多様性&ガバナンス重視の経営

平野洋一郎氏(以下、平野):それでは、私からアステリア株式会社のご説明をします。どうぞよろしくお願いします。

当社は、企業向けのソフトウェアを開発している東証一部上場の会社です。ソフトウェア開発だけでなく、それを支える事業としてデザイン事業、投資事業も行っています。経営陣の多様性と、創業時から変わらないガバナンス重視の経営姿勢が特徴です。

アステリアの主力事業①

主力事業は、企業向けソフトウェアの開発と販売です。大きな特徴としては受託開発を一切行っていないということがあげられます。

この事業を支えているデザイン事業は、2017年に英国の会社を買収してスタートしました。また、2019年にはアステリア本体から投資を独立させ、米国を拠点に投資事業も開始しました。

アステリアの主力事業②

デザイン事業も投資事業も、ソフトウェア事業の成長を支える事業という位置づけです。実際に、全売上の85パーセントがソフトウェア事業で、デザイン事業は15パーセント、投資事業は売上がなく損益のみの事業となっています。

主力事業の構成

各事業についてご説明します。ソフトウェア事業には4つの主力製品があります。こちらは1998年の創業時から行っており、東京を拠点として世界に向けたソフトウェアの開発と販売をしています。

デザイン事業については、ロンドンにある会社を買収し、現在でもロンドンを主要拠点としてEU、米国、東南アジアなどで展開しています。

投資事業については、当社の4D(Data, Device, Decentralized, Design)という戦略にフォーカスした投資を2019年から行っています。

また、短信や有価証券報告書などのセグメントということでは、ソフトウェア事業とデザイン事業を合わせて、ソフトウェアセグメントと呼んでいます。

主力製品 Warp

1つ目は、主力製品「ASTERIA Warp(アステリアワープ)」です。これはコンピュータ同士をつなぐ製品で、最大の特徴はノーコードということです。

「ノーコード」とは

最近は、ノーコードという言葉を聞く機会が増えてきました。普通はコーディング(プログラミング)を行ってコンピュータを制御しますが、ノーコードの場合、スライドの右側のようにアイコンを並べてフローチャートを書くことでコンピュータ同士をつなげることが可能です。

Warpの確固たる実績

「ASTERIA Warp」は、すでに1万社近い企業で導入され、販売パートナーは国内有数のシステムインテグレータに担っていただいています。直近15年連続で、市場シェアNo.1のデータ連携ソフトウェアになっています。

API時代の要となるWarp

これからは、つなぐ時代になっていくと思います。業界の方であれば、アプリケーション・プログラミング・インターフェースを略したAPIという言葉を聞いたことがあるかもしれません。

これはいろいろなソフトウェア、サービスをつなぐことを前提とし、名称のとおりプログラミングによってつなげますが、プログラミングはエンジニアでなければ難しいのが現状です。これをプログラミングではなく、ノーコードでつなげられるというのが「ASTERIA Warp」の特徴です。今後は、ソフトウェアやサービスだけでなく、いろいろな技術ともつながっていく考えです。

Platio(プラティオ)

2つ目は「Platio(プラティオ)」という製品です。こちらもノーコードでモバイルアプリを作ることができます。今や、大半の方がスマートフォンをお持ちだと思いますが、現場でそのままシステムとして活用できるアプリを作ることができるのが「Platio」です。3日もあれば簡単に、素早くスマホアプリやタブレットアプリを作ることができます。

こうしたアプリを作るとなると、通常最低でも1ヶ月から数ヶ月、そして数百万円もの費用が必要です。しかしながら、Platioは初期費用は不要で、月額2万円から使うことができるだけでなく、いくつでもアプリを作ることができます。

すぐに作れる理由は、最初から100種類以上のアプリのテンプレートがあるからです。それを自社の業務に合うようにカスタマイズするだけでよいため、プログラミングは不要ですぐに作れます。

躍進するPlatio採用事例

「Platio」は、すでに多くの企業で利用していただいており、京セラのような大企業だけでなく、個人経営のラーメン店、学校などでも使われています。

史上最大のプロモーション①

「Platio」は他にまだ例を見ない製品ということもあり、より多くの方に知っていただくため、現在テレビCMを流しています。テレビCMはすでに第3弾で、「鬼滅の刃」の声優である日野聡さんを起用するなど、多くの方に認知していただけるような展開をしています。それでは、実際に見ていただけますでしょうか。

