目次

新井賢二氏(以下、新井):本日はIRセミナーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。株式会社デコルテ・ホールディングス代表取締役社長の新井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、スライドに記載のとおり、3つのパートに分けてお話しします。最初に当社の概要、次に動画も交えながら事業内容と当社の特長についてご説明し、最後に今後の成長戦略をお話ししたいと考えています。

会社概要

新井:当社の概要をご説明します。当社は2001年に兵庫県芦屋市で創業し、最初はエステティックサロンの運営からスタートしました。その後、リラクゼーション事業やミニチャペルなどでの挙式事業に進出し、2008年から現在の主力事業となっているフォトウエディングサービス、スタジオ事業を開始しました。

2023年9月期においては、スライドの左下のグラフに記載のとおり、フォトウエディングサービスが売上収益の約95パーセントを占める状態になっています。2021年6月に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、その後グロース市場に移行しました。昨年12月には、本社を兵庫県芦屋市から神戸市に移転し、現在に至っています。

事業内容

新井:事業の概要をご紹介します。当社は創業以来、「Happiness」「Beauty」「Wellness」をテーマに、お客さまの「幸福」「美」「健康」に寄り添いながら、さまざまな事業を展開してきました。現在はフォトウエディングサービスを主力事業として、大都市圏や人気のリゾート地を中心に、結婚写真専門のフォトスタジオを展開しています。

また、お子さまの誕生日や七五三、成人式など、さまざまな家族の記念日を写真に残す、アニバーサリーフォトサービスも展開しています。お客さまのさまざまなライフイベントにおいて、いつまでも残したい写真と感動的な撮影体験を提供する「ライフフォトカンパニー」を目指しています。

ここで言う「フォトウエディング」とは「結婚写真の前撮り・別撮り」とも呼ばれていますが、結婚式とは別の日・別の場所で結婚写真を撮影することや、あるいは近年増えている、結婚式を挙げない代わりに結婚写真を撮影することを総称したものです。

コロナ禍以前から、結婚に対する価値観の変化に伴い、結婚式を挙げない、いわゆる「ナシ婚」と言われるカップルが増えています。フォトウエディングは結婚式・披露宴と比べてリーズナブルに花嫁体験ができますし、撮影場所や衣装なども自由に選べ、お客さま1組1組のこだわりに応じてご希望を叶えることができます。

結婚式では事前準備が大変であったり、当日もゲスト対応で気を遣う場面が多かったりするのと比べ、フォトウエディングでは新郎・新婦が周りに気を遣うことなく、ゆったりと主役として撮影を楽しめることから、実施率が上昇しています。挙式・披露宴を挙げる方でも、7割以上がフォトウエディングを実施されているという調査結果が出ています。

当社は、市場規模がまだ小さかった2008年から事業を展開しており、リーディングカンパニーとして市場を牽引してきたと自負しています。ウエディングの撮影件数では業界No.1で、一生に一度の思い出となる感動体験を、年間2万組を超えるお客さまにご提供しています。

増井麻里子氏(以下、増井):創業のきっかけと、創業後にフォトウエディング事業を始められた背景を教えていただけますか?

新井:創業については、2001年に創業者であり昨年12月末まで会長を務めた小林健一郎が、エステティックサロンの経営からスタートしました。当時すでにそのような動きもありましたが、小林は「これから先、消費活動の中心は若い女性になっていくだろうから、若い女性に喜んでもらえる・評価してもらえるサービスをリアルの店舗でやっていこう」と考えていました。

当時のエステはコースで何十万円もかかる高額なものが多かったところ、コースを作らずに都度精算いただくかたちにし、気軽にお小遣いの中で来ていただけるサービスをしていこうという考えでスタートしました。実は、この店舗はまだ芦屋のほうに残っています。

フォトウエディングを始めたきっかけは、エステ事業開始後にその中でブライダルエステをスタートした際、ウエディングドレスなどの花嫁衣装を見る機会が多くなったことです。小林が「華やかなウエディングドレスで、お客さまに喜んでいただけるサービスを展開できないか」と考え、挙式事業をスタートしました。

当社はかなり早い段階から、挙式事業で使う衣装を海外の工場で作るために、アジア、中国、香港、台湾などへ出張で行っており、その時に街中でフォトウエディングをしているのを見ました。

知らない人間からすると「なんでドレスを着た人たちが外で写真を撮っているんだろう」と不思議だったのですが、現地の方にお聞きすると「これはフォトウエディングと言って、すでにアジア諸国では当たり前のことだ」と話していました。

