事業概要
嘉屋雄大氏:みなさま、こんばんは。株式会社キットアライブ代表取締役社長の嘉屋雄大です。本日は当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。2023年12月期第3四半期の決算説明を行います。
まず、当社の事業概要です。当社は北海道に会社があり、「北海道から日本のクラウドビジネスを支える」ことをビジョンとしています。「Salesforce」というクラウドのプラットフォームを専門に扱っており、北海道だけではなく、全国のお客さまとビジネスを行っています。こちらについては後ほどご説明します。
株式会社キットアライブについて
当社のプロフィールです。本社は、札幌駅から歩いて約5分のところにあります。現在、再開発がよく行われている地域です。東京事業所は日本橋にありますが、従業員54名のうち5名が東京事業所、49名は本社で勤務をしており、ほとんどの従業員を札幌に有している会社です。従業員の平均年齢は2022年12月期末時点で32.6歳と、まだまだ若い会社です。
設立は2016年8月で10月に営業開始したため、丸7年が経ちました。社歴は非常に短いですが、私自身が「Salesforce」のビジネスに携わったのは2007年くらいからで、15年以上取り組んでいることになります。
キットアライブ設立前の前職時代に「Salesforce」の事業部を持っていた経験があり、そちらの事業部が母体となって誕生したのが当社です。設立メンバーは現在も残っており、ビジネス自体にはかなり長く携わっています。
資本金、役員構成等はスライドに記載のとおりです。事業内容は後ほど詳しくご説明します。札幌証券取引所とアンビシャス市場のロゴも右側に掲載していますが、2022年9月28日に上場しました。
サービスの特徴
当社サービスの特徴は、クラウドソリューション事業の単一のセグメントとしてビジネスを展開しています。「Salesforce」のプラットフォームを用いて、システム開発を行っています。ビジネス内容は、スライドに記載の2点に分かれています。
1点目は、「Salesforce」導入支援です。一般的に、この導入支援が「Salesforce」のビジネスと言われています。お客さまに「Salesforce」のプラットフォームを設定いただいた上で、独自のシステムを作りたいといった希望がある場合に、ITコンサルティングや要件定義、設計、開発、システムテスト、運用保守をワンストップでご提供するようなサービスです。
一般的にSI、クラウドインテグレーションと言われているビジネスに近く、そちらをクラウド上で行っています。
2点目は、「Salesforce」の製品開発支援です。1点目との違いですが、iPhoneは「App Store」、Androidは「Google Play」からアプリをインストールしますが、そちらのビジネス版と考えていただければと思います。
例えば、どこの会社でも使われる名刺管理機能を「Salesforce」に組み込みたい場合は、「Salesforce」版の「AppExchange」という「App Store」のようなサービスに類したものを使用します。そちらで名刺管理を探して何度かクリックすると、インストールされ、それを自社で使うことができます。非常に速く使えるのが「Salesforce」の製品の特徴です。
製品にはさまざまな切り口がありますが、このようなアプリを作りたいというご要望のある幅広い業種のお客さまをご支援しています。
「Salesforce」は1万5,000社以上の国内企業に使われているため、マーケットは存在するのですが、独自の技術が必要で、一般的なITエンジニアだけでは「Salesforce」上で製品を作ることができません。
そのような企業がマーケットに参入したいとなった際に、アイデアレベルで「このようなアプリを作りたい」「このマーケットに入っていきたい」などというところからご相談いただき、一緒にアプリケーションを作り、出来上がった製品を世の中に出すというお手伝いをしています。
製品の特徴はもう1つあります。一度世の中に出して終わりではなく、売れていくとさらに新しい機能が必要になり、エンハンス開発がどんどん必要になっていきます。そのような部分で、継続的にお客さまをご支援しています。長いケースですと、数年にわたって開発を続けているものもあります。
ビジネスの流れ
スライドには、事業系統図をもとにビジネスの流れを掲載しています。一番左に記載しているセールスフォース・ジャパン社から、お客さまや案件をご紹介いただき、「Salesforce」導入支援を行っています。こちらが、先ほどご説明した1点目のビジネスになります。もちろん、当社がお客さまを開拓して導入支援を行うこともあります。
加えて最近増えているのが、2点目のビジネスとなる製品開発支援で、私たちが製品を開発させていただくものです。このご支援に携わった会社からお客さまをご紹介いただき、1点目の導入支援につながる場合があり、この製品開発と導入支援の両方に携わるパターンが非常に増えてきています。