登場した猫は「プラティ男くん」という名前で、声を担当しているのが「鬼滅の刃」で「心を燃やせ」という有名な台詞を担当している日野さんです。

史上最大のプロモーション②

テレビCMだけでなく、駅貼りやサイネージなどでも展開しており、認知度をさらに高めるための活動をしています。

現場のノーコードの主役 Platio

さらに、日本経済新聞での15段カラーの記事広告の展開や、サイボウズの青野社長との対談もしました。これからはノーコードが主役になるといったアピールをしています。

Gravio(グラヴィオ)①

3つ目の製品は「Gravio(グラヴィオ)」です。証券市場について詳しい方であれば、IoTという言葉は聞いたことがあると思います。いろいろな周辺機器、センサーなどを扱う「Internet of Things」を略したのがIoTです。

「Gravio」ではAIを扱えます。しかも、クラウドコンピューティングの次の段階と言われるエッジコンピューティングという方法で動かします。我々はそのエッジコンピューティングとミドルウェアをくっつけて、エッジウェアと呼んでいます。

この製品についても、当社の全製品に共通するノーコードが特徴です。さらに、最初からセンサーなどがついており、ソフトウェアを購入すると、ハードウェアがついてくるという非常に珍しいかたちになっています。これはすぐにつなぎ、すぐに使えるようにするためです。

さらにAIについても、当社のものだけでなく、台湾最大のAI企業であるGorilla Technology Inc.(Gorilla社)とも連携し、静止画ではなく人が動いている状態でも顔を認識できる動画AIを搭載しています。このように「Gravio」は、次世代の「つなぐ」ソフトウェアとして展開しています。

Gravio(グラヴィオ)②

より多くの方に知っていただき、触れていただくために、LINE WORKSとの連携機能を開発。さらにパートナー企業として全国に展開しているCTC、鹿児島のデンセツ工業など連携し、製品を展開。多くの導入事例が出てきています。

Gravio 導入事例

豊洲にある、やまもと眼科というクリニックでは、待合室の待機人数をAIで判定しています。クラウド上に写真をあげるのではなく、エッジコンピューティングのため、クラウドを経由せずその場で待機人数を判定し、クラウド上にはその数字だけをあげるかたちになっています。プライバシーを完全に守れるだけでなく、サイバー攻撃による情報漏洩の心配もありません。それらがエッジコンピューティングの特徴です。

また、「Gravio」にはCO2センサーがあります。さらに人感センサーを設置すれば、人の動きや空気の対流などもわかります。また、その場の情報を得られるだけでなく、ログを取ることもでき、履歴から分析をすることもできるのです。

アスリートを靴で支えているアシックスの事例ですが、オリンピックなどの世界大会では、靴底の厚さが厳密に決められています。これまではノギスで手作業で測定していましたが、「Gravio」の距離センサーを使用することで正確な計測が可能となりました。

新製品「Handbook X」提供開始

最後は「Handbook」についてです。最新バージョン「Handbook X(ハンドブック エックス)」は、2022年2月28日から出荷を開始しました。この製品はいろいろな場面で使うことができますが、ローンチにあたっては、商談にフォーカスしてアピールしています。

「Handbook X」は、社内にあるさまざまな情報、コンテンツ、ファイルと現場とをつなぐ製品です。情報をシェアすることができるため、ニューノーマルの新しい働き方に大変適しています。新しい働き方の中には、個人事業主の働き方、副業、またコミュニティベースといったいろいろな働き方があります。

個人から企業まで対応したさまざまなラインナップがあり、あらゆる規模、あらゆる業種で利用できる製品となっています。

アステリア史上最大のプロモーション

現在、当社史上最大のプロモーションを行っているところです。すでにテレビCMを見たという方もいると思いますが、今後はキー局だけでなく地方局にも展開していきます。JRの主要駅などでの駅貼り、サイネージ、タクシーなど、首都圏だけでなく地方にも積極的に展開していきます。

我々が得意としているインターネットやデジタルでの展開についても、これまでしてこなかったキャンペーンを実施しています。業種、業態に関係なく商談というものは欠かせません。そのCMもご覧いただきましょう。