その話を聞き、「これを日本に持ってきて、文化として根付かせたら非常にいいのではないか」と考えたのが始まりです。

増井:アジアのほうがフォトウエディングが進んでいたということなのですね。

新井:はい。現在でも、韓国、中国、東南アジアは非常に写真を大切にする文化がありますので、フォトウエディングも盛んに行われています。

ビジネスモデル 特長/強み

新井:当社の事業と、その特長・強みについてご説明します。フォトウエディングに関しては先ほどのご説明の中でも触れましたが、当社のサービスをよりよくご理解いただくために動画を作成しましたのでご覧ください。

(動画が流れる)

荒井沙織氏(以下、荒井):素敵でしたね。

増井:素敵ですね。非常に引き込まれました。

新井:ありがとうございます。

荒井:ドレス、お着物ともに非常に種類が豊富だということが、今の動画の中でよく感じられました。これらのドレスやお着物は、実際にすべて御社のスタジオ内で管理しているのでしょうか? また、お客さまは事前に現物を見て選ぶことはできるのでしょうか?

新井:各店舗に200着から300着ぐらいの衣装を用意していますので、実際にお客さまが来店された時に目を通していただくことができます。また、ものによっては、衣装選びの効率化を図るためセンター1ヶ所に集中して置いていますので、Webで見て選んでいただくこともできます。

ただし、だいたいのお客さまは、実際にご覧になった上で決めています。

荒井:スタジオも、非常にいろいろなものがありましたね。

増井:すごいですよね。けっこう大がかりですが、このようなものが全国の都市部にあるということですか?

新井:首都圏と関西圏、名古屋、福岡といったところに大きな店舗があります。

増井:駅の近くなのですか?

新井:そうです。

増井:それならば遠くに行く必要もなく、行きやすくてよいですね。

荒井:動画を拝見していて意外だったのですが、ロケ風景のところで動きが非常にたくさんありました。よく見るウエディング写真とは、だいぶ印象が違うと感じています。

新井:先ほどのシーンは沖縄ですが、やはり沖縄だと背景の海や青空などをどう撮るか、どう活かすかが重要になり、お客さまに楽しんでいただく中で撮ることが多くなります。

荒井:そこは、撮影されるカメラマンに委ねているのでしょうか?

新井:お客さまにどう乗っていただくか、お客さまの笑顔をどう引き出していくかも含めて、カメラマンやメイクアップアーティストの技量だと思っています。そのため、先輩の撮影などを見ながら技量を身につけてもらいます。

荒井:動画の最後にコンテストの受賞作品がありましたが、デザイン性が非常に高かったです。あのような仕上がりは、少し勇気がいるご提案ですよね。

新井:コンテストの中には、芸術性が非常に評価されるコンテストもあれば、お客さまの本当にありのままの姿を撮ったものが評価されるコンテストもありますので、それぞれに合わせて写真を撮影しています。

先ほど投影したものは芸術性を高く評価するコンテストの写真ですので、そのようなものに向けてはフォトグラファーがいろいろと知恵を絞って撮影しています。

荒井:もう1つ質問していいですか? 楽しそうで、いろいろと気になってしまいました。 お客さまは、ありのままの素の自分たちの写真と、デザイン性が高い写真の両方がほしいという方が多いと思うのですが、同時に撮影していただくことは可能ですか?

新井:スタジオの中にはいろいろな背景のセットがありますので、セットを使い分けながら撮影していただくことは十分できます。

荒井:ありがとうございます。いきなりたくさん質問をしてしまいました。

新井:いえいえ、とんでもないです。ありがとうございます。

増井:予算に合わせて枚数なども調整できるのでしょうか?

新井:1枚の写真・1枚のデータからスタートできます。その場合には5,000円からのスタートになり、そこにメイクもドレスも新郎の衣装も付きます。

また最近は、SNSで発信するお客さまや「紙よりもデータで欲しい」というお客さまも多いです。データをご注文いただいたり、ご両親に送るためにアルバムを追加注文されたり、あるいは自分の気に入った衣装を着たいということで、衣装を少しグレードの高いものに変えられたりなど、いろいろな選択ができるようにしています。

増井:お客さまのご予算はどのぐらいが多いですか?

