっているのか」という情報の原典にもなると思っています。

情報は確実に原典を確認できるようにしておいたほうが有利になると考えており、このあたりが目論見書を好きな理由の1つになっています。

目論見書の良いところ②

目論見書を好きな理由のもう1つが、先ほどの「証券情報」が載っている、最初の部分にあります。

「証券情報」の後、「Iの部」と同じく「企業情報」が続くのですが、「EDINET」掲載の目論見書には、カラーで見やすい事業の概要ページが、5ページから10ページくらい載っています。ここを通覧すると、経営理念から事業モデル、過去の推移がよくわかることが多いので、僕は企業のことをさっと確認する時には、ここを一度見るようにしています。

僕としては、この2つがあるところが、「EDINET」から確認できる目論見書が良いと思う理由です。

目論見書の取り方①

この目論見書をどのように取得し、確認するかについてですが、まず「東証 新規上場」で調べると、一番上に「新規上場会社情報」が出てくると思います。

この「新規上場会社情報」のページの中の「Iの部」にあるPDFファイルを開くと、先ほどのような「Iの部」のページが見られるようになっています。これを取って満足してもよいのですが、今回は目論見書を見にいきたいと思います。

目論見書の取り方②

目論見書を取る時に検索するのは、「新規上場」ではなく「EDINET」です。「EDINET」で検索すると、金融庁の「Electronic Disclosure for Investors' NETwork」というシステムにつながります。すべての企業がここに目論見書を提出しています。

目論見書を取るには、まずこの「EDINET」で検索し、出てきたページを下にスクロールしていくと、「書類検索」というところがあります。ここから書類の詳細検索ができるようになっていますので、この「書類詳細検索」をクリックしてください。

目論見書の取り方③

「書類詳細検索」をクリックして出てきたページで、例えば、「書類提出者情報を指定する」というところの「提出者名称」に、欲しい企業の名前を入力して検索します。

今回は2022年12月19日上場のトリドリさまで検索しています。社名を入力すると画面が変わり、検索結果が出てきます。その中に、「有価証券届出書(新規公開時)」があります。これが目論見書になっています。

目論見書の良いところ①

この「有価証券届出書(新規公開時)」を開くと、先ほどお話ししたような証券情報の内容などが簡潔にまとまっています。

目論見書の良いところ②

しかも、カラー印刷で事業概要なども見られるようになっています。今回、興味のあるIPOがありましたら、ぜひご覧ください。

目論見書の見るところ ―沿革―

目論見書は非常に文章量があります。どこを見ればよいかについても、今日は1つずつ挙げていきたいと思います。ただし、どこを見るかは、個人的に僕が思うところのご紹介となります。人によっては「俺はこれに注目している」「僕はこれは見ていない」などがあると思いますが、儲かるためであれば何を見ても・見なくてもよいと思いますので、参考意見の1つとして聞いていただきたいと考えています。

まず、目論見書で見ている点の1つ目は「沿革」です。これは特に投資家によりますが、僕は企業がどのようなところからスタートしたのかを知ることで、企業活動でどのような課題を解決しようとしているのか、企業の強みの由来は何か、他社との関係性がどうなっているのかなどを把握しています。これは教えられたことでもあり、また自分でも納得していることでもあります。

例えば、スライドに記載しているAIメカテックさまは、名前だけを聞くと「AIの会社なのかな?」と思います。しかし、実は沿革を見ると、日立製作所さまの竜ヶ崎工場が事業再編の過程で分社化された日立系列のところだとわかります。

なお、PDFファイルで「Ctrl+F」をして「沿革」と検索すると、沿革ページに辿り着きます。

目論見書の見るところ ―「事業の内容」―

目論見書には「事業の内容」も載っています。事業の内容や事業モデルを確認したい場合に、真っ先に見るのがこのページです。開示されているときは、重要なKPIなどもここに載っています。

スライドはtriplaさまという会社です。triplaさまの事業内容の中には、例えば、お客さま1人あたりの単価やお客さまの数なども書いてあります。「このようなものが大事な数字なんだな」というのを確実に把握できるのがよいところです。

目論見書の見るところ ―「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業のリスク」―

次に見るところは「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」です。この項目で検索して出てくるものを、僕は非常に読み込んでいます。

