第44回 個人投資家向けIRセミナー
宮下尚之氏(以下、宮下):株式会社ワンキャリア代表取締役社長の宮下と申します。本日はご参加いただき、ありがとうございます。今回は、個人投資家のみなさまに当社の第3四半期の決算説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
ミッション
宮下:当社は「人の数だけ、キャリアをつくる。」をミッションに掲げています。
課題感としては、「仕事選びに関するあらゆるデータがない」というところから来ています。仕事選びに関するデータを、我々は「キャリアデータ」と呼んでおり、当社がキャリアデータを公開することにより、誰もが自由に働き方を選択できる社会を目指しています。
個人の就職活動のパラダイムシフト
宮下:ミッションの実現によって起こる変化についてご説明します。まずは、個人の就職活動についてのパラダイムシフトです。
1つ目は「『点』の就職活動から、『線』の就職活動への変化」2つ目は「『高コスト』な就職活動から、『低コスト』な就職活動への変化」、3つ目は「『一律』な就職活動から、『選択可能』な就職活動への変化」です。
企業の採用活動のパラダイムシフト
宮下:人材採用をする企業の採用活動におけるパラダイムシフトです。1つ目は「『選ぶ』採用から、『育てる』採用へ」、2つ目は「『企業最適』な採用から『求職者最適』な採用へ」、3つ目は「『画一的』な採用から『個別最適』な採用へ」という変化です。
これまでデータがなかったことで、問題を解決できなかったのですが、我々のキャリアデータを使うことにより、このような変化をもたらしていきます。それにより、ミッションの実現を図っていきたいと思っています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):前回ご出演いただいたのですが、そのあとのパラダイムシフトの変化は、コロナを経て非常に早くなってきたと思うのですが、足元なにかトピックのようなものがありましたら、教えていただけたらと思います。
宮下:特に大きいのは、我々は今新卒メインに事業を行っているのですが、大学生の方々は、転職活動を見据えて就職活動をする方が50パーセント以上になっていると、様々な調査で出ています。
終身雇用が終焉を迎えているといううわさが流れ、学生も終身雇用を当たり前ではないとすでにインプットされています。また、日本人の転職回数自体も増加傾向です。後ほどスライドでもご説明しますが、学生の方々もそのような変化を如実に感じているということが、トピックスの1つとしてあります。
坂本:少し驚きました。この20年でまったく変わったと思います。
2022年12月期 第3四半期決算 サマリー
宮下:業績のハイライトについてご説明します。こちらのスライドはサマリーです。詳細は、以降のスライドでご説明します。
業績予想に対して、売上・利益ともに順調に進捗しています。KPIについても、同様に順調に進捗しています。安定して多くの新規取引社数を獲得し、法人取引累計社数が前年同期比プラス75.7パーセントとなっています。また、会員数についても堅調に伸び、前年同期比プラス32.0パーセントとなっています。また、第3四半期でも、中長期の成長を実現するための各種取り組みを推進しています。
通期業績予想に対する進捗率
宮下:通期業績予想に対する進捗率です。すべての指標について、通期業績予想に対して順調に進捗しています。各指標の詳細については、後ほどご説明します。
売上高の推移
宮下:売上高の推移です。第3四半期の売上は、前年同期比プラス74.9パーセントと順調に進捗しています。例年同様に、我々のサービスは、第2四半期と第4四半期の売上高が大きくなっています。こちらは、採用の繁忙に起因する売上変動の季節性によるものです。
その結果、スライド右のグラフのとおり、通期昨対比プラス40パーセント以上の成長ペースを維持する見込みです。また、今後も順調な売上進捗を想定しています。第4四半期は、今期の売上だけでなく、2023年12月期の売上創出にも、しっかりと前倒しで取り組んでいきたいと思っています。
営業利益の推移
宮下:営業利益の推移です。第3四半期の営業利益は、売上の伸長に伴い、プラスとなっています。第3四半期までの累計の営業利益計画の範囲内で、進捗しています。
当初は、第1四半期から第3四半期が、主に法人の顧客獲得のために投資を行うことを想定していたのですが、獲得効率の最適化を重視しました。第3四半期までの過剰な投資を回避し、第4四半期でも効率的な投資を行うこととして、利益は前倒しで進捗しています。
スライドの右のグラフに示したとおり、売上と同様に、通期昨対比プラス40パーセント以上の成長ペースを維持する見込みです。
損益計算書
宮下:P/Lです。P/Lは、売上高から純利益まで堅調な成長率を維持し、通期業績予想に対して順調に進捗しています。
貸借対照表
宮下:貸借対照表です。第3四半期末時点で、約26億円の現金及び預金を保有しています。純資産比率69パーセントと、財務健全性も高い状態にあります。
広告宣伝費の詳細
宮下:投資の詳細についてご説明します。1つ目は、広告宣伝費についてです。
2021年12月期までは、主に求職者ユーザー獲得のために、広告の投資を行いました。第1四半期の決算説明資料でもお伝えしているとおり、今期からは法人顧客開拓のために、広告宣伝費の投資を開始しています。その結果、広告宣伝費の通期の総額は、前年同期比プラス100パーセントとなる想定です。
坂本:法人顧客開拓向けの広告を始められたということなのですが、今までのユーザー向けの広告費は横ばいなのでしょうか?
