投資事業について
山下優司氏:ここからは各事業について詳細をご説明するとともに、足元の業績についても触れたいと思っています。
コア事業の1つ目の投資事業です。今年度の第1四半期までを含めた直近の投資事業の業績の推移が表になっています。投資事業は、株式の売却時期などによって四半期ごとでのボラティリティが非常に高くなるので、右側の四半期のグラフだと非常にデコボコしているのですが、年間を通して見れば、おおよそ通期計画どおりに売却を実行している状況です。
今年度は、保有株式の売却量を前期より少し抑えて、前年から減少するというかたちで業績予想を出しています。
投資事業として、投資件数と投資金額を目標も含めて開示をしています。今期は、30社15億円の投資実行計画をしており、第1四半期末時点で11社、約3億円の投資実行ができています。
これまでの投資実績です。我々が投資をした後に上場した発行体の株式を持っている上場株式と、未上場の株式、41本の他のベンチャーキャピタルが運営しているファンドにも出資しています。
現段階で我々が保有している未上場の株式は102社あります。左側のグラフは我々が取得した後に、その会社の時価総額が上昇して含み益になっている部分の説明です。現段階で時価評価額は74億円、うち含み益が33億円程度です。
今年度の投資事業の方針はこちらです。特にベンチャー投資、スタートアップ投資は、再現性が難しいボラティリティが高い事業ジャンルと言われていますが、我々としては、できる限りそこに再現性を持たせたいと考えています。そのために、まずは投資件数と金額を増やしていきます。年間の推移にもあったとおり年々増えてきてはいますが、ここをしっかりと増やしていきます。
あとは、「テック投資」と「善進投資」という、2つのカテゴリーで投資実行を進めていきたいと考えています。
テクノロジーを活用してイノベーションを起こそうとするスタートアップに投資をするのが「テック投資」です。ここの投資をより増やしていきたいと思っています。
もう1つは「善進投資(ぜんしんとうし)」ですね。パーパスに関連させていますが、社会課題の解決と、その社会課題を解決することで経済合理性がしっかりと成り立つことが両立されているスタートアップの投資を積極的に強化していきたいと思っています。
ベンチャーキャピタルとの違いとして、自己資金で投資実行しているため、、成長まで時間がかかる事業や、そもそも投資決定するのに少し難しい内容であっても、投資できるという強みがありますので、ここを両立させていくことで、成長性・再現性を作っていきたいと考えています。
ユナイテッドが今保有している銘柄の中で、将来的にIPOが期待されている銘柄です。個別の説明は割愛しますが、よくご質問をいただきますのでご紹介させていただきます。
次に、「善進投資」とはどういうものなのかを、我々が投資を実行しているところを例として4社ほどご紹介します。
中段にある「取組む課題」は、農業従事者の高齢化、人手不足、ジェンダーギャップ、発達障がい児・発達障がい者の支援、高齢化・人口減少による空き家管理問題など、社会課題の解決に取り組んでいるスタートアップに対して、お金を出すだけではなく、ユナイテッドの人的リソースを使ってハンズオンを実施していく中で、しっかりと事業成長させていき、最終的には大きなリターンを得たいと考えています。
先ほどの投資先も含めて、こちらが投資先一覧です。「ポストIPO」がすでに上場している会社です。「ミドル〜レイター」が、シリーズ的に非常に成長フェーズに乗っていて、特にレイターステージになってくると、IPOなども見えてくるかなというところのジャンルになっています。「シード~アーリー」は創業間もない企業やこれから事業を伸ばす段階の企業です。
投資事業の足元のトピックスとしては、国内スタートアップ投資家の投資社数ランキングにて金融系から独立系のベンチャーキャピタルまでありますが、我々は事業会社として唯一トップ10に入っています。本ランキングでは公開情報のみを集計していますので、実際の件数とは各社掲載数以上かと想像しますが、当社として意識して投資件数を拡大させているタイミングで、しっかりと実績が出てきたかなと考えています。
教育事業について
続いて教育事業です。
