2025年3月期決算説明

谷口方啓氏:みなさま、こんにちは。TOA株式会社代表取締役社長の谷口です。この度は、TOA株式会社の決算説明会をご視聴いただき誠にありがとうございます。

今回も、リアルタイムでの配信にてご説明します。なお、今回の内容は、2025年5月2日の決算発表に基づく情報となります。

INDEX

はじめに、本日の流れをご説明します。まず、当社の2025年3月期の決算概況について報告します。次に、中期経営基本計画の進捗と今後の取り組みについてご説明します。そして最後に、2026年3月期の業績予想と取り組みについてご説明します。

2025年3月期決算業績

2025年3月期の決算概況についてご説明します。売上高は506億2,600万円となり、前期比3.7パーセント増となりました。営業利益は35億8,900万円で、18.5パーセント増、経常利益は39億2,000万円で、5.7パーセント増、最終利益は23億6,400万円で、18.4パーセント増、となりました。

売上高は、インバウンド需要の回復や設備投資意欲の高まりに加え、為替円安の影響を受けたことで、過去最高を記録しました。利益は、販管費は増加したものの、売上高の増加に加え、原価率が改善したことが主な要因となり、増益となりました。

売上高推移

売上高について、7ヶ年の推移をご説明します。2020年3月期、2021年3月期とコロナ禍の影響を受けて2期連続の減収となるも、翌2022年3月期より4期連続の増収となっています。2025年3月期は初めて500億円を突破しました。

売上高推移(製品分野別)

製品分野別の売上高と推移についてご説明します。音響は、431億6,400万円の売上となり、2022年3月期より、4期連続の増収となっています。日本国内で業務用放送設備の販売が増加しました。

映像は、66億6,900万円で、ネットワークカメラシステムの売上が好調を維持したものの、アナログカメラのOEM販売が減少し、減収となりました。

鉄道車両は、7億7,200万円で、海外向けの売上が減少し、減収となりました。

売上高推移(セグメント別)

セグメント別の売上高と、推移についてご説明します。日本セグメントは、295億6,200万円、アジア・パシフィックセグメントは、99億9,400万円、欧州・中東・アフリカセグメントは、65億3,200万円、アメリカセグメントは、27億600万円、中国・東アジアセグメントは、18億3,000万円となりました。

国内は、2023年3月期より3期連続で増収となりました。海外は、アジア・パシフィック、欧州・中東・アフリカ、アメリカが2022年3月期より4期連続で増収となりました。

セグメント別売上高の増減

各セグメントにおける売上高の前期比増減はスライドに記載のとおりです。日本では工場や教育施設、交通インフラ施設などに向けた納入が進み、売上が増加しました。

アジア・パシフィック、欧州・中東・アフリカ、アメリカでは為替の影響もあり、増加しました。一方で中国・東アジアでは、中国の不動産不況による販売の伸び悩みもあり、減少しました。

営業利益の推移

営業利益について、7ヶ年の推移をご説明します。2021年3月期から2023年3月期までは、コロナ禍に伴う経済活動の停止、半導体・鋼材を中心とした原材料価格の高騰、物流費の高騰などの影響を受けて減少傾向でした。

しかし、2024年3月期からはこれらの状況が落ち着き、価格改定による効果も出始め、2期連続で増益となっています。

セグメント別営業利益の増減

各セグメントにおける営業利益の前期比増減はスライドに記載のとおりです。日本では、価格改定の効果を受け、原価率が改善しました。

アジア・パシフィック、欧州・中東・アフリカ、アメリカでは増収により増加となりました。中国・東アジアは、販管費の減少はあったものの、減収により減少となりました。

企業価値、経営ビジョン2030および中期経営基本計画の体系図

ここからは、現在進めている中期経営基本計画についてご説明します。

当社は現在、今期2026年3月期を最終年度とする中期経営基本計画のフェーズ2を進めています。この中計フェーズ2では、フェーズ1の取り組みを最大限発揮し、3つの重点施策により成長を加速させています。

1つ目の重点施策「地域ビジネス拡大、グローバル連携」についてです。世界5地域に根付いたマーケティング力を備え、商品ラインアップの最適化と生産・物流・エンジニアリング体制のグローバルな効率化により地域ビジネスを成長させることで、利益の拡大を図っています。

さらに、お客さまと多様な接点でつながり継続的な価値提供と付加価値の拡大を実現する「つながるビジネス」のさらなる市場浸透により、収益基盤の強化を進めています。そして、獲得した利益を新成長分野の探索・創造へと投資し、次期中計の成長エンジンをつくりあげています。

このような一連の取り組みを効率的かつ着実に推進するためには、ビジネスのデジタルシフトによる付加価値向上が必要であり、従業員のデジタル技術活用能力を高めるための人材育成に注力しています。

