2017年9月期決算説明会
藤田晋氏:本日はお忙しい中、弊社の2017年度通期決算説明会にお越しいただきまして、ありがとうございます。
当社は9月決算ですので、本決算が通期の決算となります。まずは通期ベースでの数字のご説明をさせていただきます。
全体としては、今年も大幅に増収いたしまして、(売上高および既存事業の営業利益で)過去最高を更新しました。
メディア事業は、「AbemaTV」の投資期と位置付けております。ほぼ計画どおり(売上高)200億円強になりましたけれども、投資をしたという決算になっております。
基本的な考え方としては、決算がいいうちに次の柱を育てておくという考えのもとに「AbemaTV」に積極的に投資をし、今、一番利益を稼いでくれているゲーム事業の収益があるうちに十分投資をしようという考えの中でやっておりますが、そのとおりの決算になっていると思います。
連結売上高
こちらのグラフは、2000年に上場してからの(連結売上高の)推移ですけれども、創業から約20年経った会社で、いまだにトップラインを急成長させ続けているという状況です。
とくにこの数年、ずっと高成長が続いていますけれども、スマートフォンにシフトする時に大規模に舵を切りました。こちらも目先の利益を犠牲にして先行投資をした時期だったのですけれども、そちらが奏功しております。
連結営業利益
営業利益ベースでは、全体では307億円で着地しましたが、「AbemaTV」に投資しているものを除けば516億円ということで、(既存事業の営業利益では)過去最高という数字になっております。
損益計算書
PL(損益計算書)で見ると、このようなかたちになっております。
毎回決算説明のたびに言っているのですが、当社は「AbemaTV」への投資で、すべて赤字を取り込んでいる一方で、Cygames等の利益を出している会社が持分法で引かれるといった状況がありますので、一番最終利益が残りづらい時期という位置づけになります。
貸借対照表
バランスシートはこのようなかたちです。当社はとくに大型の買収をせずに、自分たちで作って伸ばす。その期の中で先行投資をし、事業を作り出し、そして時期を経て利益を取り込みという考え方です。
FY2017のDOE
厳しい時期も、中長期の視点で株主の方には投資をしていただきたいという思いを込めまして、DOE5パーセント以上を目安とするという目標を掲げております。DOEを上げるには、自社株買いをするか配当を増やすかになるのですが、今回は配当を増やしまして、(DOE)5.2パーセントを維持するという考えをしております。
2018年度業績見通し
今スタートしている新しい期の見通しですが、基本的には本年度も引き続き「AbemaTV」への投資の時期と位置づけております。今回、売上高4,200億円、営業利益300億円という予想を出させていただきました。
セグメント別 営業利益の見通し
内訳はこのようになっております。「AbemaTV」の赤字を前年度と同じく200億円としました。社内ではPumpUPと言っているのですけれども、コストはもっといっぱい使って、同時に売上も増やすという考えのもと、結果的に赤字額を200億円の横ばいとしております。
業績見通し
今期の予想はこのようなかたちになっております。配当も基本的には同じで、DOE5パーセント以上を目安にして決めております。
ここからはインターネット広告事業、ゲーム事業、メディア事業それぞれのセグメントについてご説明させていただきます。
インターネット広告事業 売上高(通期)
インターネット広告事業です。通期で見ると、Year on Yearで18.7パーセント増収しております。お配りしている決算説明資料の71ページに、インターネット広告市場のデータが出ていると思いますが、今はだいたい13パーセントぐらい成長している市場ですけれども、市場成長をかなり上回る成長をいまだに続けています。
営業利益ベースでも、順調に拡大を続けております。
インターネット広告事業 売上高(四半期)
こちらは(売上高を)四半期で見た場合です。この第4四半期は、過去最高を更新して着地しております。スマートフォン広告比率は80パーセントですので、インターネット広告の大半がスマートフォン広告ということになっております。
インターネット広告事業 スマートフォン広告
スマートフォン広告です。こちらが大きく成長を牽引しているというかたちでございます。
インターネット広告事業 強化分野 インフィード広告
強化している分野は、インフィード広告です。こちらは四半期ベースで横ばいに近かったので、一度はスライドを外したのですけれども、やはりクライアント数が増えていることと、LINEのインフィード広告の在庫が大きく増えたことでまた急に伸びていましたので、再度掲載しております。
インターネット広告事業 強化分野 動画広告
最も注力していると言える動画広告に関しましては、この第4四半期も大きく数字を伸ばしています。こちらは全社をあげて、「AbemaTV」を含めて注力しておりますので、今後もかなり期待できると思っております。