宮下:ユーザー向けの広告費は、特に大きく増加しているものはありません。
坂本:法人向けを新たに積み増したかたちになるのですね。法人向けは、私もタクシーで見たことがあります。タクシー広告と、おそらく展示会だと思うのですが、それ以外は出稿はあるのですか? この2つをメインで投資を行っているのでしょうか?
宮下:それらの2つの他には特別な投資は行っていない状況で、いわゆる一般的な広告宣伝投資を行っています。具体的には、Web広告や、企業にダイレクトメールや手紙をお送りするなど、そのようなところにも投資を進めていきます。
坂本:現状では、この2つの新規の法人の広告の引き合いはどのような状況でしょうか? 数値化はされていないかもしれませんが、イメージでよいのでおしえていただけたらと思います。
宮下:大変大きな反響をいただいており、後ほどKPIのところでも出てくるのですが、新規の獲得社数も非常に大きく増加しているため、今回の広告投資の効果は、やはり一定程度あったのかと思っています。
人件費の詳細
宮下:人件費についてご説明します。従業員数を安定的に増やしています。継続的な事業成長に向けたリソースを確保しており、来期以降の事業成長を見据え、今期末については120名前後まで正社員数を増やすことを想定しています。
法人取引累計社数の推移
宮下:事業KPIについてご説明します。まず、法人取引累計社数の推移です。営業組織の強化にしっかりと取り組み、先ほど申し上げた、法人顧客獲得のための広告宣伝費の投資を行ったことにより、新規の獲得社数を安定的に増やし、前年同期比プラス75.7パーセントで伸長し、1,537社に到達しました。
坂本:法人の獲得の営業手法について教えていただきたいと思います。タクシー広告や展示会などで、さらに少し変わってきたのかなどを含め、教えていただけたらと思います。
宮下:インバウンドとアウトバウンドに分けて考えているのですが、インバウンドはお客さまが問い合わせをしてくださいます。
坂本:フォームなどから来る問い合わせですよね。
宮下:そちらはこれまでどおり順調に増えているのですが、2019年くらいまではインバウンドをメインで営業しており、2020年以降に広告宣伝を含めたアウトバウンドへの投資を進めています。
営業手法としては、広告宣伝などで認知していただき、そこから実際に訪問し、お客さまに営業するという手法を取っているのですが、こちらもオーソドックスな手法で行っています。
坂本:特殊なものは特になく、インバウンドとアウトバウンドを使って増やされているということですね。
宮下:おっしゃるとおりです。
求職者会員数の推移
宮下:求職者会員数の推移です。前年同期比プラス32.0パーセントで伸長し、累計で123万人となっています。こちらは当社しか持たない「キャリアデータ」を、学生のみなさまに評価いただいた結果かと思っています。
ビジネスアップデート
宮下:業績ハイライトの最後は、ビジネスアップデートについてです。
1つ目として、株式会社電通が2022年9月29日に発表した 電通若者研究部「Z世代就活生 まるわかり調査2022」において、就活サイト「ONE CAREER」が、「就職活動で内定承諾において影響を及ぼしたもの」として1位を獲得しています。こちらの内容については、次のスライドで詳細をご説明します。
2つ目として、販売パートナー企業が50社を突破しています。首都圏以外のお客さまからお問い合わせが増加したことに伴い、2022年3月から「ONE CAREER CLOUD」の販売パートナーを募集しています。募集開始から5ヶ月たった2022年8月に、販売パートナー企業数が50社を突破し、順調に販売パートナーを増やしています。
3つ目は、2022年に入社いただく社員の方々に対して100万円を進呈する「キャリア支援金制度」を開始しています。これにより、自社採用をよりいっそう強化しています。10月以降、毎月複数名の入社が確定し、2023年以降の安定的な事業成長に向けた人員を、しっかり確保できていると思っています。
坂本:100万円もらえるというのは、非常におもしろいですね。これは一応キャリア支援のため、何に使っても良いのですか?