また、当社は事業活動を通じてSDGs達成への貢献を果たすとともに、サステナビリティに関する課題に対してプロジェクトを発足し、稼働してきました。中でも「気候変動問題への対応」と「ダイバーシティ推進」を重要課題として認識し、積極的に取り組んでいます。

これからも当社は、企業価値である「Smiles for the Public-人々が笑顔になれる社会をつくる-」の実現に向け、活動していきます。

日本セグメント

各セグメントの2025年3月期の概況と、今中計で掲げた業績目標の達成における重点市場のトピックスをご説明します。はじめに、日本セグメントについて、ご説明します。2025年3月期は、対前期比で増収増益となりました。

工場向けでは、業務用放送設備の更新需要や防犯カメラシステムなど、大規模システムを数多く納入しました。教育施設向けでは、小中一貫校や、統廃合による学校の新設が多く発生し、非常用放送設備や防犯カメラシステムを納入しました。

オフィス向けでは、首都圏を中心に、非常業務兼用放送設備などの大規模システムを多く納入しました。

交通インフラ向けでは、中四国・九州の高速道路サービスエリアやパーキングエリアに防災用屋外放送システムを納入しました。

また、大阪・関西万博の会場内で用いられる非常用放送設備やネットワークカメラシステムなどを納入しました。

日本セグメント

今期の日本セグメントにおいては、自治体向け庁舎の新築・改修案件が多く発生しており、放送設備や会議用マイクシステムの販売が増加する見込みです。

国の補助金制度「緊急防災・減災事業債」が今年度で最終年度を迎えるため、かねてより防災用スピーカーを含む緊急放送システムの提案活動を展開してきました。これらの中で、2026年3月期工期の案件を複数受注できています。

商業施設においても、大型ショッピングモールや複合施設の新築・設備更新といった需要が発生しています。高まるインバウンド需要への対応、スタッフの業務効率化などの課題に対しては、当社のアナウンス音源作成・再生サービス「アナウンスクリエーター」を導入していただくお客さまが増加しています。

当社の強みであるエンジニアリング力を活かし、音響改善や音を活用した空間演出といった商業施設の魅力向上に貢献する付加価値を提供することで、収益の拡大を図ります。

アジア・パシフィックセグメント

アジア・パシフィックセグメントについて、ご説明します。2025年3月期は、対前期比で増収増益となりました。

インドネシアでは、景気低迷に伴い小売店経由の販売が減少しましたが、下期後半にかけて回復傾向にあります。

タイでは、販売基盤の強化と基礎営業の徹底により、過去最高の売上を記録しました。商業・教育・工場・病院などの民需向けの販売が好調に推移しています。

ベトナムでは、国の経済成長に伴い建設需要が増加しています。自治体向け会議用マイクシステムの販売が継続して好調です。

このセグメントでは、自治体向けの需要を多く獲得できており、タイ、ベトナムで会議用マイクシステムの販売が好調です。さらにインドネシアでも、首都移転に関連する需要が発生しており、現地に工場を持つ当社の強みを活かし、着実に受注を獲得していきます。

欧州・中東・アフリカセグメント

欧州・中東・アフリカセグメントについてご説明します。2025年3月期は、対前期比で増収増益となりました。このセグメントでは、音声警報システム「VX-3000」シリーズを主力として案件獲得に注力しています。

ドイツでは、重点市場としている空港、鉄道駅舎、船舶などの交通インフラ向けに納入しました。

イギリスでは、交通ターミナル拠点向けに大型システムを納入しました。

アフリカでも、オフィス、自治体、商業施設などの大型案件に納入することができました。

当社は、昨年2024年9月にオランダのPA-Vox Holding B.V.社(以下、PA-Vox社)の発行済株式のすべてを取得しました。PA-Vox社は、空港施設や航空会社向けに多言語自動アナウンスコンテンツを提供する企業であり、聞き取りやすい音源の生成技術や、高品質なソフトウェアの開発能力などを強みとしています。一方で当社は空港施設向けの旅客案内放送システムを得意とし、日本において約90パーセントのシェアを有します。

この度、PA-Vox社を当社グループに加えることにより、両社の強みを活かして相乗効果を発揮するとともに、顧客基盤や販売ネットワークなどの拡大を見込んでいます。

これらによって、欧州・中東・アフリカ地域をはじめ、全世界の空港市場における事業の拡大、さらには交通インフラ市場を含む当社グループ全体の事業拡大につなげていきます。

