市場環境

海野隆雄氏:みなさま、こんにちは。緊急事態宣言は5月25日に解除されましたが、新型コロナウイルス感染対策として、今回の決算報告はビデオでお送りします。よろしくお願いいたします。

まず、香料業界全体の推移についてお話しします。2019年の香料業界全体の売上は2パーセント増となりました。実は、2019年は梅雨明けが例年に比べて1ヶ月ほど伸びてしまったということがあり、特異な状況にあった年でした。このため、夏場に需要が増加する飲料に関しては売上が伸びなかったと同時に、アイスクリーム等の冷菓についても売上が伸びず、その後も回復しなかったという状況でした。

今年の1月からは新型コロナウイルスの影響が徐々に出てきており、一部では外出自粛等による商品の低迷、あるいは在宅勤務や大型商業施設の休館等により、自動販売機の売上が大きく減少した結果、飲料の売上は伸び悩んでいます。一方で、即席めんやスナック菓子等の家庭で消費する食品については、売上が増加したという情報が入ってきています。

連結業績の概要

2020年3月期の中間決算の業績をご報告します。売上高は244億6,200万円で、前期比500万円の減少でした。営業利益については24億6,900万円で、前期比2億4,800万円、11.2パーセントの増益となりました。純利益は20億9,200万円で、前期比3億3,000万円、18.8パーセントの増益となっています。

部門別売上高

当社では、製品をフレーバーとフレグランスの2つのカテゴリーに分けています。フレーバーは口から入る香料です。フレグランスは口から入らない香料、すなわちシャンプーや洗剤、柔軟剤に使われる香料です。当社の場合、フレーバーの比率が全体の85パーセント、フレグランスの比率が15パーセントです。商品別の売上を見てみますと、上半期は国内のフレーバーが順調であったことと、米国子会社の売上が順調に伸びたことがあり、フレーバー部門は増収となりました。

一方で国内のフレグランス、インドネシアのフレグランスが低調であったため、フレグランスは減収となり、全体で500万円の減収となりました。また、3月31日現在の当社の海外売上比率は34.6パーセントで、昨年の9月30日の数字に比べて0.2パーセント増加しています。

グループ会社別売上高

次に、グループ会社別の業績をご報告します。まず売上高です。国内単体においては飲料を中心としたフレーバー部門の売上が好調でしたが、一方でフレグランス部門が低調に推移し、合計3,600万円、0.2パーセントの増収にとどまりました。

米国においては、外食産業向けあるいは飲料、健康食品といった分野におけるフレーバーの販売が好調に推移し、2億9,100万円の増収となりました。比率にして10.5パーセントの増収となっています。新型コロナウイルスの影響を早くから受けた中国においては、2億7,300万円の減収となり、比率にして8.2パーセント減少しました。マレーシアも新型コロナウイルスの影響があり、3,600万円の減収となっています。

グループ会社別営業利益

続いて営業利益です。国内においては原価率が上昇したため、6,600万円の減益となりました。アメリカは、昨年のれんの償却を前倒しで実施したことと、販管費の減少、売上商品構成、原価構成の改善によって営業利益は大きく伸び、3億100万円の増益となっています。中国は、売上は新型コロナウイルスの影響で減少しましたが、売上原価率の改善、販管費の縮小等で6,400万円の増益となっています。マレーシアは1,400万円の減益となりました。

2020年9月期通期計画(連結)の修正

それでは修正計画についてご説明します。新型コロナウイルスにより、世界各地で売上が減少する影響が出ており、上期と下期合わせておよそ11億円の売上減につながるものと見ています。このため、私どもは修正計画を発表しました。この修正計画では、売上505億円、当初比11億円の減収となっています。また営業利益は、2億2,000万円の減益となる48億8,000万円です。純利益については、3億9,000万円増となる46億4,000万円となっています。純利益が増加したのは、本年4月に投資有価証券の売却を行ない、8億6,700万円の売却益を計上したためです。

新型コロナウイルスの対応と影響

続いて、新型コロナウイルスの業績に対する影響についてご説明します。日本、アメリカ、中国、東南アジアと分け、上期と下期というかたちで見ます。上期の影響が中国とマレーシアにおいて出ており、合計で約1億9,000万円の売上の減少です。しかしながら下期においては、約9億6,000万円の売上の減少を見込んでいます。

新型コロナウイルスの対応と影響–日本–

日本においては、上期には新型コロナウイルスの影響はほとんどありませんでした。しかしながら、飲食店の営業自粛による影響、あるいは在宅勤務が始まったことによる企業活動の停滞で、新製品の開発や販売等のスケジュールが後ろ倒しになっていることがあり、売上にマイナスの影響を与えるという見込みです。もっとも、アルコールの販売や即席めんの販売増というプラスの面もありますが、すべて合算しても下期は5億5,000万円程度の売上の減少に結び付くと考えています。

