2021年3月期決算説明会
柳橋仁機氏:株式会社カオナビの代表取締役社長CEOの柳橋でございます。本日はお忙しい中、お時間を頂戴しましてありがとうございます。私の方から、会社概要と2021年3月期の決算ハイライト、および2022年3月期の業績見通しについてご説明差し上げます。
カオナビとは…
まず会社概要です。通期の説明ですので、会社概要をあらためてご説明差し上げます。
「そもそもカオナビはどのような会社なのか」というと、当社は人材データベースを核とした「タレントマネジメントシステム」をSaaSの形で企業に提供しています。サブスクリプションの収益をストック収益として積み上げていくビジネスモデルです。
スライド左側に記載のとおり、タレントマネジメントシステムとは、人事の評価や人材の異動・昇格、スキル管理などの人材マネジメント業務を支援するサービスで、これをお客さまに提供するのが当社の事業内容になります。
機能と効果
「機能と効果」です。さまざまな機能がパッケージ化されてタレントマネジメントシステムを構成しています。
日本の会社の大部分で、いまだに紙やエクセルの単票で人材情報を管理しているケースが多く見られます。それらを、人材データベースであるカオナビにまとめてクラウド上に一元管理することによって、人材の見える化が実現できます。人材の見える化が進めば、人材情報が会社の中で共有できるようになり、人材の活用が進みます。このように、人材データベースをコアの機能として、お客さまの人材業務を支援しています。
人材データベース以外の主力の機能としては、「評価ワークフロー」が挙げられます。お客さまの人事評価業務を支援する機能です。
また、「パルスサーベイ」は、最近リモートワークが増えたことで、従業員の状態が見えづらくなっており、従業員の状態を定期的にチェックする機能です。
このようにさまざまな機能がパッケージとなって、タレントマネジメントシステムを構成しています。
スライド下段に記載のとおり、業務の効率化や生産性の向上、人材開発などの業務上の効果をお客さまに感じていただけるよう、事業、サービスを提供しています。
カオナビの強み
当社の強みについてお話しします。まず1つ目の強みは、柔軟なシステムです。人材情報の管理方法はお客さまによって異なりますが、それぞれにしっかりと対応できる柔軟なシステム設計になっています。
それに加えて、ノウハウも強みです。今、当社のシステムは2,000社以上の企業に導入されています。「タレントマネジメントシステムをこのように使っている」「このようなことをやったら上手くいった」「このようなことをやったら上手くいかなかった」というような、さまざまな会社の「生きた活用事例」を情報として蓄積しています。
柔軟なシステムと、生きた活用事例をセットにして、両輪でお客さまに提供できることが当社の強みであると理解しています。
カオナビの強み:システム
システムの強みについてもう少し詳しくご説明します。「カスタム自在な人材データベース」とは、お客さまに適したデータベースの設定が簡単にできるということです。エンジニアの工数をかけなくても、マウス操作で簡単に設定ができます。「マニュアル不要のユーザー画面」とは、操作が簡単でわかりやすいということです。
「セキュアなアクセス管理」についてです。人材情報は、すべての立場の人から一様に見えてはいけない情報です。そのため、社長や部長、マネージャーなどの役職に応じた制限があるはずです。それをセキュアな状態に保ち、細かくアクセスコントロールができるところが当社のシステムの強みだと思っています。
カオナビの強み:ノウハウ
続いて、ノウハウの強みです。当社には、ユーザーがユーザーから学べる場があります。つまり、お客さまが登壇し、カオナビをどう使っているのかを他のお客さまが学べるコミュニティを作っており、生きた事例を学べます。
次に、中央にあるライブラリーですが、これまでに活用してきたユーザーの事例を体系化してまとめています。「このような事例を調べたい」「このような活用ケースはあるのか」というときに、検索や活用が非常にしやすくなっています。
そして、最後に専任スタッフです。当社は、タレントマネジメントシステムに一番早くから取り組んでおり、専任スタッフの知見や経験が非常に豊富で、サポートのレベルは充実しています。
お客さまがコミュニティやライブラリーを活用しながら、専任スタッフのサポートも受けられる、そのようなノウハウを提供できる体制が当社の強みだと感じています。以上が事業の内容です。
ミッション・ビジョン
ここからは、そもそも当社がどのような目標を持っているのか、どのような目線で事業を行っているのかという会社のあり方について、みなさまにご理解いただきたいと思っています。