アメリカセグメント

アメリカセグメントについてご説明します。2025年3月期は、対前期比で増収増益となりました。

アメリカでは、百貨店やチェーン店舗などに向けたBGM設備の販売が好調でした。

カナダでは、学校教室向けワイヤレスマイクシステムにおいて、想定を上回る受注の結果、バックオーダーとなりました。一方で、セキュリティ用途での「IPオーディオシリーズ」の販売は引き続き好調でした。

アメリカでは、セキュリティ、および教育市場に強い新規取引先の開拓に注力しています。カナダでも、得意とする教育市場への提案活動の強化に取り組んでおり、これらの取り組みを通じて売上拡大を図ります。

中国・東アジアセグメント

中国・東アジアセグメントについて、ご説明します。2025年3月期は、対前期比で減収減益でした。

中国では、不動産不況による販売の伸び悩みに加え、国の主導による国内生産品の優遇が強まっています。さらに、競合との価格競争が激化傾向にあり、非常に厳しい状況です。

台湾では、工場向けの販売は好調を維持しているものの、建築数減少や工期遅延により需要の谷間となっており、販売は減少しました。

香港では、自治体向け大型案件を受注し、業務放送システムを納入しました。

不調の続く中国ですが、国内生産品以外も納入が可能な大型空港の案件獲得に向けた活動を強化しています。2025年3月期においても、複数の空港に放送設備を納入しており、今期の案件も受注しています。

モンゴルで開催された空港技術セミナーでは、関係者向けにプレゼンを実施しており、お客さまとの関係構築に努めました。これらの活動を通じて着実に売上を拡大し、今期での挽回を図ります。

「つながるビジネス」による収益基盤の強化

中計フェーズ2の2つ目の重点施策「『つながるビジネス』による収益基盤の強化」についてです。今中計においては、社内各部門で蓄積してきた情報が連携できる仕組みの整備を進めてきました。

当社の商品は、長年使っていただくケースが多く、納品後も対応部署を変えながら、ユーザーや取引先のみなさまと長期的なお付き合いをさせていただいています。今回の取り組みにより、どのお客さまが、どの商品を、どのようにご利用されているのか、といったお客さまにまつわる情報を迅速に入手できるようになり、お問い合わせがあった際にはどの部署においても最適なサポートが提供できるようになりました。

従来提供しているリモートメンテナンスサービスや遠隔見守りサービスなど、継続的にお客さまをサポートするビジネスにおいても、対応の質やスピードの向上に大きく寄与するものと考えています。

また、お客さまとの多様な接点を通じて情報が蓄積されていくと、集計機能や分析機能の精度も向上していきます。故障があって初めて対応するのではなく、適切なタイミングでのリニューアルなど、お客さまの潜在ニーズを掘り起こす活動で付加価値の高いソリューション提案にもつなげていきます。

成長に向けたデジタルシフトの推進

成長に向けたデジタルシフトの推進についてです。今年度、2025年4月1日にDX本部を新設しました。これまで部門ごとに進めてきた業務の自動化・効率化について、DX本部が全社的に統制することで、デジタルシフトの加速を強固に推進します。デジタルシフトを通じて、業務効率の向上にとどまらず、提供価値を最大化するTOA独自の仕組みづくりを追求していきます。

まず重点的に対応するのは、従来取り組みを進めている、デジタルマーケティングと、サプライチェーンのマネジメント拡大です。デジタルマーケティングにおいては、世界の市場においてデマンド創出を進めるとともに、集客ノウハウを一元管理し、効果的な施策を迅速に展開してきました。

サプライチェーンのマネジメント拡大においては、デジタルツールを駆使し、商品ラインアップの最適化や販売計画に基づいた生産計画を実施しているところです。

これらの取り組みを加速すべく、新たなデジタル・オペレーションの実践と定着化、そして環境変化に適応したオペレーションの進化に取り組んでいきます。まずはこれらに集中して取り組み、今後は段階的に対応範囲を拡大していく予定です。

新成長分野の探索・創造

中計フェーズ2の3つ目の重点施策「新成長分野の探索・創造」についてです。これまでご紹介してきた重点施策を通じて得た利益を投資し、次期中計以降の成長エンジンをつくりあげていく取り組みです。

スライドに記載のとおり、音や映像の技術を用いて住みよい街づくりの支援や、ドローンによる新しい放送の在り方など、さまざまな分野で世の中のコミュニケーション課題の解決に向けた取り組みを進めています。

また大阪・関西万博においては、新たな情報伝達の仕組みづくりに取り組んでいます。

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けた取り組み

当社は、大阪・関西万博の運営参加ブロンズパートナーです。今回の広大な万博会場における非常時の避難指示、熱中症リスクへの注意喚起など、必要な情報を、必要なタイミングでお届けすることで、安全・安心な会場運営に寄与します。