インターネット広告事業 営業利益(四半期)
こちらが営業利益の推移です。
インターネット広告事業2018年度に向けて
2018年度に向けたインターネット広告事業の方針です。
我々の得意とする運用力によって、広告効果を最大限化することは引き続きやっていくのですけれども、新規広告主の中でもナショナルクライアントと言われる、ブランド広告のようなものの取引がかなり増えてきておりますので、引き続き注力していくつもりでございます。
動画に注力していることで、逆にそのような広告の取り込みにもつながっているのですけれども、動画広告の分野をさらに強化していくという方針でございます。
ゲーム事業 売上高(通期)
続いて、ゲーム事業です。通期からご説明すると、Year on Yearで14.4パーセント増と、かなり伸びたと言えると思います。
一方で、今期はブランド力強化の広告予算等を増やしたことにより、利益ベースでは13パーセント減という結果になっております。
ゲーム事業 売上高(四半期)
今度は四半期で見た場合、この第4四半期は売上規模では過去最高となりました。
とくに今年リリースした、2017年度の新しいタイトルは順調に育ってきておりますので、新陳代謝も伴いつつ、伸びているという状況だと思います。
ゲーム事業 営業利益(四半期)
先ほどお話ししたように、Year-on-Yearで広告予算を60億円増やしたのですけれども、QonQでも全体で広告予算を20億円増やして、単純にユーザー獲得だけではなくて、ブランド力強化等々にもかなり使いましたので、QonQで減益という結果となっております。
ゲーム事業 セールスランキング
主力タイトルはこのような推移です。わりと安定してきておりますので、次のヒット待ちという状況だと思います。
ゲーム事業 新規タイトル
新規タイトルは、我々の中でもかなり期待している、『戦国炎舞』を提供している株式会社サムザップの次回作、Cygamesの2本、それ以外に7本のラインを、1本1本力を入れてやっておりますので、今後はこちらを順次リリースしていく予定でございます。
ゲーム事業 2018年度に向けて
ゲーム事業は開発に入るとかなり長いので、あまり新たな話はないのですけれども、今のタイトルの運用を相変わらず力を入れてやっていくということと、新規タイトルをヒットさせることに加えて、他社IPの展開に関しても、楽しみなものも控えておりますので、順次発表できると思います。
メディア事業 売上高(四半期)
続いて、メディア事業です。こちらは四半期の(売上高の)推移ですけれども、今は主にAbemaTVに投資していて、数字としてはもう全部(赤字として)飲み込まれている状況ですけれども、マッチングアプリが好調に推移していることで、増益増収基調になってきております。
メディア事業 AbemaTV
AbemaTVは今、(開局1年6ヶ月で)2,200万ダウンロードを突破しております。AbemaTV自体の広告宣伝費は今はほとんど使っていないのですけれども、大きな番組が行われたり、非常に動員力のあるタレントをキャスティングするたびに、ユーザーが増えていく傾向もありまして、ずっと順調に拡大を続けております。
メディア事業 AbemaTV MAUの推移/WAUの推移
マンスリーアクティブユーザーは1,000万人弱ぐらいまで来ております。いつも「ウィークリーアクティブユーザーで1,000万人ぐらいになったら、メディアとして我々が考えているビジネスモデルが成立する」と言っていますが、そのベースで言うと、ウィークリーアクティブユーザーで500万人前後のところまできています。
(グラフに)ヤマがあるのは、こちらはプロモーションもあったのですけれども、12月は年末に行った『フリースタイルダンジョン』などで年末年始にガンと伸びたり、5月は『亀田興毅に勝ったら1000万円』でグンと(WAU)550万人というヤマを作ったり、その後は藤井聡太さんの(対局番組で)ヤマを作ったり、そのようなヤマがあるたびにベースが上がっていく傾向があります。
来週に控えている元SMAP3人の『ホンネテレビ』が行われた際に、また大きくベースアップするであろうと考えています。
AbemaTV全体として、サービスのクオリティは一定レベルまで引き上がってきたと考えていますので、番組の中身・コンテンツについては非常に力を入れているのですが、視聴習慣を付けるために、AbemaTVの9時からは「ゴールデンナイン」と呼んでおりまして、「9時からいつもおもしろい番組をやっている」という位置づけにしようとしております。
レギュラー番組をやっていたり、女子高生のリアリティショーはかなりヒットしたのですが、『真夏のオオカミくんには騙されない 』というコンテンツをやったり、亀田興毅の番組から生まれたレギュラー番組等をやっております。
今月、衆議院議員選挙の公示日の前日に、安倍総理が異例の生出演で1時間、AbemaTVだけに出てくれました。
