会社概要・社長紹介

影山直司氏(以下、影山):ピックルスホールディングスの会社説明会をご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。本日は、会社の事業内容と2023年2月期の決算についてご説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

はじめに、会社概要についてご説明します。当社は、昨年9月にピックルスコーポレーションの持株会社として設立されました。東証プライム市場に上場しており、証券コードは2935になります。

簡単な自己紹介をさせていただきます。私は1984年11月に東海漬物から出向し、ピックルスコーポレーションに入社しました。1999年5月に取締役に就任し、その後、常務取締役、専務、副社長を経て昨年5月に代表取締役社長に就任しました。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):ご質問を交ぜて進めていきたいと思います。まず、筆頭株主である東海漬物との関係を教えてください。

影山:ピックルスコーポレーションは、もともと東海漬物の100パーセント子会社として、東海デイリーという日配品を扱う会社として設立されました。

坂本:現在は東海漬物が株主として残りつつ、お互いに事業を行っているかたちでしょうか?

影山:そのとおりです。東海漬物はもともと親会社でしたが、当社が事業を拡大してジャスダックや東証2部、東証1部に上場する中で、出資比率を下げていただきました。現在は、東海漬物は当社の仕入先の一部という状態です。

坂本:お仕事はまだ協業することもあるということですね。

ピックルスホールディングスは

影山:当社グループの経営方針です。「地球環境に配慮した企業経営」「従業員のモラルアップと安全・健康を第一とした職場作り」「安全でおいしい製品を作るための品質管理」の3つを掲げています。

「ご飯がススムキムチ」が最近の成長を牽引!

影山:当社グループの主要会社である、ピックルスコーポレーションの沿革です。1977年に会社が設立されると、すぐにセブン‐イレブンと取引が始まりました。当時のセブン‐イレブンは、まだ300店舗くらいの規模だったと思います。

その後、イトーヨーカ堂との取引開始や、セブン‐イレブンが全国に店舗を広げていく中で、それに対応するかたちで全国に自社工場やグループ会社を設立して、北海道から九州まで製造・物流体制を構築してきました。

さらに、2009年に「ご飯がススムキムチ」を発売しました。このキムチの拡大に伴い、全国のスーパーとの取引が拡大してきています。

グループ体制について

影山:当社グループの体制です。各エリアにある工場で主に漬物の製造・販売を行っています。漬物以外にも、商品の企画・開発、仕入販売、調味料の製造・販売、農業事業、外食・小売事業など、幅広い事業を展開しています。

ご存知の方も多いと思いますが...

影山:ご存知の方も多いと思いますが、現在は「ご飯がススムキムチ」が人気商品になっています。こちらは従来のキムチよりも甘口でフルーティで、これまでキムチを食べなかった女性の方やお子さまにも好評いただいています。

坂本:2009年に「ご飯がススムキムチ」を発売したとのことですが、開発当時の経緯やマーケット環境、販売が伸びた状況などを教えてください。

影山:キムチはやはり男性が好きと言いますか、とても辛くて嗜好品だったのではないかと思います。しかし、当社に入社して1年半くらいの開発の社員が、「会社が作っているキムチが辛くて食べられない」ということで、「女性でもお子さまでも食べられるようなキムチがあってもおもしろいのではないか」と開発した商品です。

社内では「こんなキムチは売れない」と言われていましたが、テストで販売してみたところ好評を得て、今のかたちに広がってきました。

品目別売上高

影山:連結売上高は、2022年2月期で450億円です。その内訳についてご説明します。

浅漬・キムチで41.9パーセント、ナムルやサラダなどの惣菜で22.8パーセント、福神漬などのふる漬は1.1パーセントです。そして、当社では製造できない梅干や沢庵のように日本全国各地の専業メーカーが作る漬物を仕入れたり、韓国からのキムチの輸入、ドレッシングなどを含めた仕入商品が34.2パーセントとなっています。

漬物業界について

影山:漬物業界についてご説明します。現在の市場規模は3,160億円と言われています。当社の売上高のシェアは14.2パーセントです。市場規模は、以前は5,000億円くらいあったと言われています。しかし、お米の消費の減少とともにマーケットが縮小してきて、今はこのような状況となっています。

それでも、漬物業界で売上高が100億円を超える企業は5社あります。漬物業界で上場している会社は当社のみです。

坂本:上場している会社は御社だけということですが、スライドに記載の会社や10位以下の会社で、同族で行っていたり、世代交代でうまくいっていない会社があると思います。そのような会社をM&Aすればシェアが拡大すると思いますが、M&Aを考えていますか?

