2023年9月期通期決算説明

司会者:みなさまこんにちは。本日は投資WEBのオンラインセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。

今回は、売上高、営業利益、経常利益が揃って過去最高という強い決算を発表した、株式会社ツナググループ・ホールディングスさまにご講演いただきます。第1部では、米田社長に足元の決算についてうかがいます。また、米田社長自ら、ツナググループ・ホールディングスという企業についてもご紹介いただきます。そして、米田社長に決算について詳しくお伝えいただいた後は質疑応答に移ります。

それでは、さっそく始めます。株式会社ツナググループ・ホールディングス代表取締役社長の米田光宏さまにお越しいただきました。米田社長、どうぞよろしくお願いします。

米田光宏氏(以下、米田):よろしくお願いします。

司会者:さて、御社の株価は本日もストップ高となっています。かなり強い決算だったと言ってよいと思うのですが、今回の決算内容は米田社長から見て、率直にどのようなご感想をお持ちでしょうか?

米田:やはり今、新聞報道やさまざまなところで語られているように、人手不足という問題が差し迫っています。そこにしっかりお応えすることが、業績につながっているというのが1つの大きなポイントだと考えています。

それでは、この人手不足はなくなるのかと言うと、決してそうではない中で、我々自身がどのようなことをして、さらなる成長をどのように描いているのか、本日はみなさまにお話しできたらと思います。

司会者:足元の好業績だけではなく、その先も期待できそうだというお話がうかがえそうですね。まずは、今回の決算が強かった背景について、簡単に教えていただけますか?

通期業績ハイライト

米田:トップラインに関しては、まさに世の中の「労働需給GAP」が1つの大きなポイントだと考えています。投資家のみなさまが注目している収益性や営業利益率の改善に関しては、財務諸表のKPIや、我々自身の事業コントロールとしていくつかの手を打ったことが効いたと思います。

司会者:スライドには「3つの過去最高をマーク」という文言が輝いていますが、売上高、営業利益、経常利益が過去最高とのことで、今お話に出てきた収益性が大幅に改善された点について簡単に教えていただけますか? 投資家としては押さえておきたいポイントなのではないかと思います。

通期業績ハイライト 営業利益・利益率

米田:通期の業績ハイライトとしては、営業利益率もそうですが、4.4億円という一定の営業利益を残すことができました。この背景には、スライド右側に記載したポイントの3つ目「収益性高い構造へ」があると思います。

司会者:収益性を改善できた理由はどんなところにあるのですか?

米田:新型コロナウイルスの影響で、我々自身も非常に厳しい環境下に置かれていました。その中で、固定費を削減し、より筋肉質な体質へと改革しました。この施策が一定の成果を得たことによって、トップラインがV字回復し、売上あたりの利益額が非常に伸びたことが収益性改善の大きなポイントだと考えています。

司会者:今回初めて御社の説明会に参加された方もいるかもしれませんので、株式会社ツナググループ・ホールディングスとはどのような会社なのか教えていただいてもよろしいですか?

About “Tsunagu”  私たちについて

米田:我々は「つなぐ、つなげる、つながる。」というミッションの中で、採用マーケットの中でなくてはならない存在になりたいと考えています。

また、「2030年労働需給GAP解消」に寄与する大きな力になりたいと考え、「採用市場のインフラになる。」というビジョンを掲げています。では、具体的に何をすることによって、そのようなソリューションを提供しているかご説明します。

Corporate slogan

米田:企業によって抱えている人事課題は多岐にわたります。例えば人が集まらない、労務管理が複雑化している、定着そのものに問題があって、まるでザルですくうように採用せざるを得ないという課題もあれば、タレントマネジメント、外国人労働者の効果的な活躍などさまざまです。

それぞれの課題に対して、我々はしっかりとモニターにアセスメントを行うことによってコンサルティングを行います。そして、そのコンサルティングの結果として、具体的なソリューションを提供しています。

事業概要

米田:募集ニーズの発生から退職手続きに至るまでのすべてのアルバイト・パートに関する採用課題にソリューションを提供するのが我々の事業です。今、支援拠点数でだいたい15万事業所、年間でだいたい250万人から300万人くらいのアルバイト・パートのマッチングを提供しています。

司会者:人材関連という注目度の高い事業を運営し、社会問題ともなっている人手不足解消の一助になることを目指している会社という認識でよろしいでしょうか?

