過去最高益「博展」の今後、成長戦略と独自の強みとは? 〜中期経営計画についてのスペシャル対談〜

原田淳氏(以下、原田):みなさま、こんにちは。株式会社博展、代表取締役社長の原田です。今回も、元楽天のIR責任者でマーケットリバー代表取締役の市川さんをお招きして、博展の中期経営計画について対談形式でお送りしていきたいと思います。市川さん、よろしくお願いします。

市川祐子氏(以下、市川):よろしくお願いします。

中期経営計画の進捗状況

市川:2023年に発表された3ヶ年の中期経営計画の進捗状況についてうかがいたいと思います。

原田:2023年も社員のみんなが本当によくがんばってくれました。コロナ禍を経て市況としては非常に良くなっており、顧客のニーズも回復してきています。その中でしっかりと顧客に向き合い、さらに高みを目指せると思っています。

市川:スライドは良い写真ですね。

原田:戦略の話もありますが、何よりも社員一人ひとりが成長してきたことが、非常にうれしいです。そして、それが結果に結びついていると思います。

事業成長の推移

原田:その結果として前期は本当に良い成果が出ました。成長基調を取り戻し、上場来の年間平均成長率は9.97パーセントとなりました。業界平均を大きく上回って成長しています。これはやはり、業界や世の中のいろいろな既成概念や慣習にとらわれずに、がんばってチャレンジしてきた結果だと思います。

市川:スライドのグラフを見ると、本当に好調です。2023年度は4月から12月の9ヶ月の変則決算でした。したがって、前年の同じ期間と比べると35パーセント以上伸びていて、非常に良い状況になっていると思います。

業績計画の進捗状況

市川:利益面も含めた中計業績計画の進捗はいかがですか?

原田:2023年12月期は中期経営計画の初年度でしたが、スライドのとおり計画を大きく上回る着地となりました。

市川:いずれも計画を大きく上回っています。その主な要因は何ですか?

原田:社員一人ひとりのがんばりと、それぞれがしっかり成長してくれたことが大きいと思います。

さらに、事業ユニット戦略をもとに、顧客の市場ごとに特化して活動したことが挙げられます。その成果として、「Japan Mobility Show」やクリスマスの大型イベントなどを受注できたのだと思っています。

市川:まさに中計で立てた戦略が成功していると感じました。一方で、2024年12月期と2025年12月期の計画は当初のものから修正しておらず、少し保守的なようにも見受けられます。

原田:何人もの方に同じことを言われています。まずはみなさまにしっかり約束できる数字をきちんと出していく方針で、これからもしっかり取り組んでいきたいと思っています。もちろん、投資費用なども織り込んだ計画にはなっています。

市川:確実性が高まったら上方修正する可能性もありそうですね。

原田:そうですね。そのようなことが決まったら、できるだけ早くみなさまにお伝えしたいと思っています。

事業概要

市川:博展の事業について教えてください。

原田:我々の事業領域は「Experience Marketing」です。スライド左側の「Real」から「Digital」と書いてあるところが、我々が提供しているサービスです。これはどんどん広がっていきます。

そして、そのサービスを通じ、スライド真ん中の体験(Experience)を創造し、行動変容を起こしたいと考えています。これにより、お客さまと一緒にスライド右側のようなマーケティングの成果を作っていきます。

市場概況

市川:Experience Marketingの市場環境はどのような状況ですか?

原田:スライドのように、主に3つの市場にまたがっています。広告業界イベント領域市場、ディスプレイ業は、コロナ禍の停滞から大幅に回復しています。特に、体験の主戦場であるイベントは注目されていますし、フォローの風が吹いていることを実感しています。

インターネット広告市場も、我々に関連する市場です。この領域も拡大基調です。ここでも、我々はオンラインイベントや、イベントと連携するサービスなどで成長させていきたいと思っています。

市川:それぞれの業界での同業他社について教えてください。

原田:広告業界イベント領域市場では、フロンティアインターナショナルさん、TOWさん、電通さん・博報堂さんのグループ会社などがあります。ディスプレイ業には、乃村工藝社さん、丹青社さんがあります。インターネット広告市場では、サイバーエージェントさんなどです。

市川:この3つはいずれも成長が見込まれ、しかも相互に影響している市場ですよね。これらを合わせると、5兆円以上の市場規模となります。

競合優位性

市川:同業他社と比べた、博展の競合優位性について教えてください。

原田:クリエイティブ、制作・施工管理、サステナビリティの3つが我々の強みです。それぞれが強い会社はたくさんありますが、この3つをきちんと内包して活動しているのは我々だけだと自負しています。