影山:後継者不足などで倒産・廃業が多くなっています。以前は組合に2,000社ほど加盟していたということですが、今は約800社と業界の中でも企業数が減ってきています。そのような中で、ピックルスホールディングスと一緒に事業を行っていく会社も出てくるのではないかと思います。

高成長の背景 食の安全・安心への取り組み

影山:会社の高成長の背景についてです。まずは食品の安全・安心への取り組みです。浅漬は、契約栽培の国産原料を使っています。また、「FSSC22000」などの食品安全の規格の活用やフードディフェンスを行いながら、安全・安心な商品の供給に努めています。

高成長の背景 全国を網羅した生産・物流体制

影山:先ほどお伝えしましたが、現在、北海道から九州までの全国19拠点で製造・販売を行っています。このネットワークを持っているのは、漬物業界の中でも当社のみです。

坂本:食品会社でも、特に生鮮系を扱う会社は全国に工場が多数点在しているパターンが多いです。

大きな工場で集約して作ると意外と効率も良いのではないかと思う反面、日配の仕事を考えると工場を散らしたほうがよいのかと思います。工場の散らし方と生産のイメージを教えてください。

影山:当社は日配品の製造ということで、工場は365日稼働しています。惣菜は作ってから2日しか日持ちしません。作り立ての商品をお客さまに届けるため、お客さまのそばで商品を作っており、出来立てをお届けすることが逆に強みになっていると思います。

坂本:日配の惣菜を作る工場と漬物を作る工場は分かれているのですか?

影山:基本は、漬物と惣菜を1つの工場で併せて作っています。ベンダー機能ということで、それぞれの事業所で全国のメーカーから仕入れも行い、それぞれがほぼ同じような事業を北海道から九州まで行っているかたちです。

坂本:東西で味の嗜好が若干異なることもあると思いますが、そのあたりは調整しているのでしょうか?

影山:エリアごとに商品の開発メンバーもいますので、地域に根差した味と言いますか、地元の調味料も使っており、味付けも多少変わっています。

坂本:そのあたりが、工場が全国に点在しているメリットの1つでもあるというわけですね。

高成長の背景 メーカー・商社機能を併せ持つ「ベンダー機能」

影山:先ほどお伝えしたベンダー機能についてです。当社はメーカーとして浅漬やキムチ、惣菜を作っていますが、それ以外に日本中の梅干し専門のメーカー、沢庵専門のメーカー、奈良漬専門のメーカー、ラッキョウ専門のメーカーなどから商品を仕入れています。

漬物売り場全般を当社が提案できるかたちで、お店ごとの仕分けも行いながらお届けしています。

販路は、量販店が76.5パーセント、コンビニが14.9パーセント、外食が8.6パーセントというイメージです。

坂本:よく聞かれる質問だと思いますが、キムチは白菜が主原料だと思います。「白菜の生産状況によって価格が乱高下する」というニュースをよく目にしますが、それに対して御社は契約農家で栽培する体制を整えていると思っています。白菜の仕入れに対する契約農家の割合を教えてください。

影山:白菜の仕入れは、契約農家からがほぼ100パーセントです。北海道はなかなかできませんが、それ以外のエリアは冬に白菜を作っています。工場のそばで白菜を作っていただき、工場ごとに契約して仕入れているかたちです。

台風などの天候の関係で大きな被害があり、原料が調達できないことに対するリスク分散も含めて行っています。

高成長の背景 環境保全活動の推進

影山:現在、環境についていろいろと言われていますが、廃棄物が適切に処理されているかを現場でチェックしたり、最近では太陽光発電のパネルを工場に導入するなど、いろいろと取り組んでいます。

地球温暖化の面では、オゾン層を破壊すると言われているフロンの問題があります。今までは代替フロンなどの冷媒を使っていましたが、脱フロンということで、環境負荷の少ないCO2冷媒を取り入れた空調機器に更新しました。さまざまな活動を行いながら、環境にやさしい企業グループを目指していきたいと思っています。

今後の戦略

影山:これからの当社の戦略を4つご説明します。まず製品開発強化については、これから惣菜の開発が中心になります。販売エリアの拡大では、関西以西を広げていきたいと考えています。販売先の拡大では、現状の売り場以外のところへも商品を紹介していきます。新規事業については、BtoC事業や農業に参入しています。