ユーザー獲得という意味でももちろん意味がありますが、それ以上に、国の総理大臣が出るというのは、今後キャスティングをしていく上で非常に効果がありますので、AbemaTVというメディアの社会性を付ける意味でも、非常に大きな出来事だったのではないかと思います。
メディア事業 AbemaTV 利用者の年齢/利用者の性別
利用者の年齢としては、25-34歳や18歳-24歳(が多い)。18歳以下は数字が取れていないのですけれども、若い層を中心に全体的に底上げがなされていると思います。
大きな悩みの種でもあった、というよりまだ解決していないのですけれども、女性比率が低いという面に関しても、約4割まではきました。なんとかあと10パーセント伸ばしたいということで、恋愛リアリティショー、ドラマといった番組の制作にも力を入れております。
メディア事業 AbemaTV 動画サービスMAU比較
動画サービスMAU比較です。とくにAbemaTVは無料で、MAU(マンスリーアクティブユーザー)やWAU(ウィークリーアクティブユーザー)、視聴率を上げていかなければいけないという宿命を背負っています。
毎日DAU(デイリーアクティブユーザー)が何人だったかということに一喜一憂していますが、おもしろい番組を作り続けなければこの広告モデルは成立しないという仕組みを背負っているサービスではなく、多くの動画サービスの中でも他に見当たりませんので、Amazonプライム・ビデオはけっこうがんばっていますけれども、それでもやはり完全に無料であるAbemaTVが一番ユーザーが多くなっております。
メディア事業 2018年に向けて
AbemaTVを開局してから1年半が経過しました。僕の中ではなんとかなりそうだという手応えを感じておりまして、これが非常に苦しいということだったら、無謀なチャレンジということになるのですが、なんとかなるだろうという手応えのもと、基本的な考え方としては、今の時期は大きく投資を続けるということです。
さらなる制作費を増やし、それと同時に収入も増やす、PumpUPの時期と考えまして、若干ですけれども減益予想を出しつつ、「今は引き続きAbemaTVの引き続き投資期である」と言わせていただきました。
メディア事業1Q以降の施策 ①コンテンツを強化
来週の11月2日から、いよいよ(元SMAP3人による)72時間テレビが始まります。始まる前から大変な話題になっておりまして、AbemaTVの過去最高(視聴率)を更新するのは間違いないと思います。
引き続き、テレビ朝日からも強力な協力を得ておりまして、主力コンテンツである『報道STATION』に引き続き、朝8時の時間帯では一番視聴率が高い羽鳥慎一さんの『モーニングショー』もAbemaTVで始めました。これによりテレビ朝日の主力ニュース番組は、ひととおりAbemaTVでも見ることができる状態になっております。
そして、いよいよオリジナルドラマの制作をスタートしています。「Netflix」が『ハウス・オブ・カード 野望の階段』などでユーザーを伸ばしました。
やはりキラーコンテンツを作る上で、ドラマが重要であるということは重々承知していたのですけれども、非常にコストがかかる上に簡単に当たる分野ではないので、慎重に準備を進めていたのですが、機は熟したということで、来年2018年1月からオリジナルの連続ドラマ『声だけ天使』をスタートします。
第二弾・第三弾ももう決まっているのですが、基本的にキャスティングありきではありません。まず脚本を選び、オーディションでその役に合った俳優を選んで、キャスティングしましたので、今のテレビドラマの作り方とは一味違ったものになったのではないかと思います。
次のドラマ、その次のドラマはもう作るものが決まっております。我々もテレビに合わせて運営しているので、10月クールに新しく始まったレギュラー番組の『今日、好きになりました。』や『恋する♥週末ホームステイ』などは高校生の恋愛リアリティーショーで、『真夏のオオカミくんには騙されない』で培ったノウハウを活かしてやっています。
あとは11月16日から『マリキュラム-出会って1か月で結婚する方法-』が始まるのですけれども、1ヶ月間2人を観察して、最終的に婚約届を出すかどうかというところまで追いかける番組ということで、このあたりを見れば、いかに女性ユーザーを獲得しようか、力を入れているかがわかっていただけると思います。
それ以外にも、田村淳さんが今年本当に青学を受けるということで、勉強している番組を追いかけていたり、あとは山本KIDさんや魔娑斗さんに次ぐ、ネームバリューのある格闘家の選手がなかなか出てこない、ずっと同じような選手が大晦日で闘っているという現状を踏まえて、それらの選手がスカウトしてきた選手同士でトーナメントを戦うという格闘技番組も、レギュラー番組としてスタートします。
メディア事業1Q以降の施策 ②広告商品の拡販
広告商品の拡販もいよいよ本腰を入れてやる体制になってきました。今、AbemaTVで流しているCM平均視聴完了率は80パーセントです。
みなさんYouTubeで最初に流れる広告をスキップされることがけっこうあると思うのですが、あれは視聴完了していないということになります。