「Handbook X」の用途は多岐に渡りますが、特に商談というところにフォーカスしています。現在、対面による商談だけでなく、オンラインでの商談も増えています。自社のプレゼンだけでなく、例えば映像を使う場合、Zoomで切り替えながら説明するのはかなり面倒で、手間取っている方もいます。「Handbook X」はそのようなことがなくスムーズに、ストーリーで表現できるのです。

坂本:2月28日に「Handbook X」を発売されたとのことですが、どのような市場を狙っているのですか? テレビCMを見てイメージがわいた方もいると思うのですが、もう少し詳しく教えてください。

平野:まず、こちらは汎用のソフトウェアです。そのため、市場としてはファイルや情報を共有するようなところ、オンラインで共有するようなところ、もしくはモバイルで共有するようなところであればどこでも構いません。

また、商談に絞ってアピールをしていきたいと考えています。実際の市場感としては、大企業からフリーランスまでと、いろいろな商品ラインナップを用意しています。

フリー版もあるため、フリー版にて無料でお試しいただくことから、企業など大規模な用途ではユーザーの管理機能をご利用いただくことまでできます。

坂本:そうすると、既存の営業支援ツールみたいなものもその中に入るということでしょうか。

平野:そうではありません。これまでの営業支援ツールは、実質はほとんど営業管理ツールであることが多く、会社が管理する、状況を把握するためのツールとなっていました。「Salesforce」の管理ツールが代表例です。

一方「Handbook X」は現場のフロントにおいて、商談そのものを補助するため、これらのツールと共存します。管理ツールはたくさんありますが、それらとは一線を画し、フロントの現場を助けるツールとなっています。

坂本:CMの中でいろいろなところから資料を出してきて困っている人がいましたが、最初に平野さまがおっしゃっていたとおり、そのあたりをしっかりと出して、プレゼン力を高めるということでしょうか?

平野:おっしゃるとおりです。しっかりとストーリー立てして、スムーズに出すことが可能になるということです。

デザイン事業 デザイン戦略コンサル企業買収の狙い

平野:次に2つ目の事業であるデザイン事業についてご説明します。先ほど申し上げたとおり、こちらは5年前の2017年に企業買収してスタートした事業です。

ソフトウェアとデザインはかけ離れていると思われるかもしれませんが、私たちにはねらいがあり、今後は企業向けソフトもデザインファーストになっていくだろうと確信しています。

以前は、IT部門が何ヶ月もかけて検討し、何ヶ月もの製作期間を経て企業向けソフトをリリースしていました。しかし、今や企業向けソフトもクラウドサービス、アプリになっており、IT部門が何ヶ月もかけなくても現場ですぐに使ってみることが可能となり、企業向けソフトの選び方は個人ソフトに近くなります。

IT部門のように100も200も機能チェックしないため、使い勝手やフィット感、そして自分の仕事が正しく入っているかどうかという部分が重要になります。Excelと同じような感覚です。普段Excelを使う際、いくつくらいの関数を使っているでしょうか? 

坂本:日常的に使うのは10から20くらいで、それで仕事が終わります。

平野:企業向けソフトも実際は機能が何百もありますが、同じです。IT部門は全部の機能を確認します。一方、現場は自分のことに使えれば使い勝手や使いやすさの方がよほど重要になってきますので、企業向けもデザインファーストが大事なのです。

だからこそ私たち自身も、世界に通用するデザインを作っていきたいと考え、デザイン会社を買収し、デザインファーストのソフトウェア作りに取り組んでいます。

坂本:買収されたデザイン会社は、たしか世界の名だたる企業とお仕事されているとお聞きしています。

平野:こちらには書いてありませんが、日本でも知られている「Samsonite」「T-Mobile」、英国の「Coca Cola European Partners Ltd」さらに「Ballantine’s」「BP」といった、ワールドクラスの企業が認めるようなデザインができる人材がここに在籍しているということです。

成長戦略「4D」にフォーカスした投資

続いて、3つ目の投資事業についてお話しします。こちらはソフトウェア開発の成長戦略「4D」と合致させたフォーカスの投資になります。スライド左上でも紹介していますが、「4D」とは「Data」「Device」「Decentralized」そして「Design」を表しています。

IT業界は、毎年のように新しいキーワードが出てきては消えていきます。バズワードとも言いますが、「4D」はこのようなものに左右されない10年単位の成長基盤です。私たちはここに根ざして研究開発を進めており、「ASTERIA Warp」は販売を続けて、もう20年になります。「Handbook」も13年です。大事なのは、このように基盤的な技術に根ざしている点です。