商品開発 1.キムチ製品-1-

影山:1つずつご説明します。まず、商品開発についてです。当社で一番人気の「ご飯がススムキムチシリーズ」は、レギュラー、辛口、カクテキがあります。これまでも売上を増やしてきましたが、コロナ禍の2021年2月期にキムチの乳酸菌ブームがあり、特需のようなかたちで2021年2月期、2022年2月期は売上を大きく伸ばしました。

その反動もあり、今は元に戻ってきていますが、コロナ前の2020年2月期の売上高を今期は超えられるのではないかと考えて進めています。

増井麻里子氏(以下、増井):乳酸菌のブームは、まだ続いているのでしょうか?

影山:腸内環境を整えるという意味で、定期的にブームが来ます。2年ほど前にテレビ番組で林修先生が「キムチを食べるとよいですよ」とおっしゃったことがあったと思います。このように見直される部分もあると思いますし、定着した部分もありますので、キムチの需要はまだまだ増えていくのではないかと思います。

販売促進活動

影山:キムチの販売促進活動として、2月26日を「ご飯がススムキムチの日」と制定しています。この日に合わせて2月6日から3月19日の期間は、「ご飯がススムキムチ」「ご飯がススム辛口キムチ」「ご飯がススムカクテキ」をそれぞれ20グラム増量するキャンペーンを行いたいと思っています。

昨今、食品の値上げが話題になっており、「ご飯がススムファミリー」のススム君、お父さん、お母さんがはちまきをしながら、お客さまの生活を応援するキャンペーンを行いたいと考えています。

今年の冬は白菜や大根が豊作です。たくさん野菜を食べていただきたいということで、キャンペーンを行いたいと思います。

商品開発 1.キムチ製品-2-

影山:独自の乳酸菌「Pne‐12」を使用した機能性表示食品を販売しています。乳酸菌「Pne‐12」とフラクトオリゴ糖はBMIが高めの方の体脂肪を減らす効果が報告されています。これからさらに健康志向に対応した商品の開発を進めていきたいと思います。

商品開発 2.浅漬製品-1-

影山:メインの浅漬製品についてご説明します。「毎日食べたい浅漬」をブランドコンセプトに掲げ、定番品や季節ごとに野菜のおいしさを提案する商品、おつまみに特化した商品といったラインナップを進めています。

商品開発 2.浅漬製品-2-

影山:「手軽に健康・発酵」ということで、乳酸菌などを使った本格的なぬか漬や、減塩、食物繊維・たんぱく質が摂れる健康志向を軸にした商品を開発しています。

調味料やスイーツの代わりになる創作的な商品を含めて、これから提案していきたいと思います。また、無添加・無着色のようなこだわりの1品となる商品のラインナップを増やしています。

商品開発 2.浅漬製品-3-

影山:この冬場は白菜をたくさん食べていただきたいとお話ししましたが、300グラムを超える大容量の商品を開発しました。袋入りの「大入生姜白菜」「大入焙煎ごま白菜」といった商品を提案しています。

浅漬のまま食べるだけではなく、料理にも使っていただきたいと考え、レシピをつけて販売しています。この商品を鍋に入れて、お肉などの具材を入れると、つゆ要らずでそのまま食べることができます。

生の白菜で鍋を作るよりもコクがあっておいしいものができますので、みなさまに試していただきたいと思います。ホームページでもご紹介していますので、よろしくお願いします。

坂本:非常におもしろい商品で、私も買ってみたいと思いました。売上があまりないメーカーの商品もずっと陳列されていることがあり、食品は意外と味の嗜好に関して保守的な部分があると思っているのですが、漬物における嗜好のトレンドはあるのでしょうか?