当社が開発した製品ですので最も熟知していますし、導入支援もスムーズに対応できるということで、案件をご紹介いただいています。
セールスフォース・ジャパン社からのご紹介が多数ですが、製品開発委託元企業からのご紹介も増えてきており、案件としては非常に豊富な状態が継続しています。
図の左側のセールスフォース・ジャパン社の隣には、株式会社テラスカイと記載しています。こちらはプライム市場に上場している会社で、当社は、上場前までテラスカイの子会社でした。
現在は子会社ではありませんが、テラスカイグループとして関係性は継続しており、「Salesforce」のライセンスは、テラスカイを通じて購入して再販しています。テラスカイからも、案件をご紹介いただくこともあります。
当社は中小企業や地方の会社に強く、テラスカイは大企業に強いという、それぞれの強みを活かして2本のホワイトスペースを塗り潰していくという関係性もあります。
スライド下部には人材派遣企業と記載がありますが、こちらは当社で一緒に働いてもらうエンジニアを募集し、主に北海道・札幌に派遣社員として来ていただく動きになります。そのようなエンジニアの方々に、社員と一緒に開発および導入支援の案件に携わってもらえるよう、人材派遣企業と一緒に教育に取り組んでいます。
当社の市場ニーズ
当社の市場ニーズやビジネスの流れを一言でまとめています。スライドに記載のとおり、「クラウドを活用し、全国のお客さまの生産性向上に北海道から貢献すること。」となっています。
北海道から全国にクラウドビジネスを展開
北海道に会社があることの利点ですが、日本全国に存在する企業において、コロナ禍以降は「場所はどこでもいい」という会社が非常に増え、Web会議を使って業務を遂行することも増えました。そのようなことで北海道に本社を作り、新卒、第2新卒、中途も含めて札幌で積極採用を行っています。
採用競争を少しでも避けて、有利なかたちにしたいという思いもあり、これまで取り組んできています。
2023年12月期 第3四半期累計 業績ハイライト
ここからは、2023年12月期の第3四半期業績についてご説明します。まずは業績ハイライトです。スライドのオレンジで囲っている部分が、1月から9月の第3四半期累計です。売上高は6億1,800万円、売上総利益は3億500万円、売上総利益率は49.4パーセントとなります。
結果として、営業利益が1億4,900万円、営業利益率と経常利益率が24.2パーセント、当期純利益が約1億円となっています。
売上高の予実進捗率は68.2パーセントに留まりました。スライド上部に記載していますが、エンジニア採用が思うとおりに進んでいないことが要因です。
営業利益以下の各段階利益は80パーセントに近いところまできており、利益は順調に推移しています。
2023年12月期 第3四半期累計 貸借対照表
貸借対照表です。2022年12月期末比で、自己資本比率が6.2ポイント増加して83.8パーセントとなっています。財務基盤は健全であると考えています。
売上高/経常利益又は経常損失の推移
スライドのグラフで推移を見ていただくと、まだ四半期残っていますが第8期は4分の3が終わり、右肩上がりの傾向であることがおわかりいただけると思います。
純利益/純損失、1株当たり純利益/純損失の推移
スライド左側のグラフですが、当期純利益の推移についても同様に、右肩上がりとなっています。右側のグラフは1株当たり当期純利益ですが、第3四半期終了時点では81.34円となっており、まだ100円に届いていません。
純資産額/総資産額、1株あたり純資産額の推移
純資産額・総資産額、1株当たり純資産額の推移です。こちらも右肩上がりとなっています。
売上総利益・売上総利益率の推移
売上総利益・売上総利益率の推移は、それぞれのグラフに記載のとおりです。売上総利益は右肩上がりですが、売上総利益率は第3四半期の終了時点で49.4パーセントで着地しています。
都道府県別取引先と累積取引先社数の推移
本社が北海道にありWeb会議を活用しているとお伝えしましたが、この第3四半期は東京都と栃木県の合計3社から新規受注をいただきました。栃木県は初めての県となり、合計で18都道府県のお客さまと取引実績があります。
スライド右側には累計取引先社数推移を掲載しています。第3四半期が終わった時点で、112社となっています。
残念ながら、今期は北海道のお客さまから新規受注をいただいていません。コロナ禍以降、投資意欲は北海道以外の地域のお客さまのほうが強いと感じています。私自身としても、地元である北海道での受注も増やしていきたい思いがありますが、それぞれの会社の投資意欲に左右されてしまうということです。
2023年12月期 通期 業績予想(当初予想から変更なし)
通期の業績予想です。当初予想から変更はなく、売上高が約9億円、経常利益は約1億9,000万円ということで開示しています。
