2018年2月期第2四半期決算説明会
長谷川拓磨氏:本日は当社の第2四半期の決算説明会にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。それではさっそく、決算説明を始めさせていただきます。
営業利益−16%、純利益−26%(前年同期比)
まずは当社の第2四半期までの業績でございます。
営業利益は前年同期比でマイナス16パーセント、純利益はマイナス26パーセントとなっておりますが、実態としては、通期予想に対する純利益の進捗率は65.7パーセントとなっており、順調に推移しております。
利益の内訳ですが、売上総利益率は45パーセント。営業利益率では37.9パーセントとなっております。大型の売却物件により効率よく利益を確保することができたことに伴い、売上ベースでは昨年比で大きく下回っておりますが、利益水準としては今期の目標に対して順調に推移しております。
各セグメントにおける損益内訳
各セグメントにおける損益内訳でございます。アセットマネジメント事業、心築、クリーンエネルギー事業ともに順調に推移しております。
アセットマネジメント事業については、進捗率約50パーセントでございます。(スライド)右側の欄に具体的な内訳が書いてありますが、当社のストック収益にあたる期中運用フィーは前年同期比で3割アップでございます。
要因としましては、昨年はいちごオフィスリート、いちごホテルリートのPOといちごグリーンのIPOがAUM(資産運用残高)を押し上げたことにより、運用フィーの純増となっております。
心築の進捗は約6割まできております。後ほどご説明しますが、港区にあるオフィスビルの売却が大きく寄与したことにより、順調に進捗しております。
クリーンエネルギー事業の進捗は75パーセントでございます。昨年上場した、いちごグリーンへ2発電所を譲渡したことに伴い、譲渡益が発生したことと、売電開始になっている発電所の売電収益も徐々に増えてきており順調に伸びています。
先日リリースしましたが、昭和村の案件が売電を開始しておりますので、下期については、昭和村の売電収入がセグメント別の内訳においても大きく寄与し、進捗としては目標よりも上回ってくるという予想を立てております。
ストックとフローを融合したハイブリッド収益モデル
ストック収益とフロー収益の推移でございます。今期の目標259億円に対して今は150億円ほどなので、進捗率は6割ぐらいでございます。
売却益の方が先行して出ていることで、フロー収益が少し多めに出ております。最終的には右側(2018年2月期予想)の予想グラフと同様の水準になるものと見立てておりますので、ストック収益とフロー収益が半々ぐらいに落ち着くのかなというところで、順調に進捗しております。
強固な事業モデルを支える財務の健全性
当社の心築事業を支える財務体質・財務基盤でございますが、引き続き借入の環境はよく、長期でしっかりと借入ができており(加重平均借入期間は)10.8年となっております。
借入コストについても、私どもも引き続き金融緩和のメリットを受けまして、第2四半期末で(加重平均金利)1.13パーセント、今期に新規で借り入れた分だけを見ると、1パーセントを割って0.8パーセント程度の水準で借入ができております。
短期ではもう少し安い借入もできておりまして、このようなかたちで心築の安定した財務体質を支えている状況でございます。
資産順回転の進展
ここからは、第2四半期のトピックスについてご説明をさせていただきます。まずは資産の順回転の進展についてでございます。
今、第2四半期累計で251億円(簿価)の物件の取得をしております。一方で売却は140億円(簿価)でございます。売上ベースでは220億円ほどになりますが、簿価ベースの比較でいくと251億円の取得に対して140億円の売却となっておりますので、若干取得のほうが多い状況です。
昨今の不動産マーケットが好調な一方で、買うことに関してはタイトな状況にもなっておりますので、物件をしっかりと見極めて、心築として潜在的に価値のあるものをしっかりと買っていくことが大事になってきます。
商業・ホテルは今までどおり買っておりまして、商業が1物件18億円。ホテルが3物件約70億円でございます。
それ以外に、(2017年)3月から新しくいちごオーナーズという会社が立ち上がっておりますが、オーナーズ向けの資産としてお客さまのニーズが特に高い都心のレジデンスを中心に物件を取得しておりまして、こちらが合わせて50億円ほどございます。
そしてM&Aというかたちで、株式会社セントロを買収させていただきましたが、M&Aによる不動産の取得ということで14物件56億円。それ以外に、ロジスティクスとセルフストレージという新たなアセットタイプへのチャレンジもやりながら、251億円を積み上げてきております。
実は現況で言いますと、9月に物件の取得が完了しているものも入れると450億円ほどの物件の取得がほぼ完了しております。
これまで、毎期700〜800億円程度の物件を取得しておりますが、今期も工夫をしながら前年同様の水準で買ってきております。
