2024年3月期決算説明
黒澤洋史氏(以下、黒澤):みなさまこんにちは、広済堂ホールディングス代表取締役の黒澤でございます。本日は、3月まで懸命に経営してきた前期決算の内容とともに、本日開示した各種お知らせについてもご説明します。
本日の適時開示の中に、特定子会社の異動のお知らせがあります。当社は、純資産は潤沢にあるものの、コロナ禍の期間中に減資を行ったため資本金額は1億円となっていました。
その中で、資産コンサルティング事業セグメントで資本金2,000万円の広済堂ファイナンスと、火葬炉運営を自前化するために設立し、今年4月からは6斎場のうち2斎場のメンテナンスを開始した資本金4,000万円の広済堂エンジニアリングは、異動した場合は開示しなければいけない連結子会社でしたが、私どもの事務不手際があり開示が漏れていました。
こちらの準備を急ぎ進めていたため、説明会直前での開示となってしまい大変申し訳ございませんでした。今後はこのようなことがないよう管理体制の整備を再度徹底していきますので、ご容赦いただければと思います。
この異動についてご説明します。もともと非連結子会社として立ち上げていた2社は、従前の決算説明会で「取り組みたいこと」をお話していました。それがいよいよ実務に乗ってきたため、重要性が増したと判断し、連結子会社へ異動することとした次第です。開示漏れ以外に特段ネガティブなことはなく、むしろポジティブに、実務も予定どおり進んでいます。
また、代表取締役の異動のお知らせが開示されました。私は社長を務めて3年になります。広済堂ホールディングスは、取締役の任期が1年です。退任の理由としては、6月27日をもって定められている任期が満了しますので、任期満了に伴う辞任となります。
もう少し務めるという選択肢もありましたし、そのようなオファーがあったことも事実です。しかし私としては、本日発表する式場の増設を含め、経営改善のための計画立案体制などの強い意志を必要とする改革は、いったんかたちにできたと自負しています。
また、これまでの中期経営計画においては、株式報酬費用を除いて約69億円の営業利益を叩き出しています。こちらに加え、増やした式場が稼働すれば、来期の営業計画目標も達成できる状況です。適切な発言かはわかりませんが、この状況は経営難易度として低いと思います。誰が経営してもこの数字を達成することが可能だと、心から確信しています。
しかしながら、今発表している計画のほかにも、将来の成長へ向けた種まきとなる企業活動は数多く行っています。そのため「必ずしもこうなる」とは言い切れません。ただし、私がこれまで株主や投資家のみなさまに対して「広済堂はこうして行きます」とお伝えしたことについては、ゴール近くまで漕ぎ着けられたと思っています。
これだけ大きなプライム上場企業の経営をするにあたって、私は創業事業である印刷業からリスクを取って葬祭をメイン事業にしたり、式場の増設をしたりと変革を行ってきました。また、業界の古い慣習に縛られて経営していた子会社は、法のみならず正義の観点に照らし、「しがらみはあれども、経営としては改革したほうがよい」と判断したことに取り組みました。
このように私は、ともすればステークホルダーからお叱りをいただくこともあり得るような経営改革に舵を切り、今までになかったリスクを発生させたのです。
したがって、それに見合う利益や成長性、誰もが納得いくような未来像を作ることは、改革のトリガーを引いた私に課せられている責任だと痛感しながら、必ずや成し遂げようと、3年間仕事に邁進してきました。今回それらが達成できたと考えたため、このような運びになったということです。
4-01 代表者の変更について
後任の代表取締役社長は、前川雅彦です。同時に、現在取締役会長職にある羅怡文が、代表取締役会長に就任します。
羅は、私と一緒に広済堂ホールディングスの方向性を決めてきた人間です。羅と私は、本日発表することを将来にわたり行っていきたいという同一の意見を持っています。したがって、広済堂ホールディングスの方針や戦略については、後任の代表取締役2名に引き継がれていくことになります。
前川は、6月1日に執行役員として当社に入社します。その後、私と一緒に1ヶ月間仕事をし、6月27日の株主総会終結以降は広済堂ホールディングスの代表取締役として、羅と二人三脚で各種の将来像を達成すべく仕事をしていきます。経歴については、開示の書面や決算説明資料をご覧いただければと思います。