教育事業は、いわゆるIT人材不足と言われるマクロ的な課題の解消を目指して、オンラインでのデジタル人材教育を行うビジネスです。
「テックアカデミー」では個人・法人向けのオンラインプログラミングスクールを中心に、デジタル人材を志す個人に対してオンラインで学習指導を行ったり、そういった人材の育成を行いたい企業に対して研修を行うというかたちで、個人・法人それぞれにサービスを展開しています。
「テックアカデミー」では、ウェブ開発や、AIなど50以上のコースを展開しています。累計で受講者数は3万人以上、企業向けのオンライン研修は900社以上に導入されています。導入企業例の中にもあるとおり、プライム市場にいるような大企業など、さまざまな企業にご利用いただいています。
教育事業と業績推移としては、左側の「年間の推移」であるとおり、現段階は少し横ばいが続いています。四半期で見てもあまり大きな成長が見られていません。主に個人向けの「テックアカデミー」の受講者数が減少しています。
ここについては、当然競合の増加もありますし、我々が描いていたよりは「個人でデジタルスキルを身につけよう」という希望者の需要が伸びてこないというところが、「テックアカデミー」自体の伸びが鈍化している原因になっています。
それも含めて、足元での急成長、再成長はすぐには難しいと考えているので、運営体制を少し効率化していくことで、今年度は黒字化を計画をしています。
その中でも、LINEヤフー(4689)さんとの共同ブランド「LINEヤフーテックアカデミー」でLINEヤフーさんのノウハウやリソースを用いてテックアカデミーのカリキュラムと掛け合わせたサービスを展開していくのと、やはり今は生成AI領域がホットなので、ここに注力をしていきます。
足元のトピックスとしては、生成AI領域の取り組み事例が増えてきています。地方自治体へのAI人材の育成支援として、データ分析や生成AIを実務で活用するためのノウハウを香川県へ提供しています。
また、AIソリューションサービスに取り組んでいる企業とのプログラム提供の協業など、生成AIを中心にさまざまなステークホルダーとの協業が増えてきています。
人材マッチング事業について
続いて人材マッチング事業です。そもそも「人材マッチング事業はどういう前提で行っているのか」というところを、市場環境から説明いたします。
国内の労働人口の減少は、言わずもがな顕著になってきています。今後減る一方であるというのを前提に、やはり今企業が求職者を獲得することが非常に難しくなっています。転職市場で中途採用を行うのは非常に難しい。そういった中で人材紹介業の市場規模も拡大してきています。
転職を希望する求職者だけを獲得するのは非常にハードルが高いのですが、他方で副業をしたい、フリーランスになりたいという人は非常に増加している傾向で、ここは今後も増えていくであろうと考えています。
そもそも労働人口が減ってきている中で、企業は人を捕まえにくい。しかし副業やフリーランスをやりたい人は多いという、そこの需給ギャップをどううまく我々のビジョンを通じて埋めていくかというのが、人材マッチング事業を行っている前提になっています。
この事業を始めるにあたりM&Aを数件行っており、その後合併などをする中で会社の数は変わっているのですが、現状は4社で構成されています。人材紹介業をやっている会社は通常の転職の紹介、副業・フリーランスのマッチング事業を行っています。その中で職種カットをして人事に特化しているサービスや、デザイナーに特化して副業・フリーランスのマッチングをやっている会社というかたちで、今は転職事情や副業・フリーランスのマッチング市場にタッチしています。
どのように我々が強みを作って、人材ビジネスというすでに非常に活況な市場、多数のプレイヤーがいる中で勝っていこうとしているのかというのがこちらです。
転職希望者のみを獲得し、その方を企業に送り込んでいく、企業側もそのような方だけを採用していくというのは、そもそも労働人口減という状況下ではハードルが上がる一方で、我々もそうですし、いろいろな会社に聞いてもやはり今採用ができないというのが続いています。そんな中で、今は転職するつもりはないけれども、副業やフリーランスで「より成長したい」「より収入を上げたい」という方は非常に増えていて、そこを希望する方が我々の人材プールに入ってくれているというかたちです。