2023年12月期 通期 業績予想(当初予想から変更なし)
通期の業績予想を数値として表にまとめています。こちらも変更はありません。
2023年12月期 エンジニア採用目標
2023年12月期のエンジニア採用目標は14名と掲げていましたが、進捗としては非常に厳しい現状です。
特に中途採用のエンジニアの競争が、1年前と比べても非常に激化していると感じています。報道等でも、すべての会社で厳しいと言われていることは承知していますが、中途に関しては特に厳しく、当社も獲得競争にさらされていると感じています。
しかし、新卒採用は非常に順調です。後ほどご説明しますが、特に北海道大学の出身者などが増えています。北海道の地の利を活かし、また、上場後は知名度や安心感があると考えられるようで、採用は順調に進んでいます。
国内パブリッククラウドサービス市場予測
続いて、市場性についてご説明します。スライドのグラフは、国内パブリッククラウドサービス市場予測です。新聞等でも目にすることが多いと思いますが、右肩上がりとなっています。案件の引き合いも続いており、当社としても市場は順調に伸びていると考えています。
国内CX関連ソフト/CRMアプリケーション市場予測
「Salesforce」が最も得意とする領域は、CX関連ソフトウェア、CRMアプリケーションと言われています。CX関連ソフトウェアは8パーセントで、CRMアプリケーションは10パーセントといった数値で伸び続けており、それぞれの市場は順調だと考えています。
日本におけるIT人材は東京に偏重
現在当社が最も闘っている採用のところですが、日本におけるIT人材は、残念ながら東京に偏重しています。東京は会社数も多く、優秀な人材の獲得競争は本当に激しいと思っています。当社は北海道・札幌を中心としてエンジニアを育成し、特に新卒など若手で優秀な人材の確保に継続して取り組んでいます。
少人数プロジェクトの特徴
当社の取り組みについてご説明します。当社は少人数のプロジェクトが多数あります。中小企業のお客さまが多いのと、大企業であってもスタートアップのプロジェクトで打診いただくケースが多いです。少人数プロジェクトは約3名のチームで、早期にリーダーを経験することができる特徴があります。
リーダーを務めるためには、プログラムや設計だけではなく、複数工程を経験する必要があります。小さいプロジェクトは、スライド「①複数工程の経験」に記載しているとおり、プログラムやお客さまと設計を詰めたり、要件定義を行ったりする機会があるため、能力を早期に身につけることが可能です。
「②業務理解度の向上」に関しては、例えば、新卒のメンバーがお客さまとの打ち合わせに早くから参加するのは難しい場合があり、対面形式ですと断られるケースもあります。しかし、Web会議ならば会議室の場所や人数に制約がないため、出席させてもらうことができます。
お客さまの考えを直接うかがう機会が非常に多くあるため、お客さまの業務、ひいては事業への理解度を上げられることが特徴です。
これらを通じてエンジニア育成を行っていけることが、非常に有利なポジションにあるのではないかと考えています。
採用・育成
このような会社の特徴のもと、札幌で中途、新卒・第2新卒とも、若手を中心を積極採用しており、育成の支援制度、例えば資格取得支援などによって、業務の理解度の高いITエンジニアの育成を行っています。
下流工程だけでなく、上流工程の業務を担当する能力を早く身につけ、Web会議を使って、全国のお客さまの「Salasforce」導入支援を行い、プロセスを回すことを担当しています。
全社員のうち23%が北海道大学出身
この9月期末時点において、全社員のうち23パーセントが北海道大学の出身者となっています。今年の4月入社は、5名のうち1名が北海道大学、来年の4月については、北大生から2名に内定の受託をいただいているところです。
エンジニアの成長を会社として支援
育成制度についてです。エンジニアというのは、会社から何か研修を行い、教えられることだけではなく、能動的に学ぶ、いわゆる自己研鑽が必要な業種であると考えています。
当社はそのような自ら学ぶということに対し、年間60時間まで残業時間を使用できるという制度を運用しています。「このようなことを勉強したい」という申請を上げれば、就業時間を使って勉強してよいということです。
この制度は、この第3四半期累計期間までに593時間を社員に使ってもらっています。このような制度は、例えば社員が資格を取得したり、新たな技術にチャレンジしたりすることに使われています。また、「flier」というサービスも、ライセンスを提供して大勢に使ってもらっています。
Salesforce認定資格保有者数一覧
結果として、まず私どもの「一丁目一番地」と言える「Salasforce」の認定資格は、スライドに記載のとおりの取得状況となっています。
上のほうに記載のある「〇〇アーキテクト」という資格がいわゆる上流の資格となっており、こちらの人数も少しずつ増やしています。
地域とともに成長を
