元グーグルNo.2が語る、孫氏のスゴさとは?
司会:それではただいまより、質疑応答の時間とさせていただきます。なお、ご質問はお1人2つまでとさせていただきます。
記者:東洋経済のタナベと申します。よろしくお願いします。最近ニケッシュさんの主導でいろんな案件が出てきまして、孫さんにどんなアドバイスをしたり、孫さんがそれによってどんな事を考えているのか。
せっかく(ニケッシュ氏も)いらしているので、もし可能であれば、少しスピーチいただくとかそういう事は出来ないものかと。(以上が)1点目です。
孫正義氏(以下、孫):彼はインターネット業界の最大企業でありますグーグルでNo.2として、トップの経営陣として事業を行っておりますので、インターネットのいろんなビジネスモデル、いろんな人脈、いろんなテクノロジーに関して、深い洞察力を持っています。
またその前の経歴として、ドイツテレコムのTモバイルの経営陣の一員として経営に参画していたと。さらにその前は(投資会社の)フィデリティで通信のアナリストとして、ファイナンスについても非常に精通している。珍しい、オールラウンドのバランスのとれた経営能力を持っているということで。
私自身、実際に毎日、電話で語り合い、メールで語り合い、また月の半分、1ヶ月の半分くらいは実際に行動を共にし、ということで、もうソフトバンクにとって欠かすことの出来ない経営陣の一員となったと。いま副会長として、バイスチェアマンとして私とともに経営の舵取りを行っている、全ての案件に関わっているということです。
(会場スタッフに、ニケッシュ副会長にマイクを渡すようにうながす)
ニケッシュ・アローラ氏:孫社長、またご質問いただいた記者の方、ありがとうございます。
孫社長とは5年以上前にの知り合いました。知り合ってからというもの、多くの時間をインターネットテクノロジーや、またテレコムの業界について語り合ってきました。主にテクノロジーの未来、テクノロジーがどれだけ世界に可能性を示せるのか、などについてです。
孫社長の素晴らしいところは、10年後、15年後、20年後を見据えて、どういったことがどのように進んでいくのか、またその予測を基に今日どうすべきか、ということを認識・把握することが出来る力を持っているところです。それもあって、宮内さん、後藤さん、君和田さんなどといった経営陣の皆さまと一緒に仕事をすることを、非常に楽しく思っています。
また孫社長と一緒にビジネスを進める上で、ビジョンや理念を基に私のインターネットの知識、またソフトバンクからのサポートをいただいて、「ガチョウプレミアム」を産みだしていきたいと思います。ありがとうございました。
孫:ガチョウの仲間としてやっていきたいと思います(笑)。
記者:ありがとうございます。2点目です。最近はシリコンバレーの拠点にどれくらいの頻度で行かれて、その時に(傘下スプリントCEOの)マルセロさんとどのようなお話をされているのでしょうか?
孫:毎月1回、必ず行っておるわけですけれども、マルセロとともにスプリントをどう経営改善していくか(話し合っています)。大きく分けて今、3つの取組みをしております。
1つはネットワークの改善、2つ目はコストの削減、そして顧客の純増。この3つでございますけれども、この3つのどれにおいても、いま彼が全身全霊を投入して、集中して頑張ってくれている。非常に優れた、頼もしい経営者であると全幅の信頼をおいて、一緒に語り合って、彼が実際の行動を行っているということです。
通信とコンテンツのトータルで伸ばしていく
記者:すいません、3点目は……
孫:あ、1人2つまで……
記者:お願い、お願いが1つありまして、大変時間がかかって申し訳ないんですけど、決算の開示の仕方についてちょっとありまして。
モバイルの利益が4000億円以上というお話があったんですが、これは(子会社の)ガンホーだとかブライトスターだとか、いろんな会社を含んだものでして。で、ソフトバンクモバイルとかスーパーセルとか、そういった会社の動向というのが外部からとてもわかりにくくなっている、というのが今年から特にありまして。
孫さんも投資家のプロですから、中核の会社の動向がわかりにくくなるというのは、投資家にとってもあまり良くないのかなと思っていて。これは本当にお願いなんですけれども、出来れば次回、もしくは半年後とかから、中核の会社の動向がわかるような開示ができるようにと、個人投資家の代表として思っておりますので、よろしくお願いします。
孫:検討してみたいと思いますけれども。一方、世界のモバイルのキャリアの各社が、単に通信収入だけではなくてコンテンツからの収入を、経営改善の重要な項目としてやっている、というのも大きな流れですよね。ですから通信料だけで儲ける、採算を合わせるということではなくて、通信とコンテンツとトータルのサービスで伸ばしていくと。
特に我々の場合はトータルを、グループの会社を含めてシナジーを出しながらやっているということもありますので、合わせてその事も申し上げさせていただきたいと思います。
日本市場に頼る会社の未来は暗い
記者:フリージャーナリストのカミオです。本日はグローバルな視点で、今後の成長分野について非常に勉強になりました。一方で日本市場、人口が減り、GDPも伸び悩み、少子高齢化という市場になってくるわけですが。
孫さんの視点で、この日本市場における今後の成長分野、成長産業はどこだとお考えになっているのか、また注目している部分はどこなのか。本日はどちらかというと、成長分野は海外ばかりというお話だったので、日本の置かれている環境のなかで、日本の成長するところをどうご覧になっているのか、という部分に関してコメントいただけますでしょうか。よろしくお願いします。