ただ、下期に同じようなペースで買っていけるかということに関しましては、慎重にいい物件を見極めながら買っていきたいと考えております。
大型心築資産の売却 東京都港区オフィスビル
大型の心築資産の売却について、ご説明させていただきます。案件は東京都港区虎ノ門あたりのオフィスビルでございます。
70億円弱の簿価に対して、鑑定評価ベースでは含み益が4億円弱という物件でございましたが、こちらは今再開発が盛んに行われているエリアで、500坪弱ぐらいの土地面積でございましたので、希少価値があるということもあり、結果的に高い評価をいただいて、70億円強の利益を出すことができました。
鑑定との乖離がこれだけ出ることへの疑問もあるかと思うのですが、鑑定評価としては旧耐震のオフィスビルということでした。
旧耐震ではあるものの、耐震上は問題なかったのですが、引き続き貸し続けるのであれば、数億円をかけてもう少ししっかりとした耐震補強をすることを前提にして、築年が30〜40年経っているビルのマーケットの賃料プライスと、キャップレートから出した値段が、簿価に対して4億円プラスという鑑定評価だったのですが、結果、私どもが売却させていただいたビルの状態は、テナントさんをすべて定借化している状態でございます。
これにより、来年の春には空のビルが建っているという状況になりますので、新たなリノベーションをしたり、スクラップ&ビルドして新たなビルをお建てになるという方にとっては、より希少価値の高い土地として評価をしていただけて、このような金額の差異が出てきたのかなと考えております。
含み益の安定的な成長
しかし、いちごとして含み益の大きい物件を売ってしまったというわけではなく、スライド13をご覧いただくと、現在、含み益が約391億円となっていることがわかります。1年前の第2四半期では、約250億円ぐらいの含み益でございました。
第1四半期から見ると約20億円ぐらいの積み上げをしておりますので、含み益自体はまったく減らしておりません。
会計上の価値は売却しないと出てこないのですが、バランスシートを使いながら、心築によりバリューを上げて、含み益をしっかりと抱えながら心築事業を行っていることがお示しできているかと思います。
心築事例:トレードピアお台場(大規模オフィスビル)
ここからは、2件ほど心築の事例をご紹介させていただきたいと思います。
1年前に買わせていただいたお台場のオフィスビルでございますが、「徹底した現場主義によるテナント満足度向上」と書かせていただいております。
いちごはオフィスビルを中心に、年に一度テナントさまへのアンケート調査を行っております。今まではテナントさま企業の代表の方や総務の方々に対して、紙で配布をしてアンケート調査をやっていたのですが、今回は働いている方全員(5000名ほど)を対象にスマホで2、3分で回答できるようなアンケートにご協力いただきました。
その結果、特にお台場はランチ事情が良好でないというか、お昼時にご飯が食べられないとか、出勤時にエレベータが混雑し、「なんとかならないのか」というご要望に対して、当社は速やかに対応させていただいております。
例えば、写真のようなキッチンカーを6台ほど手配させていただきました。どれぐらいの金額がいいのかというところも伺い、キッチンカーを取り纏めていただく会社さまとご相談しながら、いろいろなパターンのランチを提供させていただきました。
それ以外にもバリアフリーの対応であったり、もともと大手企業の自社ビルでしたので、賃貸ビルとしてはセキュリティが若干不足している部分がございましたので、監視カメラや警備員の配置などもさせていただいております。
経済的なバリューアップの進捗として、トップラインがどれくらい上がっているかというと、テナントさまの(賃貸可能面積の)約44パーセントで賃料増額、従前賃料比で23パーセント増でございます。新規のお客さまについても、2割程度の賃料アップを実現できております。
それ以外に、「建物管理コスト20パーセント削減」と書いてありますが、ビルメンテナンスの会社さまと一生懸命協議しながら、いちごの管理仕様に沿って、グレードを落とさずに削減を図ったり、また、LED照明導入により、エネルギーコストの73パーセント削減などを実現しております。
心築事例:アソルディ自由が丘(商業ビル)
もう1つの心築事例でございます。実はいちごは、駅前や商業が広がっているエリアに小ぶりな商業ビルをいくつか持っておりまして、こちらは自由が丘駅からの徒歩4分のエリアのビルでございます。
地下1階、地上3階の4層の商業ビルなのですが、B1と1階の2フロア借りられていたテナントさまに新たな移転ニーズがございました。
もともと2階・3階に「Of HAIR」さんという人気の美容室が入っていたものですから、次のテナント候補としては、美容室とのシナジーがあるようなテナントさまを誘致していこうということで、今回、北海道出身の自然派コスメの「shiro」さんという会社に新たにカフェ業態を併設して出ていただきました。