宮下:みなさまに使い方を任せており、例えば、地方の方が東京に引っ越す際に、いろいろなものを買うと思うのですが、そのようなものに使っていただいても良いです。
また、我々はリモートワーク主体で行っているため、少しレガシーな企業さんから来られる方々などは、ネット環境を含めてパソコン周りのことに使っていただいても良いです。
坂本:非常におもしろいですね。応募してみようかなという気になりますね。
「就職活動で内定を承諾するフェーズで影響を及ぼしたもの」として1位を獲得
宮下:先ほども触れましたとおり、株式会社電通が2022年9月29日に発表した 電通若者研究部「Z世代就活生 まるわかり調査2022」において、就活サイト「ONE CAREER」が、「就職活動で内定を承諾するフェーズで影響を及ぼしたもの」として1位を獲得しています。
これまでであれば、2位の親・家族・親戚、大学の先輩・同級生などが、自分の身近にいる人の情報が非常に影響を及ぼすということで、トップに挙げられることが多かったと思います。
こうした自分の身近にいる人の情報よりも、「ONE CAREER」の情報を頼りにしてくださり、実際に学生が就職活動をするにあたり、欠かせないツールになってきたと非常に実感しています。
坂本:前回も非常に詳しくお話しいただいたのですが、「ONE CAREER」の情報の特色など、支持を得ている点を教えていただけたらと思います。
宮下:これはひとえに、求職者ファーストであり、学生のみなさまが本当に欲しい情報を「キャリアデータ」として公開したことが一番支持を得ていると思っています。
創業以来、そのように支持が大きくなっている理由は、我々が必要な情報をどんどんアップデートし、しっかりと作り続け、みなさまに提供することができていることが、影響として大きいと考えています。
坂本:採用の情報など、いろいろな部分ですね。
宮下:おっしゃるとおりです。最近の学生さんは、就職した後にどうなるのか非常に不安に感じています。
坂本:当然今までも「キャリアパスがどうなるのか?」「何歳になったら年収をいくらもらえるのか?」など、学生の中で非常に話題になり「30歳で年収1,000万円」のようなものがキーワードになっていましたが、すでに転職を考えて就職する方もいるため、おそらく「どのようなスキルを積めるのか?」といった点も非常に意識する部分だと思います。そのあたりも知ることができるとうれしいですよね。
宮下:おっしゃるとおりです。我々の「ONE CAREER PLUS」という中途採用サービスでは、どこからどこに転職したという情報を出していますが、実は学生さんも、こちらに登録して見ていらっしゃる方がけっこういます。その点では、学生さんが欲しい情報を追求しているところが大きいと思います。
坂本:ポジティブな情報とネガティブな情報の両方を収集しながら活動を進めるということですね。
増井麻里子氏(以下、増井):2位の「親・家族・親戚」や、3位の「オープンワークの情報」の領域は、御社のシステムに入れることはできるのでしょうか?