新井:本当に幅が広いのですが、今の当社の平均単価は20万円台後半です。

増井:みなさまけっこう使われるのですね。

新井:そうですね。ただし、先ほどお話ししたように「1枚でいい」という方もいますので、本当に幅広いです。

荒井:続いて、もう1つ動画があるということですね。

新井:はい。もう1つの事業の柱としようとしている、アニバーサリーフォトサービスについても動画を用意しました。

アニバーサリーフォトサービスは、フォトウエディングで撮影する年間2万組ほどのカップル、つまり新しいご家族に対し、その後のさまざまなライフイベントでも撮影体験そのものを楽しんでいただきたいという思いで、近年展開に力を入れているサービスです。こちらの動画もどうぞご覧ください。

(動画が流れる)

増井:かわいかったですね。

荒井:かわいかったです。

新井:ありがとうございます。

荒井:動画から、お子さまのいろいろな表情を引き出している様子が伝わってきました。このような雰囲気を作るのは本当に難しいと思います。

新井:当社が展開しているフォトスタジオ「HAPISTA」には、お子さま好きなスタッフや、高い撮影技術を持っているスタッフが在籍しています。自分でカメラを持ちながら、お子さまたちと一緒に動いて写真を撮るのが1つの持ち味になっています。

増井:緊張して固まってしまうお子さまなどはいませんか?

新井:中にはそのようなお子さまもいらっしゃいます。また、途中で眠くなってしまうお子さまもいらっしゃいました。

荒井:それはそれでかわいい写真が撮れそうです。フォトグラファーは特別な講習を受けているのでしょうか?

新井:技術を習得するための育成プログラムがあります。それを受講して一定の技量が身についたと判断されたら、お客さまの前に立っていただきます。

増井:衣装やセットも非常に豊富でした。競合他社が真似するには難しいのではないでしょうか?

新井:衣装はかなりの部分をオリジナルで作っており、気に入っていただけた場合にはその衣装を販売することもあります。これはHAPISTAならではのデザインや色を出せるように、以前から進めている取り組みです。

増井:どのような需要が多いのでしょうか?

新井:当社のWebサイトには比較的色使いの鮮やかな衣装や写真を多く掲載していることもあり、そのような衣装の人気が高くなっています。一方で、Tシャツとジーンズという非常にシンプルなケースもありますので、お客さまのニーズに合わせてお応えしています。

増井:どのような需要にも対応できるのですね。

荒井:お子さまの写真撮影には競合も多いかと思います。そのあたりが御社の強みになっているのでしょうか?

新井:先ほどお話ししたように、お子さまはなかなか難しいところがあります。一般的なスタジオではあらかじめカメラをセットしておいて、お子さまがそちらを向いた瞬間に撮るという手法を取っています。そのため、どうしても同じような構図の写真が多くなってしまいます。

当社の場合は、動き回っているお子さまと一緒に、フォトグラファーもカメラを手に持って動きながら撮影しています。そうすることでさまざまな角度から写真が撮れますし、自然な表情を引き出すことができます。これが1つのポイントになっていると思っています。

増井:三脚を使わずに撮影できる技術がないと、よい写真が撮れないということですね。

新井:おっしゃるとおりです。

増井:アニバーサリーフォトサービスにおける、お客さまの平均的なご予算はどれぐらいでしょうか?

新井:HAPISTAの場合、七五三とそれ以外のアニバーサリーで価格が分かれています。七五三の場合には、8万円から10万円ほどかけられるお客さまもいらっしゃいます。アニバーサリーの場合は、およそ3万円から5万円というケースが多くなっています。

荒井:相場でいうと、どのくらいになるのでしょうか?

新井:決して高くはない価格帯だと思っています。

それではあらためて、事業の特徴と他社にはない強みについて、フォトウエディングを例に挙げてご説明します。スライド中段に、当社のフォトウエディングサービスの流れを記載しています。集客から成約、衣装選び、ヘアメイク、撮影の順番で進んでいきますが、それぞれの工程において、専門知識を持ったプロフェッショナル人材が必要となってきます。

同業他社の多くでは、固定費を圧縮するために各工程を切り出して外注化を進めています。その中で当社は、3つの内製化戦略を進めることでクオリティとコストの双方を自社でコントロールし、高成長と高収益を実現する仕組みを構築してきました。

これにより競争力が高まり、当社の強みや他社との差別化につながっていると考えています。

ビジネスモデル 特長/強み(内製化①プロフェッショナル人材)

新井:当社の3つの内製化戦略についてご説明します。1つ目の内製化は「プロフェッショナル人材」です。当社では、それぞれ百数十名に上るフォトウエディング専門のフォトグラファーとメイクアップアーティストを、自社で雇用しています。

フォトグラファーやメイクアップアーティストはフリーランス志向が強く、採用や定着率という観点でも人材確保が非常に難しい職種となっています。そこで、当社は独自の教育カリキュラムを作り、それを長年積み重ねることで、多数のプロフェッショナル人材を社員として育成してきました。それにより、安定的な高品質のサービスを実現しています。