孫:日本国内の今後、10年後や30年後というスパンで見た時に、国内のなかでの事業というのは決して、そんなにバラ色に2倍3倍と伸びていく、というふうに簡単に伸びるとは思いません。それはどの産業でもそうだと思います。
なにしろ人口が減っていく、また人口が老齢化していくという国で、GDPが2倍3倍に伸びるということは非常に困難であろうと思います。部分的には伸びる会社があるとは思いますよ。でもトータルで見た時には、川の流れで例えると、川の全体は一方向に下っていってる。もちろん一部、岩にぶち当たって流れが逆流しているというところはあるかもしれませんが。
したがってそのようなマクロで見ると、日本国内だけに事業を頼っている会社には、決して先行き明るい未来は無いと。一方、日本に本社があっても、世界に目を向けて、世界を相手にしてモノを売るサービスを売る、あるいは投資を行う、という形で、世界のお客さんを相手に事業を行っていく会社は、充分に成長余力がある。
例えば私が大変親しくさせていただいているユニクロの柳井(正)さんのところなんていうのは、日本より海外をさらにのばそうと。日本初、しかし商圏は世界だ、という会社であれば、いくらでも伸びるチャンスがあると。
したがって、日本で通信事業を中心に行っている会社、というソフトバンクであれば、決して将来の先行きは明るくないと思いますが、日本の通信はソフトバンク全体の一部(事業)であると。むしろアリババとスーパーセル、ガンホー、ヤフーだけで時価総額の全部になる会社ということで言えば、国内の通信という事業というものが仮に「0」の価値であったとしても、今の時価総額が説明できるわけです。
そういうことで言うと、日本国内、日本の通信というのに我々は依存し過ぎていない体制が出来ているということで、我々には明るい未来が待っていると、私は思っています。
記者:ありがとうございます。
日本市場は世界でもっとも過酷?
記者:モバイルデータバンクのオオタキと申します。先ほどの質問にも絡んでくると思うんですが、この前、11月1日の人事異動で長らくモバイル中心にNo.2という働きをされていらっしゃった宮川潤一さんが今度、アメリカに行かれるということで、逆に日本のほうが手薄にならないかな、と心配になっているんですが。
そのあたり、日本のこれからのモバイルはどうされていくのか、というのをお聞かせいただければというのが1点。
あともう1点、やはり日本のことが(冒頭の説明に)あまり無かったんですが、従来型というか、ソフトバンクテレコムのほうは今後どうなっていくのか、お尋ねさせていただければと思います。
孫:最初に、宮川がモバイルのNo.2だとは私は一度も言ったことないので(笑)。そういうラベル付けは是非控えていただきたいとおもいます。我々の経営陣はたくさんいますし、いろんなバランスもありますので。
彼は、ソフトバンクのネットワークの責任者として、ネットワークの改善に今までは注力してきたわけですが、接続率No.1というのがこの1年以上ずっと続いておりますので、日本国内のネットワークの改善よりはむしろ、アメリカのSprintのネットワークの改善、これが急務であると、マルセロからも是非応援してほしいということで、いま宮川を中心にネットワークの技術者がSprintに、緊急応援体制に入っているという状況であります。
ですからそれは、しばらくSprintの改善というのがソフトバンクの重要なテーマとして行っていきたいというふうに思います。
次に、日本国内のテレコムの部分に関してですけれども、ここ最近の決算発表で、ドコモさんの業績予想の下振れ、下方修正が発表されております。
日本の通信市場が、決してこれから利益を2倍、3倍と伸ばしていける状況には無い。かなり激しい価格競争、設備競争が行われていると。日本の通信の設備競争は世界最大、世界でもっとも通信のインフラが進んでいるのが日本だと私は思っていますが、そういう意味でかなり激しい戦いを日本では行っていて、どんどん増益できるという状況には無い。
しかしそれは、大切なお客様への大事なサービスですから、それはそれで一生懸命やってはいきます、ということです。
一方、上場会社ですから利益を伸ばしていかなければいけませんので、増益をさせていく、企業価値を増やしていくということのためには、海外にさらに、特にインターネットカンパニーへのグループ会社の構成を増やしていく、投資を増やしていくということを考えている、ということです。
1、2年でSprintの業績が劇的に良くなることはない
記者:野村證券のマツシマですけれども、1点だけ。来年度以降の利益の水準というのをお伺いしたいんですけれども。マルセロさんがSprintのCEOになられて、非常に良い方向に進んでいて、9月のiPhone6発売以降、いろんな経営指標が好転していると。
そういう方向だと思うんですけれども、来年度を見るとまだ、過去のマイナスの影響が残るもあり、Sprintの来年のEBITDAのガイダンスはフラットかわずかに上昇か、ということですので、今回は連結で9000億円という営業利益ガイダンスですけれども、もう1回1兆円という営業利益に、グループ全体として目線が戻っていくのはいつぐらいになりそうなのか、そのあたりの時間軸をちょっとお聞かせいただければと思います。
孫:Sprintは簡単に、1年2年でバーンと業績が極端に良くなる、という事ではないと思いますが、今おっしゃったようにマルセロが今必至に立て直しをしておりまして、且つ、営業利益でこの何年間かで初めて黒字になっていると。ということで、良い兆しが出てきている、これをさらに一歩一歩改善していくということであろうと思います。
一方、ソフトバンクのその他の部分については、それなりに順調に推移しておりますので、来年の業績予想はまだコメントしませんけれども、良い方向にあると考えております。