坂本:つまり、親向けの情報を開示するようなサービスや、「OpenWork」のようなものがあるのかどうか、それを含めて教えてください。
宮下:「OpenWork」は大変長期間行っているサービスで、学生のみなさまもよく使用している印象です。特に、「本当にこの会社に入って良いのか?」と思った時に、社員や退職された方々が投稿した口コミ情報を見て安心材料を得るという使い方をすることが多いです。我々は「ONE CAREER PLUS」という中途採用サービスで今、そのような情報も作っているため、展開できると思っています。
親への情報についてですが、我々にお問い合わせいただくのは、企業の人事の方々や学生のみなさまに次いで多いのは学校関係者で、その次に多いのが親御さまです。
坂本:どのような内容のお問い合わせがあるのですか?
宮下:「子どもがこのような企業に行きたいと言うが、その時に親は何をすれば良いのか?」というお問い合わせです。
坂本:「うちの息子がここに内定したが大丈夫でしょうか?」ではなくて「ここに行きたいから、そのためにどのような準備を子どもにさせれば良いのか?」という話ですね。親もサラリーマンだと「業界関係はこうだよ」というアドバイスができるので、そういう意味で2位なのかなと思いますが、親が子どもと一緒に就活をするような家庭もあるということですね。
宮下:やはり気になる方もいらっしゃるのだと、非常に感じます。
市場の成⻑ポテンシャル
宮下:ここからは、中長期の戦略についてご説明します。まず、市場の成長ポテンシャルについてです。新卒採用領域は1,200億円、中途採用領域は6,000億円、すべての人材サービスに関しては8.6兆円のマーケットがあります。非常に大きなマーケットで、成長ポテンシャルは大きいと感じています。
契約数の拡大
宮下:企業の成長ポテンシャルである契約数の拡大についてご説明します。対象顧客は約3万社で、我々は採用人数により、大・中・小規模と3つのセグメントに分けており、大規模は51名以上、中規模は11名から50名、小規模は10名以下の企業と定義しています。
これらすべての領域においてカバー率が伸長しています。特に大規模のお客さまに関しては、これまでの商品と営業手法で今後も十分に拡大できると考えています。中・小規模のセグメントについては、お客さまからかねてよりご要望いただいていたスカウトサービスを、今年度の2月にリリースしました。それにより、これまでの商品のみでは利用が難しかったというお客さまにもご利用いただくことが可能となり、今後さらなるシェアの拡大が見込めます。
利用顧客
宮下:現在のお客さまについてです。各業界のトップティアのお客さまからご支持をいただいています。我々のキャリアデータについて多くのご要望があり、日本の時価総額ランキングTOP100のうち50パーセント以上のお客さまにご利用いただいている状況です。
学生から支持を集める新卒サービス
宮下:学生側の成長ポテンシャルについてです。「1年を通して最も利用した就職サイト」という調査では、3年連続で「ONE CAREER」が、リクルートの「リクナビ」を抜いて、「マイナビ」に次ぐ2位になっています。就職活動における情報収集・選考対策ツールとして、他にはない独自の地位を確立できたことが、急成長につながったと考えています。
求職者会員数の獲得率
宮下:求職者会員の獲得率も順調に進捗しています。年間で10パーセント以上ずつ獲得数は増えており、2022年4月に社会人になった大学生については、全体の56パーセント以上が登録しています。
坂本:獲得率を増やすことが御社の業績向上の基本になり、将来的に求職者がたくさん登録しているとして、値上げするための源泉になると思いますが、この比率はどのくらいまで上げる予定ですか? 100パーセントに近づけるほどコストがかかる部分はあると思いますが、今の御社のイメージを教えていただけたらと思います。
宮下:こちらについては、100パーセントに近づけていきたいと考えており、それは可能だと考えています。
大学生や就職する方々は必ず就職活動を通して何かしら行動し、情報収集して企業と出会います。今、我々のサービスは東京、東海、関西エリアで非常にシェアが高いのですが、それ以外の地方では低いです。
坂本:地元の会社にしか就職活動しないような国立大学や私立大学もあるため、そのようなところのデータを拡充すれば増えるというイメージでしょうか?