CM平均視聴完了率が80パーセント。そしてAbemaTVを見ているユーザー層で、頻度高くテレビを見ている人というのは30パーセントに過ぎません。
つまり、テレビCMをやっている広告主からしてみると、テレビを見ていない層にリーチできるということで、他にそのようなメディアなかなか少ないので、非常に重宝されているのではないかと手応えを得ています。
メディア事業1Q以降の施策 ③収益の多角化
広告以外にも、自社のゲームもそうですし、esportsの中継もこれから始めるべく準備をしています。プロレス団体DDTもM&Aしたり、アニメのファンドなども作ったり、矢継ぎ早にいろんなことをやっておりますが、「AbemaTV」があることで伸ばせそうなものに関しては、今後M&Aを強化していくという方針のもと、今、専門の担当をつけてそのようなところを探しています。
メディア事業 今後のAbemaTV
再三言っていますけれども、引き続き「AbemaTV」は先行投資を続けていくという方針です。同じようなビジネスモデルは見当たらないし、これからも出てきそうにもないということで、ここをパイオニアとして確立させていくべく、腰を据えてしっかりとやっていきたいと思っております。
新たな事業領域 ①マッチングサービス
以上がAbemaTVの説明でしたけれども、一方で新たな事業領域も芽を出し始めているものがありますので、少しご紹介させていただきます。
マッチングアプリでは、「タップル誕生」というサービスが当社の中で一番大きいのですけれども、それ以外にも位置情報を使って、すれ違った人と出会える「CROSS ME」や顔認証システムを使って好みのタイプを探してくれる「mimi」、あとは女性主導で相手を探していく「トルテ」などを次々にリリースし、積極的に展開しています。
「タップル誕生」はApp Storeのランキングを見ていただくとわかりますが、ずっと1位だった「Pairs」を足元で抜いておりまして、最大規模というところまで育ってきています。
今後こちらの分野においても、AbemaTV内でプロモーションして伸ばすことができますので、注力していきたいと考えています。
新たな事業領域 ②esports
続きまして、esportsです。esportsにおいても、我々は「RAGE」というイベントを運営しております。
こちらは3ヶ月に1回のスパンで開催しているものなのですけれども、1回あたり1万人の来場者があります。来年4月からは、esportsのプロリーグをやろうということで、目下準備中です。
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esportsと連動して、子会社のCyberZの中でやっている「OPENREC.tv」というゲーム実況サービスは、僕がやっているAbemaTVとFRESH!とはまた別のゲーム動画配信プラットフォームです。
海外には「Twitch」というかなり有名で大規模なサービスがありますけれども、日本国内のゲーム専門のプラットフォームとしては「OPENREC.tv」が最大で、非常に伸びている状況です。
新たな事業領域 ③仮想通貨取引事業
さらに、なんでも飛びつくのかと思われそうですけど、株式会社サイバーエージェントビットコインを設立しています。こちらはまず、取引所として正面からやっていこうと思います。
サイバーエージェントFXはすでに売却してしまいましたけれども、そのような事業を立ち上げ、伸ばした経験もありますので、またこのようなサービスに着手しているという状況でございます。
総括
最後にまとめさせていただきます。冒頭で言いましたけれども、基本的には会社がいい時期にAbemaTVを育てておくという方針でやっております。
ゲームはやはり新しいタイトルが当たらないと、だんだん厳しくなっていく状況になりますので、もちろんそうではないようにやっているつもりですけれども、この時期にしっかり次の柱を作るつもりで、この事業(AbemaTV)に引き続き投資をしていきます。
総括 中長期の営業利益イメージ
広告事業は相変わらず好調ですので、しっかりと増収増益させていきたいと思っております。
ゲーム事業もすごく伸びていた時期ほどではないのですけれども、決して悪い状況ではないので、既存タイトルを伸ばしつつ、次のタイトルをしっかり当てていこうという方針でございます。
弊社は「Ameba」に投資していた時期、そしてスマートフォンに投資していた時期、そして今はAbemaTVを中心とした動画事業に投資している時期ですけれども、そのたびにそのスパンを経て大きく成長しておりますので、我々としてもここが投資どころだと考えて取り組んでおります。
経営指標
最後に、この投資の時期に当たるところを、なるべく中長期の株主のみなさまにご迷惑をかけないというか、その間もしっかり持っていただけるように、DOE5パーセント以上を目安にしております。私からの話は以上でございます。どうもありがとうございました。