1-01 2024年3月期通期サマリ
「中期経営計画3.0」では、3つの基本方針を打ち出していました。業績のさらなる向上については、通期利益をしっかり出せたと思っています。新しく始めた資産コンサルティング事業においても、きちんと利益を出すことができました。
株主還元のさらなる充実についてです。今後、より大胆な株主還元に進んでいくためには、多くの株主や投資家に「そちらへ投資するなら、どうぞ配当せずに内部留保してください」と思っていただけるような成長投資を行う必要があると考えていました。
そして、内容については「目鼻をつけた計画を立てて公表したい」「それまでは大胆に上げることはできないが、なるべく早く上げたいという意思は持っている」とお伝えしてきました。結果的には内容のとおり、多少なりとも配当性向を上げることができました。
さらに、当社の保有資産ポテンシャルを最大限に発揮するまでの計画を立案しました。今日ご説明しますが、今我々が考えている成長投資のだいたいの累計額もお知りいただければと思っています。
今回の「中期経営計画3.0」は、利益を上げること、新規事業で成長性を見せていくこと、株主還元をさらに上げていくことの3つについて、それなりのかたちをつけたと思っています。
1-02 2024年3月期通期業績(連結)
先ほど開示した、2024年3月期の通期連結業績です。当期純利益は業績予想比で500万円マイナスとなりましたが、最も難易度が高く外から見てもご心配の多かった計画を、おおむね達成できたと言える数字だと思っています。
前期はこれまで繰り返しご説明してきたとおり、式場を増設し、計画どおりの稼働率で販売することができました。
1-03 2024年3月期通期 事業セグメント別業績サマリ
事業セグメント別業績は、スライドに記載のとおりです。
印刷事業ならびに人材事業をさらに伸長していく計画についてはお約束どおりになっていない状況ですが、葬祭収益は計画比較でプラスとなったため、全体の計画数値を達成できています。
1-04 株主還元|配当
配当については、配当性向から計算して金額を算出しています。
1-05 新規事業の状況について
新規事業の状況です。葬儀事業を直接営んでいる子会社の広済堂ライフウェルとグランセレモ東京の業績は、通期計画を上回る着地となりました。
2年ほど前に「子会社2社の成長スピードはもう少し遅くなると思います」とご説明しました。コロナ禍でのスタートで、葬礼などの「人が集まること」を商品とする事業がつまずき弱気になってしまいましたが、コロナ禍後にしっかり経営することができました。
資産コンサルティング事業については、一部期ずれもあり業績予想には若干未達となったものの、中期経営計画比では良い数字になったと考えています。以前より「いったん営業利益5億円ほどの事業に育て、その後10億円レベルの利益を出していける事業に育てたい」とご説明してきました。
資産コンサルティング事業は、案件が積み上がって利益になるため、最初から売上利益が立つわけではありません。スタートしたのはちょうど期首と同時期でしたが、2024年3月期の営業利益は2億9,000万円ほどに至っています。同様のペースが続けば、5億円を超えることは確実だと思っています。
火葬炉運営を自前化するための子会社については、社内でも「重要性が高くなったことは明らかだ」「連結子会社とするべきだ」という声も高まってきたため、連結子会社にすることとしました。
これまでお伝えしてきたとおり、4月1日よりこの子会社が斎場のメンテナンスを請け負う体制になりました。これは、現進行期の業績にも多少は寄与すると考えています。
2-01 2025年3月期 業績予想
2025年3月期からは、新たなる中期経営計画を策定しました。その1年目となる来期の業績予想は、スライドのとおりです。
ポイントは、前期の期首とは異なり、非常にわかりやすい予想になっていることです。9月に増設した式場が、現進行期は通年稼働します。また、子会社の新規事業などが伸びてくることなどを合わせ、このような数字になると予想しています。
2-02 2025年3月期 業績予想:セグメント別
セグメント別の業績予想です。基本的には、前期の計画の反省点を活かしています。
情報セグメントでは「BPOを育てて印刷業界のシュリンクしている部分を補い、しっかりと利益を育ててみせる」とお話ししました。しかし振り返ってみれば、新型コロナウイルス期のBPOは特需に過ぎず、思っていたほど案件が取れませんでした。したがって、その反省に基づいた計画に引き直しています。