「KidsAlive」という寄付の制度も設けています。お子さんがいる社員に、子ども1人あたり月1万円を手当として支給しています。四半期に一度になりますが、それと同じ合計金額を地域のお子さんの育成のために寄付しています。
私どもの会社だけが地域で成長するということではなくて、このような寄付を中心として、地域が成長していくから、私たちの会社も成長していくという思いが、この制度のきっかけになっています。
社員の定着が成長の源泉
「社員の定着が成長の源泉」ということで、2022年の4月1日以降、退職者が出ていなかったものの、この第3四半期末時点で、1名の退職者が出たことをご報告します。
私たちのミッション
当社のミッションは「Challenge together.」となっています。
システムやクラウドの導入、一般的なシステム開発という意味合いでは、「作って終わり」というように思われてしまうかもしれません。しかし、私どもの考え方としては、システムの導入によって、例えば、お客さまの運用や働き方、事業の仕組みなど、それ自体を変えていくご支援を行っています。
スライドには「改革」という言葉もありますが、システムを入れるだけではなくて、お客さまの事業自体を変えることをご支援したい、そのために、私どもも一緒に汗をかいていきたいということが、この「Challenge together.」という言葉に込められています。
資料のご説明は以上となります。
質疑応答:業績予想の修正のタイミングについて
「現在の通期決算予想は、当初計画の採用予定数を反映した数字だと思いますが、採用人数が計画に満たない場合、業績予想の修正、売上高や販管費の修正はどのタイミングで行われるのでしょうか?」というご質問です。
業績予想の修正については、実際の進捗状況を踏まえ、当社内の規定に基づいた検討フローによって決定しています。
規定でのチェック対象としているのは売上と利益のみということになっており、販管費は含んでいません。規定のものを足し合わせた結果、業績予想の修正が必要だという場合には、速やかに適時開示を行います。
質疑応答:配当方針と今後の見通しについて
「配当方針と今後の見通しを教えてください」というご質問です。
株主のみなさまに対する利益還元は非常に重要だと認識しています。当社の最重要課題は人材の採用と育成であると、先ほどからお話ししていますが、私も今、この課題にどう対応するかを非常に重要視して考えています。
その点では、さらなる成長に向けた組織体制の構築が必要であろうということもあり、設立以来配当を実施した実績はありません。
将来的には、財政状態および経営成績を勘案しながら、配当を実施していくという方針はあるものの、現時点において、配当実施の可能性およびその実施時期等については未定となっています。
質疑応答:株主資本の活用方針について
「財務体質がよすぎると思っていますが、M&Aを含め、株主資本をどのように活用されるお考えでしょうか?」というご質問です。
「よすぎる」という表現をいただいていますが、これはよいことではなく、株主資本を有効に使えていないというご指摘と捉えています。
財務状況については、創業以来健全な状況が続いているものの、ご指摘のとおり、上場以来、例えば有効なM&Aを行うことができていない、また、そのような開示ができていないことも事実です。
クラウドインテグレーションのビジネスを成長させるには、ある程度の規模が必要だと考えており、私としてはまず、社員数を早々に100名まで増やしていくことを目指しています。
100名までにはまだまだ足りていませんが、そのための資本の活用方法については、さまざまな観点から現在検討しています。まずは社員数100名を1つの区切りとして、早くそこに至りたいと考えています。
質疑応答:札幌に本社を置くメリットについて
「札幌に本社を構えていてよかった点、メリットなどを教えてください」というご質問です。
先ほどと重複するところもありますが、現状では、大きなメリットを感じる点として採用活動があります。北海道大学をはじめとして、優秀な学生さんが多いことは感じていますし、地元の北海道で活躍したい、働きたいという優秀な方々がいらっしゃいます。
その理由から当社を選んでいただけており、また、おそらく昨年の上場以来当社を見ていただける機会も増えていることを感じており、新卒に関しては、競争が激しい東京と比べて、北海道に会社を構えるメリットが非常に大きいと考えています。
加えて、人材の採用の費用、例えば紹介会社へのお支払い額や人件費自体が首都圏と比較しても若干低く、これもメリットと考えています。ただし、常々お伝えしていますが、中途の人材については人材獲得競争が非常に激化しています。
これまではマス求人広告媒体を多く使っていたものの、そこに頼るというやり方では、私どもが求めるレベル感の人材を採用するのは難しいということを、この数ヶ月は非常に強く感じました。