市川:体験価値が、大手広告代理店とは異なる付加価値を作っているのですね。

成長戦略

市川:成長戦略の進捗を教えてください。

原田:中期経営目標に対して、「対 社会・市場」と「対 人・組織」の両軸を回しています。

まず、「対 社会・市場」に関する取り組みの進捗についてご説明します。

成長戦略|「対 社会・市場」

原田:社会・市場に向けて、まずは提供価値を高めていくことが大事だと考えています。そのために、顧客のカテゴリーごとに提供価値を追究する事業ユニット戦略を推進しています。その結果、スライドのグラフのとおり、全カテゴリーにおいて成長できています。

ここでは営業、クリエイティブ、制作が1つの部門になっており、お客さまと一緒に描いた思いを、実現に向けて鮮度高く形にしていきます。加えて、実際に現場で起こった課題にスピード感を持って次のプランへ活かしています。そして何よりも、この3つの部門が共通の目標を持ってがんばっている点が成長している理由と思っています。

市川:これはやはり、事業ユニット戦略がうまくいっているということですね。スライドのグラフの数字を見ると、特に首都圏BtoCマーケティング事業の売上が好調と見受けられます。

原田:おっしゃるとおりです。どの事業もそれぞれの業界に特化していますが、首都圏BtoCマーケティング事業は最近ようやく花が開き始め、非常にうれしいです。

Japan Mobility Show 2023

市川:具体的にはどのような取り組みを重ねていき、受注につながったのでしょうか?

原田:例えば、「Japan Mobility Show」は、前回は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催されず、その前の2019年時点では当社の受注はごく少ない状況でした。

イベントやプロモーションを行う我々としては、やはりたくさん実施したいと思っていたのですが、「Japan Mobility Show」を受注したいとがんばっても、そこに届かないことに気づいたのです。

やはり顧客と、顧客のその先の顧客に対しての理解を深め広げていくところと、それに対するクリエイティブ力、実現力をしっかり磨いていかないといけないと考え、それ以来ずっとがんばってきました。その結果、事業ユニット戦略が花開き始めたと思っています。

市川:社内の一つひとつの取り組みが実を結び始めたと感じました。これは他の業界にもさらに広がりそうですね。

原田:おっしゃるとおり、さらに広げていきたいと思っています。

サステナビリティの取り組み

原田:サステナビリティへの取り組みも、前期よりようやく実績として出てきました。これも非常にうれしいことです。環境配慮型のイベント開発と実装に向けて、専門部隊が中心となってがんばっています。顧客、市場のニーズがどんどん高まっていることもあり、案件が非常に増えてきています。

また、コンペ勝率は業界平均で3割から4割ですが、我々は環境配慮型のイベントに関しては7割を超えています。

市川:すごいですね。

原田:2016年頃から取り組みを行ってきていましたが、そのがんばりが実を結んできています。

市川:サステナビリティへの対応は、特にグローバルな会社では取引の必須条件と言っても過言ではないと思います。私の友人のあるメーカーの経営企画の方も、博展に依頼した展示でサステナビリティの点に非常に感心していました。

原田:それはとてもうれしいです。

市川:「クリエイティブも、サステナビリティも実現している」と言っていました。

成長戦略|「対 人・組織」

市川:「対 人・組織」に関しての戦略の進捗はいかがでしょうか?

原田:スライド右側が「対 人・組織」のフレームです。詳細はスライドをご確認ください。

人材開発戦略

原田:この中で特に人材が大事で、人事部門を大幅に強化しました。外部から優秀な人材にきてもらったり、事業で活躍した事業側のトップに人事部へ異動してもらい、人材を強化しています。それをベースに研修制度を体系化し、制度設計をしっかり整えることを始めています。

採用状況

市川:原田社長は前回も「人が大事」と話されており、人材開発に力を入れていることがよくわかります。人材はこれからの日本ではもっとも不足する資源だといわれていますが、人の採用は計画どおりに進んでいますか?

原田:まだ理想は高めたいですが、比較的順調に進んでいると思います。採用は、新卒も中途も重要視して積極的に進めており、今年4月には単体で46名、グループ全体で53名が入社しました。今、非常ににぎわっています。

入社した社員の一人ひとりは、より大きな企業に入れるだろうという社員が多いです。そうでありながら、我々のバリューや成長していきたいという思いに共感してくれています。

また、当社は選考過程で社員にたくさん会っていただきます。本当に魅力的な社員が多く、会社はもとより社員に魅力を感じて入ってくれる人が増えており、非常にうれしいです。

市川:企業のバリューや企業理念に共感が高い社員が多いと、生産性が高いという調査結果もあります。そのような点では本当にすばらしい社員が入ってきており、楽しみだと思いました。

経営基盤戦略

市川:戦略として経営基盤の強化も掲げていましたが、そちらはいかがでしょうか?