影山:先ほどお話ししたキムチブームの他にも、ぬか漬ブームといった流行があるため、このようなトレンドに合わせた商品を開発していく必要があると思います。また、巣ごもり需要で家庭で料理する方もいるため、ぬか床の商品も展開しています。このように、需要に合わせた商品を提案していきたいと考えています。

環境対応として、環境にも優しい商品も製造しています。ソーセージの巾着型包装のように、漬物も巾着袋に入っているものがあります。当社の従来の商品はカップ型や巾着型の包装が多かったのですが、今では平袋やスタンドパックタイプの商品を展開しています。

従来よりもプラスチックの使用量が半分以下になり、環境にも優しい商品のラインナップとして進めています。

惣菜業界について

影山:惣菜業界についてご説明します。日本チェーンストア協会調べによると、スーパーの惣菜市場が伸びています。コロナ禍でも需要が伸びましたが、単身世帯の増加や高齢化、女性の社会進出による影響もあると思います。時短メニューとして、今後も需要が伸びていくと考えています。

また、家飲みをする方が増え、家庭でおつまみになる商品がこれから伸びていくため、惣菜業界は成長していく分野だと思っています。

商品開発 3.惣菜製品

影山:惣菜製品の商品開発についてご説明します。当社では、浅漬とキムチに続く事業の柱として惣菜製品が大きく伸び始めています。特にナムルセットなどが好評で、家飲み需要を見据えたおつまみ商品の開発をさらに進めていきたいと思います。売上も増えてきており、今期は100億円、旧基準では106億円を超えてきています。

販売エリア拡大:地域別売上高

影山:販売エリアについてご説明します。スライドの上の表は地域別人口比率を示したグラフです。西日本エリアには人口の約38パーセントがいますが、当社の地域別売上高割合では西日本エリアは約25パーセントしかありません。

西日本エリアには、九州の佐賀工場や姫路の手柄食品など新しい工場やM&Aした会社があるため、これらを活用しながら西日本エリアでの売上を拡大していきたいと思っています。

坂本:日本国内では西日本の拡大に取り組むということですが、海外進出は考えていますか?

影山:今後、日本だけでは胃袋も小さくなるため、海外へ展開していきたいと思います。ふる漬か、浅漬か、惣菜か、キムチか、また違うものかもしれませんが、海外に向けて何ができるかを検討中です。

坂本:基本的にはアジアから展開するのでしょうか?

影山:そうですね。まずは東南アジアからになると思います。

坂本:自社農園について、「白菜は需要を満たせる」というお話でしたが、今後の需要増や取引先の増加、西日本のシェア拡大を進める上で、白菜の生産を拡大していくのでしょうか? それとも提携で継続するのでしょうか? 展開のイメージを教えてください。

影山:埼玉県で自社農園として畑を借りることができたため、小松菜やサツマイモを作っています。従来契約していたものを自社で調達しようと考えているのではなく、新しい作物への挑戦と考えています。そういったことを考えると、各エリアで調達もほ場も増やしていくことになると思います。

販売先拡大:既存分野以外の売場への商品展開

影山:売場についてご説明します。スライドの図はスーパーマーケットの売場のイメージです。従来の漬物や惣菜の売場だけではなく、納豆や豆腐売場用の商品、魚売場用の商品も開発していきたいと思っています。

2022年はサツマイモを焼きイモにして冷凍食品売場で販売し、大好評となりました。これを広げていきたいと考えています。

新規事業-1-

影山:新規事業についてご説明します。現在、外食事業および小売事業として、「OH!!!」という施設を営業しています。事業を開始して約2年が経っており、レストラン、カフェ、セレクトショップ、体験棟を展開しています。

「八幡屋」というセレクトショップでは発酵食品を扱っています。体験棟「パリシャキ研究所」では、ぬか漬やキムチを作る体験ができます。いろいろなイベントを行って、お客さまを集めていきます。

「OH!!!」で扱っている商品をポップアップストアとして展開し、首都圏各地でテストしたいと思っています。お客さまの目に触れる機会を増やし、ここで売れる商品ができれば、店舗展開して販売することを進めていきたいと思います。

新規事業-2-

影山:EC事業では、2022年9月にサイトのリニューアルを行いました。「OH!!!」のサイトとECサイトを統一した複合サイトを作りましたので、当社が新しく取り組んでいく開発商品の提案も一緒にできるように進めていきたいと思っています。

新規事業-3-

影山:先ほどご紹介したピックルスファームについてです。

坂本:先ほどうかがった自社農園ですね。

影山:埼玉県で事業を開始しました。自社で作るのなら循環型農業など、持続可能な農業への取り組みを行いたいと考え、JGAPに取り組んでいます。

今後は契約農家の方とJGAPを進めていきたいと考えています。当社の仕入れ担当者の約38名が指導員の資格を取得しており、農家の方と相談している状況です。農家の方も高齢化が進んでいるため、収穫作業の委託も請け負っていきたいと思います。

