本日お伝えしたいこと

山野幹夫氏(以下、山野):専務取締役の山野です。よろしくお願いします。本日はお忙しい中、当社決算説明会にご出席いただき、誠にありがとうございます。

本日お伝えしたいことです。2025年3月期は「2024年問題」により、当社もある程度覚悟はしていましたが、労働時間の大幅な削減を余儀なくされ、また傭車先を含めて業界の労働環境もかなり影響を受けました。

当社はリーディングカンパニーとして、成長よりも品質と生産性向上に努めた1年となりました。このあたりの取り組みは以前から行っていますが、さらに強化に努めました。

下期からは、特に第4四半期には労働時間の制約による社内混乱も、かなり落ち着きました。1件当たりの作業時間を減らしたことにより、影響を最小限にとどめることができました。全体の引越件数は81万8,000件と伸び悩みましたが、ある程度予想の範囲内であり、無理をする必要性はまったくなく、及第点だと考えています。

単価面では、価格の適正化を進めた結果、通期で前年比103.9パーセントの上昇を実現しました。しかしながら、人件費や傭車費など一部のコスト増もあり、経常利益率は11.3パーセントの維持水準にとどまりました。

今期はあらためて件数にこだわり、成長路線に回帰したいと思っています。件数が下がることは、会社の文化的にあまりなかったため、回帰するという強い信念を持って進めていきます。

その一環として、初めて同業の引越会社をグループ化しました。福岡の会社です。パートナー戦略を含め、引越案件を全方位で獲得するとともに、お客さまに寄り添うサービスを展開し、商品販売やグループのリユース事業を進めていきたいと考えています。

BtoB市場、BtoG市場はそれぞれ1,000億円規模の市場があると見ており、ここ1年で本格的に取り組みを始めました。今まで培った技術を用いて、新たな成長を成し遂げたいと考えています。

引越を基軸にするビジネスの可能性は限りなく広く、サカイ引越センターグループは唯一無二の存在を目指し、今後もM&Aを加速させていきたいと思っています。

最後に、配当性向は55周年でもあることから45パーセント、普通配当87円と記念配当10円を予定しています。また、機動的な自己株買いを検討することで、引き続き成長投資と株主還元のバランスを維持しながら、取り組んでいきたいと考えています。今後ともよろしくお願いします。

キャピタルアロケーション

キャピタルアロケーションについては、中長期で示すべきものを単年度で示すことが難しいため、今回は概要のみでご容赦いただきたいと思います。

キャピタルアロケーションを検討するために、昨年11月に資本政策委員会と戦略投資委員会を設置しました。議論を重ねた結果、配当を含めていろいろな取り組みを行いました。ただし、できてまだ半年くらいの委員会のため、いろいろな活動を順番に進めていきたいと考えています。

キャッシュインは、当社の場合はほぼすべてが営業キャッシュフローです。キャッシュアウトは、株主還元として配当性向45パーセントの配当金、更新投資と成長投資になります。どの企業も同じですが、成長投資には人的投資が含まれます。当社は人がすべての会社のため、人的投資を積極的に行っていきたいと思っています。

M&A投資は、グループ戦略の一環であり、グループの投資を積極的に行っていきたいと思います。引越を扱っている企業とご縁があれば、さらに進めていきたいと思います。当社は引越会社ですが、DX投資もさらに進めたいと考えています。

スライドのインフラ投資の項目に、BCP投資とあります。わかりにくいのですが、当社の本社は堺市にあり、南海トラフの影響を受ける可能性もあります。そのような面では、本社の堺市にすべての機能が集約されていることにはリスクがあるため、インフラ周り・システムを含め、BCP対策にも投資していきたいと思っています。

1.連結決算概要

下田敬司氏(以下、下田):経理本部課長の下田です。連結決算の概要をご説明します。

2025年3月期の売上高は前期比3.6パーセント増の1,210億2,300万円、営業利益は前期比1.4パーセント増の129億2,500万円、経常利益は前期比1.9パーセント増の131億4,300万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比4.9パーセント増の87億6,500万円となりました。 