スライド右側には、採用した社員をプロフェッショナル人材へ育成するための特徴を3つ記載しています。1つ目は、教育カリキュラムです。例えば、かつてフォトグラファーは徒弟制度のようなかたちで教育を受けており、技術の習得に10年程度かかるケースもありました。

一方、当社では専門的なカリキュラムを組み、未経験者でも入社から約1年でひととおり独力で対応できるレベルになれる教育システムを構築しています。その後も定期的な研修を繰り返すことにより、クオリティコントロールを徹底しています。

2つ目は、切磋琢磨できる場を提供していることです。基本的に、フォトグラファーやメイクアップアーティストは、個人や少人数で働くことが多い職種です。しかし、当社には多数の正社員がおり、その中で自分よりも高いレベルの先輩や同僚を間近に見て刺激を受けることができます。また、技術評価の基準を明確化し、さらに高いレベルの教育を行うことで、向上心や技術を高める場を提供しています。

3つ目は、向上心の高いスタッフが、個性を発揮しやすい場を提供していることです。当社ではWebサイトにフォトグラファーやメイクアップアーティストのギャラリーを設けたり、SNSでの発信を促したりしています。それを見たお客さまが、そのフォトグラファーやメイクアップアーティストを指名できるシステムになっています。

それぞれが個性を発揮することは、お客さまにとっての選択肢が広がるだけではなく、スタッフのやりがいにもつながっています。

COSMOS AWARDS 2023

新井:これらの取り組みを進める中で、当社は国内外のコンテストを受賞するフォトグラファーを多数輩出しています。

次のスライドからは、受賞作品の一部をご紹介します。これまでに30人、190を超える賞をいただいており、こちらも当社の強みとなっています。

ビジネスモデル 特長/強み(内製化②撮影用衣装・専用スタジオ)

新井:2つ目の内製化は「撮影用衣装・専用スタジオ」です。撮影時にお客さまが着用される衣装やドレスは、メーカーから仕入れる以外にも、事業開始後の早い時期から海外の工場と直接契約し、当社がデザインしたオリジナルのドレスを導入してきました。

デザインを内製化・直接発注することで制作期間を短縮し、最新のトレンドをいち早く取り込むことができます。さらに、クオリティとコストのバランスを、自社でコントロールすることが可能になります。

年間2.4万組超の新郎新婦を撮影するため衣装の回転率も高く、規模の大きさにより内製化のメリットがさらに効果を発揮しています。

ハウススタジオ

新井:アクセスのよい店舗内には、さまざまな背景を揃えたフォトウエディング専用のスタジオや本格的な和室を持つ屋内庭園スタジオなど、複数のスタジオをご用意しています。多様化するニーズにお応えしつつ、天候に左右されない環境構築など撮影効率を高める取り組みも進めています。

屋内庭園スタジオ

荒井:衣装の内製化についてうかがいます。流行が変化するたびに入れ替えが必要になると思いますが、かえってコストがかさんでしまうということはありませんか?

新井:流行はあるものの、普段着のように変化のスピードが早いわけではありません。また、回転率が非常に高く衣装もどんどん使い切ってしまうため、流行に合わせて十分に入れ替えができていると考えています。

ビジネスモデル 特長/強み(内製化③WEBマーケティング)

新井:3つ目の内製化は「WEBマーケティング」です。当社のお客さまは、90パーセント以上が当社のWebサイトから来店予約をされています。そのため、Web検索の順位やSNSなどでの露出度向上など、認知度を高める取り組みが重要になります。

お客さまの嗜好は絶えず変化しています。Web検索や広告で常に上位表示されるためには、効果的なSEO対策に加え、広告の内容・配分・タイミングなどを状況に応じて変えていく機動性が求められています。

Webマーケティングと制作の機能を内製化することで、よりスピーディでタイムリーな対応が可能となり、広告宣伝費の抑制にもつながっています。

また、基本的にリピーターがいないフォトウエディングでは、SNSやWeb上での口コミを重視されるお客さまも増えています。高評価の口コミ投稿が新規のお客さまを呼び込み、そのお客さまにもご満足いただくことで、さらに口コミや写真の投稿が増えるという好循環を生み出し、集客上優位なポジショニングを取ることができています。

財務面で見る特長 他社(写真制作・加工・販売企業)比較

新井:スライドは、当社の売上成長率・営業利益率・ROEを、上場している他のフォトスタジオや写真関連企業の直近3ヶ年の実績の平均値と比較したものです。青色のグラフが当社の実績です。3つの内製化により、いずれの指標でも他社を上回る数値を実現しています。

増井:人材についてうかがいます。御社では専門学校などを卒業されている方以外に、スキルがそれほどない方や未経験の方なども採用されているのでしょうか?