宮下:おっしゃるとおりです。また、物理的に我々の営業活動は、マーケットの大きいところから順に進めていて、地方での営業活動は代理店のみなさまに委ねているところが増えてきています。
坂本:その営業活動は、大学ではなくて、顧客に対してですね。
宮下:そのとおりです。現時点では、地方の企業が掲載している求人数は少ないのですが、「人の数だけ、キャリアをつくる。」というミッションの実現に向けて今後増やしていきます。
新卒採用マーケットでの伸び代
宮下:新卒採用マーケットでの伸び代についてご説明します。スライドの左から順に、トラフィック、売上、掲載社数を記載しています。
トラフィックについては、大手2社と比較して、ワンキャリアは3分の1程度に迫ってきています。売上は、大手2社が3桁億円くらいと言われているのに対して、ワンキャリアはFY21で19億円です。掲載社数は、大手2社が2万社前後に対して、ワンキャリアはまだ1,000社前後です。今回は1,500社程度まで増えていますが、まだまだ伸び代があると考えています。
FY26売上高100億円、営業利益率30%を目指す
宮下:中長期の具体的な戦略についてご説明していきます。FY26で売上高100億円、営業利益率30パーセントの達成を目指します。
事業展開のマイルストーン
宮下:事業展開のマイルストーンです。新卒採用領域に続き、中途採用領域へも事業領域を広げました。ここからさらにアルバイト、派遣、教育などにしっかり目を向けていきたいと思っています。
キャリアデータを活用した提供価値
宮下:キャリアデータを活用した提供価値についてご説明します。スライド左側がBtoB、右側がBtoCとなっています。この後のスライドで、それぞれについてご説明します。
採用DXを推進する「ONE CAREER CLOUD」
宮下:BtoBの戦略です。企業に対して採用活動を支援するワンキャリアクラウドシリーズを提供し、企業の新卒採用活動のDX支援を実施しています。現在、「ONE CAREER CLOUD」では、スライドに記載しているとおり、求人掲載、オンライン説明会、採用計画という3つの機能を提供しています。
採用DXを推進する「ONE CAREER CLOUD」の機能拡張
宮下:「ONE CAREER CLOUD」の機能拡張についてです。現在は、スライド左側に記載「集客機能」がメインになっています。2022年2月にスカウトサービスをリリースしましたが、こちらについては次のスライドでご説明します。今後は、集客のみではなく、応募者管理領域や人事・労務領域にまで事業展開して、人事のみなさまに対してより多くの価値を提供していきたいと思っています。
新機能スカウトサービス
宮下:新機能のスカウトサービスについてご説明します。「ONE CAREER CLOUD」におけるスカウトサービスを、2022年2月にリリースしました。学生にLINEスカウトの通知が届くLINE連携機能を提供開始するなど、学生と企業のマッチングをさらに強化しています。学生人気が高い企業を中心に、利用企業は順調に増加しています。
坂本:スカウトサービスにはLINE連携機能などさまざまな新機能があるということですが、この新サービスの活用事例があれば教えてください。例えば「説明会がありますよ」というLINEのメッセージが届くというシンプルなものか、あるいはもう少し他の機能があるものでしょうか?
宮下:既存のお客さまと新規のお客さまの両方でご利用いただいていますが、既存のお客さまは、これまでの採用活動の中でオプションとしてご利用いただいているケースが多いです。具体的には、ダイレクトリクルーティングという言葉もありますが、かなり早い時期にピンポイントで、本当に採用したい学生に対して直接企業がアプローチしていく、スカウト的な使い方でご利用いただいています。
新規でご利用いただくお客さまも、同じような使い方をされています。我々のサービスを使ってみて、どのくらいの方から反応があるのか試してみるというかたちです。我々は、ドアノックツールとしてお勧めしています。
増井:スカウトが来ると特別な感じがして「採用されそう」となる可能性もあると思いますが、その中ですべてがうまくいくわけではないと思います。そういう時には、フォローのようなものはあるのでしょうか?