何が書かれているかと言いますと、会社の目指すところは何か、市場環境がどうなっているか、中長期的な戦略、投資するフェーズであるか否か、何が成長のための課題なのかなどが全部載っています。そのため、事業モデルと掛け合わせての確認が必須だと思っています。

スライドはベースフードさまのものです。上場審査の過程で、自分たちがどのような市場にいるのかについて絶対に説明しなければいけませんので、その内容は必ず目論見書に載っています。

「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」という章の中の「経営環境」のところで、この市場についてよく説明されています。これを通して、市場のポテンシャルがどれだけなのかがわかり、企業が大事にしている方針や課題にしているものもわかると思います。

目論見書の見るところ ―「役員の状況」―

続いて、「役員の状況」です。日本の場合、上場してくる会社のほとんどが非常に小さな会社です。その場合、マネジメントがどのような方で、どのような経験があるのかということが大変重要な競争力になるのではないかと思っています。そのため、「この人はどのような経験で、どのようなルートでこの会社を経営するに至ったんだろう」というところを非常に注目して見ています。

例えば、スライドのサインドさまは、去年上場した、理美容向けの予約管理システムの会社です。見ていただくとわかりますが、役員のほとんどが、手間いらずという会社の出身です。実はこの会社は、ホテル業界でサイトコントローラーという同じようなビジネスをしています。

この手間いらずという会社は、高収益性でコンパクトな事業体として知られています。「もしかして、似たようなことをやろうとしていますか?」「経験はかなり豊富でいらっしゃいますよね?」というかたちで、マネジメントのスキルセットなどを見ています。

また、営業関連の会社で光通信さまやリクルートさま、キーエンスさまなどの出身の方がマネジメントだと「安心感あるよな」などと勝手に思ったりしています。

目論見書の見るところ ―「売上原価明細」「販管費明細」―

「売上原価明細」や「販管費明細」からコスト内訳の把握もしています。コストの内訳を把握することで、何がコストで何が大事なのかという本当のビジネスモデルの発見にもつながるのではないかと思っています。特に製造業では確認したいところです。

目論見書の見るところ ―「主な資産および負債の内容」―

「主な資産および負債の内容」の中でも、特に「売掛金」「買掛金」の「相手先別内訳」が使えると思っています。これはどのようなものかと言いますと、直接サービスを売っているのはどこの会社で、そのサービスを仕入れているのはどこの会社なのかなどがわかります。

スライドのeWeLLさまという会社のお客さまの中に、実は今年上場したサンウェルズという会社があります。サンウェルズはパーキンソン病の患者向け施設を運営しており、高成長している会社です。「サンウェルズが伸びれば、eWeLLも好影響を受けるのではないか」というように、お客さまの状況から将来の状況を把握することができます。このようなことにも使えるため、「主な資産および負債の内容」は、非常に大事なものだと思っています。

他にも確認したいところはありますが、ひととおりよく見ているのはこのあたりです。

その他の情報源 ―東京IPO―

その他の情報源としては、例えば、「東京IPO」をよく確認しています。何を見るかと言いますと、企業によっては上場するタイミングでの業績予想を開示しています。これはなかなか見つからないのですが、大変重要だと思っています。

これを探そうとしたときに、よく見つかるのが「東京IPO」です。「東京IPO」のIPOのページにいき、右上の「開示情報」をクリックします。開示情報の中の「開示情報速報サービス」に、例えば「○○年○月期の業績予想についてのお知らせ」というシリーズを見つけることがあります。そこをクリックすると、当期の予想が出てきます。

ここに「このような状況でこう思っています」などと書いてあることがあります。これを丁寧に読み込むと「順調にいっているんだな」、もしくは「これって実は上方修正するのではないか」ということがわかる資料となっています。

その他の情報源 ―KxShare IPO Consensus―

また、財務データを引っ張ってこようとする時に、KxShareさまの「IPO Consensus」の使い勝手が非常によいため、最近はよく使っています。例えば、目論見書についても、先ほどお話ししたとおり、「Iの部」ではなく「EDINET」版を持ってきているため、「わかっている方の所業だな」と思っています。