新井:フォトグラファーとメイクアップアーティストで分かれています。メイクアップアーティストは基本的に、美容師の資格を持つ方や美容系の専門学校に通っている方を採用しています。一方のフォトグラファーに関しては、まったく経験のない方も積極的に採用しています。

増井:採用後に社内研修でトレーニングするというかたちでしょうか?

新井:おっしゃるとおりです。

増井:研修を行う講師は、御社の社員が担当されているのでしょうか?

新井:社内に技術管理部という部署があり、技術指導専門の社員が指導しています。

増井:フォトグラファーの中には、フォトコンテストなどで賞をとると独立志向が出てくる方もいると思います。そのような部分で、リテンションマネジメント的なことはされているのでしょうか?

新井:おっしゃるとおり、賞をとって非常に高く評価されると周りから声をかけられることもあります。しかし、当社の場合はずっと同じスタジオで撮影しているわけではなく、沖縄や北海道、軽井沢、宮古島といったリゾート地にも拠点を作っています。

そのようなところにも出張していただき、さまざまな場所で、絶えず新しいものを撮れる環境を整えています。そこで新たな発見や取り組みなどを見つけてもらえるため、満足していただいていると考えています。

増井:例えば、フォトグラファーに単発の撮影依頼が来た場合、そのような仕事は受けてもよいのでしょうか?

新井:時には、企業から「広告写真を撮ってほしい」というお話もいただきます。内容にもよりますが、お受けできるものについては当社のフォトグラファーが対応しています。

増井:基本的には会社を通して対応されるということですか?

新井:そのとおりです。

増井:広告を出しているものの費用は抑制できているとのことですが、例えばどのようなところに広告を出しているのでしょうか?

新井:比率として高いのはWeb広告で、リスティング広告がメインになります。また、SNSなども効果が高いため、そちらに広告を出すこともあります。加えて、純粋に当社のSNSアカウントから発信し、認知度を高めていく取り組みも進めています。

中期経営計画骨子

新井:当社の成長戦略についてご説明します。

当社は上場前から、中期的な経営方針や事業目標などを設定した中期経営計画を策定し、事業の成長度合いを反映しつつアップデートしてきました。今年度からは、毎年のアップデートではなく2026年9月期までの3年間と期間を定め、その間に取り組む中期経営計画を昨年11月に開示しました。

その骨子は、現在のフォトウエディングのリーディングカンパニーという立ち位置から、これまでに培った高度なフォト技術をコアにしつつ、いつまでも残したい「写真」と、心に残る「感動体験」をリアルなサービスを提供し、さまざまなライフステージでのお客さまの「思い出づくり」の場を提供する「ライフフォトカンパニー」へと成長していこうというものです。

当社のアプローチする市場(TAM:Total Addressable Market)

新井:「ライフフォトカンパニー」として、今後当社がアプローチしていくフォト市場にはどのようなものがあるのかをスライドにまとめました。

フォトウエディング以外にも、すでに子ども写真、成人式写真などへの取り組みを始めていますが、その他にもさまざまなライフイベントがあり、潜在需要も含めると国内だけで1兆円を超えるマーケットがあると考えています。

「少子高齢化や晩婚化で、国内市場はしぼんでいくのではないか?」というご質問もよくいただきますが、この中には、まだ需要が伸び切っていない未開拓市場もあります。また、後ほどご説明しますが、インバウンド等の海外市場も今後大きな成長が見込める市場として取り組みを進めていきます。

中期経営計画概要

新井:スライドには、今期からの3年間における主な取り組みを挙げています。1つ目は「フォトウエディングサービスのさらなる成長」です。中期経営計画の最終年度にあたる2026年9月期には、77億円の売上収益を目標としています。

2つ目は「ライフフォトカンパニーの礎を創る」ことです。2026年9月期におけるフォトウエディング事業以外の売上収益は、15億円を目標としています。3つ目は「インバウンド向け事業の強化」です。2026年9月期の売上収益は3億円を目標としています。

これら3つに取り組み、2026年9月期には合計95億円の売上収益を目標としています。

中期経営計画概要:①フォトウエディングサービスのさらなる成長

新井:中期経営計画における3つの取り組みについて、詳しくご説明します。

1つ目は、フォトウエディングサービスのさらなる成長に向けた取り組みです。業界のリーディングカンパニーとして自ら市場を広げていくとともに、新規出店を進めることでさらなる成長を目指しています。

店舗展開に関しては、未出店地域を中心に新たな顧客獲得を進めていきます。2025年9月期からは地方中核都市を中心に、大都市圏の店舗よりもコンパクトなスタイルの「地方都市型店舗」の出店を開始する予定です。