2.セグメント別売上高

セグメント別売上高です。今期より株式会社サカイパンダロジが連結会社になり、引越事業に含まれています。それを踏まえ、引越事業は前期比3.3パーセント増の1,033億8,500万円となりました。

電気工事事業は前期比0.9パーセント増の46億4,100万円、クリーンサービス事業は前期比3.9パーセント増の54億7,000万円、リユース事業は前期比10.0パーセント増の68億3,300万円、その他の事業は前期比4.5パーセント増の6億9,200万円となりました。

3.個別決算概要

個別決算概要です。2025年3月期の売上高は前期比2.6パーセント増の1,040億600万円、営業利益は前期比1.9パーセント増の113億9,500万円、経常利益は前期比2.7パーセント増の117億1,900万円、当期純利益は前期比5.0パーセント増の78億7,700万円となりました。

4.チャネル別売上高

チャネル別売上高です。一般は前期比4.1パーセント減の137億3,400万円、インターネットは前期比1.1パーセント増の357億2,200万円、法人は前期比4.9パーセント増の528億5,700万円、法人のうち事業会社は前期比8.2パーセント増の206億8,900万円、その他は前期比29.6パーセント増の16億9,200万円となりました。

5.経常利益の変動要因分析

個別の経常利益の変動要因についてご説明します。増益要因としては、単価上昇により32億5,100万円の増となりました。

減益要因としては、件数減少により6億2,600万円の減、売上原価では傭車費の増加などにより17億9,700万円の減、販管費では人件費の増加などにより6億1,200万円の減となりました。

6.傭車利用の状況と取組

傭車利用の状況ですが、傭車費用は前期比15.8パーセント増となりました。

7.件数・単価の動向

件数と単価の推移です。法人事業が売上に貢献し、作業単価は3年連続で過去最高値を更新しました。

8.件数・単価の動向

価格帯別の件数割合です。運賃の改定やコストアップによる価格転嫁をはじめ、大型案件やVIP案件などにも注力したことで、高単価層の割合が増加しました。

9.連結貸借対照表

連結貸借対照表です。現金及び預金が4億7,500万円増加し、300億1,400万円となりました。純資産は66億8,800万円増加し、960億円となりました。

また、有利子負債の残高は、前期末と比較して7億4,800万円減少し、42億100万円となりました。

10.連結キャッシュフロー計算書

連結キャッシュフロー計算書です。営業活動によるキャッシュフローは、前期比で1億4,600万円増加しました。投資活動によるキャッシュフローは、前期比で10億2,300万円減少しました。

財務活動によるキャッシュフローは、前期比で23億4,200万円減少しました。現金及び現金同等物の期末残高は、前期比で15億2,600万円減少し、262億500万円となりました。

11.TOPICS

山野:当社の経営戦略についてご説明します。まずは、4つのトピックスをご紹介します。

1つ目に、スライド左上に記載のとおり、デジタルの取り組みを競う内閣府主催の「Digi田甲子園」に当社も応募し、内閣総理大臣賞を受賞することができました。

当社は体力的な会社と思われがちですが、そのようなことにも取り組んでいます。これは、地域創生を含め地域の引越情報と合わせたことを提案するものです。スライドの写真は、社長の田島が総理官邸で表彰された時のものです。

2つ目に、スライド左中に記載のとおり、GMO顧客満足度ランキングで、当社が引越会社の総合満足度第1位になりました。ほかにもオリコンなどいろいろなランキングがありますが、GMOでも1位になったことで、継続して品質にこだわってきた甲斐があったと思います。

