2018年3月期 経営方針

笹宏之氏:オリンパスの笹です。どうぞよろしくお願いします。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。まず初めに、私から2018年3月期の経営方針についてご説明させていただきます。

経営理念・経営ビジョン

改めて、経営理念と経営ビジョンについて触れさせていただきます。

オリンパスは“Social IN”という「経営理念のもと、世界の人々の健康・安心と心の豊かさの実現を通して社会に貢献する」ということをビジョンとして掲げています。

医療現場や臨床の現場では、内視鏡や生物顕微鏡などを通じ、人々の健康と安心に貢献し、さらには産業では安全・安心、そして心の豊かさまで貢献したいという思いで、事業に取り組んでいます。これが、オリンパスが将来にわたって、永続的に事業活動をおこなっていく上での根幹となる考え方です。

この持続的な発展を確かなものとするための道筋をお示しすべく、2016年3月に中期経営計画(16CSP)を公表いたしました。

中期経営計画(16CSP)の位置付け

この16CSPにおいて医療分野における世界トップレベルのプレーヤーになることを長期的な目標として掲げ、そこに至るまでの道筋として、2017年3月期からの5年間を、足元固めと攻めの事業ポートフォリオ構築の期間と位置付けています。

この期間において、財務基盤を固めるとともに、経営資源を成長事業である医療事業に重点的に配分し、持続的発展を実現するための事業ポートフォリオ構築を目指します。

それではまず、この16CSP初年度を振り返ってまいります。

16CSP初年度の振り返り ①事業の状況

16CSP初年度の2017年度3月期は、2016年3月期と比較して、為替が大きく円高で推移した中での厳しいスタートとなりました。事業領域ごとに概況に触れてまいります。

医療事業は、16CSPの重点政策にも掲げた、新興国でのビジネス拡大を進めてきた効果が現れています。為替影響を除く実数ベースの対前年成長率では、新興国でのビジネスが二桁の成長と大変好調で、事業全体でも4パーセント成長と顕著に推移いたしました。

科学事業は、資源安等の影響により、上期としては初めて営業損失を計上しましたが、下期は顕微鏡、工業用内視鏡の販売が好調に推移し、前年同期を上回る営業利益を計上しました。

映像事業は、7期ぶりに営業利益を計上することができました。開発、製作、販売のすべてにおいて、事業構造改革を継続的に推進してきた成果が数字となって現れました。

16CSP初年度の振り返り ②主要指標

16CSPで経営目標に掲げた各指標に対する実績はご覧のとおりです。

有利子負債の削減など財政状態の改善を通じ、自己資本比率は5パーセント高まり、43パーセントとなりました。

2017年3月期を通じて改善してきた自己資本に対する資本効率性を示すROEは特別利益の影響もあり、19パーセントと経営目標を上回りました。

一方、事業収益性については、先ほど申し上げた為替の影響により、営業利益率が3ポイント低下したものの、為替を除く実数ベースでは13パーセントと2016年3月期並の水準となりました。

16CSP初年度の振り返り ③重点戦略

6つの重点戦略についても、着実に進めています。本日はこの内の2つについて進捗をご説明いたします。

まず赤でマークした1つ目の戦略ですが、事業成長を確かなものとするべく、主要3事業において主力級の新製品を投入し、製品ラインアップの拡充を図りました。

2つ目のポイントとして、更なる事業効率の追求に向けて、業務改革プロジェクトをスタートさせました。

このプロジェクトは、短期的な費用削減を目的とするものではなく、グローバルであらゆる業務プロセスを大胆に見直し、グローバルプレーヤーにふさわしい効率的な体質に変えていくことを目指しています。

またそのような改革意識を、当社の持続的な成長に向け、組織風土として根付かせていきます。2017年3月期に定めた方針のもと、2018年3月期より実行フェーズに移してまいります。

2018年3月期の見通し

2018年3月期の見通しです。新興国の成長や少子高齢化といった16CSP策定時にとらえた事業環境のメガトレンドの認識に変化はありません。

しかしながら、足元の世界経済は政治リスク、地政学リスクに左右される不安定、不透明な状況が続いています。

こうした中、当社がやるべきは、16CSPの経営方針に沿って戦略を確実に遂行するとともに、不安定な外部環境への対応力を向上させることです。

将来の成長のために必要な投資は確実に実行する一方で、今ある経営資源の最大限利用し、業務改革に全社一丸となって取り組み、従業員一人ひとりの生産性と効率性を高めていくことで、持続的な成長を実現いたします。