外のチームや技術も取り入れていきたいというところから、米国テキサスのプレイノに投資を専業とする会社を設立しました。さまざまな経験、多様性を持った投資委員会メンバーで判断している状況です。こちらについては、のちほど最新状況をお話しします。

決算概要2022年3月期 第3四半期決算

次に直近の決算状況についてご紹介します。私たちは3月期ですので、直近の決算とは第3四半期決算、つまり12月末決算となります。この第3四半期は一言で言えば増収、そして非常に大きな増益で、上場来最高益を記録しました。

それぞれの背景ですが、増収に関しては、デザイン事業は減収でしたが、ソフトウェア事業が好調でした。そして上場来の最高益に関しては、ソフトウェア事業だけでなく投資事業も好調だったことから大幅な増益となっています。

各事業の第3四半期

それぞれの第3四半期についてご説明します。まずソフトウェア事業ですが、こちらは前期比で14.4パーセント増です。「ライセンス」という販売形態が絶好調でした。さらに、最近始めている「サブスク」も順調です。残念ながらデザイン事業は前期割れとなっています。こちらは海外でのみ展開しているため、海外のコロナ禍によるお客さまのダメージが影響しています。そして、投資事業は売上のない事業であるものの、第3四半期に新たにJPYC株式会社(JPYC社)という投資先の評価益も追加計上しました。これにより利益は6億9,500万円の評価益を計上しています。

トップライン(売上)が2桁増

ソフトウェア事業の伸びが非常に著しくなっています。その背景ですが、先ほど申し上げた「ASTERIA Warp」のライセンスがテレワーク対応、法律改正によりニーズが増加しました。さらに新製品の「Platio」「Gravio」においても、コロナ禍における自動化、遠隔化へのニーズ増加が背景となっています。

Warpのライセンスが絶好調

「ASTERIA Warp」のライセンスがどのくらい絶好調かといいますと、売上33.4パーセント増と、かなり伸びてきています。売上が伸びてくると伸び率は下がるのが一般的ですが、第3四半期に33.4パーセントも伸びたことはこれまでありませんでした。さらに、力を入れているサブスクも売上3割増と非常に伸びており「ASTERIA Warp」全体の売上において15億円突破も上場来初のことです。

坂本:「ASTERIA Warp」の過去最高売上の原因として何があったのでしょうか?

平野:原因の1つはコロナ禍による追い風です。特に私たち自身はサブスク、いわゆる月額課金に力を入れていますが、コロナ禍でもすぐに対応しなければならず、新しく単年度予算でコロナ予算がついたところは、割とライセンスを選択されます。一方、しっかり考えて複数年度で提供できるところはサブスクになり、両方が伸びている状況です。

坂本:他社はサブスクに進むことが多いですが、両方のバランスをとり、大きくしていくイメージでしょうか?

平野:中長期的にはサブスクのほうが大きく伸びると思われるため、力を入れていますが、世の中の変化が激しい時に両建てで持っていることが強みになっています。やはりミックスの割合がどう変わろうとも伸びていくということです。

サブスク製品のMRR

当社は4製品のサブスク製品があります。「ASTERIA Warp」内の「Core」という製品はサブスクが100パーセントとなっています。そして、「Handbook」「Platio」「Gravio」とスライドにグラフがありますが、各MRRに関するグラフを見ていただくとおわかりのとおり、破竹の勢いで伸びています。

中でも「Handbook」は、販売から13年経ったこともあり横ばいが続いていましたが、2月末に新バージョン「Handbook X」が登場しました。これからMRRを上昇させていこうと、当社史上最大のプロモーションを実施中です。

顧客のコロナ禍の影響を抜けきれず

デザイン事業の状況についてお話しします。先ほど「多少売上が下がった」とお伝えしました。通期の第1四半期、第2四半期、第3四半期を足し合わせると前期を下回っていますが、スライド右下にある四半期毎のグラフをご覧ください。

赤い点線で囲んだ部分のとおり、この第3四半期にぐっと戻しています。前年の第3四半期より少し上にあります。前年から下がり気味だった勢いが、新たに折り返す兆候ではないかと期待しているところです。現時点では英国、香港、米国で展開しています。中期経営計画が第2年度目に入るのですが、実は中期経営計画期間中に日本でもこのビジネスを始めますので、それも積み増しになっていくところです。