米田:おっしゃるとおりです。

司会者:人手不足という社会問題の解決に寄与しながら、中長期的な成長を期待できる企業ですので、足元の決算の強さだけではなく、そのような成長性にも注目して、この後のお話を聞いていただければと思います。

それでは、みなさまも関心が高いところだと思いますので、決算についての講演に移ります。

株式会社ツナググループ・ホールディングスさまは、東証スタンダード市場に上場しており、証券コードは6551です。米田社長、あらためてよろしくお願いします。

米田:よろしくお願いします。

司会者:ここからは決算について、順を追って聞いていきたいと思います。まずは、先日発表した決算の数字などを詳しく教えていただけますでしょうか? 過去最高益というのはインパクトが大きかったと思いますが、内訳についてさっそく解説をお願いします。

2023年9月期 連結業績

米田:2023年9月期の連結業績に関してご説明します。売上高は150億円、前年比18.1パーセント増で過去最高となりました。

経常利益は4億4,700万円です。こちらは期初に開示した計画では3億3,000万円でしたが、5月に上方修正した4億円からも大きく伸ばすことができました。前年比では110.0パーセント増となっています。

司会者:投資家としては、この数字をしっかり追っていきたいところだと思いますが、両セグメントとも2桁成長を実現したということで、その背景についても詳しく教えていただけますでしょうか?

セグメント別業績

米田:ヒューマンキャピタル事業では、企業の人材課題にコンサルティングおよびソリューションを提供していますが、こちらの売上高が前年比で2桁成長を実現できたことが基盤となっています。

また、深刻な人手不足の中で、特に倉庫業や物流業では「採用している時間がない」「今すぐ派遣してくれ」という悲鳴にも似た声が上がっています。そこに向けて、新規事業のスタッフィング事業で人材を派遣しています。こちらの売上高が前年比43.9パーセント増と伸長したことも、過去最高の売上高につながったと考えています。

司会者:今後もその分野が成長する見通しと考えてよろしいですか? それとも、ほかにも見どころがあるのでしょうか?

米田:当期に関しては、スタッフィング事業をさらにしっかり伸長させていく事業計画となっています。もちろんヒューマンキャピタル事業の2桁成長も維持しながら、スタッフィング事業でさらに牽引していく考えです。

司会者:さらに深掘りしていきますが、新規事業の成長なども今回の業績に寄与していると考えてよいのでしょうか?

米田:スタッフィング事業は2年前から始めた新規事業ですので、ここがかたちになってきているのが1つのポイントだと考えています。そして、次にかたちにしていきたい新規事業が、「グローバルワークフォース」という外国人活躍領域です。

その他 topics(グローバル領域への注力)

米田:当期からの取り組みですので数字としては出ていませんが、外国人の活躍は今後の日本の人手不足を解消する1つの大きな力になると考えています。そうは言っても、普通の企業がいきなり外国人を活用するのはなかなか難しい問題です。

例えば、ビザの問題があります。あるいは、どのように働いてもらうと一番モチベーションが上がるのかといったことも含めて、外国人採用・人事に関する総合支援サービスを次の柱に立てていきたいと考えています。

司会:先ほど、収益構造の改革によって収益が改善したというお話もありましたが、こちらについても詳しく教えていただけますでしょうか?

通期営業利益の増減

米田:冒頭にお伝えしましたが、コロナ禍の中でしっかりとした筋肉質な体質にならなくてはいけないと考え、固定費を削減しました。スライド右側に記載したとおり、固定費率は四半期推移で順調に下がっており、より筋肉質な体制への移行は計画どおり進んでいます。

固定費率に関しては一定程度筋肉質な体質になれたと考えていますので、当期の目標としては、限界利益率・粗利を上げていくことを事業計画の中に織り込みながら、さらなる収益性改善を進めていきたいと考えています。

生産性(社員一人あたり営業利益・売上高)

司会者:スライドには、生産性(社員一人あたり営業利益・売上高)も大幅に改善したと記載がありますが、社員に注力する企業が増えている中で、御社の人手に対する考え方をうかがえますか?