生産面等の取り組み

影山:生産面の取り組みについてご説明します。野菜調達の見直しについては、全国各地で契約栽培を進めていきます。省力化機械の導入や、先ほどお伝えしたカップから袋に容器を見直すことで原料資材を減らしていくことも進めていきたいと思います。

SDGsの取り組み紹介

影山:SDGsの取り組みについてです。子ども食堂への支援やオリジナルエコマークの導入を行っています。これらの取り組みについてホームページなどで紹介していますので、ぜひご覧ください。

業績動向(2023年2月期第3四半期実績)

影山:業績についてご説明します。当社は11月までが第3四半期になります。売上高は312億円、営業利益は14億円となりました。

2023年2月期から収益認識に関する会計基準が新しく適用され、今まで販管費に含まれていた販売先の配送センター費や物流経費を売上高から控除しています。加えて、値上げによる消費者の節約志向の影響を受けて、売上高が減っている状況です。

業績動向(2023年2月期計画)

影山:2月に決算となりますが、売上高は400億円、営業利益は18億円と、減収減益を予想しています。今後は既存の漬物以外の事業分野の拡大を進めます。また、持株会社の体制になっているため、新事業に取り組むことで協業先を増やし、グループの拡大を図っていきたいと思います。

坂本:収益認識に関する会計基準の影響もあると思いますが、売上高が落ちているのはコロナ特需があったからでしょうか? 利益ベースの落ち込みは、資材や野菜の高騰が要因でしょうか? このあたりのからくりを教えてください。

影山:減収については、消費者の財布のひもが締まっていることも影響しています。主食にはお金を使う必要がありますが、それ以外はある程度購入を控えていることが減収につながっていると思います。また、減益は減収によるものだけではなく、資材の値上げが利益面に影響を与えていると思っています。

株主還元

影山:株主還元についてご説明します。今期、持株会社化したことで、配当金は記念配当の2円を加えた22円を計画しています。まだまだ小さな会社ですので、M&Aの案件や新工場の予定もあり、内部留保を確保しながら安定した配当を行いたいと考えています。

また、2022年12月に自己株式の取得を決議しており、取得価格の総額が5億円、株数が45万株を上限に設定して進めている状況です。

株主優待制度を実施

影山:株主優待制度を実施しています。年1回、2月末に当社株式100株以上を保有する株主を対象に、自社商品1,500円相当または寄付を選択していただいています。

質疑応答:商品開発について

坂本:「御社の商品開発部はすばらしいと思います。開発の裏側やこだわりがあればお聞きしたいです」というご質問です。

影山:得意先のコンビニや量販店ごとに欲しいものが異なるため、開発担当者と営業担当者が一緒になって商品開発しています。

そのため、ナショナルブランド商品をたくさん売っていくこともありますが、得意先ごとの商品もけっこう多く、プライベートブランド商品を受託することも非常に多いです。

質疑応答:物価上昇による影響について

坂本:物価上昇による影響について、仕入れや輸送、販売など、どの部分に大きく響いたのかを教えてください。また、来期にその影響は解消するのか、値上げで対応するのかなどを含めた展望があればお願いします。

影山:「ご飯がススムキムチ」については、今回まだ値上げをしていません。「ムダ・ムリ・ムラ」の削減や省力化など、会社の中でできることは行っていこうと考えています。また、今回は野菜の原料がある程度安定していますので、この春までのキャンペーンも十分に活用したいと思っています。

ただし、今後ずっと値上げせずにいけるかというとそうではなく、仕入れの見直しも行っていますが、どこかで値上げする可能性はあると思っています。

また、浅漬関係は季節ごとに素材が変わるため、その時々の野菜の単価に合わせてパッケージや量目なども変えながら、ある程度の値上げ分は吸収していきたいと思っています。

一時、売上高が減った部分がありますが、現在は戻りつつあります。キムチは昨年11月にキャンペーンを行ったおかげで、対前年で2桁増くらいまで回復しました。2月や3月に弾みをつけたいと思っていますので、売上は可能な限り元に戻していければと思っています。

増井:惣菜の値上げについてはいかがでしょうか?