現進行期も、葬祭収益セグメントの利益が予想よりもはるかに大きいです。そちらはそのまま来期予想に引き継がれますので、情報セグメントを補うかたちとなり、今までの予想を下げることはせずに済んだということです。
2-03 2025年3月期 配当予想
配当性向が35パーセントのままだった場合の来期以降の配当予想は、スライドのとおりです。
3-01 中期経営計画4.0 基本方針
「中期経営計画4.0」についてご説明します。こちらは、投資家から一番お問い合わせが多かった分野です。私どもは、保有する6つの火葬場と斎場には容積率の空きがあるため、さらに床面積を増やすことができると再三お話ししてきました。これは当社の成長ポテンシャルに他なりません。
さらに、現状でもしっかりと利益が出ていますので、極めて低いリスクで投資して成長拡大できる分野だともお伝えしています。そちらに対しては、具体的な投資額や利益貢献額などのご質問をみなさまからいただいてきました。当然のご質問だと思います。
にもかかわらず「現在算出中で」「来年5月の決算発表でご報告します」と言って、当然のご質問に回答しないまま今日に至りました。今回はお約束どおり、ラフなものではありますが、考えていたことを「中期経営計画4.0」で発表します。
基本方針は従前の方針を踏襲し、葬祭公益セグメントおよび葬祭収益セグメントを中心とする企業体として、成長していきます。業績向上を図るのはもちろんのこと、有望な新規事業にはしっかり力を入れて成長性を確保することも、「中期経営計画4.0」で継続します。これから床面積を増やすという計画もありますので、当然の方針だと思います。
「成長はここでストップし、あとは安定的な経営で低コストを進め、利益が少しずつ増えるフェーズを見守ってください」ということではなく、成長に野心を持って進めていきます。この方針は「中期経営計画3.0」の2番目にも書いてありましたが、当期からの「中期経営計画4.0」でも継続します。
株主還元のさらなる充実も同様です。投資全体に多少の目処が付くまで、大きな配当性向での配当は取締役会で議論をしながら進めていきますが、少なくとも累進配当を目指すことは明言したいと思います。
また、こちらはどの期間で実行するかの議論が取締役会で着地しきっていませんが、配当性向40パーセントをノルマとして、しっかりと目標に据えていきたいと思います。
以上が「中期経営計画4.0」の基本方針です。
3-02 中期経営計画4.0 業績目標
この基本方針をもとに計算した業績目標が、スライドの記載の数字となります。
3-03 中期経営計画4.0 業績目標|セグメント別
「中期経営計画4.0」における、セグメント別の業績目標です。
3-05 成長戦略|長期投資計画(式場増築)
「中期経営計画4.0」で何を行うのかが根幹かつ最も重要で、みなさまが関心を寄せてくださっている部分だと思います。結論から言うと、式場が117室増えます。斎場別の内訳はスライドに記載のとおりです。
3-06 中期経営計画4.0+今後の式場増築
今後の式場増築についてです。「中期経営計画4.0」の期間中には大きく増えません。前期の式場増設は内装工事によるもので、もともとあった部屋を用途転換して式場を増やしています。そのため短い工事期間で達成ができ、すぐさま利益に反映させることができましたが、今後は基礎を含んで建物を建てるかたちになりますので、時間がそれなりにかかります。
また、式場を増やすと同時に、お坊さんの待機場所や駐車場など、ご利用者に迷惑がかからない程度のものも増設するため、いろいろな追加投資が必要になります。大まかな計算ではありますが、総額として170億円ほどは投資する必要があると試算しています。なお、利益からご納得いただけるかと思いますが、これらの投資は基本的に内部留保から行う予定です。
以上が、実際に図面を引いて見た上での式場増築計画です。その場合、当初は50パーセント程度の稼働を見込みます。そもそもの外的環境として、これだけ一挙に増やした式場がすぐ埋まるほど、東京都全体の火葬件数が増えていくという予想はありません。
しかしながら、新式場の50パーセントの追加稼働と、子会社の葬儀件数を伸ばすことによる稼働率の上昇を織り込めば、営業利益増が追加で見込めると試算しました。スライド下部には、新式場の減価償却費も記載しています。