米田:社員一人あたりの売上高ならびに営業利益率を上げるためには、仕組み化が必要です。具体的にはシステム投資が大きなポイントとなります。

連結業績 第4四半期

米田:我々は先期から、非常に大きなシステム投資を重ねてきました。例えば第4四半期においては、今期に向けて7,600万円の追加投資を実施しました。中でも、システム投資ならびに事業開発領域に関しては、今後も社員一人あたりの売上生産性・利益生産性が高まる仕組みの導入が1つのポイントになってくると考えています。

司会者:今後、この投資がどのように反映されてくるのか、見通しをうかがってもよろしいですか?

米田:後ほどご説明しますが、当期も2桁成長を実現する事業計画・業績予想を開示しています。その中で販管費における人件費はほぼイーブンで考えています。前期と同じ人数で2桁の成長を実現するためには、一つひとつの業務改善が重要で、ここを仕組み化する必要があります。いわゆる業務改善システムに対して、優先的にシステム投資している状況です。

司会者:3期連続で過去最高の売上高・営業利益を予想しているとのことで、これは投資家、特にステークホルダーにとってはよいニュースだと思いますが、このような業績を実現できると考えている背景についてもあらためて教えてください。

成長戦略と重点施策

米田:1つは、外部環境的にさらなる人手不足が進む中で、我々自身がそこに対応することによって売上成長戦略を実現することが背景にあります。

特に2024年は、今話題になっている万博の問題に加え、全国の平均時給が1,000円を突破しており、県別でも1,000円を超えるところがたくさん出てくると考えます。また、2023年はインバウンド需要が2兆円ほど膨らんだとされていますが、2024年はさらに増加していくことが見込まれます。

そうなると、観光業やサービス業での人手不足はさらに進んでいくため、これに対して我々がしっかりとソリューションを提供することで売上成長を実現していきたいと考えています。

司会者:インバウンド関連で銘柄を物色されている方もいると思いますが、インバウンドが雇用につながり、それが御社にも追い風になるというイメージでよろしいですか?

2024年9月期 成長投資計画

米田:おっしゃるとおりです。そのため、2024年はマーケット環境の中で、当社にとっても大きなチャンスだと捉えており、今回の事業計画の中に過去最大規模の成長投資を織り込んでいます。

特に人的資本、事業開発に関しては、先期でしっかりとシステム投資して、1人あたりの生産性を担保できる仕組みづくりを実現しました。売上を上げるという意味では、先ほどの外国人活躍領域の新規事業投資や派遣事業への投資などを進めることによってトップラインの2桁成長を実現したいと考えています。

司会者:もし課題や取り組みたいことなどがあれば教えてください。

解決すべき社会課題について

米田:メガトレンドの中に、我々の取り組むべき事項がいくつかあります。我々は「2030年労働需給GAPの解消」を目指す仕事をしています。644万人の労働需給GAPを解消する方法として、一番大きいのは追加就労希望者の労働化です。実は「もっと働きたい」という方はたくさんいるのですが、なかなかマッチングする仕事がありません。

例えば「1日8時間は働けないが、昼の3時間だけ働きたい」という主婦の方や、「週5は無理だが、週2日くらいのこの時間だったら働ける」という方、リタイアされたシニアの方などにジョブをいかに提供できるか、そこが644万人の労働需給GAP解消の大きな砦になっています。

我々は、短期・単発のアルバイトを探すことのできる「ショットワークス」や、シフトで仕事を探すことのできる「シフトワークス」といったサービスの総代理店元となっています。

そのため、追加就労希望者や、今後生まれてくるアルバイト、パートのニーズは非常に大きいと捉え、ここをソリューションの軸にしていきたいと考えています。

もう1つは、非労働力人口の労働化です。2030年は、働く人の模様が大きく変わる年でもあります。2030年には182万人の方が65歳となり、定年を迎え、109万人の方が新社会人となります。その差は73万人です。いわゆる正規雇用として働く方よりも、非正規雇用として時間限定、日にち限定で働く方が増えるのです。

この方たちにいかに働いていただくかが、非労働力人口の労働化に対しての課題となります。我々はシニアを中心とした求人メディア「ユメックス」などを持っていますので、ソリューションを展開していきたいと考えています。

