クエスト、創立60周年
小泉裕氏(以下、小泉):株式会社クエスト取締役の小泉です。本日はよろしくお願いします。2025年3月期の決算についてご説明します。
おかげさまで、当社は今年で60周年を迎えました。我々のフィロソフィーを「ITの未来は『ありがとう』の中にある」という言葉に詰め込んでアピールし、企業価値向上に貢献するとともに、グループ社員一同、この言葉をかみしめながら日々業務に邁進しています。
当社概要
当社の概要について簡単にご説明します。青字の部分がアップデートされた情報です。おかげさまで、創立60周年を迎えます。2025年3月期の売上高は149億円、従業員数は約1,000名弱です。
後ほどご説明しますが、4月15日にM&Aを行い、株式会社セプトを完全子会社化しました。
目次
本日はこちらの4点について、アジェンダに沿ってご説明します。
1-1.2024年度 通期実績 業績ハイライト
まず、昨年度のレビューです。スライド左端から売上高、EBITDA、1株当たりの配当額となっており、過年度を含めた直近5年度の業績を示しています。
売上高については、149億円ということで、右上がりの確実な成長を続けています。売上高は12期連続、営業利益は7期連続のアップサイドとなりました。
EBITDAを示している理由をお話しします。過去数年間M&Aを実施してきたためにのれんの償却があり、営業利益率はM&A実施前と比べると若干低下しています。そちらを是正するために、EBITDAの率を表記しています。
1株当たりの配当額については、2023年度は49円でしたが、2024年度は普通配当が53円、こちらに加えて60周年の記念配当として5円増配した合計58円の配当を計画しています。
1-2.2024年度 通期実績(連結・対前年比較)
損益計算書です。青色で囲ったところが、直近で締めた2024年度の通期の実績です。ご参考として、左側に前年度の実績、右側に前年比較の絶対額と増減率を記載しています。
売上高は149億3,600万円、営業利益が約10億5,500万円、経常利益は11億1,200万円ということで、主なKPIはすべて前年比でプラスのファクターになっています。
純利益が若干プラスになっているのは、賃上げ促進税制の申請による税額の控除を受けたためです。
1-3.2024年度 通期実績(連結・対業績予想)
対外発表した業績予想に対しての進捗についてご説明します。売上高は150億円を予想していましたが、若干届かず6,400万円の減収という結果になりました。それ以外のKPIについては、対外発表の数字をすべてクリアしています。
1-4.顧客産業別売上高(ポートフォリオ比較)
顧客産業別のポートフォリオの比較です。グラフのオレンジ色の部分が半導体・製造を中心とした重点強化領域です。
紫色の部分が安定成長領域ということで、金融、エンタテインメント、情報通信、緑色の部分が、公共と社会、移動と物流、ヘルスケアとメディカルと、社会課題の解決に直結するようなお客さまとの取引を表しています。
グラフを見ると重点強化領域が前年度に比べ5ポイント下がっていますが、こちらは中期経営計画のガイドラインとして、50パーセント前後という内部的な指針を持っています。
理由としては、半導体は限界利益率が非常に高いため、事業環境が良い時は非常に良いのですが、北風が吹くと一気に利益率が悪化します。したがって、あまり半導体領域に偏りすぎると安定的な利益が創出できないため、50パーセント前後を指標にしています。
半導体領域については、シリコンサイクルの問題がありますが、メモリに関しては案件が少し戻ってきた部分がポジティブな要因となります。しかし、製造分野の一部のお客さまにおけるシステムの開発案件が若干下がったため、結果的に5ポイントのマイナスとなっています。
一方、社会課題解決領域においては、特に公共のお客さまのインフラサービスの増加、および移動・物流のシステム開発案件が増えたため、結果的に8つのポートフォリオをうまく分散しながら収益をマネージしているという現状です。
1-5.営業利益の増減要因(前年同期比較)
営業利益の前年同期比較の増減要因分析です。前年度実績が9億9,700万円から、今年度は若干プラスの10億5,500万円でした。ビジネスが伸びていることによる増収効果、また、オペレーション改善効果がポジティブに効いて、1億1,400万円プラスです。
しかし、我々の一番の目標は、単年度の利益ではなく2030年度の利益と売上高であり、また、企業価値を上げることを最終目的にしています。そのため、技術投資と人材投資を着実に行いながら利益を上げている状況です。
株式会社セプトの連結子会社化
2025年度の業績予想についてご説明します。まず、4月15日に株式会社セプトという、100名規模の会社を完全子会社化しました。秋葉原駅の近くの岩本町にあり、従業員の平均年齢が34歳と、非常に若い企業です。
IT業界全体におけるリソース不足は、長年にわたり叫ばれています。後ほどご説明しますが、我々も、コアサービスとこれからのソリューションビジネスを拡大していく時に、やはりエンジニアリソースの獲得が喫緊の課題です。
我々が必要とする技術に一緒に取り組める相手を1年以上前から探していましたが、今回ご縁があって、株式会社セプトを完全子会社化し、私もそちらの取締役を兼務しています。これから、シナジー効果をより一層発揮できるように貢献していきます。