会場を彩るBGMや、会場全体を用いたイベントの演出にも活用されています。当社が提供するソリューションが、エリアごとのコンセプトや周辺環境に合わせた演出を可能にし、来場者への特別な体験の提供に役立っています。

当社は、万博会場を「未来の街」のモデルと捉え、今回の取り組みで得られた知見を活かし、未来社会への実装にチャレンジしていきます。

人材育成に関する取り組み

人材育成の取り組みについて、トピックをご紹介します。デジタル技術活用人材の育成では、スキルアップ講座などを活用し、各自がデジタルスキルの適性や現状を理解し、それぞれ自分に合わせたスキルアップを行いました。今後は、実際の業務への活用や将来のキャリアビジョン形成のために役立てていきます。

エンゲージメント向上では、ダイアログ活動を充実させ、従業員の自主的な能力目標設定と習得の支援を実施し、その効果を実感してきています。

ダイバーシティの推進では、仕事と育児の両立、女性活躍の推進など、誰もが働きがいのある企業としての環境を整えていきます。

企業価値向上に向けた財務方針

企業価値向上に向けた財務方針として、本中計におけるキャッシュ・アロケーションをご説明します。結論から申しますと、2025年3月期までの実績において、これまでは計画どおりの進捗です。

まず原資の確保として、営業キャッシュフロー300億円以上、保有金融資産179億円を活用し、さらに必要に応じた借り入れを行っていくこととしました。

これをもとに本中計では、既存事業継続のための投資として50億円から60億円の計画に対し、昨年度までに42億円の実績です。

そして成長投資としての研究開発投資は150億円から160億円の計画に対し、昨年度までに120億円、IT・デジタル関連投資に15から20億円の計画に対し、昨年度までに13.5億円です。加えて、先ほどご説明したPA-Vox社の株式取得をはじめ、新成長分野創造やグローバル拡大に向けた戦略投資を機動的・積極的に実施しています。

株主還元については50億円から60億円の計画に対し、これまで株主価値向上に向けた還元をすでに70億円実施しています。

当社は今後とも戦略の成果と財務規律のバランスを勘案し、投資と還元を実行することで、資本生産性の向上を図っていきます。

研究開発費・設備投資・減価償却費の推移(連結)

研究開発費、設備投資、減価償却費の推移についてご説明します。2025年3月期の実績、および2026年3月期の計画は、スライドに記載のとおりです。

設備投資については、2023年3月期に、工場の増築や機械装置の導入のほか、開発、生産、販売など各機能の情報連携を行うデジタル基盤の整備に注力しました。

業績予想

今期2026年3月期の業績予想、および取り組みについてご説明します。

今期、2026年3月期の業績予想はスライドに記載のとおりです。世界5地域セグメント、全グループ合計で、売上高545億円、営業利益45億円、経常利益47億円、最終利益27億5,000万円を予想しています。

売上高については、まずは市況好調の日本、アジア・パシフィックセグメントが引き続き伸長すると見込んでいます。近年苦戦している中国・東アジアセグメントにおいては、中国における空港案件の受注と、台湾・香港での売上拡大を図ります。

利益については、掲げた売上高の予想を達成するとともに、高付加価値のソリューション提供による収益拡大、商品ラインアップの最適化や価格改定などによる原価率低減、デジタルシフトによる生産性向上などを推進することで達成します。

予想配当

配当についてご説明します。当社では「経営ビジョン2030」の実現に向けた持続的な成長を目指し、将来の成長につながる事業への投資を基本としつつ、株主さまへの利益還元について方針を強化しています。財務規律のもと安定した配当の向上をはかるとともに、安定配当40円に業績を加味して、連結配当性向45パーセントを目安に決定します。

2026年3月期の業績予想における最終利益は27億5,000万円となっており、安定配当40円に業績連動配当金2円を加えた42円の配当を予想しています。配当性向は45.9パーセントとなります。

株主価値向上につながる資本政策については、引き続き機動的に検討・実施していきます。

株式市場との対話について(2026年3月期のIR活動方針および定量目標)

株式市場との対話についてご説明します。当社は株主、投資家のみなさまに、業績、財務状況、将来ビジョンについて早くわかりやすい情報開示に努めています。

具体的には、機関投資家のみなさまと個別面談の実施や決算説明会の開催、また個人投資家のみなさまへの説明会などを年度ごとに計画し実施しています。2025年3月期の実績と2026年3月期の計画はスライドの表のとおりです。

今後も投資家のみなさまとの対話機会を積極的に創出することで、経営の透明性を高めるとともに、投資家のみなさまのお声を経営課題の解決に役立てていきます。

以上をもって、2025年3月期決算、および中期経営基本計画のご説明とします。ご視聴いただき、誠にありがとうございました。