その他 topics(グローバル領域への注力)

最後に、外国人労働力の活用について、来期はしっかり柱にします。世の中の労働需給GAP解消に向け、「グローバルワークフォース」というサービスを通じて、ソリューションを提供していきたいと考えています。この3つの軸の中で2桁成長を続けていきたいというのが我々の目論見です。

司会者:続いて、今回の決算を経て、米田社長からこの講演で伝えておきたいことをうかがいたいと思います。

事業沿革

米田:やはり一番お伝えしたいのは、今後の成長性の部分です。我々は2007年の創業当時から、CAGR30パーセント強の成長を実現してきました。日本の労働力不足、有効求人倍率の高まりが我々の成長と一致しているのです。つまり、人手が不足すると我々はしっかりと成長します。

解決すべき社会課題について

それでは、今後はどのようになっていくかと言いますと、高齢化率が進み、さらに人手不足は続いていきます。先ほど、創業以来の成長を示したグラフをご覧いただきましたが、今後も我々の成長の基盤は人手不足というメガトレンドの中にあります。その部分が今後の成長性の背景にあることを、みなさまにお伝えしたいと考えています。

質疑応答:財政状況について

司会者:「今後は金利高になると思うため、財務状況についても知りたいです」というご質問です。

米田:中期経営計画の中に財務ターゲットを置いています。財務KPIは、EVAスプレッド、ROIC、自己資本比率の3つです。しっかりと計画を立て、財務コントロールすることで、いわゆる安定性、財務健全性の向上を目指しています。

前期、ROICは2桁を目指していましたが、達成することができて11.3パーセントとなりました。

我々は、このROICを最も重要な財務指標として捉えています。スライドは四半期の推移です。ROICを向上させるには、投資資本自体をコンパクトにマネジメントすることがポイントです。ここが四半期ベースごとにしっかりと改善しています。引き続き、2桁を維持するとともに、さらに向上させていきたいと考えています。

先ほど為替のお話もいただきましたが、当然、このROICを考える上では、税ならびに為替にも注目しながら、ROICのコントロールに活かしていきたいと考えています。

もう1つは、自己資本比率です。コロナ禍の中で自己資本比率が非常に低下しましたが、前期末で33パーセント以上までコントロールすることができました。今後、収益性が改善し、真水で利益を増やしていくことで、自己資本比率に関しても目標の40パーセントを実現できるようにマネジメントしていきたいと考えています。

質疑応答:人材市場の見通しについて

司会者:「人材派遣、人材需要などの今後の市場の見通しについて教えてください」というご質問です。

米田:今後も人手不足は継続すると考えています。派遣事業が伸びているのは、まさに人手不足が要因です。四半期ベースで伸びており、第3四半期、第4四半期においては黒字化を達成することができました。

特に今、コロナ禍以降は物流がマーケットとしても非常に伸びており、2024年問題、いわゆる残業規制に関しても需要が出てきています。

ご質問にあった人手不足という観点で言いますと、今後は産業を切り分けて対応していく必要があり、特に物流・倉庫業界に関しては、派遣事業と物流専門のコンサルティング事業を伸ばすなど、しっかりと力を入れていきたいと考えています。

質疑応答:スキマ時間に対する考え方について

司会者:「スキマ時間で働けるのはうれしいですね」「主婦や時間に限りがある人には大変ありがたい職場ですね」というような、「スキマ時間」に対するコメントを多数いただいています。そこは御社としては狙っていきたいところと考えてよろしいですか?

米田:今後、世の中に増えてくる労働力のほとんどは、今までの言葉で「非正規」と言われる方々です。その多くは、「1日8時間、週5日」ではなくて、「この日だけ」「この時間だけ」という働き方になっていきます。そのため、我々は「ショットワークス」を使用して、マッチングを増やしていきます。

同時に、法人の労務問題も出てきています。これまで各企業は、正社員の労務問題だけを実現していけばよかったのですが、労務コストが増加する問題が起こっています。スポットワークマーケットの伸長とともに出てくる労務支援のBPOに関しても、我々はしっかりとお応えしていきたいと考えています。