子会社化の目的は、エンジニアリソースの強化に尽きます。特にコアビジネスの領域において、定型的ビジネスや付加価値のあまり上がっていない領域をシフトすることにより、グループ全体の利益率を上げていく狙いです。
【参考】株式会社セプト 会社情報
株式会社セプトの概要です。代表取締役は、現在クエストの金融システム事業本部担当の役員である山内が着任しています。もとからおられた営業担当取締役を含め、3名でしっかりとオペレーションしていきます。
2-1.2025年度 通期業績予想 成長機会とリスク
2025年度の業績予想に向けて、オポチュニティとリスクをスライドにまとめています。
一番のポイントは、2030年に向けて案件の受注獲得を増やすことです。リソース不足により失注している部分もあるため、そこを食い止めるということと、ソリューションビジネスを中心に付加価値の高いビジネスに、可能な限りリソースをシフトしていくことがメインになります。
オポチュニティとしては、我々の強みは、グローバルに展開する大手顧客のお客さまが60パーセント強を占めていることです。彼らとしっかりとアライアンスを組み、よりお客さまの課題解決に貢献し、付加価値を上げていくことがキーになると考えています。
また、今後の取り組み課題ではありますが、ソリューションを強化していく中で、我々が得意としている保守・運用・開発に加え、AIなどの自動化のプロセスを少しずつ組み込んでいき、業務改善を図ることがオポチュニティであると考えています。
一方、リスクに関しては、どこの会社も同じですが、1つは人材不足です。協力パートナーがいる会社は多いと思いますが、当社の場合は、これまでどちらかというとリソースが不足した時にピンポイントでご協力をお願いしていました。
しかし、その方法だと安定したビジネスになりません。したがって、定型的な業務を外部にお願いし、我々は違う領域へシフトしていくことで、戦略パートナーを中期的に増やしながらリソースをマネージしていきます。
加えて、当社は海外展開をしていないため、為替変動や米国の関税リスクの影響を直接受けることはまずありません。ただし、お客さまはグローバル展開をしている製造業や金融業の会社がかなりの割合を占めています。
そのため、時期が若干ずれて、例えばコストダウン要請やいろいろな案件の見直しなどが起こるという間接的なリスクが考えられます。この点は慎重に読みながら、中期的なビジネスプランもマネージしていきます。
2-2.2025年度 通期業績予想 (セプト社含む3社連結)
2025年度の業績予想です。本年度については、4月15日にセプトを完全子会社化し、ゴールデンウィークを挟んで1ヶ月弱しか見ていませんが、3社の連結ベースでは概ねこれくらいと見通しています。
半期経過時点で再度レビューし、変化点があればしっかりご説明するようにしますが、売上高は前年比プラス19億2,400万円の168億6,000万円を予想しています。営業利益は11億8,000万円ということで、セプト社の子会社化は基本的にはポジティブに効いてくると思っています。
2-3.株主還元方針
株主還元方針についてです。2025年3月期は、記念配当を含めて58円とします。記念配当がなければ普通配当で53円ですが、2025年度については普通配当の53円から2円増配の55円を計画しています。
配当の水準は、昨年5月にご説明した中期経営計画の資本政策の、連結配当性向35パーセント以上、DOE4パーセント以上を目安としながら、株主さまにもしっかり還元していきたいと思います。
3-1.第2期・中期経営計画(2024-26年度)
中期経営計画の進捗についてご説明します。現在は、2030年までの中期経営計画「Quest Vision 2030」のちょうど中間の期になります。
2026年度の目標として、売上高168億円としています。基本的に、オペレーションの骨子に関してはまったく変更していません。
【補足資料】中期経営計画(2024-26年度)
セプトの連結子会社化により中期経営計画達成を前倒し、売上高とEBITDAをさらに向上させていく計画をしています。
3-2.従業員の状況および計画
人員についてのご質問を頻繁にいただくため、ご説明します。従業員数は2024年度末時点で約1,100名、セプトの完全子会社化により1,250名程度となっています。
これからある程度人員を増やしながらソリューションビジネスを増やして、高収益体質に少しずつ変えていくという計画になっています。
クエスト単体の平均年齢と女性管理職の比率等は、スライドに記載のとおりです。
3-3.第2期・中期経営計画の重要テーマ
中期経営計画の重点テーマとして、3つの基本方針と3つの重点戦略を設定しています。現在、こちらにきちんと焦点を当てながら、日々オペレーションをしています。
3-4.第2期・中期経営計画の進捗
中期経営計画の進捗についてご説明します。3つの基本方針に対する本年度の進捗を青字で示しました。
「事業ポートフォリオの変革」に関しては、顧客産業軸と技術のソリューション軸で事業展開のビジネスプランを組んで、リソースシフトのオペレーションを行っています。
「人と技術への未来投資」については、従来どおりプライオリティをつけながら投資を行っています。
また、従業員の意識改革や従業員への還元として、60周年を契機として持株会の制度をより充実させました。他社の奨励金の平均は10パーセント弱だと思いますが、それを大幅に上回る奨励金を設定しています。社員にも経営感覚を身に付けてもらいながら、かつ将来の安定株主を確保するという施策を打っています。