宮下:基本的にこのダイレクトリクルーティングサービスは、企業のみなさまからアプローチして選考するかたちです。先ほどおっしゃっていただいたとおり、実際に内定とならなかった場合にはがっかりするということはあると思います。その際、一人ひとりに対する我々からのサポートは、現状ではまだできていません。
一方で、企業のみなさまは、「良さそう」と思ってアプローチした結果「採用に至らなかった」というところに対しては、しっかりフォローしている印象があります。ただし、この点については、企業ごとの対応の差は出ていると思います。
坂本:コミュニケーションのツールとしては、すごく良いですよね。
宮下:おっしゃるとおりです。ピンポイントでアプローチすると、受け取った学生も企業の選考に熱量高く臨むため、結果的に内定する確率は高くなる傾向があると思います。
求職者がデータを活用してキャリアに向き合う時間を創出
宮下:BtoCの戦略についてご説明します。現在、新卒採用領域では「ONE CAREER」、中途採用領域では「ONE CAREER PLUS」というサービスを提供しています。今後はさらに、親御さまをはじめとするさまざまな方々からサービスのご要望をいただいている、キャリア教育に関するサービスをリリースする予定です。これにより、求職者の方々がデータを活用してキャリアに向き合う時間をさらに創出していきたいと思います。
坂本:キャリア教育サービスというのは、どのようなものでしょうか? リリース前のため、お話しできる範囲で教えていただけたらと思います。
宮下:具体的な対象者としては、我々が問い合わせでご要望いただく大学や教育機関の方々、そして親御さまが非常に増えてきています。みなさまのご要望としては、今の若い人たちの就職状況についての情報提供です。みなさまが就職活動されていた時と今では、活動の仕方が変わっていますし、企業群もかなり変わっています。
坂本:確かに、日本もカタカナの企業とアルファベットの企業が増えていますね。
宮下:就職活動の仕方については、ハガキで申し込む時代がありましたが、今はWebで応募します。場合によっては、ソーシャルメディアで知って応募するというような、新しい体験が増えています。
若年層がどのように就職活動をしているかについて我々が情報提供するサービスもあると思います。また、みなさまが一番時間をかける対象が「教育」から「キャリア」「仕事」に変わるため、ここはかなり断絶していると思います。
我々はここに課題感を持っており、もう少し仕事選びに対して前もって情報収集できるようなプラットフォームやキャリアについて学ぶところを作っていきたいと思い、来年以降新しいサービスを出していきたいと考えています。
坂本:大学生が就活を意識するのは2年の終わりくらいだと思いますが、まじめな学生も多いですし、準備として早期のサービス登録はあると思います。
宮下:もちろん早期という視点はありますが、どちらかと言いますと、いつでも学べるようにするという視点で進めていきたいと思います。
坂本:すごくおもしろいと思います。高校生も見ることができたら、意外とおもしろいかもしれません。
オンライン企業説明会「ワンキャリアライブ」
宮下:新卒採用期において、コロナ禍で急拡大したオンライン企業説明会「ワンキャリアライブ」についてご説明します。こちらは、求職者のニーズを捉えたサービスとして急成長しています。
これまで累計で、YouTubeのチャンネル登録者数が3.9万人、オンライン企業説明会は延べ1,100回以上実施し、参加者が延べ150万人以上となっています。就職活動をされる方が51.4万人ということを考えると、本当に多くの方々にご参加いただいているサービスだと思っています。
中途採用マーケットの拡大に伴うキャリアデータのニーズの高まり
中途採用の領域についてご説明します。スライド左側のグラフが各国の転職回数の比較で、右側が日本の転職に対する意識の変化です。日本人の転職数は、生涯でだいたい3.3回と言われています。韓国が6.8回、欧米諸国ではアメリカは9.5回、他の情報では10回以上というデータもあります。
今後は日本も欧米諸国のようになると思いますし、先ほど申し上げたとおり、転職を意識して就職活動をされる大学生は非常に増えています。今後も、我々のキャリアデータのニーズはさらに高まっていくと想定しています。
中途採用サービスへの連携
中途採用サービス「ONE CAREER PLUS」についてご説明します。新卒採用サービス「ONE CAREER」の会員、顧客、コンテンツと連携することで、効率的に中途採用サービスを展開しています。