投資事業 Gorillaに続きJPYCも評価益計上

投資事業は大きな利益を上げています。先ほどもお伝えしたとおり、第3四半期末時点でスライドにお示しした4社へ投資しています。まず「Gorilla社」は台湾のAI企業です。第2四半期の段階で評価額を入れており、増加しています。

スライド中央下にあるオーストラリアの「Imagine Intelligent Materials Limited(Imagine社)」は「グラフェン」という新しい炭素素材を使った会社です。コロナ禍の影響を受け、残念ながらかなり事業が進まなくなってしまったため評価額を減少させており、すでに当社で全額償却済みです。つまり、これから先どのようになっても評価減になることはない状況です。

新たな投資先が、日本の「JPYC社」という会社です。これは日本円(JPY)に対して価格が一定である「ステーブルコイン」という暗号資産のようなものを発行している会社になります。JPYC社は米国の「USDC」というステーブルコインを発行している会社から出資があり、評価額が増加しているところです。

「Workspot, Inc.(Workspot社)」は、今のところ評価額の増加はありませんが、ビジネスそのものが1,500パーセント以上伸びています。デロイト トーマツ社の「Technology Fast 500」に選出されるなど、今後が期待できる会社です。

Gorilla社がNASDAQ上場を発表

さらにニュースとしてGorilla社が12月末に米国NASDAQへの上場予定を発表しました。上場時期は現時点で第2四半期、つまり4月から6月の間と発表されています。それに必要なPIPE(Private Investment in public equity)投資、いわゆるIPO投資のようなものの調達確保も成功しているとのことで、本当に待ち遠しい状況です。

坂本:台湾のAI企業Gorilla社ですが、上場後に評価益が計上されるかと思います。2021年度、2022年度において、同社に関わる評価益はどのくらいになるのか、イメージで構いませんので教えてください。

平野:上場後の価格は株価ですからなんとも言えません。ただし、日本でも上場時に時価総額が出ますが、上場時の価格はGorilla社全体で7億800万USドルと発表されています。そのうち当社の持っている割合が15パーセント弱ですので、それである程度は計算できると思います。

最終的には厳密な計算がありますが、現在の見込みでは今期には38億円を計上する予定で、上場後の残り分は来期に計上するかたちになります。

坂本:2021年度、2022年度に計上する予定ということでしょうか?

平野:ちょうど期をまたぐかたちになりまして、2年度、計上できることになります。

AVF-Iの新規投資先

さらにニュースがあります。第4四半期ですが、後発事象的に新たな出資先があり、1月末に「SpaceX社」に約2.3億円を投資しています。

ロケット打ち上げ事業が有名

イーロン・マスク氏が率いるSpaceX社はロケット打ち上げ事業の会社として有名ですが、私たちが注目したのはそこではありません。

分散型衛星インターネットに着目

SpaceX社ではもう一つの柱となる「Starlink」事業を扱っています。事業内容は分散型の衛星インターネットになります。地球上を取り囲むように数万機の衛星を打ち上げ、地球上のどこからでもインターネットが使えます。

スピードも今までの衛星インターネットと異なり4Gクラスを実現しており、すでにベータ版に入っています。最近では「ウクライナ危機」に非常に役立ったというニュースがありました。

坂本:映像が鮮明に映っていて、通信もかなり速いですね。

平野:ウクライナはもともとベータ版対象ではありませんでした。しかし、ウクライナのデジタル担当相であるミハイロ・フェドロフ氏がイーロン・マスク氏にTwitter上で「繋いでくれないか」とつぶやき、イーロン・マスク氏が「わかりました」と了承したのです。その結果、1日で「Starlink」サービスがウクライナでも使えるようになりました。

このようなことができるのも衛星インターネットだからです。普通のインターネットのように基地局を立て、線を引いていると何ヶ月もかかります。それに、戦場に行くわけにはいきません。このように役立つのが「Starlink」なのです。

SpaceXを加えて出資先は5社に

こうして、お示ししたスライドのようにSpaceX社を加え、現在の投資事業における出資先は5社となっています。

坂本:SpaceX社についてわかりましたが、御社におけるSpaceX社とのシナジーについてどのようなことをお考えですか?