そのため、費用をマス求人広告だけではなく、例えば、優秀な人材が集まっているコミュニティにターゲットを絞るかたちで、メディアを活かしていくなど、そのような予算の使い方に変えていき、今までと同じことは行わない方向で現在は検討しています。
質疑応答:長期の展望について
「売上高が10億円に満たないので、ここにもっとドライブがかかると、時価総額も評価されると考えていますが、今日の足元の決算だけではなく、来期、再来期以降の長期展望が知りたいです」というご質問です。
こちらもおっしゃるとおりで、どの時点で10億円に達するのか、またそのときの利益がいくらなのかという点については、株主のみなさまからも開示を求められていることを強く認識しています。
当社内では3ヶ年の事業計画を毎年決裁しており、複数年の計画自体は社内では保有していることはあるものの、これをどのタイミングで開示するかということについては、原則として社内での検討事項となっています。
質疑応答:今後のクラウド選択の動向について
「『Salasforce』『AWS』は、この円安で費用も上がっていると思います。一方、国は国産クラウドを後押しする動きがあると思いますが、貴社ではどのようなお考えでしょうか? 業績、クラウドの動きなど、理解が浅いところもあるので、教えていただきたいです」というご質問です。
「Salasforce」は、今年2023年8月に製品の値上げが行われました。製品によりますが、円安等を理由に10パーセント程度の値上げが行われています。ただし、顧客管理や営業支援、先ほどCRMやCXについてお伝えしましたが、そのような分野では、「Salasforce」に対する需要は非常に高い状態が続いていると考えています。
そのため、例えば値上げがあったことによって、商談が一気になくなるといったような大きな影響はないと考えています。
私は今年の9月にアメリカで開催された、セールスフォース社が主催する世界的なイベント「Dreamforce」に行ってきました。世界中から「Salasforce」のユーザーやパートナーが集まるイベントです。
その中の基調講演において、創業者のマーク・ベニオフが話をしていましたが、ソフトウェア市場では「Salasforce」は世界第3位になったという発表がありました。
また、日本だけで見ても、ソフトウェア市場ではオラクル社を抜いて2位になったという発表もありました。ちなみに1位はマイクロソフトですが、日本ではマイクロソフトに続いて2位になったということです。世界2位という順位につけているのは、日本だけということです。
そのように「Salasforce」自体の売上が非常に伸びているところがあり、特にCRMにおいて「Salasforce」はマーケットのリーダーとして、確固たる地位を世界で築いているところがあります。
お客さまのCRMを検討するときには、必ず「Salasforce」がその土壌に挙がると思っています。この状況はそう簡単に崩れるものではなく、「Salasforce」を中心としてCRMを作っていくような動きは今後も変わらないと考えています。
加えて、これはまだこれからというところもあるものの、CRMのデータを持った状態で顧客のシステムを作り上げることによる次なるメリットは、「ChatGPT」などの生成AIを絡めることによって、例えば、お客さまに対して自動で応答できたり、自動でお客さまへのメールの文面を作ってくれたりなどは、CRMがあるからこそ可能となります。
それによってさらなる省力化を行い、生産性を高めるようなことが見えており、CRMを生成AI等々と絡めることによって、さらに生産性を高める動きが今後さらに加速していくと予想しています。
そのため、「Salasforce」がCRMのマーケットをとり続けること自体は、当面変わりはないと現時点では想定しています。
質疑応答:中途採用不調の原因と対策について
「中途採用が不調になっている原因と対策について、可能な範囲でご教示ください」というご質問です。
こちらも繰り返しとなりますが、ITエンジニアの求人数は依然として高い状態が続いています。特に、私どもはIT企業ですが、DXを進めるIT以外の事業会社、例えば今は「内製化」のようなキーワードで、ITエンジニアを集める企業もどんどん増えてきています。
私どもはそのような会社とも採用市場で闘っていかなくてはならず、これが非常に厳しいというのが正直なところです。こちらについては、ターゲットを絞ったマーケティングや当社自体の知名度、これをもっと向上させていくことが重要になります。
新卒に対してはこの施策がうまくいったものの、中途に関しては効果が出ていないため、ここにてこ入れしていくことを考えています。
質疑応答:今期の受注状況について
「第3四半期単体での売上利益進捗が、前期と比べてあまりよくないように見えます。受注状況について教えてください」というご質問です。
こちらは、昨年度に人員の確保が進んだことなどにより、売上利益の進捗が良くなっています。今期は採用確保に苦慮しているところがあり、案件の打診があっても、それに対応できる十分な要員がいないため、案件自体をお断りする、もしくは後ろ倒しにするということが発生しています。