まず、ミッションは「個の力にフォーカスしマネジメントを革新する」です。問題意識として、日本の企業の働き方は画一的で、あまり個性が活かされていない形で働いている方々が多いのではないか、ということがあります。
産業構造や人口構造が変わる中、個の力や個性というものをきちんと引き出してマネジメントしなくてはならないと感じています。このミッションには、そのような働き方やマネジメントの考え方を変えていきたいという思いがあります。
そのミッションを行うために「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」というビジョンがあります。人材情報をクラウド上に一元化することにより、活用を可能にします。当社はこれを「データプラットフォーム」と呼んでいます。
日本のビジネスマン全員の人材情報がカオナビに集約されていることが、目指す究極のゴールです。このように、働き方やマネジメントのあり方をよりよいものに変えていきたいというミッションやビジョンを持っています。
人材データプラットフォーム構想
人材データプラットフォーム構想についてです。カオナビの人材データをレバレッジさせ、世の中にある人事・人材関連ビジネスやその周辺のビジネスに新しい収益ポイントを作っていくことが中長期の成長イメージです。
人材データプラットフォームを中心にして、その周辺のビジネスの色を変えていくようなイメージで捉えています。
コネクテッドパートナー
次に、コネクテッドパートナーについてです。当社に限らずさまざまな会社がSaaSのビジネスに取り組んでいます。そのような会社とも積極的に連携し、お客さまの利便性を高めていく取り組みにも力を入れています。
カオナビの従業員エンパワーメント
ここからは当社の内部の話で、カオナビの従業員エンパワーメントについてです。事業内容は、お客さまの働き方を支援することですが、一方で、自社の働き方にもこだわりがあります。それを「MY WORK STYLE制度」というかたちで推進しています。
去年1年間、新型コロナウイルスの影響を受けて、リモートワークなど、働き方を見直す中で出来上がってきた部分もあるのですが、当社の非常に重要な取り組みとしてご理解いただきたいと思っています。
まず、「スーパーフレックスタイム制」というのは、いわゆるコアタイムのないフレックスタイム制です。5時から22時の間であれば働く時間を選べて、働く時間も1日最低4時間でよいということです。もちろん、1ヶ月トータルで集計されるため、毎日4時間だと所定労働時間に届かず欠勤控除が入ってしまいますが、例えば「今日4時間働いて、明日10時間働く」などの調整をしてよいということです。
スライド右上の「スイッチワーク」は、仕事のオンとオフを自分で管理してよいということです。家でリモートワークをしていると「子どもの世話をしなきゃいけない」「役所に書類を提出しなきゃいけない」「銀行にお金を下ろしに行かなきゃいけない」「夕飯の具材を買ってこなきゃいけない」などということが発生します。
そのようなときには仕事をいったん止めて、用事が済んだら仕事をするという切り替えを自由にやってよいということです。時間の組み合わせ方については従業員の裁量に任せています。
スライド左下の「働く場所を選択できる」は、時間だけでなく場所も制約はないということです。ずっと家で働いてもOKですし、今は緊急事態宣言でオフィスになかなか出社できませんが、ずっとオフィスでもOKです。「月曜日は家で、火曜日はオフィス」のような働き方も全部OKで、自分の好きな場所で働くことができます。
「兼業推奨」についてですが、カオナビ以外の仕事も、その人のキャリアアップにつながるのであれば、結果的にカオナビの仕事にもプラスの効果があると思っているため、社員の兼業を推奨しています。現段階では17.9パーセントですが、個人的にはもっと高くてよいと思っており、引き続き取り組んでいきます。
このように、時間や場所などの制約を限りなく廃止していき、従業員に裁量を持ってもらい、その代わりきちんと成果を出してもらうことを目指しています。
カオナビの従業員エンパワーメント(続き)
続きになりますが、当社は厚生労働省のサイトに「男女問わず働ける環境がある」実例として取り上げていただいています。また、従業員の平均残業時間は、1日あたり14分です。個人が裁量を持って柔軟に働ける制度を実践することで、女性の活躍も促進されています。当社の女性管理職比率は30パーセントと、男女問わず働きやすい環境を目指しています。
少し長くなりましたが、以上が会社の紹介です。
事業ハイライト
ここからは決算の内容についてご説明します。