こちらが、手堅く見込まれる当社の成長ポテンシャルです。実際にはまだ、この建築を実施設計に落とし込んで役所に提出し、許可をもらっているわけではありません。保健所とも擦り合わせが必要です。
したがって、これらを実務に落とし込む仕事がまだ残っていますが、そちらは次の体制でしっかりと進めていくということになります。
3-07 成長戦略|資産コンサル事業の拡大[協業イメージ]
資産コンサルティング事業についてご説明します。先般発表したSBIホールディングスとの業務提携契約の話は、しっかりと煮詰まってきています。このジョイントベンチャーの内容は、新代表となる前川が中心となって近日中にご説明・ご開示したいと思います。
本来であれば、本日は前川からもご挨拶申し上げたいところでしたが、前職の規定との兼ね合いで本日はこの場におりません。6月から当社の経営に専念するという状況ですので、そこで前川からのご挨拶と併せ、ブルーマップとまではいきませんが、資産コンサルティング事業の今後の進め方および新規の会社や人員体制について発表したいと思います。
3-08 課題の認識|資産コンサルティングセグメントの事業拡大
基本的には、今回の業務提携により我々の案件獲得基盤を一挙に大きくすることで、規模を拡大し、一皮むけた第1フェーズにまで至りたいと思っています。
3-09 株主還元
配当性向は35パーセントと記載していますが、これまでお話ししてきたことを行うことで、配当金額は少なくともこのような推移にできるのではないかと考えています。「中期経営計画4.0」の期間中には、配当性向のさらなる向上にも取り組んでいきたいと思っています。
黒澤氏からのご挨拶
冒頭で私の進退についてお話ししました。私としては、公済堂ホールディングスを「誰が経営してもしっかりとした利益を出し、成長していける会社」に育てるという気持ちで、この3年間やってきました。
お話ししたとおり、それなりの説得力や蓋然性を持った計画に対し、会社がいったん成長し終わるところにまでは持ってくることができたと思っています。
前期1年を私が見てきたこともあって本日は私からのご説明になりましたが、6月27日以降も後任の羅ならびに前川が、ご説明した内容を必ず推進していくことをみなさまにお約束します。そのことを前川から直接みなさまにお伝えする機会も、いずれいただければと思っています。
決算説明は以上とします。どうもありがとうございました。
質疑応答:情報セグメント減益要因とBPO案件の期ズレについて
司会者:「情報セグメントについて、第3四半期時点では計画比で8億円ショートしていたところ、通期営業利益が約31億円となっています。この要因を教えてください。また、BPO案件の受注時期ズレは当期にスライドするものと理解してよいですか?」というご質問です。
黒澤:基本的に、印刷事業で売上利益とも最も大きな数字を出すのは第4四半期です。そのため、うまくいかなかった時のインパクトも、それにつれて大きいということです。
特段の異常値というよりは、BPOが受注できなかったことに尽きるかと思っています。スライドには「受注時期ズレ」とありますが、実際には、公共事業を中心に受注を見込んで役所の方とお話ししていた案件が受注に至りませんでした。
受注に至らなかった案件が、今後確実に受注できるという状況にはありません。「期ズレ」と言うと今期にずれ込んでいる、すなわち仕事としてはいずれ出てくるように見えますが、そうではありません。しかし、案件がなくなったわけではないため「期ズレ」としています。
したがって、現進行期の業績予想は、BPOによる成長を見込んでいた前期首の情報セグメントの数字を落としたかたちで予想しています。
質疑応答:2025年3月期は減収でも利益が確保できる要因について
司会者:「当期の業績予測と『中期経営計画3.0』の2025年3月期を比較すると、売上が減少しているものの利益はほぼ変わりません。要因を教えてください」というご質問です。
黒澤:情報セグメントのBPO事業は利益率がそれほど高くない事業ですが、「中期経営計画3.0」の予想は、売上は大きい数字を占めていました。先ほどお話ししたとおり、今期はこちらを落とすため、売上としてはけっこう下がります。
一方で、葬祭収益セグメントの利益が予想よりも好調に推移してきたことが、そこを補って余りある結果になるため、利益としては減らないという格好です。
質疑応答:今後の式場増築計画の前提条件について