案件自体は十分な数がありますので、「案件がなくなってきているから売上が落ちる」ということではなく、そのような要因によるということで、要員数を増やしていく、確保していくということが、私どもが一番やらなければいけないことと考えています。
質疑応答:今後の成長見込みについて
「現在の貴社の少人数プロジェクト、Webオンラインで業務完結という状況で、今後どの程度まで成長できる見込みでしょうか? 規模が大きくなると、対面を求める顧客が増えたり、同業他社との差別化が難しくなったりする気がします」というご質問です。
まず対面・非対面のところですが、確かに対面を求めるお客さまがいらっしゃるのも事実ではあります。ただ、絶対に対面かといいますと、基本的には今、Web会議で十分だとおっしゃるお客さまが多いと私自身は感じています。
例えば、対面が必要ということでも、プロジェクトスタートのタイミングでのキックオフや、トレーニングシステムができあがった後のトレーニングだけでよいというお客さまもいらっしゃいます。対面を求めるのは全部ではなく、ごく一部で、「ここだけをまず対面でやりたい」というお客さまもいらっしゃいます。
ですから、私どもはまずWebを中心として、そこにあるマーケットを、そのお客さまに対してご支援する考えです。マーケット自体が成長しており「Webでよい」とおっしゃるお客さまの数自体もどんどん増えています。コロナ禍が終わっていく中でも、「すべて対面にしてください」とおっしゃるお客さまには、スタッフも私も出会っていません。
そのような環境を活かしており、「本当に対面でなければ100パーセントだめだ」というお客さまは、申し訳ないながらお断りすることはあるかもしれないですが、それ以外のWebを許容いただけるお客さまだけでも、案件数としては相当数がありますので、まずはそちらのほうにターゲットを絞っていきたいと考えています。
同業他社との差別化というところでは、もちろん「Salesforce」の導入支援をする同業他社さまは他にも多いですが、私どもは北海道の会社ですので、人件費や渉外会社に支払うフィーが少し下がるところを、売価や単価に反映させることもでき、競合他社と比べるお客さまに少し安くご提示することもできるかと思っています。そのため、価格競争力といった面では非常に差別化ができる要素が、当社にはあるのではないかと考えています。
質疑応答:人材の獲得について
「貴社のようなIT系企業の成長には人材獲得が第一の課題だと思います。現状、人材獲得は予定どおりに獲得できていますか? 人材の獲得は中途・新卒のどちらに力を入れていますか?」というご質問です。
こちらも繰り返しのところが多くなりますが、新卒・中途どちらも取り組んでいるというところで、新卒は非常に順調ですが、中途が苦しいのが現状です。
中途採用では、転職顕在層に対してのアプローチを行っていますが、転職潜在層のほうに対しての知名度向上が、私どもにとっての鍵だと考えています。みなさまにお伝えできる段階になりましたら、お話ししたいと思います。
質疑応答:人材教育と離職率について
「貴社の人材教育について教えてください。また離職率はどれくらいですか?」というご質問です。
まず人材教育は、新卒社員が対象の基礎的なプログラミング研修を3ヶ月半行っています。それが終わった後、「Salesforce」の研修を1ヶ月程度行っています。新卒社員に対しては、合わせて4ヶ月以上の研修を行っているというところです。
その後、いきなり業務に当たってもらうのではなくて、いわゆるOJTというかたちで、少しずつ業務に慣れてもらっていくようにしています。
加えて、先ほどご紹介したように、自分自身で定めたテーマに沿って興味ある分野を学習していくというところで、残業時間を年間最大60時間使える「もっとアライブ」という制度を使い、例えば「Salesforce」の資格を取るということを社員自身も行っています。
離職率も先ほどお話ししたとおり、2022年の4月以降に1名の退職者が出ました。離職率をずっとゼロに保つということは難しいですが、長く当社で働いてもらえるところを目指して、これからも努めていきたいと考えています。なんとか離職率を低く保てるように、今後の取り組みも考えていきたいと思います。
質疑応答:来期以降の投資と利益のバランスについて
「この成長率と、営業利益率18パーセント、前期比が30パーセントあるなら貴社の株は割安とも思いますが、来期以降の投資と利益のバランスはどうお考えですか?」というご質問です。
割安かどうかは市場の判断というところでコメントを控えますが、投資等々や利益のバランスについてご回答します。
まず成長のための投資ということは、私自身、これからも必要と考えています。利益率とのバランスを保っていくことは必要と考えていますが、社内体制の拡充、それから採用、入社後の教育、ここへの投資はこれからも欠かすことができないと感じています。