こちらはTwitterにもいらっしゃるさんまさんなども管理されています。財務データをクリックすると、四半期の財務データや通期の財務データが取れます。また、今までどのように伸びてきたのかなども取れます。そのような意味で非常に使い勝手がよいため、売上利益の動向などから正確に把握したい方は、ぜひ「IPO Consensus」を使ってみてください。

その他の情報源 ―Stock Voice―

よく見ている方もいらっしゃるかもしれませんが、「Stock Voice」もよく見ます。上場したタイミングでIPOのトップインタビューなどもしています。社長の人となりが見える数少ない情報ソースだと思っています。

「どういうことをしたいと思っている」「このようなところに取り組んでいる」というところをいろいろ話してもらえるため、「社長の人となりが知りたい」「何を考えているのかを知りたい」「どのようなビジョンを持っているのか知りたい」という時には、非常によい情報ソースだと思います。

以上が、情報源としておおよそ使っているところになります。その他にも「株探」や、いろいろなIPOのまとめサイトなどがあると思います。僕であれば、IPOのまとめサイトといえば、「やさしいIPO株のはじめ方」が思い浮かびます。パッと見て、時価総額や、想定の株価、業績などが一目でわかるようにまとまっていてよいと思います。

その他の情報源 ―東京IPO―

先ほどは開示情報を見るためだけにご説明したのですが、「東京IPO」はページの下にいくと、決算期の財務データや何株売出かということもいろいろ書いてあります。非常に使い勝手のよいサービスだと思っています。

おおよそこのあたりが、今回のテーマである「IPOの情報の取り方」となります。目論見書の見方や、IPO情報を取れるサイトとして「東京IPO」「IPO Consensus」「Stock Voice」などをご紹介しました。ご質問がある場合は、Twitterの質問箱にお願いします。

宣伝① 事業概要

あらためて、僕の会社「IR Agents」が何をしているのかをお伝えします。上場企業や非上場企業向けにIR支援をしています。加えて、個人投資家・機関投資家向けの取材代行や、会員制メディアを運営しています。

企業側の懸念を解消しながら機関投資家の取材並の情報取得を実現

具体的には、企業が何を考えているかを直接取材して聞いてくるというのがポイントになっています。ただし、「競合に知られるかもしれないことを話すわけにいかないじゃないか」という会社もあるため、会員登録していただく方には、どこの業界や会社にお勤めかをあらかじめ確認した上で、IR取材の記事を共有するようにしています。

取材内容については、もちろん会員のみなさまからのリクエストもありますし、僕自身が決算を読んでいるため、「おもしろそうだな」と思った会社に勝手に話を聞きにいき、「この会社に取材に行きました」とすることもあります。

「アイデア」からの銘柄探しをサポート

目指すところは、「株探」や「四季報」「Yahoo!ファイナンス」などのように、すべての銘柄からアイデアを探して投資対象を探すのではなく、僕に「この企業を取材してきてください」というお話をしていただいて取材し、そのアイデアの芽を深掘りできるような取材情報にしてお渡ししていくことです。いずれは、会員の投資家のみなさまが、その取材情報というアイデアの芽から投資対象を探すことのできるプラットフォームを目指したいと思っています。

サービスイメージ・現在の状況

サービスのイメージとしては、ブログのようなところから、「この四半期はどのような決算ですか?」「このくらいの取材件数がありました」「粗利候補資産ってなんですか?」「このような理由です」というQ&A資料のような記事を見られるようになっています。

今の取り組み状況としては、しばらくは決算後の取材やセミナーなどもあり、下書き中になっていますが、アイドマ・ホールディングスさま、CS-Cさま、グッドパッチさま、ロードスターキャピタルさま、ポートさま、Enjinさま、セルシスさま、i-plugさま、THECOOさま、ストライクさまなどのたくさんの会社で取材済みです。さらにまだ取材を控えており、リクエスト中です。気軽に登録してリクエストしていただければ、すぐにコンタクトを取ろうと思っています。

登録はこちらから

最後に、登録と価格についてです。基本的には四半期で3,000円をいただいています。見ただけで投資に紐付く情報にまで掘り下げられるサービスをイメージしています。そのような意味で、こちらにご登録いただけると、僕のほうでも丁寧にいろいろ調べたいと思いますので、よろしければQRコードからご登録いただけるとありがたいです。

これでひととおりのお話ができたと思います。本日はお時間をいただきまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。