司会者:「今後の式場増築計画の前提条件を教えてください。営業利益と減価償却費を開示されていますが、それぞれの式場の竣工月と償却期間についてご説明いただけますか?」というご質問です。
黒澤:償却開始は、投資総額170億円を部屋数で割ったものが正確な投資額ではないものの、おおむね数字に近いのではないかと思います。スライド下段の上から2番目に「新式場増加数(期末)」と記載していますが、こちらが竣工する部屋数です。
増やしていく床面積と式場数には相関関係があるため、償却開始タイミングは、そこから推測していただくと大きな数字の違いはないかと思います。また、償却年数は41年の定額法です。
質疑応答:今後の会社経営の方向性について
司会者:「会社経営にも葬祭業界にもかなり精通した黒澤社長から、前川さんへの引き継ぎが短いため、少し不安です。IR面でもミーティングや見学会などに力を入れてくださいましたが、前川さんはこのあたりの全面的な社長業を行っていただけそうですか?」というご質問です。
黒澤:もちろん、当然のこととして実行します。現在示している「IRへの注力」を含めた方針をしっかり引き継いでいきますので、その点はご安心いただければと思います。
また、葬儀・火葬・地域行政などの知識面については、私も一緒に行っている部分も当然あるものの、子会社の社長や東京博善の幹部社員に加え、ホールディングスの本部社員があらゆる部門を一緒に行うことで組織的に対応しています。
私の変更をもって、これらのノウハウに毀損が生じるということはありません。今後、どうぞご安心いただければと思います。
質疑応答:式場増築に長期間を要する背景および計画確度について
司会者:「式場の増設に相当長い時間を要する背景を教えてください。中長期的な人口動態と建物の耐用年数に鑑みると、早期的に行うほうが合理的かと思われますが、行わない理由はありますか? また、増設の際に躯体工事も必要かと思われますが、一時的に既存式場の閉鎖などは行わなくてもよいのでしょうか?
また、自治体や周辺住民のみなさまと調整が必要な式場もあると記憶していますが、それらは目処が立っており、確度の高い計画とみてよいですか?」というご質問です。
黒澤:6斎場のうち2斎場は、区の制約が少々きついところがあるため、住民説明を経るなどのそれなりに厳しい要件があります。そのため、準備期間は他の4斎場と比べて相当かかります。また、着工は早くて3年後ですが、計画にはバッファを入れたほうがよいと考え、竣工時期がばらばらになっています。
基本的には、営業を一部止めながら工事をするということを最小限にするべく、計画を作っています。したがって、その間で一部炉や式場が閉まるということはあるものの、稼働の低い時期にだけ一部の炉が止まるようにします。
また、1斎場ずつ工事を行う中で、炉の稼働を止める必要がある部分の工事については、もともと稼動が低い時期に、斎場も平均すると10ずつある炉のすべてを止めるのではなく、例えば春先などの稼働が3割くらいになるような時期に2炉だけ止めるなど、さまざまな工夫をしながら行っていく予定です。
そのような段取りもあるため、足掛け2年近く「増築計画の内容を教えてほしい」というご質問をいただきながら、「まだお答えできません」とお伝えし続けたわけですが、そちらをしっかりと考えられたため今回記載しました。
実際は、建物が建たないことを考えられるような決定的な制約はないと言うと語弊がありますが、実行していけるだろうとは思っています。しかし、今日現在、許可が取り終わっているわけではまったくありません。
これから行うことになりますし、図面すらまだ実施ベースでは引いていないため、早く対応できるところから順次手をつけていきます。
質疑応答:人事異動に関する指名・報酬委員会からのフィードバックについて
質問者:今回の異動について、御社の指名・報酬委員会、特に社外取締役等がどのようなフィードバックだったのかを教えてください。
黒澤:自分で言うのははばかられるものの、非才の身に対して過分な言葉をずいぶんいただき、惜しんでいただきました。がんばって実行してきたつもりではあるため、そのことは評価いただけていたのかとは思います。
質疑応答:今後の経営における方向性について
質問者:前川さまのご経歴等を見ると、けっこう資本市場に精通されている方に見えます。例えば今後、中長期的に考えていった場合に御社として、より資本市場を向いていく予定なのでしょうか?