原田:昨年、CFOの藤井も入ってくれました。彼を中心に、着実に基盤の強化を進めています。

具体的には、DX推進人材を採用して情報セキュリティやITインフラの強化を行っているほか、経営戦略部門の人員も強化しています。外部から優秀な人材を招いたり、事業側の人材に関わってもらったりしています。

また、今回ご覧いただいている動画などIR戦略の強化も行っています。第3四半期をめどにIRサイトのリニューアルも行いますので、ご期待ください。さらに、次の段階に成長していくために、基幹システムのリプレイスも予定しています。

市川:いずれも外からは見えにくいものですが、非常に大事な改革です。決算説明会では、藤井CFOと原田社長とのコンビネーションが良かったと思っています。

現中期経営計画は、将来の成長のためのマイルストン

市川:現在の中期経営計画は2年目となりましたが、将来に向けた長期的な計画についてはどのようにお考えですか?

原田:現中計は将来さらに飛躍していくための足場作りと考え、まずは今の事業をしっかり追究し、収益性の確立と基盤作りに注力しています。

トップラインのみを伸ばすのであれば、がんばればできるかもしれません。それが本当に成長していることになるのか、ただの膨張なのかを見極め、成長する基盤を作ってからアクセルを踏みたいと思っています。

次期中期計画では、掲げているパーパスの実践に向けて、事業規模・領域をさらに拡大していこうと戦略を立てています。

長期展望

原田:先般より、現場の部長たちと2030年に向けた戦略の具体化についての議論をスタートさせています。

もちろん、現事業もまだ伸びしろがあります。2030年に向け、まずは現事業がどこまで伸びるのか、輪郭をくっきりさせたいと考えています。輪郭がくっきりしたら、その外側に自分たちの可能性がどのように広がるのか、どの方向に伸ばしていきたいのかを考えます。

市川:伸びしろがたくさんありそうで、今後の長期的な成長が期待できると感じました。

原田:ぜひご期待ください。

時価総額100億超え、次なるステージへ

市川:投資家の方が気になる株主還元方針について教えてください。

原田:まず、時価総額については、おかげさまで1つの目標としていた100億円を超えてくることも出てきました。

市川:過去3ヶ月では、TOPIXと比較しても伸びが大きいですね。

原田:今後も着実に上げていければと思っています。

市川:時価総額が100億円を超えてくると、機関投資家が投資しやすくなります。新たなステージに入ってきましたね。

原田:ようやく、今までコツコツ積み上げてきたことが結実し、次のステージに向かっていけていると感じています。

資本政策

原田:資本政策についてです。みなさまの期待に応えるためには、我々の成長がもっとも重要だと考え、財務基盤の強化と将来の事業に向けた投資を確実に行っていきます。

同時に、株主還元についても、年間配当性向30パーセントをベースに安定的に実施していきたいと考えています。

配当について

市川:具体的な配当金額について教えてください。

原田:今期は中間8円、期末9円の合計17円を予定しています。4月1日に株主分割を行ったため、分割前では34円相当となります。

市川:コロナ禍で厳しい時期もありましたが、安定的に配当を増やせるようになってきましたね。

株主優待について

市川:株主優待についてはいかがでしょうか?

原田:4月5日に株主優待の内容変更について開示しました。中長期的に保有いただける株主さまを増やすことを目的に、優待制度の内容を拡充し、株主優待品も変更しました。

ポイントの1つ目に、保有期間の基準を6ヶ月以上、1年以上3年未満、3年以上に広げました。スライドの丸印の時点で株主名簿に同一株主番号として記載されていることが必要最低条件となります。

2つ目に、優待品を「QUOカード」から「JCB PREMO」へ変更しました。Amazonや百貨店、家電量販店、コンビニ等でも利用でき、株主のみなさまがより使いやすくなりました。

3つ目に、博展グループの体験コンテンツに直接触れる機会を提供しようと考えています。

市川:体験コンテンツがどのようなものか気になります。

原田:こちらは2024年10月頃にご案内を予定しています。博展グループの事業について、みなさまがより直感的に理解できるようなコンテンツを用意したいと考えています。

市川:どのような内容になるのか楽しみですね。

まとめ

市川:今回の中期経営計画のポイントをまとめます。1つ目に、事業ユニット制が奏功しています。2つ目に、足元では計画を上回って進捗しています。3つ目に、成長投資を行いつつ株主還元を積極的に実施し、今回、株主優待制度を刷新しています。

ますます成長に期待が持てそうですね。

原田:これからもみなさまの期待に応えられるよう、成長に向けがんばっていきたいと思っています。

ご視聴くださったみなさま、引き続き博展グループへのご支援をどうぞよろしくお願いします。本日はありがとうございました。