新型コロナウイルスの対応と影響–米国–

私どもはアメリカのロサンゼルスに拠点を設けています。ロサンゼルスのあるカリフォルニア州では外出禁止令が出ている状況ですが、私どもはエッセンシャルビジネスと認定され、製造部門においては何も制限を受けていません。したがって、アメリカにおいては上期、下期ともに新型コロナウイルスによるマイナスの影響はほとんどないと考えています。

新型コロナウイルスの対応と影響–中国–

中国は上期に約1億7,000万円の売上の減少がありました。これは春節が長引いたことによって稼働日数が減ったことと、従業員の出勤が困難になって稼働率が低下したためです。しかし、一番大きく影響したのは、流通手段がなくなってしまって、製品ができても運搬できないという状況が続いたことです。現在こうした状況はほぼ解消していますが、中国経済全体が低迷をしているということもあり、下期の影響額は2億円を見込んでいます。

新型コロナウイルスの対応と影響–東南アジア–

東南アジアといってもいろいろな国が混ざり合っています。例えばインドネシアではロックダウンがされていますが、マレーシアやタイは外出禁止令が出ている状況です。当社のマレーシア現法では製造は行なわれるのですが、やはり物流にいろいろと障害が出てるということがあり、しばらく続くのではないかという見通しを立てています。東南アジアにおける影響額は、上期が2,000万円の減少で、下期は2億1,000万円程度を見込んでいます。以上が新型コロナウイルスによる業務への影響です。

経営方針

次に、当社の経営方針についてお話しします。当社では、当社が最も得意とする調合香料に特化して業績を伸ばしていきたいと思っています。国内においてはマーケットシェアを維持し、高い利益率を保っていきます。一方で成長は海外で実現したいと考えています。

国内戦略

国内においては少子高齢化や健康志向などの動きがあり、これを先取りしてマーケットシェアを上げていきたいと考えています。とくにマーケティング部門の拡充により、営業部門と研究部門が三位一体となって、今まで以上に強力なソリューション営業を進めていく所存です。同時に、農産物と天然物の代替ができるような香料の開発に努めています。また健康食品分野や医療食品分野、あるいは生活臭のマスキング等、新しい香料の用途も開発しています。

海外戦略–米国–

米国においては、マネジメントの新しいチームが上手くワークしはじめ、マーケティング部門と営業部門が一丸となって新規の取引を開拓していましたが、これが成果を上げ始めています。このチームは、パイプライン管理を十分に行なっており、今まで以上に新しいビジネスを取り込むことが可能となってきています。

海外戦略–中国–

中国においては、従来から経営基盤の強化に力を入れてきました。ようやく経営基盤の強化が完了し、営業部門とマーケティング部門も新設したため、新しい戦略を実践しています。新規の取引も随分増えている状況で、今年は年初から新型コロナウイルスによるマイナスの影響も随分ありましたが、新しい取引の獲得によってその被害がだいぶ薄まったと考えています。また中国においては、当社のコミットメントを示すためにも新しい研究棟の建設を開始しました。

海外戦略–東南アジア–

東南アジアはマレーシアの現地法人を中心として、インドネシアとタイにおける販売現法を要しています。またベトナム、ミャンマー、フィリピン等の周辺国には営業員を配置しています。全体を統括する支配人の下で一丸となって情報の共有を行ない、業務の発展に努めている状況です。

インドネシアとタイでは、アプリケーションラボを立ち上げ、お客さまと一緒のテーブルに座って、香料サンプルを試しながら商品開発を行なうことが可能となっています。大変好評をいただいている状況です。以上、各拠点ごとにご説明しました。

資本政策①

続いて、当社の資本政策についてご説明します。当社では、企業価値の持続的な向上を目指しています。そして健全な財務体質を維持しながら、効率よく資金を使っていきたいと考えています。資金については、株主還元と設備投資、将来の発展を担ってもらうためのM&Aに対しての投資を行なっていくことを考えています。また資産の有効な活用を行なうために、投資有価証券については一部売却を進めています。

資本政策②

配当については、配当性向35パーセント程度を目途に運用していきます。先ほど修正計画をについてお話ししましたが、今期は当初の予想よりも利益額が増加するということで、当初36円を予定していました配当について、2円増の38円の年間配当を実施する考えです。

資本政策③

投資有価証券については、本年4月に一部売却を実施し、売却益8億6,700万円を計上しています。また、自己株の取得については上限100万株もしくは20億円で計画していますが、マーケットの状況を見極めながら適切に対応していきたいと考えています。以上でご報告を終了します。ご清聴ありがとうございました。