加えて、すでに店舗のある沖縄や北海道、軽井沢以外の魅力的なリゾート地の発信を強め、インバウンド顧客の獲得にもつながる撮影ロケーションの選択肢を増やす取り組みを強化していきます。リゾート型店舗の活用は、当社全体の設備や人員の稼働率を高めることにもつながります。

投資効率・生産性向上に関しても取り組みを進めています。人口が集積し顧客層の厚い大都市圏では、既存店の周辺にスタジオを持たない「相談カウンター」のような接客専門店舗を設けるなど、投資効率のよいさまざまな手法で集客の強化を図っていきます。

また、すでに一部地域で始めていますが、衣装管理のセンター化も進めていきます。先ほどお伝えしたように、各店舗には200着から300着の衣装を常備していましたが、複数店舗分の衣装を集約して管理するセンターを設けることで、仕入数の削減や衣装の回転率を高めることができます。このような効率化もさらに進めていきます。

中期経営計画概要:①フォトウエディングサービスのさらなる成長

新井:スライドには、従来型のブライダル事業と当社の稼働状況に関するグラフを示しています。

スライド左側は月別、右側は曜日別の実施割合を示していますが、黒く細い線で示した従来の結婚式は、月別では特に秋の11月、曜日別では完全に土日に集中しています。一方、青い線で示したフォトウエディングは、ゲストの日程調整などもなく2人で完結できるため、季節や曜日を平準化し、稼働率を高めやすいビジネスモデルになっています。

それでも、暑い夏と寒い冬は都市部では撮影が少ない状況にあります。しかし閑散期には、都市部のお客さまを北海道や沖縄などの魅力的なリゾートにお連れすることで、稼働率の平準化を進めることができています。この取り組みは今後さらに強化していきたいと考えています。

中期経営計画概要:②ライフフォトカンパニーの礎を創る

新井:2つ目は、ライフフォトカンパニーの礎を創る取り組みです。フォトウエディングに続く事業の柱としてアニバーサリーフォトサービスの拡充を進め、年間約2万組のフォトウエディング顧客の、その後の撮影の接点を増やしていく取り組みを進めます。

アニバーサリーフォトサービスにおいては、子どもを中心とした家族写真スタジオHAPISTAの展開を強化していきます。この業界には、すでにスタジオアリスなどの競合がひしめいていますが、一般的な子ども写真館とHAPISTAとの違いについてご説明します。

一般的なスタジオでは、お宮参りや七五三などのイベント時に正装で撮影することがスタンダードです。しかし、お子さまが長時間集中してカメラのほうを向くことは非常に難しいため、カメラや照明をあらかじめ固定してお子さまをあやしながら、カメラのほうを向いた瞬間に撮影します。そのため、どうしても画一的な写真になり、満足し切れないお客さまも出てきています。

そこでHAPISTAでは、オリジナルの衣装を作り、決まった立ち位置で撮影するだけではなく、さまざまな仕掛けのあるスタジオ内で、お子さまとご家族に自由に楽しく過ごしていただきます。その中で、専門技術を持ったフォトグラファーが、お客さまの動きに合わせて自然光を取り入れたありのままの表情を撮影するというスタイルが特徴です。

お子さまとご家族のありのままの自然な表情を写真に残すことに加え、撮影自体を窮屈な体験ではなく、楽しい思い出として残すことができます。そのことが「次もHAPISTAで」というかたちで、リピーターを増やすことにもつながります。

HAPISTAの取り組みについては、スライド右側に3点挙げました。1点目は、現在も取り組んでいますが、各店舗の商圏内における認知度向上の取り組みの強化です。これまではSNSを中心に集客を進めてきましたが、広告なども効果的に取り入れて強化を進めていきます。

2点目は、アニバーサリーフォトブランドの構築です。こちらは店舗展開ともリンクしますが、首都圏を中心とした出店に加え、M&Aも活用しながら展開を加速させていきます。それにより、お客さまとの接点を増やしつつ、フォトウエディングと同様の強いブランドイメージの構築を目指しています。

3点目は、MIXIグループとの連携強化です。筆頭株主であるMIXIグループは、写真共有アプリ「みてね」を展開しています。2,000万人の会員がいる「みてね」とHAPISTAの連携をどのように深められるか検討を進めていますが、アニバーサリーフォトの成長には非常に有効な連携になるものと期待しています。

増井:「みてね」は、ほとんどの方が使っているのではないかというぐらい有名で、お客さまの層はかなり厚いと思います。このアプリをHAPISTAにつなげるアイデアがあるのであれば、教えてください。

新井:現時点で具体的なお話はなかなかしづらいのですが、いかに「みてね」の会員にHAPISTAをご利用いただくか、そのきっかけをどのように作っていけるかを考えています。