1つ具体的にお伝えすると、「新卒と中途のシームレスな採用サポート」とスライド記載のように、我々は新卒採用でのお客さまがどんどん増えており、現在は多くの企業に対して、新卒採用と中途採用を同じように営業することが可能になっています。
これはお客さまから別の担当者をご紹介いただくようなかたちで、新卒だけでなく、中途のサービスもご提供するというかたちで新しい営業を展開しています。中途採用サービスはまだまだ規模としては小さいですが、こちらもご期待いただければと思います。
私からのご説明は以上とさせていただきます。ご清聴いただき、ありがとうございました。
質疑応答:学生へのリーチの手法について
坂本:学生の利用者の獲得について、どのようなかたちでリーチしているのでしょうか? 大学に営業に行くこともあると思いますが、大学で講演や講義なども行っているのでしょうか? また、大学との連携などもあれば教えてください。
宮下:首都圏を中心に大学にも足を運んでいます。やはり大学職員の方々にとって、企業がどのような採用を進めているかというデータは、毎年変わりますし、タイムリーに集めることはなかなか難しいです。
坂本:各大学に就職課があって、特化しているような気はしますが、上場している会社だけでも3,800社くらいあり変化も早いですからね。
宮下:現在、新卒の採用活動をされている企業は4万社から5万社と言われています。その情報を一様に取ることはたいへん難しいと思います。これを例えば、業界別に分けて金融業界についてご説明したり、テーマに分けて大学に赴いて説明したりしています。
坂本:業界研究から就職活動を始めることも多いですよね。それ以外での学生の集客はやはりWebになると思いますが、登録を促すようなスキームなどはありますか?
宮下:我々のサービスはWebメディアのため、そこでの集客もソーシャルメディアなどいろいろなところに広告も出稿していますが、実は一番多い流入経路は、直接検索されるオーガニックになります。
坂本:自発的に御社のサイトに登録されるということですか?
宮下:おっしゃるとおりです。サービス名で検索してくださっている方が一番ありがたいですが、それ以外では、例えばトヨタ自動車はどのような選考をされているのかを検索して、我々のサイトにたどり着きます。
坂本:御社の強みの1つで、選考の過程などが知れるから登録するわけですね。
宮下:「企業名 面接」のようなかたちで検索してくださる方が非常に多いです。
質疑応答:新規取引先について
増井:「大手企業、中小企業、スタートアップもあると思いますが、狙っている新規取引先はどのような企業ですか?」というご質問です。
宮下:我々が狙っている企業は、大規模・中規模・小規模と3つのセグメントに分けていますが、規模に関わらず、学生のニーズが高いところに時期に応じたアプローチをしています。
例えば、大学3年生ですとサマーインターンなどに行かれる方が多いため、1つの大きなポイントとして捉えて、サマーインターンを実施されている企業、かつ、我々のサービスに登録している学生からニーズが高いところを対象としてアプローチします。
ニーズが高いということは、我々のサイト上に口コミなどのデータもたくさん貯まっていることでわかり、企業へのアクセスデータによって、どのような学生に求められているか情報が集まるため、その情報を企業に営業活動としてお話しさせていただきます。
そのような営業活動も基本的に求職者ファーストで、みなさまからご要望いただいているところを中心に進めています。
坂本:サマーインターンの口コミもあると、インターンの期間や内容、選考過程を知りたい学生にはありがたいですね。就職するのに、情報がたくさんあることは良いことですが、その情報を収集する学生も大変だなと思いながら見ていました。このようなサービスがあるとたいへん便利だと思います。
宮下:おっしゃるとおりです。まったくわからない状態よりも、しっかり準備して、安心した状態でみなさまの力を発揮できるようになれば一番良いと思います。
坂本:それは本当に大事で、僕も就職活動をして、対策してきた人としてきていない人の差が全然違うと思いました。友だちも就職が決まらない人は、やはりきちんと対策していなかったので、スタートラインを整えることは大事だと思います。
宮下:おっしゃるとおりです。
質疑応答:旧来型企業との適正について
坂本:「求職者ファーストで、転職先もわかるようなサービスは、IT系、スタートアップ系とは相性が良いと思いますが、旧来型の多くの企業が嫌がったりしないのか心配です。旧来型企業での御社システムの利用は難航しませんでしょうか?」というご質問です。