副業やフリーランスの仕事をやってるうちに転職の希望が出てきたり、「自分にこういうスキルがついた」「市場価値が上がったので転職したい」というニーズが出てくるので、そういったターンで企業にマッチングさせるというところで、副業・フリーランスを呼び水にして最終的に出口は副業・フリーランスのマッチングするパターンと、人材紹介、転職としてマッチングするパターン、この2つを用いてマネタイズを行っていくというのが我々の戦略です。
人材マッチング事業は2期前から始めた事業なので、サイズ感としてはまだまだ小さいのと、赤字が大きいという中で、前々期、前期は、先ほどあった副業・フリーランスだけに注力をしています。やはり企業としては「正社員が欲しいけれど、副業・フリーランスはまだ、どううまく使えばいいかのかわからないんだ」みたいなところで需給ギャップがかなり大きく、そこだけに注力していたこともあって、なかなか売上高の伸長は見られなかったのですが、今期は、先ほどお伝えしたとおり、人材紹介として転職のほうでもマネタイズを行っていくことで、より伸ばしていけると考えています。
第1四半期のYoYでも、前期の第1四半期と今期の第1四半期ではしっかりと成長ができているので、今期はよりトップラインを中心にやっていこうというかたちですが、まだ先行投資中なので赤字という状況です。
我々にとって大事なのは、我々のビジネスを通じて企業とマッチングが行われる、転職が行われてその企業で稼働している方の数が伸びているかどうか、我々のサービスを通じて働いている人が増えているかどうかです。
あともう1点は、副業・フリーランスで「自分も試したい、やりたい」とていう人がどれぐらい我々の人材プールに入ってくれるかなので、独自の求職者グループが拡大するかどうか。
この2点だと思っています。今実数は開示できていないものの順調に増えていっているので、戦略のまま、しっかりと成長させることができるんじゃないかと現在は考えています。
アドテク・コンテンツ事業について
最後に、収益期待事業のアドテク・コンテンツ事業です。アドテク事業はユナイテッドマーケティングテクノロジーズ株式会社という、アドテクプロダクトの開発運営をやっている会社が運営しています。
コンテンツ事業は3つの企業で構成しています。エンタメIP向けのオンラインくじのサービスを行っていたり、スポーツのデジタル化をしたり、あとはスマートフォンアプリケーションの開発を行うという企業で構成されています。ここに関しては、それぞれスタンドアローンで各社個別の戦略を実行して安定的に収益を創出している状況です。
直近の状況です。こちらに関しては基本的には安定的に収益を出していくということで、成長は見込んではいないのですが、推移としてはおおよそ安定しているものの、少し減っている状況です。
主にアドテク事業が減っています。コロナ禍のタイミングで、巣ごもり需要が起こったことがビジネス的にはプラスの要因に働いて、前々期ぐらいに広告ビジネスが伸びました。
しかしながら、日常が戻ってきた中で全体的に減少してきて、セグメント全体でも少し減少につながっていますが、ここに関してはあまり大きな変化はないというのが現状です。
最近、スイングバイIPOという話もありますが、我々の中にもアドテク・コンテンツ事業の中から外部調達を行って今後IPOを目指す企業が1社あります。コンテンツ事業の中のフォッグ株式会社という企業で、こちらはオンラインくじプラットフォーム「RAFFLE(ラッフル)」を中心に、エンタメ市場におけるファンビジネスを展開している企業です。
もともと当社の100パーセント子会社で、2024年7月末時点では経営陣も株式を持っていて、今は73パーセントを持っている連結子会社なのですが、こちらが9月末には資金調達を行って、今後IPOを数年以内に目指していきます。創業以来、非連続的に成長ができている企業です。
最後は駆け足になってしまいましたが、当社全体と各事業の詳細および足元の状況を簡単にご説明しました。何でもけっこうなので、いろいろとご質問いただければ幸いです。ありがとうございました。
(次回へつづく)