結果的にはコストの削減等もあり、NOIは1.2倍に増加いたしました。こちらもお客さまのニーズを取り入れながら、経済的な価値もしっかり上げていけた事例としてご紹介させていただきました。
関東最大メガソーラーの早期売電開始
続きまして、クリーンエネルギー事業の進捗でございます。
関東最大のメガソーラーとして、いちご昭和村生越ECO発電所が当初の計画より4ヶ月ほど前倒しして売電開始できております。
パネル出力43.34MW、FIT価格36円/kWhということで、当社の20年に渡って得られる利益の貢献額としては売上総利益では約152億円。年間では約7.6億円でございます。税引後当期純利益では約106億円。年間では5.3億円でございます。
9月2日から売電がスタートしておりますので、半期分は今期のストック収益として貢献が始まります。冬などの季節要因もありますので、今期は年間収益の半分というわけにはまいりませんが、大変喜ばしいエピソードでございます。
続きまして、太陽光発電の今後のパイプラインでございます。今、いちごグリーンで30MW、そして当社が抱えている発電所で100MW、合わせて130MW持っております。また新規で高確度の発電所を35MWほど確保しております。
風力発電も引き続き、新規の案件も含めて増やしておりますが、今回新しく福島県の案件が加わっておりまして41MWが、風況調査を開始しております。
いちごオフィス(8975)成長戦略の推進
ここからは2つのREIT(いちごオフィス・いちごホテル)といちごグリーンのご説明をさせていただきます。
いちごオフィスについては、成長戦略の推進ということで、2つほどエピソードをあげさせていただいております。いちごオフィスは内部成長をしっかりしながら、NAV(純資産)もあげていくということで、きちんと価値向上を図ってきております。
そのような中で、今回初の投資法人債の発行をさせていただいております。資金調達の多様化と借入期間の長期化というところで、安定した財務基盤を整えていきたいということで実行しております。金額は12億円、期間10年、利率0.9パーセント/年でございます。
また、GRESBのリアルエステイト評価で、最高位の「Green Star」を獲得することができております。GRESBレーティング(5段階評価)においても、上から2番目の「4 Star」をいただくことができました。
いちごが進めている「心築」、サステナブルな社会への貢献というところの中で、オフィスについても建物価値の向上だけではなく、投資主価値の向上につながっていくという流れになっていくといいなと思っております。
いちごホテル(3463)着実な成長実績と新たな施策の実行
続きまして、いちごホテルでございます。いちごホテルは、順調な外部成長と戦略的なCAPEXを使いながら内部成長を図って、こちらのグラフにあるようにNOIを向上させていただいておりますが、残念ながらNAVが2割程度下回っている状況が続いておりました。
今回、いちごホテルとしては、投資主価値の最大化を目指して、「自己投資口の取得および消却」を決定しております。
昨日と一昨日で投資口価格をだいぶ戻しておりますが、私どもとしてはまだまだ評価されていいと思っております。引き続き、しっかりと「心築」を通して、ホテルのオペレーターのみなさまと価値向上を図っていくと聞いております。
いちごグリーン(9282)上場後初決算は予想を上回る
最後に、いちごグリーンでございます。(利益分配金が)予想に対して55.2パーセントの上振れというところで、少しコストをコンサバに見ていたところもあったのですが、しっかりと予想を上回るかたちで上場後初の決算を締めております。
当社から2件ほど発電所を譲渡しておりますが、こちらはレバレッジで買っておりますので、その分でまたプラスの分配金の向上が見えてきております。今は24.2パーセント増という予想を立てております。
当社としても、先ほど申し上げたパイプラインという意味では、いちごグリーンがしっかりと成長する過程の中で、サポートもしていきたいと思いますが、まだまだ株価をあげていってほしいなと思っております。
いちごオーナーズ 成長市場への参入
今期スタートした、いちごオーナーズの進捗でございます。個人の不動産投資ニーズが高まっている中で、「成長市場への参入」と題打って書かせていただいておりますが、トピックスが3つほどございます。
まず、ダイレクト顧客が50名になってまいりました。コンサルタントや税理士、金融機関の方々にご協力いただいて、ようやくお客さまを増やすことができております。今後はITもうまく活用しながら、お客さまとのコミュニケーションも強化していきたいと考えております。
では実際に、お客さまのニーズに基づいて、どのようなことができているかということですが、約50億円弱ではございますが、お客さまのニーズに合った物件の仕入れをさせていただいております。下期においては、すでに3物件の売却が確定しております。引き続き、お客さまのニーズに合った物件の取得と提供を図っていきたいと思います。