特に中途のところですが、当社の知名度向上のために大きく投資していくことも、現段階では必要になってくるのではないかと、そのような可能性も考えています。
当社は昨年上場しましたが、上場したからといって知名度が上がるわけではなく、上場に伴って何らかの施策を打っていかなければならなかったということで、ここが不十分だったと感じています。この知名度向上に対する投資活動の可能性は今、検討しているところです。
質疑応答:エンジニアの採用遅延対策について
「エンジニアの採用に遅れが生じているようですが、どのような対策を講じる予定でしょうか?」というご質問です。
採用に関するご質問を多くいただいており、ご回答内容が少し似通ってしまうことをお詫び申し上げます。転職の潜在層に広くアピールするような求人広告や、ダイレクトリクルーティングサービスを行ってきたのですが、その効果が特にこの数ヶ月、1年ぐらいで非常に薄れてきたと感じています。そのような状況もあって、ターゲットを絞ったかたちの広告や媒体などを使っていきたいと考えています。
少なくとも、これまでのように「マスの求人広告を打っていけばよい」ということは、まったく思っておらず、今のままの施策を継続したところで採用数が回復することはないという判断を下しています。これまでとは異なる手法を取ることで、新たな採用の方法を私どもも身に付けていきたいと考えています。
質疑応答:退職者が出ている件への対策について
「退職者が1名出たようですが、業界的にいい条件での転職がしやすい環境であるように感じますが、どのような対策を講じますか?」というご質問です。
私どもの業界は転職しやすいというところが確かにあるとは思います。IT業界は、すべて同じようなことが言えるのかもしれません。
日本全体は、人手不足の傾向や、これから人口が減少していくことも確定していますので、すべての企業において、今後転職を検討する人が増えていくのではないかと予想しています。
特にエンジニアの転職市場は、何年先になるかわかりませんが、いわゆるAIが完全にシステムを作ってくれるような状況にならない限り、これからも活況が続いていくのだろうと思っています。
当社は、教育制度や社内のコミュニケーションにより、社員が自ら活躍できる環境を整えています。ただ、私たちの会社に所属してもらえていることへの意義を社員に感じてもらえるような仕組みを、今後作っていきたいと考えています。
もちろん、社員の給料を上げていくことも必要なことの1つだと捉えていますが、それだけではなく、社員が人間としてより成長を感じられる環境を私どもの会社が提供できるということが、まず退職者をなくしていくことにつながります。反対に、転職潜在層には、私たちの会社を良いと思ってもらえるところへつながっていくということを考えています。
ふわふわしたことをお話しして恐縮ですが、やはり人として成長したいというのは非常に根源的な欲求と考えており、人としての根源的な欲求に応えてあげられるような会社をしっかり作っていくということを目指していきたいと思います。
質疑応答:「Salesforce」の導入メリットや今後の拡販について
「初歩的な質問なのですが、『Salesforce』導入のメリットはどれほどなのでしょうか? 使ったことがないのでよくわかりません。まだ広まりそうですか?」というご質問です。
「Salesforce」は顧客の管理ツールだとお話ししましたが、例えば日本では、どんどん生産年齢人口が減っていくと人口自体が減って、お客さまの数自体が減って、それが会社の数が減っていくことにもつながっていくと思います。
例えば高度経済成長期のように、どんどんビジネスが伸びている時なら、ある会社の見込みがなくても、他のお客さまを探して売りにいけばよい、そのような着地もあったかと思います。
残念ながら、そのような時代はもう日本ではなかなか来ないでしょう。全世界的にもこれからの人口減ということが予想されていますから、同じようなことが日本以外にも起こっていくということになると思います。
そのような中で、とても根源的なところになるのですが、お客さまにとって自分のことを覚えていていただける会社もしくは営業担当者がいると、そこにお願いしたい、お任せしたいという気持ちが生まれます。そのような人間の根源的な気持ちは、これからも変わらないと考えています。
「お客さまのことを覚えている」「理解している」というところを支援するために、このCRMという、お客さまの情報を蓄えるシステムが必要になってきます。
この情報をどのように蓄えていくかといったことが、その企業のノウハウにつながっていくのですが、まずはこれを作り上げるということが非常に重要な要素となります。
そのCRMのお客さまの情報が蓄えられた状態で、例えば、「Sales Force Automation (SFA)」と呼ばれる営業の方が使うシステムには、自動でメールを打ったり、お客さまがWebを見られて「このページを何分見ていたので、この製品に興味がある」と判断したりなど、人手で行わないような仕事をしてくれるところも多いです。