質疑応答:業容サービス拡大の見通しについて

司会者:「人手不足の中で採用のDX化推進などにも取り組んでいるとのことですが、今後、業容サービスはさらに拡大していく見通しですか?」というご質問です。

米田:そもそも、「何をもってしてソリューションを提供していくか」につながると思います。スライド右下の業務ポートフォリオをご覧ください。本来仕事には、人が行うもの、AIが行うもの、ロボットが行うものがあります。

例えばコンビニエンスストアでは、発注はAI、掃除はロボット、「もう1品いかがですか? この時期はこれが美味しいですよ」といった営業活動、感情労働は人が行います。

また、雇用ポートフォリオとして、そもそもその職場は正社員で行うべきなのか、パートタイマーを組み合わせて行うものなのか、あるいはアウトソーシングするものなのかを見直す必要があります。この業務ポートフォリオと雇用ポートフォリオをいかに最適化するかというコンサルティングが、まさに今後求められてくると考えています。

そのため、当社では業務ポートフォリオと雇用ポートフォリオの最適な提案を行い、我々のシステムやサービスという手段を提供します。企業の採用課題を解決に導き、それを積み重ねることで、人口減少に伴う社会課題の解決に向かっていきます。

このビジネスモデルを推進することによって、我々自身も成長していきたいと考えています。

質疑応答:御社の強みと競合他社との違いについて

司会者:「あらためて御社の強みをお聞きしたい、他の派遣会社との違いを知りたい」というご質問です。

米田:一番の強みは、コンサルティングがベースにあるということです。私はリクルート出身ですが、リクルートはスライドの「service」の部分がプロダクトですので、自社商品でしか解決できません。

一方で、我々のマーケットポジションはコンサルティングなので、「このようなところだったらリクルートの商品がよいですね」「このようなニーズだったら派遣のほうがよいですね」「このような状態だったら、むしろ人を採用しないほうがよいですよ」というように、市場公平性を持ったポジショニングを持っています。ここが競合との一番の違いです。

もっと言えば、我々自身が、すべての人材企業を手段としているため、競合ではなくて共働しているような状態だということが、我々唯一のポジションであり、かつ、一番の強みだと考えています。

市場公平性を持ってお客さま側に立ち、コンサルティングを行い、ソリューションや手段を選定し、それをデータベースの中で回していくことによって、改善していくことができます。これが我々の一番の強みだと考えています。

司会者:ここは競合他社にはない強みと考えてよいのでしょうか?

米田:例えば、パーソルがリクルートの採用結果をデータベース化できないのと同じです。多くの大手人材系企業は、それぞれがプロダクトを持っているため、それを組み合わせたデータベースを構築できません。

我々はいわゆる大手のプロダクトメーカーではなく、コンサルティングがベースであるため、すべての採用手段を一元管理することができます。そのことが一番大きな特徴だと思います。

司会者:「一方的なコンサルではないのがよいですね」「コンサルティングができる派遣会社ということですね」「人材を紹介するだけの派遣会社ではないのですね」という反応もいただいていますが、コンサルティングができる派遣会社という認識でよろしいですか?

米田:派遣会社であり、求人広告媒体メーカーであり、総合受付コールセンターでもあります。コンサルティングがベースになることで、提供するものも可変していきます。派遣会社は、人材を派遣しなければ売上が上がりません。

しかし我々は、派遣を希望していないお客さまには、派遣以外を提案するコンサルティングを行い、収益を得ています。そのマネタイズのあり方が、コンサルティングをベースとした人材事業であるとご理解いただければわかりやすいと思います。

質疑応答:株価について

司会者:「株価が8月に900円となり、今はストップ高でも800円弱のため、より上がるための対策をしてもらえませんか?」というご質問です。

ほかにも株価についてのご質問を複数いただいています。株価対策も含め、どのように考えられていますか?