最後は、私どもがオーナー代行をさせていただいている、青山のビルと広尾のビルについてのトピックスでございます。いちごプロデュースロゴ掲載ということで、外装サインの改修をさせていただいたり、広尾については1階のリテナントにあたって、約10パーセントの賃料の増額で新たなテナント誘致によるNOI向上に成功しております。
引き続き、お客さまの資産をしっかりと増やしていく、安心安全に管理していくことを徹底してやっていきたいと考えております。
セルフストレージ事業 成長市場への参入
セルフストレージ事業の成長市場への参入ということで、日本の住宅事情で言いますと、住宅の価格が高騰していくと、どうしても倉庫というか、収納にあたる部分がいじめられていく中で今、セルフストレージという産業が大きく見直されております。
(屋外の)コンテナ型のセルフストレージが行政指導もあって、これからどんどん縮小していく中で、屋内型のビルインのセルフストレージが大きく成長していくと考えており、実際にそのようなニーズが多くございます。
アセットの特徴といたしましては、開発型でやっていくと、できあがってからリースアップするまでに普通のアセットタイプよりも少し時間がかかります。こちら(スライド)に書いてあるように、満室近い稼働になるまでに1〜2年程度かかりますので、ここをどのように縮めていくかというのも、私どもの汗のかきどころだと思っております。
一方で、1回入ってしまうとそこを移転するということがあまりない分、埋まってくると安定的に稼働するアセットであると言えると思います。
株式会社セントロさんが進めている、ストレージプラスという商品が、いちごの理念にも沿っておりますが、「安心・安全・きれい」な収納というところで、セキュリティと空調管理システムが整っている商品を提供してまいります。
このストレージの事業というのは、いちごオーナーズとのシナジーもあるアセットタイプだと思っておりますので、グループに入っていただき、資料にも書いてあるとおり、5年で5倍の1万5,000室を目指してやっていきたいと考えております。
デザイナーズホテル 好立地の歴史あるホテルの新たなる価値向上
「デザイナーズホテル」と書いてありますが、当社は中計でも、観光立国としての日本をなんとか支援していきたい、頑張っていきたいという中で、今回初めて自分たちで作ったホテルでございます。
新たなデザイナーズホテル、「THE KNOT」ということで、「コト・モノ・ヒトを『結ぶ』」というコンセプトでございます。
私どもは不動産オーナーでございますので、私どもだけでは、当然このプロジェクトがうまくいくわけもございません。
今回はデザイナーの方に入っていただいたり、ホテルのオペレーターさまにもご協力いただき、アパレルや家具など、衣・食・住・美をトータルで展開されているベイクルーズさまともコラボさせていただき、横浜らしさを残した空間を演出したホテルを作りました。リニューアルオープンは12月を予定しております。
「THE KNOT」は、私どもの「心築」の理念でもあるのですが、心を築くということで、お客さまといい関係が作っていけるように、ビルだけではなくて街ともコラボしていきたいということで、1階のスペースを開放して、ホテルのゲストの方だけではなく、街に来た方々が集っていただけるホテルを作っていきたいと思っております。1階のレストランもいろいろと趣向を凝らして作っている、楽しみなホテルでございます。
これは横浜に限らず、シリーズ化していろんなところで作っていきたいと思っておりまして、当社が保有しているホテルの中で、「THE KNOT」にリブランドしていく候補のホテルがいくつかございますので、第2弾・第3弾とやっていきたいと考えております。
株主価値向上に向けた着実な配当の成長
今回、株主価値向上に向けた配当の成長ということで表記させていただいております。中計では、配当の成長性と透明性ということで、「株主資本配当率(DOE)3パーセント以上」と「累進的配当政策」と謳わせていただいております。
「株主資本配当率(DOE)3パーセント以上」というのは、利益の変動に影響するのではなくて、あくまでも資本に連動するということで、安定的な成長を株主のみなさまにしっかりと還元していきます。
不動産というのは大変ボラティリティのある業界ではございますが、私どもはそれに対してどのように安定的な成長を続けていくかというチャレンジであると思っておりますので、会社として持続的な成長を図っていきたいと考えております。
今期2回目の自己株式の取得
最後に、今期2度目の自社株買いを決定しており、第1回目と同額の(取得価格総額)約15億円を予定しております。
取得期間は、明日(2017年10月13日)から2017年11月22日までということで、前回と同様ではございますが、今の当社の株価の状況と、当社の財務体質、キャッシュも今500億円弱ありますので、どこに資金を振り向けるかという判断の中で、今回2回目の自社株買いの実施を決定させていただいております。
以上でございます。ありがとうございました。