今回のプレゼンのテーマ
恒冨菜々美氏:こんにちは。西南学院大学です。これから、株式会社日本取引所グループのプレゼンテーションを行います。
今回のプレゼンを通して、「日本取引所グループが金融・資本市場運営を通じて、企業の持続的成長、市場の成長、さらに『貯蓄から投資へ』という流れを支え、日本経済の発展とともに成長していく企業である」ということをお伝えしていきます。
アジェンダ
アジェンダはスライドに記載のとおりです。
1. JPXについて 会社概要
会社概要です。株式会社日本取引所グループ(JPX)は2013年に発足し、プライム市場に上場しています。
山道裕己氏によるグループCEO就任後のメッセージでは、情報発信を強化すること、社外・海外など外に目を向ける意識・文化を醸成すること、よりよい市場とサービスを創出していくことが述べられており、今後の日本取引所グループの方針が表れています。
1. JPXについて 企業理念
企業理念です。日本取引所グループはサービスの提供により、市場の持続的な発展と豊かな社会の実現に貢献すること、加えて市場利用者の支持および信頼の増大を図り、その結果として利益をもたらすことを企業理念として掲げています。
1. JPXについて 歴史
これまでの歴史をお話しします。日本取引所グループのルーツは、新1万円札の顔である渋沢栄一や、五代友厚らが創設した東京株式取引所・大阪株式取引所にあります。各時代の日本経済を支えた東京証券取引所と大阪証券取引所が2013年に経営統合し、「日本取引所グループ」が誕生しました。
統合後は営業収益、株価ともに安定的に成長しており、現在(2024年2月16日)は7日連続で上場来高値を更新しています。
1. JPXについて 事業概要
事業概要はスライドの図のとおりです。金融商品の取引に関するサービスをグループ全体で総合的に提供しており、市場参加者と上場企業のパイプとなって各事業を運営しています。
このように、マーケットに関する総合的なサービスを提供している日本取引所グループですが、どのようにして収益を得ているのか、日本取引所グループの収益構造について、次のスライドでご説明します。
1. JPXについて 収益構造
収益の内容は、取引関連収益、上場関連収益、清算関連収益、情報関連収益、その他収益で構成されており、市況に直結する収益構造となっています。
それぞれの割合は、スライド左側の円グラフのとおりです。2024年3月期の営業収益は、現時点で好調に推移しています。
1. JPXについて 市場環境
市場環境について、3つの視点からお話しします。
まずは、世界から見た日本取引所グループの立ち位置です。主要な取引所の中で、世界5位の株式売買代金と時価総額を誇っています。
国内での現物株式売買代金は82.4パーセントと圧倒的なシェア率となっており、ほとんどの株式が日本取引所グループで取引されていることがわかります。また、収益の増加に大きく関わる株主数についても著しく増加していることから、市場環境は好調と言えます。
JPXの収益は、市況が直結する
日本取引所グループの収益は市況に直結します。つまり、マーケットの持続的な成長と維持が、日本取引所グループの安定的な収益の増加に繋がると言えます。
マーケットの安定と持続的な成長を実現するために、上場企業や個人投資家に対して、次のような取り組みを行っています。
2. JPXの取組み 上場企業
髙妻あい氏:1つ目は、市場区分の見直しです。以前の市場区分は5つでしたが、区分のコンセプトが曖昧だったため、投資家にとって利便性が低く、企業価値向上の動機付けが不十分だという課題がありました。
そこで、2022年4月に、明確なコンセプト設計のため、新たに「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」という3つの市場に編成されました。
これによって、各市場の上場企業の成長が期待されます。また、投資家にとっては企業間の比較や投資の判断が行いやすい環境が整いました。
2. JPXの取組み 上場企業
2つ目は、上場企業への「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請です。企業価値向上のために、企業の意識改革を促し、持続的な企業価値を創出することを目的として、2023年3月31日に公表されました。
なお、企業価値を測る指標の1つとして、PBRが挙げられます。「プライム市場」に上場している大企業の中でも、PBRが1倍を切っている企業は多く、海外市場と比較してもPBRが1倍未満の企業の割合が高くなっています。そのため、バランスシートや資本効率を意識した経営や、株価を引き上げるための具体策の提案・実施が必要な状況になっています。
この要請によって、企業と投資家の建設的な対話を実現し、持続的な企業価値を創出することが期待されています。
2. JPXの取組み 市場参加者
3つ目は、個人投資家についてです。国民の投資への意識が変化する中で、日本取引所グループは市場の運営者として、金融リテラシーの向上を図る取り組みを行っています。
2022年4月には「JPXマネ部!ラボ」が創設され、さまざまな世代や職種、ニーズに応じたコンテンツを提供しています。
「東証マネ部!」では、資産形成に関する記事が紹介されています。ユーザーの6割が現役世代であることから、若い世代を中心に金融知識への関心が高まっていることがわかります。
また、市場の情報提供を行う場である東証Arrowsの施設見学も行っています。この見学では、日本の金融市場の中枢であるマーケットセンターを間近で見ることが可能です。その他にも、株主投資体験や講義の開催などの取り組みを行っています。