「事業体質と経営基盤の強化」については、キャッシュアロケーションを含めて、配当やM&Aをきちんとマネージしていきます。
【参考資料】生成AIに関する取り組み状況
生成AIに関する取り組みについてご説明します。ここに関しては、できている部分とできていない部分があります。現在実行中で取り組んでいるのは、生成AI、RAGを組み込んだサービスデスク業務のアプリの試作ですが、まだ内部でのPoCプラスアルファぐらいの状態です。
将来的には開発、保守運用のところにAIの機能を埋め込んでサービスを提供し、伸ばしていきたいと考えています。
4-1. 成長戦略の考え方
成長戦略についてご説明します。まず、成長戦略の考え方です。重点戦略、財務戦略、人財戦略において、基本的な部分に関して大きな変化はございません。
4-2.事業構造戦略 成長シナリオ
事業構造戦略については、今まで我々が得意としてきた保守・運用サービス、アプリ開発の部分は少しずつ伸ばしながら、付加価値の高いソリューションサービスを強化していきます。
2030年度にソリューションサービスの割合を30パーセントにするという目標を掲げており、ここに対してのリソースシフトと技術教育・育成を進めている状況です。
4-3. コアサービスの深耕(社会課題解決領域)
コアサービスについては、公共・社会分野顧客のパートについてご説明します。主に電力系の会社のお客さまから、これまでインフラ保守・運用サービスを提供してきた実績を認められ、戦略パートナーに選ばれました。これは、数ある会社の中から2社選ばれたうちの1社です。
このように、お客さまから信頼を勝ち得たことを受け、引き続き、コアビジネスも付加価値を高めながら着実に伸ばしていきたいと思います。特に電力需要はこれからも増えていくため、私どもの強みである「ITインフラを守る技術力」を存分にマネージして、コアビジネスの拡大に寄与していきます。
4-4.クエストのソリューションサービス
ソリューションサービスについては、エンジニアリングソリューション、サプライチェーンソリューション、データエンジニアリングソリューション、クラウド型マネージドサービスの4つの柱を掲げています。
それぞれのサービス内容、実績、今後の展望について簡単にご説明します。本日は頭出しにとどめ、株主総会後の中長期戦略説明で詳しいお話をする予定です。
4-4.クエストのソリューションサービス
エンジニアリングソリューションでは、PLMを中心に展開しています。こちらは以前M&Aをしたエヌ・ケイという会社が知見と技術を有しており、こちらのメンバーとクエストのメンバーがタイアップしながら、スライドに3つほど挙げている代表ソリューションを提供しています。これらのシステムを使いながら、お客さまの課題解決に貢献しています。
実績も着実に上がってきており、半導体メーカーで2社4システム、電機メーカーで5社6システムと、確実に受注を増やしています。今後はサービスモデルも確立していきます。
サプライチェーンソリューションについても、大手半導体メーカーや大手複合機メーカーでのサプライチェーンソリューションの導入において、D365やSAPなどの実績を上げています。こちらも製造顧客の横展開や、先ほどご説明した生成AI業務も取り入れながら、着実に伸ばしていきます。
特にPLMに関してはデータの宝庫であり、設計から製造に対してのデータ連携や、部品に関しては今後部材メーカーとの企業間連携も十分出てくると考えています。したがって、ここには相当なチャンスがあると分析しています。
4-4.クエストのソリューションサービス
データエンジニアリングソリューションとクラウド型マネージドサービスです。サービス内容はスライドに記載のとおりですが、クラウドやBIツール含めた実績を少しずつ溜め込んでいる状態です。
クラウド型マネージドサービスに関しては主にセキュリティの部分が中心ですが、こちらもAWSやAzureだけではなく、Palo AltoやCybereasonなどもかなりのお客さまにご愛顧をいただいています。ここも確実に伸ばしていきたいと思います。
4-5.成長戦略達成の基本シナリオ
成長戦略達成の基本シナリオです。コアサービスとソリューションサービスの両方に共通するのが「リソースの調達と計画的育成」という部分です。
コアサービスに関しては、半導体を中心とした参入障壁の高い領域できちんと専門性を向上し、コンペティターよりも優位にオペレーションを進めていきます。
ソリューションサービスについては拡販体制を構築し、今後のさらなる成長に向けて伸ばしていきたいと思っています。
New Growth, Go Quest
最後に、スローガンとして「新たな成長」です。スライドの60周年記念のロゴは、無限大のマーク(∞)をイメージしているのと、こじつけではありますが「GO」に見えることから「GO Quest」としています。
この「New Growth,Go Quest」を掲げて、得意の安定収益、堅実な成長を貫きながら高付加価値ビジネスによりシフトしていきます。そして、株主還元と社員への還元はバランスを取りながらオペレーションを行い、企業価値を上げ、さらなる成長に向けて邁進していきたいと考えています。
質疑応答:開発パートナーの業務について
質問者:スライド13ページ右側にある「信頼ある開発パートナー確保」についてうかがいます。こちらは定型業務を任せるというお話でしたが、具体的にはどのような業務を想定されていますか?
既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。