例えば、今回は累進配当等の導入も行っていますが、そのような側面をより強化していくという考え方もあるために、このようなバックグラウンドの方へバトンタッチしたのでしょうか? そのあたりの解説をお願いします。
黒澤:多少おっしゃるとおりのところはあります。基本的にはやはり、今も取締役会長でいる羅が代表取締役会長になるということで、経営の方向性は保たれるわけです。子会社社長を中心にして、東京博善も社長の和田が経営全般をしっかり見ています。
そのようなところで、今後は羅や他の幹部社員然りとなりますが、私はIR面にもかなり力を入れるべきだと思い、自分が先頭に立って行動してきたつもりです。そこについて穴を開けないという意味で、代表取締役2名の体制にはなるものの、体制の補強を図ったという背景があります。
その意味ではご質問のとおり、今後も引き続き市場をしっかりと見据えた経営を行っていくことの表れと言えます。
質疑応答:新社長専任に対する指名・報酬委員会のコメントについて
質問者:前川さまの採用について、指名・報酬委員会はどのようなコメントをしていましたか? また、今回は社外からの選任ですので、プロセスなどに関しても追加でコメントがあればお願いします。
黒澤:この異動が発生し得るということがあってから、次期、私の後の代表取締役として羅が従事していくにあたり、現実問題として羅が広済堂の業務に直接割ける時間などを考えました。その結果、やはり補強を行い、代表取締役2名の体制で展開していくことが責任を果たすことになるという羅本人の考えがありました。
それをベースに羅が、もともと知り合いであった前川を呼んできたというのが経緯です。そのような経緯をご説明した上で、指名・報酬委員会に諮っています。責任を持って計画を達成していかなければならない立場である羅が「この体制でやらせてくれ。そうでなければしんどい」と、言ってしまえばそのような経緯だったわけです。
やはり、責任を持って次の執行陣に経営を渡していく意味において、そこは希望どおりの体制を用意しようという趣旨のもと、指名・報酬委員会は承認しています。
質疑応答:社長退任にあたって、やり残したと思うことについて
司会者:「黒澤社長ご本人として、やり残したことや足りなかったと思うことはありますか?」というご質問です。
黒澤:「必ずこれをやらなければならないだろう」と思ったことについては、実行できたと自負しています。一方で、時間がさらにあった場合は、情報セグメントの印刷業の経営を直す余地があったかもしれないと思っています。
時間の使い方としては、式場を増やす、そしてそのための計画を作るなどに割いていました。実際に、東京博善の数字を良くしていくにあたっても、今は方向性も完全に明確になって数字も出たために、この方針に反対している人は社内にもいません。
そのため「このように展開するとよいことがある」ということを、全員が共通認識として持っているため、6月以降も滞りなく進むと思います。しかし、最初からそのような状況だったわけではありません。
それなりの工数を必要とする経営改革であったことも事実だと思うと、使った時間と増える利益のバランスでいけば、もう一度同じことをやれと言われても、今と同じような時間配分をしたとは思います。したがって、やり直しても、おそらく似たような結果になるのではないかと考えています。
そのような意味では「やり残したことはない」とも言えるのかもしれません。