平野:出資額の2.3億円はSpaceX社からはそれほど大きい数字ではありませんが、私たちとしては、例えば先ほどご紹介した「Platio」というモバイルアプリや「Gravio」を活用した時のことを考えています。モバイルですので、山の中など、どこにでも持っていけますが、今までも温泉のお湯が出るところでの検知などをやろうとして、電波が来てないために諦めたという事例が度々あるのです。しかし今後は、世界中どこでもOKになります。

飯村:秘境のような温泉には、電波がまだ来ていないようですね。

平野:おっしゃるとおりで、人が行かないところには電波は届いていません。「人口カバー率が何パーセント」という話は人がいるところのカバー率であり、当社は人がいないところもカバーできるのが特徴です。そのようなところもつないで、そこに使えるソフトウェアなども届けていきます。

販売管理費の推移と内訳

決算の概要について、数字の部分をご説明します。スライドには使っているお金、販管費の3カ年の推移を記載しています。

昨年は新型コロナウイルスによる影響で少し特殊でした。現在は「STAR」という中期経営計画の第1年度目で、先行投資を行い、大きく成長することを目指しています。中期経営計画に基づき、人件費、採用費、広告販促費などに投資している状況です。

販売管理費の変化/構成比の推移(3カ年比較)

販管費の主要なポイントを記載しています。

人件費は計画に基づいて十分に取得できています。旅費交通費は大きく削減しています。私たちも新しい働き方に取り組んでいるため、出張や移動をする必要がありません。テレワークを基本にしており、2年間継続して9割以上の社員がテレワークを行っています。

平野:もうオフィスには行かなくてよいかたちになっているため、旅費交通費が極端に下がっています。新型コロナウイルスの影響が落ち着いても、金額がもとに戻ることはありません。

広宣販促費には力を入れています。今はチャンスですので、この2年間は力を入れて、3カ年目に実りを得るという考えです。

地代家賃についてはテレワーク中心になったため、本社の広さを4分の1に減らしました。個人の机はなく、私(社長)の机もありません。どこででも働けるようにして、地代家賃を減額しています。このあたりの推移を見ると、私たちの変化もはっきりとわかるのではないでしょうか。

売上収益から営業利益までの内訳

売上収益は増加しており、特筆することはありません。先行投資で販管費が伸びていますが、投資先評価などによって、上場来最高益となっています。

営業利益/税引前利益/四半期利益

営業利益、税引前利益、四半期利益についても、特筆すべきことはありません。結果としては、上場来最高益となっています。

財政状態計算書

バランスシートです。日本基準では「貸借対照表」、当社ではIFRSに基づき「財政状態計算書」と言います。現預金等が年間売上に相当するくらい潤沢にあり、自己資本比率も非常に高いことから、健全な財務体質であると言えます。しかし、キャッシュを継続的に持っていようとは思っていません。

投資に関しては、しっかりと行っていきたいと思っており、未来に向かって機動的にすばやく投資していくためにキャッシュを持っています。

中期経営計画

私たちは中期経営計画をベースに、いろいろな事業を展開しており、優先事項は4つあります。1つ目が持続的貢献に伴う持続的成長、「Sustainable(サステナブル)」です。サステナビリティやSDGsなどがありますが、おまけ的に行うのではなく、すべての事業で考えて実現していこうと考えています。

そして、この3カ年で重要なのは「Top-line(トップライン)」で、ストレートに言うと売上です。私たちが社会に出した価値のリターンがトップラインだと考えているため、価値創造に伴う売上成長を実現していきたいと考えています。

3つ目は「Acquisition(アクイジション)」です。自前主義に陥らず、外の仲間、技術などを大いに取り入れて成長していくことによって、スピードを獲得していこうと考えています。

最後の「Refine(リファイン)」は、今持っているものにもしっかりと磨きをかけて、お客さまの声に応えていこうというものです。これがやはり、成長の源泉にもつながると考えています。

SDGs/ESG経営を推進

サステナブルについて補足でご説明します。従来からの活動の中で、CSRやESGを気にした経営に取り組んでいたため、17項目あるSDGsのうち、すでに11項目をカバーしています。詳しくはWebサイトをご覧ください。

熊本県阿蘇郡小国町(SDGs未来都市)

すでに取り組んでいるSDGsの項目をいくつかご紹介します。1つ目は「SDGs未来都市」に認定されている熊本県阿蘇郡小国町の事例です。熊本県小国町の産業活性化や脱プラスチック、さらには自治体でのDX推進などにも貢献しています。