2018年3月期 事業戦略

こうした事業環境下での、2018年3月期の事業ごとの見通しについてお話しいたします。16CSP発表以降、継続してご説明してきた事業戦略を事業環境の変化に対応しながら、今期も各事業でしっかりと実行して参ります。

医療事業では、先進国地域において消化器内視鏡の主力システムが発売から5年が経過しており、成長が緩やかになってくると見込んでいます。

一方で、全社の成長ドライバーと位置付ける外科分野では、新製品を各地で順次導入して参ります。

この強力な製品ラインナップに加え、2017年4月28日に発表したImage Stream Medical社の買収を通じ、同社の事業基盤を得ることで16CSPに掲げた手術システムインテグレーションの強化を図ります。

これにより、より良い医療関係を提供するとともに、外科イメージング分野のデファクトスタンダート化を推進して参ります。

外科事業ではこれらの取り組みを通じ、高い成長を見込んでいます。加えて地域的には比較的新興国の拡大による成長を捉えて参ります。

科学事業では、2017年3月期に投入した新製品により拡充したラインナップをもって、事業の成長を進めて参ります。

最後に映像事業ですが、こちらは市場環境が引き続き厳しい中でも、昨期に続きしっかりと利益を出していける体制を維持して参ります。

経営資源配分

最後に経営資源配分です。16CSPでお伝えした考え方にのっとり、2018年3月期も引き続き財務健全性を高めるとともに、持続的成長のための成長分野への投資を行って参ります。

2018年3月期の投資案件として、欧州と米国の医療ビジネスを支える修理・サービス拠点の回収等の設備投資を見込むほか、消化器内視鏡の次世代システムの開発に向けた投資を加速して参ります。

その上で、16CSPで定めた総還元性向の目安30パーセントを意識しながら、株主還元についてもみなさまの期待に応えられるよう、しっかりと実現して参ります。

2018年3月期は、当期純利益は減益の見通しですが、経営の総合的な観点から、2017年3月期と同額の28円を予定しています。私からの説明は以上となります。

2017年3月期 通期実績 ①連結業績概況

竹内:CFOの竹内です。私からは2017年3月期の決算概況および2018年3月期の業績通期見通しについてご説明を申し上げます。

こちらのスライドは、2017年3月期の連結決算の実績となります。

売上高は前年対比で7パーセント減の7,481億円、営業利益が27パーセント減の765億円。為替の円高による影響により、減収減益となっています。

しかしながら、為替影響を除く実数ベースでは主力の医療内視鏡が堅調に推移したことに加えて、科学事業や映像事業においても事業環境の改善、新製品の投入効果等があり、売上高は2パーセントの増収、営業利益は2パーセントの増益となっています。

当期純利益については、テルモ社の株式売却等の特別利益の計上や、税金費用の減少により782億円、2期連続で過去最高を更新しています。

2017年3月期 通期実績 ②セグメント別概況

セグメント別の概況になります。医療事業は、売上高5,753億円、営業利益1,155億円となりました。

主力の内視鏡分野をはじめ、外科分野、処置具分野も堅調に推移したことで、為替を除く実数ベースでは4パーセントの増収、1パーセントの増益となっています。

科学事業は売上高932億円、営業利益53億円となりました。

今期上半期は、資源安等による影響を受けまして、当事業を通して半期を通じて、はじめて営業損失を計上することになりましたが、下半期になり外部環境が改善したことに加え、新製品の供給が安定したことで、通期での為替を除く実数ベースでは、1パーセントの増収、3パーセントの増益を確保しています。

また映像事業は、市場が大幅に縮小する中で、減収となったものの、フラッグシップモデルの新製品投入による効果や、既存製品の販売価格が堅調に推移できたこと、販促費等の費用をコントロールしたことにより、営業利益5億円を計上することになりました。7期ぶりの黒字化を達成しています。