中期経営計画概要:③インバウンド向け事業の強化

新井:3つ目は、インバウンド向け事業の強化に関する取り組みです。特にアジアには写真を大切にする文化を持つ国が多く、コロナ禍からも急激に回復しました。今後も拡大していくインバウンド市場は、先ほども触れたとおり、日本国内の人口減少傾向への対応策としても非常に魅力的なマーケットと捉えられるため、中長期的にも強化を進めていきます。

コロナ禍による中断の前には、香港を主要ターゲットとして、年間約300組で約1億円のフォトウエディング売上収益を記録していました。香港では昨年からマーケティング活動を再開し、さらに中国本土、台湾へも拡大すべく活動を開始しています。今期はコロナ禍前と同水準の1億円の売上収益、2026年9月期には3億円の売上収益を目指しています。

昨年10月には、新たなインバウンド向けのフォトサービス「都々路(つつじ)」を浅草にて出店開始しました。中国をメインターゲットとして、家族や友達同士、カップルなどを対象に、着物のレンタルと写真撮影を組み合わせたサービスを提供します。現在は着物レンタルと撮影の組み合わせが中心ですが、今後はさまざまな文化体験と組み合わせた新サービスを展開していきたいと考えています。

中期経営計画 PLサマリー

新井:中期経営計画のPLサマリーです。売上収益成長率は今後3年間で年平均17.7パーセント、営業利益成長率は年平均23パーセントを見込んでおり、2026年9月期には売上収益95億4,700万円、営業利益16億5,900万円を計画しています。

スライド左下には計画期間中の店舗数の推移を掲載していますが、特にアニバーサリーフォトにおいては、来期以降の店舗展開を積極的に行っていきます。

フォトウエディングサービス、アニバーサリーフォトサービスのそれぞれにおいて、ここまでにご説明した施策を進めていきますが、特にアニバーサリーフォトサービスではM&Aも視野に入れながら事業基盤の拡大を目指していきます。

質疑応答:撮影件数の減少要因とフォトウエディングの需要について

増井:「1月の撮影件数が前年同期を下回ったのは、競争激化が主要因ですか? フォトウエディング自体のニーズ上昇に変化はないでしょうか?」というご質問です。

新井:「ゼクシィ」や「Photorait」の運営会社などがアンケートを行ったところ、フォトウエディングのニーズ自体は高まっているという調査結果が出ており、当社もそのように感じています。

ただし、全体の婚姻組数が今のところ昨年を下回る水準で推移しているのも事実です。そこは、これから注視していく必要があると考えています。

増井:「コロナ婚」のようなことがあったのでしょうか?

新井:コロナ禍がある程度収まってきて挙式される方々も増えていますが、その方の中でも、前撮り・別撮りをするお客さまは増えています。ある意味で、全体のマーケット自体は成長していると考えています。

質疑応答:値上げの可能性について

荒井:世間は値上げラッシュのため、御社も値上げしやすいのではないかと考えます。値上げのお考えはあるでしょうか?

新井:価格設定は非常に微妙なところがあるため、いろいろな周りの状況を見ながら決めていきたいと考えています。

荒井:先ほど「価格帯がそれほど高くないエリアにある」と言っていましたが、サービスが充実すればするほど、値上げの伸びしろもあると見てよいのでしょうか?

新井:おっしゃるとおり、伸びしろはあるのではないかと考えています。

質疑応答:初配当のタイミングについて

増井:「どのタイミングで初配当をお考えでしょうか? 何かイメージがあればお話しいただけますか?」というご質問です。

新井:このご質問は、株主さまから当社へ直接お問い合わせいただくことが多いです。先ほど中期経営計画をご覧いただきましたが、現段階では、業績を広げるための投資に資金を投下したいと考えています。

以前、所有不動産を売却した時には自社株買いを行っていますが、そのような臨時的な収入によって計画以上に数値が上振れた場合は、配当に限らずさまざまな還元方法を選択肢として検討していきたいと考えています。

質疑応答:動画撮影サービスの提供について

増井:「御社が提供するのは、あくまでもフォトサービスのみでしょうか? ムービーサービスを提供する予定はありますか?」というご質問です。

新井:ムービーに関しては一部お客さまのリクエストで制作をしていますが、ムービーについてはノウハウを持っている会社が別にあるため、そちらにご協力をいただいています。

増井:協業・協力というかたちでしょうか?