影山:例えば、冬場はきゅうりが高くなるため、きゅうりの品物は同じ値段では売れません。そのため、季節に合わせた価格として、量目などの規格を変更します。調味料や包材などのいろいろなコストも合わせつつ、「冬場は何グラムでいくら」「夏場は何グラムでいくら」と調整していきたいと思っています。

質疑応答:配送について

坂本:「配送は自社配送でしょうか? それとも委託でしょうか?」というご質問です。

影山:委託でお願いしており、得意先の配送センターへ持っていきます。今は自社だけで運んでいますが、いろいろな方に「一緒に運びませんか?」と声かけしており、共同配送も検討しています。

質疑応答:契約農家との仕入価格の設定について

坂本:「契約農家との仕入価格は固定なのかを教えてください」というご質問です。

影山:農家の方に「100個作りましょうね」とお願いしても、実際には100個ちょうどできるわけではありません。たくさんできる時もあれば、少なくなってしまう時もあります。

たくさんできている時は相場が下がり、少ない時は価格が上がるため、すべて事前に決めた価格で進めるのではなく、多少幅を持たせて値段を調整しています。農家の方には、たくさんできた時には若干価格を下げていただきつつ、量を使っていくことでご相談しています。

質疑応答:商品の味の均質性について

増井:「工場によって契約農家が違うということは、白菜などの味も変わるのでしょうか?」というご質問です。

影山:「この品種を植えてください」ということではなく、その土地にあった野菜を植えています。野菜の品種も違うため、必ずしも同じ味ではないかもしれませんが、基本的に調味をしつつ、最終的には同じ味に仕上げています。

質疑応答:若者への漬物の販売について

坂本:「ご飯がススムキムチ」は「けっこう若い方も食べるよ」というお話がありましたが、「若者は漬物をあまり食べないイメージがあるのですが、実際の販売はどうなのでしょうか?」というご質問をいただきました。

影山:従来は、漬物売場で袋に入って売っていた白菜漬を包丁とまな板を使って切って食べていましたが、今私どもが作っている浅漬は、手軽に食べていただけるように、白菜や胡瓜、茄子、野沢菜などをトレーに盛り合わせて惣菜売場で売っています。

食べたい時に食べたいだけの量を買っていただくかたちで、若い方にも食べていただきたいと思っています。

その中でも、今はぬか漬の盛り合わせが好評です。小さな頃に漬物を食べる習慣があれば、大人になってからまた食べたいと思うかもしれませんが、「おばあちゃんやお母さんが漬けてくれた」ということはだんだん減っています。

可能な限りそのような昔からの日本の食文化を、スーパーマーケットやコンビニ経由であっても残していただき、大人になってもお米文化を維持していっていただきたいと思います。

質疑応答:西日本への展開について

坂本:「西日本への展開や課題について、地域による商品やニーズの特徴を教えてください」というご質問です。

影山:西日本は後発で進出したため、売場にはすでにいろいろな商品がある程度並んでいました。そのため、漬物を扱っていないところに展開しようと考え、ドラッグストアに積極的にアプローチしました。

坂本:確かに最近は日配品も食品も増えているドラッグストアがあり、干物も含めて半分くらいが食品売場になっています。

影山:西日本では特にドラッグストアに非常に注力し、そこから売上を拡大させ、それが関東のドラッグストアにも広がってきています。今はその延長で、量販店などでも売上を上げていく方向で進めています。

質疑応答:社長の思い入れのある商品について

坂本:「社長の個人的な思い入れのある商品は何ですか?」というご質問です。

影山:最初、私どもは浅漬を作っていない会社でした。しば漬や沢庵などをカップへ詰めて売っている会社だったのですが、1982年から浅漬の製造を始めました。

覚えている方はいないかもしれませんが、当時セブン‐イレブンで浅漬がブームになった時があり、セブン‐イレブンのコマーシャルで浅漬が紹介されました。全国に商品を供給するかたちで製造したのですが、その時の商品に思い入れがあります。

実を言いますと、三十数年前の製造方法がまだ会社の中に残っており、今はそれではだめだと思っています。新しい社員には「まったく違う技術で新しい味付けをして、商品を作りなさい」と言って商品作りさせています。

質疑応答:浅漬の販売シェアについて

坂本:市場における浅漬のシェアが毎年伸びているため、御社の中での販売シェアも浅漬が増えているのでしょうか?