こちらの質問について補足すると、サイトにはやはりネガティブなことが書いてあったり、採用過程が暴露されることで手の内が知られてしまうようで嫌だという大手企業は、僕の偏見かもしれないですが存在していると思います。
一方、スタートアップ企業はやはり即戦力を求めており、選考ではある程度これまでの経験などを聞くため、意外と面接時のバリエーションが豊富だと思っています。
大手はたくさんの人数を捌かなきゃいけないため、やはりある程度画一化しますし、新卒採用では新卒数年目の人に一次採用を任せるような会社もけっこうあります。そのため、グループワークの内容も、パターン化してくることも多いと思います。
僕も前職で採用活動に少し携わっていましたが、そのように知られることを嫌がる旧来型の企業は多いのではないか、という質問だと思います。そのあたりの企業の声などを教えていただければありがたいと思います。
宮下:企業の採用プロセスは、サイト上でご覧いただけるようになっていますが、我々もそこはセンシティブな情報だと認識しており、公開する際には必ず1件1件審査して、例えば、担当者のお名前が載っている場合などは掲載していません。あとは、お取引先の名前が書かれていたりすると、機密情報にあたるため審査ですべて落としています。
それ以外の情報は、その企業のカラーを出すことにもなりますし、やはり昨今の流れで、採用プロセスをオープンにできない企業は、多様な人材を受け入れられないと思います。そこをオープンにしないと、例えば圧迫面接なども、実際に面接のプロセスで起こっているのではと学生は推測します。
そのため、情報をオープンにすることが学生にとっても安心材料になりますし、多かれ少なかれどうしても公開されていくと思います。何よりも、学生は面接が終わった瞬間にLINEでその内容を友だちに送るみたいです。
坂本:「今日はこんな質問があった」といった内容を送るわけですね。
宮下:これは絶対に防げないと思います。そのため、そのような内容の流出があったとしても、学生のみなさまをしっかり評価できるような、本質的な採用が必要になってくると思います。
坂本:質問の内容が知られていても、そこで学生の本質を見抜くような質問でなければいけないということですね。確かに僕が採用担当だった2000年過ぎくらいの頃でも、多かれ少なかれやはりいろいろと知られていました。
これまでその情報は、首都圏の学生のほうがたくさんの企業を受けるし、知り合いも多いため、地方の学生に比べて多くを得ていたと思います。やはり情報の格差を埋めるようなサービスがあることはすごく良いと思います。
宮下:これも事前準備につながりますし、より準備して、意欲が高い人が入ってくるほうが企業にもメリットになると思います。そこはやはりマーケットと言いますか、世の中が変わってきていることを非常に感じます。
坂本:この点は御社が支持されている1つの要因だと思います。
質疑応答:企業の利用サイト数について
増井:「企業は複数のサイトを使用することが多いのでしょうか? 御社だけに単独で載せることはあるのでしょうか?」というご質問です。
宮下:基本的に就職・転職活動をされる方は複数サービスを必ず使われるため、我々のサービスだけを使っているという方はおそらく少数派です。
この点は企業の人事の方も一緒で、基本的にはみなさま複数のサービスを使っています。もちろん、我々をメインで使ってくださるお客さまもいますが、いくつかある中の1つという位置付けで、特に求人サービスについてはこの流れは今後も変わらないと思います。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:大手、スタートアップ、行政など複数の切り口があると思いますが、狙っている新規取引先はどんな企業ですか?
回答:当社の法人取引累計社数は2022年12月期第3四半期に1,500社を超えた程度です。当社では採用人数に応じて顧客を分類していますが、大規模・中規模・小規模のすべての顧客において大きな成長余地があると考えています。顧客の採用人数に合わせて、当社の商品を提供し、法人取引累計社数を伸ばしていく予定です。
<質問2>
質問:高校生や専門学校の新卒向けのサービスはないのでしょうか?
回答:高校生や専門学校の就職活動は、大学生/大学院生の就職活動とルールやスケジュールが異なります。将来的に事業領域を広げていくことを考えているため、高校生や専門学校の学生向けにサービス提供する可能性はありますが、現在ONE CAREERでは主に大学生/大学院生向けにサービスを提供しています。