まずは、2021年3月期第4四半期と通期のハイライトです。事業ハイライトとして、いつも示しているKPIを記載しています。利用企業数が2,061社、ARPUが14万4,000円、売上高ストック比率が87.9パーセントとなりました。
利用企業数に関しては、前回の決算発表で「2021年3月期は新型コロナウイルスの影響を受けて、新規の獲得がやや苦しくなったところがあった」とお話ししました。それが徐々に回復してくると見込んでいたわけですが、社数の積み上げをご覧いただくとわかるとおり、足元で回復してきています。2,000社を超えて、今は2,061社となっています。
ARPUに関しては14万4,000円です。これは毎四半期にお話ししているとおり、顧客ミクスの変化や既存顧客のアップセルによりARPUは上昇基調にあり、今後も続くと思っています。
順調に社数が伸びて、ARPUも高まっているということで、売上高ストック比率にも、特に大きな変化はありません。
ストック収益のKPI
ストック収益のKPIについてです。ストック収益の成長率は36パーセントで、LTV/CACは4.9倍です。第4四半期は前の四半期に比べて悪化する可能性があったのですが、新規獲得の回復等の要因により改善した形で着地しています。
解約率の推移
解約率については、折れ線グラフの一番右、0.71パーセントが3月末の数字です。前回および前々回の決算説明会で「新型コロナウイルスの影響を受けて解約率は少しアップしてしまうかもしれない」とお話ししましたが、結果的にはうまく抑えられたという感想を持っています。懸念がそれほど現実化しなかった数字だと評価しています。
業績ハイライト:第4四半期
第4四半期は、売上高は9億4,400万円、前年同期比の成長率は29.1パーセントでした。
売上総利益は6億4,400万円、売上総利益率は68.2パーセントです。70パーセントを切ったことで、ご心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、脆弱性診断の実施など一時的に売上原価が増加しているだけであり、ご心配いただく必要はありません。
また、エンジニアの積極採用による人件費の増加やオフィス移転による家賃の増加といった固定費の増加については、当初から想定していたことであり、この固定費は今後、売上高の成長に伴い吸収できると考えています。
業績ハイライト:通期
通期の業績ハイライトについては、ほぼ業績予想の範囲で着地しました。売上高は34億200万円で、業績予想のレンジを200万円だけ超えています。成長率は29.6パーセントでした。
売上総利益は24億6,100万円で、レンジの上方で収まりました。売上総利益率は72.3パーセントでした。営業利益はご覧のとおりマイナス1,100万円で、これもレンジに収まっています。
つまり、売上高は200万円だけ業績予想のレンジを上回りましたが、それ以外は全部レンジの上方に着地し、順調な結果だったと捉えています。
売上高の推移
売上の推移はご覧のとおり順調に伸びており、売上高ストック比率も安定して80パーセント後半と、順調に推移しています。
売上総利益・営業利益の推移
売上総利益と営業利益の推移です。売上総利益率に関しては、先ほどお話ししたとおり、第4四半期は70パーセントを切っていますが、これは一時的なもので、しっかりとコントロールできています。2022年3月期の第1四半期から緩やかに回復していく前提です。
営業利益に関しては、毎四半期の決算説明会でお話ししているとおり、特段の意思をもった数字ではなく、ご覧のとおりの推移となっています。
コスト分析
コストについても大きな変化はありません。事業規模に合わせて、コストがそれぞれ増加しています。事業規模を超えるコスト増にはなっていませんが、満遍なくコストが増えています。
従業員も同様で、前年同期比で19.5パーセント増えていますが、これも事業規模の拡大に合わせて人員を増強しています。また、採用面でも特段困っていることはないとご理解いただければと思います。
ユニットエコノミクスの推移
ユニットエコノミクスの推移です。
まずマーケティング関連コストに関しては、第4四半期はこの1年間で一番多く支出しました。新型コロナウイルスの影響が強かった第1四半期以降、徐々にマーケティング投資を戻してきた形です。
LTV/CACについても、前四半期には「もう少し下がるかもしれません」と言いましたが、しっかりとコントロールできて4.9倍ということで、再成長の入口に立つことができたと捉えています。
フリーキャッシュフロー・前受収益の推移
フリーキャッシュフローと前受収益については、論点はそれほどありません。第4四半期のフリーキャッシュフローは1億1,600万円でした。第3四半期は本社移転に伴う一時的な現金支出の影響を受けマイナスとなっていますが、第4四半期で正常な状態に戻りました。