連結貸借対照表

バランスシートの状況です。総資産は1年前と比較して、96億円減少の9,911億円となりました。純資産は当期純利益782億円の計上により、1年前との対比で466億円増の4,309億円となっています。

この結果、自己資本比率につきましては、約5ポイント改善して43.3パーセントとなりました。有利子負債については、引き続き削減をつとめています。384億円の減少で2,846億円の残高です。

連結キャッシュフロー計算書

キャッシュフローの状況です。医療事業を中心とした事業活動の利益を中心として、営業キャッシュフローは902億円となっています。

前年の2016年3月期は米国司法省への罰金及び制裁金の支払い金等があったため、前年対比では416億円の増加となっています。

投資キャッシュフローについては、医療事業の製造拠点と八王子市の開発拠点の設備投資に対する支出があったものの、テルモ社の株式等、政策保有株式の売却による収入により、前年対比では446億円の改善、83億円のマイナスにとどまっています。以上により、フリーキャッシュフローは819億円のプラスとなっています。

2018年3月期 通期業績見通し

2018年3月期通期の業績見通しについてご説明いたします。当社は2018年3月期よりIFRSに基づく開示に移行して参ります。

本日は、まず日本基準で2018年3月期の見通しと2017年3月期の実績を対比してご説明を差し上げます。その上でIFRSでの見通しをご案内させていただきたいと思います。

2018年3月期通期業績の見通しになります。業績見通しの前提となる固定の為替レートは、直近の為替相場の動向を踏まえて1ドルを110円、1ユーロを115円としています。

売上高は、前年比3パーセント増収の7,700億円。医療事業を中心に堅調な成長を続けて参る計画です。

営業利益は、成長への投資をしっかりと継続しつつも、医療・科学・映像の3事業とも増益となる見通しで、3パーセント増益の790億円を見込んでいます。

当期純利益は510億円の見込みです。

これらを受けまして、2018年3月期の配当の見込みは2017年3月期の配当予想28円から据え置きとさせていただく予定です。

2018年3月期 セグメント別業績見通し

こちらがセグメント別の業績の見通しとなります。医療事業は外科事業において新製品投入の効果による高い成長を見込むなど、前年対比4パーセント増収。営業利益についても3パーセントの増益を見込んでいます。引き続き全社業績を牽引して参ります。

科学事業は引き続き厳しい事業環境ではありますが、2017年3月期に拡充した製品ラインナップをもって、増収増益を見込んで参ります。

映像事業につきましては、市場全体が縮小傾向の中で減収とはなるものの、2018年3月期においてもしっかりと収益を確保できる構造を継続して参ります。

2018年3月期見通し(IFRS)

こちらが2018年3月期の見通しを、従来の日本基準とIFRSの基準と比較した表になります。

当社では2018年3月期より財務情報の国際的な比較可能性の向上と、グループ内の経営管理、精度向上の目的から、IFRSを任意適用いたします。

当社の連結決算上、日本基準との差異として、いくつかの処理の違いはありますが、主にはのれんの償却がなくなるという差異になります。

ただし、1つの会計期間だけを見ると、のれんの償却がなくなること以外に開発費の資産化とそれに伴う償却など、処理で認識のタイミングのズレを中心として、一時的なプラスマイナスが生じ得ます。

日本基準で営業費用に含まれない営業外損益や、特別損益のうち金融収支以外の取引が、IFRSでは営業費用に含まれることになりますが、これは段階利益の間の組み替えにすぎませんので、当期利益の影響は一切ございません。

いずれにしても、2018年3月期の当期利益におきましては、のれんの償却費がなくなることや開発費の償却の影響等が日本基準との差異となっています。

最後になりましたが、16CSP初年度となります今期は、円高の進展など大変厳しい事業環境下でのスタートとなりました。

しかしながら、笹の説明でもあったとおり、医療ニーズの増大や症例数の増加など、事業を取り巻く中長期の事業認識に変化はありません。

主力の医療事業については、堅調に推移しています。引き続き、経営陣一丸となり、中期計画16CSPの最終年度である2021年3月期の経営目標達成に向けて、事業戦略を推進して参ります。私からは以上です。ご静聴ありがとうございます。