影山:浅漬の売上も増えてはいるのですが、約3,160億円というマーケット全体の中で、浅漬の市場シェアは約700億円しかありません。それをどんどん増やしていくよりも、今お話しした惣菜を増やしていくことを考えています。

また、先ほどお伝えした冷凍食品は今一番売場が拡大しており、いろいろな冷凍食品が増えています。ロスもないため、先ほどの焼き芋だけではなく、浅漬や惣菜の冷凍食品なども開発し、新しい売場を展開していければと思っています。

坂本:おもしろいですね。確かに浅漬の冷凍食品なら、お弁当に入れたら勝手に解けますので、そのまま使えそうです。

質疑応答:鍋つゆいらずの浅漬について

増井:先ほど、鍋つゆいらずの商品についてお話がありましたが、これは鍋つゆコーナーなどにあるのでしょうか?

影山:チルド商品ですので、漬物売場にあります。「騙されたと思ってやってみて!!」というキャッチコピーをつけて、パッケージには「お水を100ミリリットル加えて、お肉を入れて鍋で煮てみてください」と記載しています。一度試してみてください。

先ほどもお伝えしましたが、生の白菜で鍋をするのとはまた違ったおいしさがあります。ごまラー油鍋や生姜みぞれ鍋というかたちでご提案していますので、見かけたらぜひ試していただきたいと思います。

増井:漬物を入れる鍋は中華料理店などでけっこうありますが、おいしいですよね。

影山:「ピックルス」という社名ですが、酢漬は苦手な方がけっこう多いです。なかなか広がっていかないのですが、食べやすいものを提案していきたいと思っています。

冬場はおせちにも使われるなますが非常に人気ですが、ただ酸っぱいだけではなく、地区ごとに穫れる柑橘を使った商品もあります。「ゆずなます」や「日向夏なます」という商品など、果汁や果肉、皮を使ったものも提案しており、いろいろな商品がエリアごとに開発されています。

質疑応答:中京圏への展開について

坂本:「中京圏も発祥の地ですが、販売量が少ないようです。拡大する施策はあるのでしょうか?」というご質問です。商圏の問題もあるかと思いますが、いかがでしょうか?

影山:中京圏も人口のわりには少ないです。会社は設立からすぐに埼玉県に移転して動いているため、中京への進出も後発でした。現在、中京の工場も生産のキャパシティに余裕がなくなってきています。中京の工場から北陸へも商品を供給していますが、かなり距離もあるため、関西に新工場を作りたいと考えています。

関西や北陸関係の商品を供給していくために、もう少し生産の部分を確立していきたいため、滋賀県あたりで工場用地を探しています。2年か3年のうちには、建設を始めたいと考えています。

質疑応答:工場の耐用寿命について

坂本:工場は建設後も長期間使用できるのでしょうか? 中のメンテナンスは当然行わなければいけないと思いますが、償却が終わっても長く使えるパターンもあります。食品工場はいかがでしょうか?

影山:リニューアル工事はもちろん必要ですが、30年、40年経った古い工場でもある程度使えます。

ただし、先ほどお伝えしたとおり、設備については約30年前に開発した作り方ではなく、今後はいろいろな仕組みを導入し、より省力化できる工場に改造していきたいと思っています。若い人がどんどん入ってきていますので、その人たちが今新しい仕組みで、作り方も変えていくことを進めている最中です。

質疑応答:低温物流のコストについて

増井:低温物流は物流会社がけっこう力を入れていますので、高付加価値な物流となっていますが、コストはやはり高いのでしょうか? 倉庫に入れたり運ぶことも含めると、けっこうなコスト増になるのではと思っています。

影山:先ほどお伝えした私どものベンダー機能では、店舗は商品を1個単位から欲しい数だけ発注できます。

例えば、他の漬物メーカーが10個入りの商品を作ったとして、それを私どもは箱で買い、1個ずつ小分けにし、店舗から「1個ずつ欲しい」という注文があれば、1個ずつピッキングします。店舗は欲しい数だけ確保できるため、非常に喜ばれています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:海外販売展開の予定について教えてください。

回答:今後の成長に向けて海外展開は必要になると考えています。海外で何を販売するかは検討中ですが、今期、試験的にピックルスファームで栽培したサツマイモを東南アジア向けに輸出しています。

<質問2>

質問:挑戦的ですが、これまで使っていない野菜で漬け物を開発しないのでしょうか?

回答:当社ではオクラやブロッコリーの浅漬など、漬物ではあまり使われない野菜を使用した商品の開発も行っています。また、ピクルスにチーズを組み合わせることで、漬物を食べてタンパク質を摂ることができる商品もあります。今後もさまざま素材を使った商品の開発を行っていきます。