新井:そのとおりです。今のところ、当社で直接ムービーを撮るというプロモーションはしていません。

質疑応答:今後のインバウンドの売上割合について

増井:「3年、5年、10年後には、インバウンド向けの売上が大部分を占めると見ています。社長としては、未来の売上割合はどのように変化すると見立てていますか?」というご質問です。インバウンドの割合が大きくなるのではないかと予想されていますが、いかがでしょうか?

新井:先ほど中期経営計画の中で、インバウンド向けの数値もご説明しました。目標としてはその数値を挙げていますが、それ以上の数値を上げていきたいとは考えています。

日本に対して非常に関心の高い国々は多数あります。当社はこれまで、香港をメインにしてインバウンドのお客さまをお連れしていましたが、今後はさらに広げ、写真に対する熱量が非常に高い中国本土や東南アジアからもお連れすることを考えています。

また、昨年から始めたウエディング以外の撮影機会も、次第に広げていければと思っています。

質疑応答:インバウンドの営業について

増井:インバウンドの営業はどのようにされているのですか?

新井:2つのケースがあります。1つは、英語と中国語で作ったWebサイト経由からお問い合わせをいただくケースです。もう1つは、現地で催されるウエディングフェスティバルなどのイベントに参加し、直接お客さまとお話しするケースです。この両方で進めています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業にご回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:株価の下降トレンドが続いていますが、それに対する対策は何か考えておられますか?

回答:現在の株価につきましては、市場の評価として真摯に受け止めています。みなさまのご期待にそえるよう、まずは中期経営計画でもお示しした事業の成長を実現することにより、企業規模を拡大させていくことに取り組んでまいります。

また、IR活動を積極的に行い当社の認知度を高めつつ、当社の事業内容、成長性、事業戦略等をわかりやすく市場に伝え、多くの方に関心を持って投資いただけるよう取り組んでまいります。

<質問2>

質問:フォトウェディング一組あたり1回のご利用代金について、トレンドとしては上昇傾向にある、横ばいであるなどの傾向はどのような感じでしょうか?

回答:当社が開示している撮影単価の前年比較をご覧いただきますと、直近まで上昇傾向が続いています。また、株式会社リクルートや株式会社ウエディングパークが公開しているアンケート調査結果でも、年々単価は上昇しています。市場全体として一組あたりの単価は上昇傾向が続いていると判断しています。

<質問3>

質問:人材獲得については、カメラマン養成の専門学校と提携していたりするのでしょうか?

回答:メイクアップアーティストは美容専門学校の出身者を採用していますが、フォトグラファーの場合はほとんどがカメラマン養成の専門学校以外の出身者です。入社後、当社独自の教育カリキュラムにより、約1年間でフォトウェディングの撮影の一通りを一人でこなせるレベルまで育成いたします。

<質問4>

質問:高成長高収益の実現とありますが、具体的にいつ頃までに実現させるのでしょうか?

回答:当社は2024年9月期から2026年9月期までの3ヵ年の中期経営計画を開示しています。中期経営計画の3年間において、売上高成長率は年平均17.7パーセント、営業利益成長率は年平均23.0パーセント、最終年度となる2026年9月期の営業利益率は17.4パーセントを目標としています。

<質問5>

質問:さらなる生産性向上に向けて新たに考えておられることはありますか?

回答:IRセミナーでご説明しました衣装管理のセンター化やリゾート型店舗の活用などの取り組みに加えて、投資効率の高い「相談カウンター」や「地方都市型店舗」の出店、オンライン接客比率の向上等の取り組みも進めていく予定です。

<質問6>

質問:PBR1倍割れの状況を改善する対策は講じられますか?

回答:中期経営計画でお示ししている成長施策を着実に進め業容の拡大に取り組んでいくことに加えて、積極的なIR活動を行い認知度を高めていくこと、また、投資家のみなさまに当社の事業内容、成長性、事業戦略等についてより理解を深めていただけるよう取り組んでまいります。

<質問7>

質問:2026年9月期の営業利益率の達成はチャレンジングな目標なのでしょうか? 必ず達成できる数値なのでしょうか?

回答:中期経営計画の最終年度の業績目標は簡単な目標ではありませんが、各種の成長施策を着実に進め、達成に向けて取り組んでまいります。

<質問8>

質問:例えばですが、配当性向10パーセントの配当を出すことは経営戦略上かなり負担になるものなのでしょうか?

回答:剰余金の配当を含む株主還元については、成長のための投資や内部留保等とのバランスを考慮して検討することを基本方針としています。配当性向10パーセントの配当の実施は将来的には可能であると考えていますが、現在の当社は成長過程にあり、当面は内部留保を確保しつつ、事業規模の拡大や収益力の強化のための投資を積極的に行うことが、将来における企業価値の最大化と、継続的な利益還元に繋がるものと考えています。