東証Arrowsの施設見学
我々も実際に、東証Arrowsの見学へ行ってきました。スライドに、その際の写真を掲載しています。
マーケットセンターや上場の鐘、資料館などがあり、日本取引所グループについてはもちろんのこと、日本の金融や資本市場についても学ぶことができました。
2. JPXの取組み 2024年3月期の業績は?
業績予想についてです。スライドの情報は資料提出時点のものですが、昨日に続き、本日も日経平均株価は最高値を更新しています。日本取引所グループの取り組みとして期待されていた企業価値の向上や、市場参加者の増加がこちらに表れていると言っても過言ではありません。
また、2024年3月期の連結業績予想や、1日平均の売買代金・取引高がいずれも上方修正されています。これらの結果についても、日本取引所グループの取り組みが寄与したといえるのではないでしょうか。
3. 今後のJPX 上場企業
昨今の活発な市況や市場参加者の増加を一過性にしないために、今後もさまざまな施策を行っていきます。
その1つとして、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に対する企業の対応策の開示が挙げられます。この施策によって、企業の取り組みへの意識や姿勢を可視化します。また、投資家にとっては企業の判断基準にもなります。
判断基準の1つであるPBRで比較すると、PBR1倍未満の企業を中心に意識改革が進んでいると考えられます。しかし、一方でPBR1倍以上の企業の情報開示が進んでいないため、引き続き企業へのアプローチを行っていく必要があります。
情報開示に向けた取り組みとして、今年2月に東証で投資家の高い支持が得られた取り組みの事例が公表されました。これにより、上場企業における実効的な取り組みの検討や実施を促進できるほか、企業価値向上による市場の活発化やデフレ経済の脱却に向けても、大きく前進すると考えられます。
3. 今後のJPX 市場参加者
個人投資家に対する取り組みについてです。現在は「貯蓄から投資へ」という流れがあり、新NISAの開設も影響して個人投資家の数は増加しています。一方で、家計の金融資産構造を見てみると、日本の金融資産の大半が銀行預金となっており、投資へのポテンシャルが高い状態です。
この状況に対し、日本取引所グループはより投資しやすい環境を整える取り組みを行っています。具体的には投資単位の引き下げや、小口でも分散投資ができるETFの上場、市場利用料金の見直しが挙げられます。
先ほども触れたように、日本の金融資産の大半が「現金・預金」であり、「貯蓄から投資へ」の動きは今後も進んでいくものと予想されます。
3. 今後のJPX 学生からの提案
今回コンテストに参加するにあたり、我々が感じた課題にもとづく提案があります。それは、日本取引所グループのホームページにAIを用いたチャットボットを導入することです。
現在はホームページの構造が複雑で、訪問者が求めている情報を得るまでに時間がかかるという課題を感じました。この状態では、「投資先の魅力をうまく伝えきれていないのではないか?」と我々は考えました。
チャットボットの導入によって訪問者が情報に辿り着きやすくなれば、投資家の抱える疑問点の早期解消が見込めます。従来よりも投資判断の要素を集めやすい構造にすることで、より多くの人へ日本取引所グループの魅力の高さを発信できるようになると考えました。
4. 財務分析
財務分析です。健全性を示す3つの指標から、日本取引所グループの財務基盤は盤石と言えます。2022年度のROEは目標値を下回っているものの、過去10年平均の数値を上回っており、高い収益率を実現しています。
また、2022年度と過去5年平均の配当性向はともに目標配当性向を上回っていることからも、高い収益をもとに、株主に対して十分に還元するという企業の姿勢が見受けられます。
5. リスク
リスクについてご説明します。リスクマップはスライド左側の図のとおりです。
金融インフラを提供するという事業の特性上、問題が発生した時の社会への影響が非常に大きいため、リスクへの対策としてリスク管理委員会、リスクポリシー委員会を設置し、グループ全体で徹底的に対処しています。
リスク対策の事例として「arrownet」の運用があります。「arrownet」には、日本取引所グループのシステムと市場参加者を結ぶ役割があります。アクセスポイントが複数あることで万一の際におけるリスクを分散しており、セカンダリセンタを整備しているため災害時でも地上の回線が止まらず、継続的に取引できる環境を整えています。
6. ESGについて
ESGについてです。日本取引所グループは「環境と共存可能な資本市場の維持・発展」という環境理念をもとに、事業会社としてだけでなく、市場運営者としても持続可能な社会を目指すための取り組みを行っています。
なお、市場運営者としては2023年にカーボン・クレジット市場を開設し、ESGに関連した指数の算出や先物上場などを行っています。
7. 総括
最後に総括です。金融リテラシー教育による個人投資家の増加や、上場企業の企業価値向上による市場の活発化、さらに株主への還元を安定的に実現していることから、日本取引所グループは、今後も日本経済・市場の発展とともに着実に成長し、金融インフラとして豊かな社会を実現していくのではないでしょうか。
以上でプレゼンを終わります。ありがとうございました。