秋田県仙北市(SDGs未来都市)

同じく「SDGs未来都市」に認定されている観光都市、秋田県仙北市とも連携関係を築いています。例えば、観光資源を活用したり、当社がワーケーションで利用させてもらったりしています。

企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)に係る大臣表彰

地方への貢献が認められて、今は「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」というかたちで支援しています。多種多様な企業がふるさと納税を行っていますが、私たちはつい先日、地方創生担当大臣による表彰を受けることができました。

寄附だけを行っている企業が多いのですが、当社は寄附だけではなく、自治体の産業育成、DXの推進というかたちで、自社の強みを活かした支援などを行っているところを評価していただきました。

IR優良企業賞2021「 IR優良企業奨励賞 」

みなさまも気になると思うので、表彰されたIRをどのくらい積極的に行っているかについてお話しします。私たちは2021年度に「IR優良企業奨励賞」を受賞しています。当社はデジタル企業、IT企業であるため、デジタルを駆使し、以前から、YouTubeによる配信や株主総会のデジタル化などを行っています。そのほかにも、私自身も積極的に投資家のみなさまとお話をしているところも評価していただき、受賞に至っています。

本日のまとめ

当社は第3四半期に上場来最高益を達成し、増収となりました。これはソフトウェア事業、投資事業が好調であることが背景にあります。また、中期経営計画に沿って、ソフトウェア事業に積極投資を行っていることをご説明してきました。

そして最後にご案内したとおり、SDGs、ESGも重視した経営を行っています。4月からは東証プライム市場に上場するため、社会的責任も大きくなりますが、IRを通じて投資家のみなさまとともに、日本を代表する企業として邁進していきたいと考えています。

質疑応答:プロモーション活動の計画について

坂本:中期経営計画「STAR」の部分をもう少しうかがいたいです。初年度に史上最大のプロモーションとして、かなりの広告宣伝費を積むということですが、2年目以降のプロモーション計画や、プロモーションの効果が出てくる時期を教えてください。

平野:プロモーションは2種類あり、両方に注力しています。1つはテレビCMなど、いわゆるマス広告で、ブランディングのために行います。売上に直結するものではありませんが、「聞いたことがある、見たことがある、知っている」といった風土の醸成がブランディングにつながります。

もう1つはネット広告のように、直接売りに結び付いていることが計測できる、トラッキングができるもので、リード獲得のほか、案件を着実に増やしていくために行っています。プロモーションが見られるところは、どうしてもテレビなどになりますが、両方へ注力しています。

中期経営計画の第2年度までは広告宣伝費をつぎ込み、第3年度には費用を抑えて、実を取りにいく計画です。

質疑応答:広告の効果について

坂本:過去に取り組んできた結果、広告の効果は大きいと実感されているのでしょうか。

平野:そうですね。例えば、Webサイトへの来訪というのは、一気に増えるためすぐにわかります。

坂本:最近はスマホの「ダブルスクリーン」という言葉も聞きますね。

飯村:CMを見ながら、他の画面を開くというものですね。

平野:その場でWebサイトに遷移する方が比較的多く、一気に来訪されます。一方でマス広告の場合は、ネット広告とは性質が違って、その場で見て終わりという方もやはり多いです。

ネットの場合は考えた上での来訪ですが、マスの場合は「見に行く」という方が多いため、受ける側が十分に区分けして使うことが必要です。

質疑応答:タクシーへのツール導入の背景と効果について

坂本:最近は、タクシーがサイネージで、サブスクのツールの広告をしていることが非常に多いと思うのですが、決裁権者か決定権者が乗車する可能性があるからでしょうか? そのあたりの背景や効果などをうかがいたいです。

平野:タクシーのよいところは、マスでありながら、ターゲットの絞り込みが比較的できる点です。タクシーに乗車される方の層というのは決まっているからです。

坂本:やはりそうなのですか。

平野:いろいろあるのですが、私たちの認識では大きく2つの層があります。1つは、ビジネスリーダー層です。もう1つはいわゆる高齢者の方、年輩の方です。

コロナ禍では年輩の方々はあまりタクシーに乗らず、ビジネスリーダーの方々は動くため、そちらへ比率が寄っていきます。「コロナ禍でタクシー内での利用が減るだろう」という見方もありましたが、度合いとしては濃くなっています。

坂本:そのようなことも考えながら、広告戦略を行っているということですか?