このようにフリーキャッシュフローは安定して創出できている状態です。前受収益の推移も、ご覧のとおり、順調に積み重なっています。
株主構成
スライド左側は全株主構成です。私が29.9パーセント、リクルートホールディングスが21.6パーセントを保有しており、合わせておよそ50パーセントです。この主要株主である2者を除いた株主構成をスライド右側の円グラフに示しています。私とリクルートを除くと、70パーセントを機関投資家の方に保有いただいているという株主構成になっています。
以上が、2021年3月期第4四半期のハイライトです。
総括すると、業績予想の上方で着地したことと、この1年は新型コロナウイルスの影響を受け新規獲得が少し鈍りましたが、徐々に回復してくる兆しが見えてきたと思います。
2022年3月期の業績予想
2022年3月期の業績見通しについてご説明します。
売上高は45億4,000万円、成長率は33.4パーセントの計画です。昨年度の29.6パーセントの伸びから成長率を戻していきます。
売上総利益は32億8,000万円で、売上総利益率は72.2パーセントを見込んでいます。売上総利益に影響するのはエンジニアの人件費、つまりプロダクトの開発投資ですが、将来のトップライン成長のために開発投資もどんどん進めていきたいと考えています。
つまり、トップラインの成長率を再加速させ、開発投資もきっちり投下する計画を作ったということです。
営業利益に関しては1億円の黒字、最終利益においても2,600万円の黒字を見込んでいます。最終利益まで黒字というのは、上場前から含めておそらく初めてですが、従来と変わらず、ここはあまり意味を持った数字だとは思っていません。販管費の計画には将来の成長に必要な先行投資も含めており、「結果としてそうなった」という捉え方です。
まずはトップラインを伸ばし、しっかりと売上総利益を創出して、きちんとした事業構造を作っていくことが重要だと思っています。
売上高の見通し
売上高の見通しを少し分解してご説明します。ストック収益はプラス28.4パーセント、フロー収益はプラス70.4パーセントの成長率を計画しています。
ただし、これは新収益認識基準が適用された数字です。右側の棒グラフのとおり、Apple to Appleで比較すると、ストック収益は31.0パーセントの伸びとなっています。前期からの連続性という意味では、この旧基準同士の比較で見ていただいたほうが正確だと思います。
フロー収益と違って、ストック収益は過去の積み上げであることから、前期の成長鈍化の影響が出てしまいますが、引き続き先行投資を実施することで顧客基盤を積み上げていき、成長率の再加速を目指していきます。
主要コストの考え方
主要コストの考え方です。人員計画については、事業規模に連動して従業員採用を行っていきます。19.6パーセントの伸びで、期末は220人の計画となっています。
マーケティング関連コストは、8億2,000万円を見込んでいます。昨年度の第1四半期に新型コロナウイルスの影響を受けてマーケティングコストを抑制しましたが、今期の計画にはそのような抑制がありません。成長に必要なコストは、きっちりと織り込んでいる前提です。
中期的な成長イメージ
中長期の成長イメージです。2020年3月期から見て5年程度先に100億円の売上規模を目指します。この成長イメージは変わっていません。
今期の売上高が45億4,000万円の計画ということで、右側の棒グラフにあるようなステップを踏んでいこうと考えています。
中期的には売上高100億円、売上総利益率80パーセント、営業利益率30パーセントといった収益モデルを作ることを目標として掲げています。
以上が決算の数字面に関する説明でした。
ガバナンス体制の強化
正式には6月の株主総会の承認を得て決定しますが、ガバナンス体制の強化として、崔真淑(さい ますみ)氏を社外取締役として招聘します。私を含めたその他4名の取締役に変更はありません。
崔氏は、大和証券などで資本市場関連の業務経験があり、メディアでも活躍されている方です。当社が資本市場と対話していく中で専門性を活かして当社に貢献してもらおうと考えています。
今後は社外取締役が2名になるということで、コーポレートガバナンスがより強化されると考えています。
フィランソロピーの取り組み
フィランソロピーの取り組みについてです。世の中では、様々なSDGsの取り組みが行われています。
当社では、教育機関や公共機関のみなさまに対して、カオナビを提供することでタレントマネジメントの支援を行い、社会の持続的な発展に貢献していこうという取り組みを始めています。
以上が、私からのご説明になります。