米田:当社は中期経営計画を開示していませんが、我々自身が持っている計画の中で、ターゲットとしている株価にはまだ至っていません。そのため、現状の株価に関してよしとしていないことが大前提としてあります。その上で、そのGAPをどのように埋めていくかを考えています。

1つは、投資家のみなさまとのリレーションシップです。IR活動にもう少し力を入れたいと思っています。先日パネル調査を行い、日本で人事に従事している約5,000人を対象に「ツナググループ・ホールディングス」という社名について質問を行ったところ、認知度は約13パーセントでした。

ただし、我々を認知している企業の満足度は、業界平均をはるかに上回る結果でした。つまり、今の我々は「売れていない実力派の地下アイドル」のようなポジションだと認識しています。

今後はしっかりと認知活動を行い、どのような会社で、これから何を行う会社なのかを、投資家のみなさまだけではなく、マーケット層に告知していくことが非常に大切だと考えています。今期は積極投資していく事業計画の1つにマーケティングがあります。

このマーケティングに投資を十分に行うことで、企業認知度を高めていきたいと考えています。

質疑応答:株価対策について

司会者:「株価対策として、IRや対面セミナーでお話を聞きたい」という要望も複数いただいています。IRに対してのお考えを聞かせてください。

米田:投資家のみなさまの我々の社名認知度は、人事のみなさまと同様か、13パーセント以下だと思っています。

したがって、しっかりとしたIR活動や対面でのIR面談、説明会のほか、今日いただいたこのような機会をさらに増やすことで、我々自身の現況や今後の見立てをお伝えしていきたいと考えています。

また、我々は人を1人派遣、または採用していくらいただくというビジネスモデルではなく、月次のコンサルティング費用、もしくは業務代行費用が収益の中心となっています。そのため、投資家のみなさまとのつながりは、配当というかたちでお応えしていきたいと考えています。

2023年9月期は、株主還元施策として、前期の一株あたり8円の配当からプラス2円の増配を予定しています。投資家のみなさまと長くお付き合いするため、配当という1つの株主還元施策で先陣を切り、今後も継続していきたいと考えています。

司会者:裏を返せば、知名度ではまだ伸びしろがあると考えてよいですか?

米田:知名度が十分に上がれば、ファンは確実に増えていきます。すでに我々のファンの方は熱心に応援してくれています。知名度が上がり、我々のビジネスをご理解いただければ、おそらくファンも増えるという意味では、この認知度13パーセントが40パーセントになれば、業績は3倍になると思っています。今期はIR活動ならびに企業価値を増やすマーケティング活動に投資していきます。

質疑応答:大阪・関西万博に紐づくインバウンド需要について

司会者:「インバウンド関連株としても考えてもよいのであれば、大阪・関西万博の開催もチャンスとなるのでしょうか?」というご質問です。

米田:2024年の大阪・関西万博では、おおよそ3,000人から5,000人の雇用が創出されると予想していますが、その多くはボランティアです。

接客業などのホスピタリティが必要とされる職業の方たちが、いったん今の仕事を辞めて大阪・関西万博にボランティアとして参加します。万博そのものに人材ニーズがあるというより、その周辺における需給GAPがさらに広がると思っています。

特に、我々のお客さまである、観光業や旅館業、フードサービス業などに従事される方々が、おそらく大阪・関西万博のボランティア、もしくはその中で就労することになると思います。

万博会場だけでなく、万博周辺における需給GAPも非常に高まると考えているため、我々もそこを重点的に、人材供給を進めていきます。

質疑応答:配当性向について

司会者:「成長企業であると理解していますが、配当性向などのEPS開示が弱い気がします。これらに意図があるのでしょうか?」というご質問です。

米田:前々期にシステム譲渡やM&Aなどのコーポレートアクションを行ったにしては、純利益のスケールがまだ小さく、これらを率にすると、上振れと下振れの幅が非常に大きくなってしまいます。

これは、アクションのわりにスケールが小さいという我々の課題だと考えています。配当性向等を含め、2円だった配当が何十パーセントにもなってしまう状況のまま開示すると、逆にミスリードを起こしてしまう恐れがあり、開示を控えている部分がありました。

しかし、前期は過去最高の売上高を更新し、当期に関してもさらにそれを超える業績を記録しています。一定のスケールを目指していく中で、今後はそのような開示を積極的に進めてよいスケールに近づいていると考えているため、投資家のみなさまとのコミュニケーションを進め、頃合いを見ながら開示範囲ならびに内容を進化させたいと思います。