平野:おっしゃるとおりです。

質疑応答:SDGs活動のビジネス面での狙いについて

坂本:企業版ふるさと納税に係る大臣表彰とその活動について、SDGsの面でも非常にすばらしいと思います。ちなみに、ビジネス面での狙いはどのようなところにあったのでしょうか?

平野:もともと当社は、「企業版ふるさと納税」が制度化される前から寄附を行っていました。「何か貢献できるものはないか、双方向で取り組めるものはないか」と思っていましたが、当時はDXという言葉はなく、地方ではDXが殆ど進んでいませんでした。そこで、ITを活かして何か進めることができないかと考えました。

例えば、私たちの製品である「Handbook」や「Gravio」などを使っていただければ、都会にはない、非常に先進的でユニークなことが実現できると思いました。実際に、小国町や仙北市ではいろいろとユニークな事例が生まれています。

今年は雪のニュースがけっこうありましたよね。秋田県内にある仙北市も雪が多い地域で、バス事業者、タクシー事業者の方が「ここは除雪が必要だ」というのをアプリを介して役場に連絡すると、データをもとにスケジューリングして、指定の場所に除雪車を呼ぶことができます。今までは電話で行っていましたが、電話ができるところまで行ってからの連絡になったり、位置が正確ではなかったりしていました。

飯村:電話ではそのようなことになってしまいますよね。

平野:しかし、スマホにはGPS機能があるため「絶対にここで間違いない」という情報が伝わります。電話で知らされた場合のように、「行ったけど、雪が積もっていないじゃないか」ということが起こりません。東京では実現できない事例ですが、このようなことに取り組みたいと思っていました。

坂本:それがSDGsの活動にもつながるわけですね。たしかに、機器の進化がつなぐ新しい技術ですね。

飯村:東京ではなかなか遭遇しない不便さですが、多くの場所で困っている方がいると思います。

平野:おっしゃるとおりです。お話ししたのは仙北市の事例ですが、雪で困っているところは数多くあります。地方自治体は、日本に1,700以上あるため、そのようなところで使えるようにということを、非常に強く意識しています。

質疑応答:「Warp」の好調要因について

坂本:「ASTERIA Warp」が伸びた要因について教えてください。私は、在宅勤務が増えたことも要因としてあると思っています。実際に会社のライセンスを家に持ち帰れるかどうかなどはわかりませんが、サブスクなどのサービスによって、大幅に伸びた部分があったのでしょうか?

平野:おっしゃるとおりです。在宅勤務というと、「Zoom」や「Google Meet」などのテレビ会議ばかりがフォーカスされますが、家で勤務するためにはデータが必要になります。

Excelを使う仕事も、データがなければ仕事ができません。会議はほんの一部で、手元で取り組む仕事のほうが多く、それを実践するためにはデータが必要です。ところが、会社の基幹システムに家からそのままアクセスできる状態というのは、セキュリティ面ではアウトです。

セキュリティを守るためには、必要なデータだけをクラウド上に置いて、そこから家でも使えるようにします。例えば「Box」や「kintone」といったクラウドサービスなどを介して、家でテレワークできる時代です。

データをどのように持っていくのかというデータ連携の部分こそが、「ASTERIA Warp」の出番です。すなわち、間接的ではあるものの、在宅勤務の実現にあたって、非常に重要な役割を担っています。

坂本:ニュースなどで御社の財務や短信などを見ていると「急激に伸びた」と書いてあり、その背景がいったい何なのかと気になっていたのですが、今日のお話ですっきりしました。

平野:「これは特需なのか?」と聞かれるのですが、特需ではありません。世の中の変化が前倒しで来ているのです。

例えば、テレビ会議や本日のオンライン配信なども、新型コロナウイルスによる影響がなくなったり、落ちついたりしても、もとには戻らないと思います。やはり、便利なものは定着します。インターネット以前や、Excel誕生以前に戻れないのと同じく、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いても、デジタルの進化はもとには戻りません。つまり需要が早く来たというだけで、特需ではないという状況となっています。

飯村:さまざまな環境についてお話しがありましたが、「Handbook X」についても、Zoomで商談しようという時に、導入してれば周りとずいぶん差がつきますよね。

平野:資料の準備にモタモタしている場合とは、差がつきますね。

飯村:「それでは、ご覧ください」がすぐに行えたら、大きく見違えますね。