とは言え、最終的には何かを買っていただくために、お客さまに対して営業担当者がCRMに入っている過去の商談の情報といったようなものを使って、お客さまに対してお話しすることでお客さまに喜んでいただくということは、非常に大事なことだと思います。
そのためにも「Salesforce」のようなCRMが必要になってきます。CRMやSFAがいらないという会社は、基本的にはないと思っています。すべての会社が機能としては欲しいものです。後は、それを作り上げるのにどれだけのコストがかかるのか、ランニングコストがどれだけかかるのかというようなことになるかと思います。
したがって、そこが真ん中でできると、例えば生成AIを組み合わせることによって、さらにその会社の生産性を上げたり、デジタルマーケティングをどんどん拡大していったりすることができるようになります。
さらには、例えばオンラインショップとつなげることによって、お客さまに次の製品をご提案することができるようになるなど、さまざまなことに使っていくことができます。「CRMはビジネスのOSだ」というような言いかたをよくしますが、そのようなところで、メリットをお考えいただければと思います。
質疑応答:エンジニア採用について
「エンジニア採用も14名に対して何名の採用で着地しそうでしょうか? 残り1ヶ月で23年10月期の終わりなので、数字は見えているのかと思いますが、いかがですか?」というご質問です。
随時選考を行っていますが、14名の目標達成については難しい状況になっています。選考途中の状況もありますので、具体的な人数については回答を控えます。恐れ入ります。
質疑応答:2024年度の新卒採用数について
「新卒の採用は順調とのことですが、2024年度の新卒採用数は2023年度よりも増えそうですか?」というご質問をいただいています。
2024年度の新卒採用については、2023年度の5名よりも増やす予定です。
質疑応答:キットアライブ株価の妙味について
「『Salesforce』が伸びるなら、セールスフォース社の株を買うほうがいいと思ってしまいます。導入支援を行う貴社の株価の妙味はどこなのだろうと考えていますが、答えが見つかりません。利益率がセールスフォース社より高いなどでしょうか?」というご質問をいただいています。
セールスフォース社の株価については、当社としての回答がなかなか難しいところがあるのですが、私どもの「Salesforce」導入等のビジネスの魅力は、セールスフォース社だけが成長するというようなことではなくて、私どもはセールスフォース社の中のエコシステムにある会社になります。
その中で、さらに複数の会社とパートナーシップを組むことにより、私たちのビジネスがどんどん伸びていく、そこからうまくやっていくと、セールスフォースの成長を上回っていくようなチャンスもあるということです。「エコシステムをどう活かしていくか?」というところが、私どもの会社が目指していくべきところだと考えています。
おっしゃっていることは重々理解していますが、私どもの会社はまだまだマイクロといったところで、セールスフォース社のエコシステムの中で、どのようにビジネスを成長させていくかが重要となります。ご理解いただけると幸いです。
質疑応答:「Salesforce」製品値上げによる影響について
「『Salesforce』製品の値上げは、貴社のプラス要因になりますか? マイナス要因になりますか?」というご質問です。
実は私自身、今回の「Salesforce」の値上げが、多少は商談に影響すると感じていたのですが、実際のところは体感としても、ライセンスの金額が上がったことによりどんどん失注になった、といったようなことはありませんでした。
現在、「Salesforce」で最も売れているライセンスの、1人1ライセンス当たり1ヶ月の価格が1万9,800円です。今回、1万8,000円から1万9,800円に上がったのですが、その前には数年前、1万5,000円から1万8,000円に上がったことがありました。
その当時は急激な円安ではなく「Salesforce」の機能強化による値上げでしたが、1万5,000円から1万8,000円というのは非常に大きく、今回よりもかなり大きい値上げと考えていましたので、当時も、ビジネスに影響が出るのではないかと私自身は思っていました。
実は今回は、当時よりもビジネスに影響が出るのではないかと思っていましたが、ふたを開けてみると、それほど変わりがありませんでした。個人として考えると非常に値上げ幅が大きいのですが、企業として考えると、個人ほどではないということですね。
それよりも、やはり「Salesforce」が必要だから入れなければ、というほうが勝るところがあり、今回の値上げも円安要因ということでいたしかたない、という考えです。現時点では私たちにとって、値上げがすぐさまマイナスということにはなっていないと考えています。