質疑応答:外国人労働者の採用について

司会者:「外国人労働者は法律や納税の問題があると思いますが、クリアすればとても強みになると思います。外国人労働者の取り組みについて、より詳しく教えていただけますか?」というご質問です。

米田:新型コロナウイルスが拡大する中で、圧倒的に減ったのが外国人の労働力です。これは外国人労働者が一気に帰国したことが大きいと思います。

コロナ禍が終息した今、いくつかのハードルや社会的な課題はありますが、「2030年労働力需給GAP解消」には、外国人労働力の活用は避けて通れません。来年度の臨時国会、通常国会の中では、技能実習制度について議論されると思います。この技能実習制度の組み替えは、技能を実習するための制度ではなく、日本の労働力需給GAPを埋めるための制度として正しく生まれ変わることが基本方針です。したがって、政府が考えている外国人労働力の活用方針と、我々自身が進めているサービスの方針は一致していると考えています。

「2030年労働力需給GAP解消」にあたり、おそらく今まで活用していなかった企業が、外国人労働力を取り入れる機会が増えると考えています。

その際に必要なものは、単純に外国人を何人派遣するかということではなく、どのようにすれば活躍していただけるか、どの仕事であれば活躍の幅が大きいかといった、アセスメントとコンサルティングです。

我々が今期の柱と考えている外国人採用・人事の総合支援サービス「グローバルワークフォース」は、まさにそのコンサルティングサービスに該当します。外国人を活用するためには、日本人だけで構成された人事部では支援が足りません。

したがって、外国人の人事経験者を紹介、または派遣します。外国人が活躍できるよう外国人の人事担当者が支援することで、その方も人事として活躍できるような根本的な外国人採用や人事の総合支援サービスを進めていきたいと考えています。

司会者:外国人労働者については注目されている方も多く、これから成長の柱になっていくということですので、しっかり押さえておきましょう。

質疑応答:営業利益率について

司会者:「中長期で営業利益率10パーセントを目指していると先日開示されましたが、その実現に対する自信と時期のイメージを教えてください。また、中期経営計画開示への積極性はいかがでしょうか?」というご質問です。

米田:ご質問の後半部分から回答します。我々は3ヶ年計画を積み重ねてきました。2025年度の来期が最終年度のため、新しい中期経営計画は2026年度からスタートします。

中期経営計画の開示については現在検討中です。今まで開示してこなかった理由の1つに、コロナ禍では市場のボラリティなど外的要因が非常に強く、中期経営計画の意味をなさなかったことが挙げられます。また、中期経営計画を立てたとしても、M&Aを1つ行えば、すぐにローリングやアップデートしなければならないスケール感だったため、今まで開示しませんでした。

しかし、先ほどお話ししたとおり、2023年9月期の売上実績は150億円と過去最高です。そして、2024期9月期も過去最高となる165億円を予想している中で、スケール的にも中期経営計画の開示が許される企業になりはじめたと考えています。

次期中期経営計画の開示については、現在前向きに検討しています。その中で、我々は「2030年労働力需給GAP解消」を明確なビジョンとしています。そこに向けた投資余力を必要としているため、2桁の収益性は安定的な投資活動の中で必要だと考えています。

米田氏からのご挨拶

司会者:「米田社長の長期的なビジョンを聞きたい」というご意見をいただきましたので、そこも交えてラストメッセージをお願いします。

米田:我々は人材サービスというセクターに所属しており、日本の大きな社会課題である労働力需給GAPにしっかりとお応えしていくことが、日本の企業として絶対に必要なことだと考えています。

我々自身のサービスが労働力需給GAPに直結するかというと、顧客課題を一つひとつ解決していくことそのものが、日本の社会課題の解決にもつながると思っています。

投資家のみなさまには我々とともに歩むことにより、日本の社会課題解決に参画している認識を持っていただきたいと思います。我々は投資家のみなさまの思いを付託し、それをコンサルティングやソリューションすることで、日本の課題解決に取り組みます。

ある種、国が決めた国策ではなく、我々が自ら国策企業であるという心持ちで、成長とともに、日本の大きな社会課題である労働力需給GAPの解消につなげていきたいと考えています。ぜひこの思いにご賛同いただき、我々の成長を見守っていただきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。本日はありがとうございました。