3つ目に、スライド左下に記載のとおり、当社のキャラクターが同じパンダであることから協賛し、上野動物園のパンダの看板の下に、当社の看板を設置しました。

4つ目に、スライド右に記載のとおり、「エシカル引越」がスタートしました。5月も5,000件を超える申し込みがありました。これは、引越代金に二酸化炭素をオフセットする為の費用を上乗せしてお客さまから頂戴するものです。もちろん任意です。

三重県尾鷲市と協定を結んでおり、尾鷲の森と二酸化炭素排出量をオフセットする契約です。当社単体でいろいろなことをするよりも、サステナブルな社会を目指して、お客さまも巻き込んでいく必要があると考え、このような取り組みを行っています。若い世代を含めて、たくさんのお客さまに興味を持っていただいています。

12. 2025.3期の振り返り

2025年3月期を振り返ります。はじめに、新入社員の状況です。このご時世、人を雇うことはかなり難しく、新入社員を雇えない企業もたくさんある中、大卒・高卒を含めてグループ全体で、今期の4月1日に482名の新入社員が入社しました。本当にありがたい話であり、彼らを早く一人前に育て上げることが必要だと感じています。

その反面、新型コロナウイルスの影響で離職職が上がり、疲弊感をかなり出してきましたが、今は少しずつ下がっています。個人的には10パーセント前後まで下がると思っています。

2024年問題で「時間が短くなった、仕事が楽になった」という方もいますが、時間が少なくなったことから「給料が稼げなくなったため、他の稼げるところに行きたい」という方もいて、なかなか難しい状況です。

2025年3月期は離職職が10パーセント前後まで下がるのではないかと思っていましたが、最後は止まらなかったところがあります。

スライドの右端のグラフは、四半期別の作業件数の推移です。2024年3月期は、うるう年だったことに加えて、当社は引越の卸日ベースで、すべての会計基準で売上計上しているのですが、その中でカレンダーめぐりが非常に良く、引越件数がかなり増えた特殊な年となりました。

その中で、2025年3月期第4四半期はそこそこがんばれているのではないかと思ってます。2024年問題もあり、作業件数はやや下がるものの、3月には昨年とほぼ一緒か1時間マイナスくらいの労働時間で推移しました。そのような面では取り組みが少しずつ成就してきたと思っています。

13. 2025.3期の振り返り

昨年、一昨年にいろいろな要因があったものの、第4四半期も売上はしっかり確保できました。

また、新型コロナウイルスで転勤需要がなくなるという話もありましたが、最近はまた転勤がかなり増えてきています。各企業は「人の成長には転勤が必要だ」という考えで、当社に多くの発注をいただいています。

同業の大手から断られたという企業から、なんとかならないかと相談を受け、かなり駆け込みで受注いただきました。当社もできるだけのことはしたいと思いましたが、既存のお客さまに迷惑をかけられないため、すべてを引き受けるわけにはいきませんでしたが、それでもかなり大きく伸長しました。

単価上昇については、価格転嫁を踏まえて、2024年7月に長距離運賃の改定を国交省に届け出ました。また、一昨年にも法人の運賃体系の改定を国交省に届け出ており、少しずつ単価に転嫁できるようになりました。

単に価格を上げると、同業他社も含めて競争しているため、お客さまに選んでいただけなくなりますが、今まで品質面をしっかり取り組んできたおかげで受け入れていただいています。

14.業界を取り巻く環境

業界を取り巻く環境については、以前からお話ししている状況から大きな変化はありません。

新設住宅着工戸数は横ばいが続き、ピークに比べると若干少ないのですが、過去に比べても遜色がないレベルで推移しています。日本人の移動者数も、ドラスティックに減っているわけではなく、横ばいもしくは微減で推移している状況です。

その中で、運送事業者自体かなり厳しい状況で、廃業されているところ、倒産されているところがかなり多くなっています。さらに、ドライバーの有効求人倍率が2倍を超えており、採用するのも大変難しい状況になっています。

15.業界を取り巻く環境 ~業績の推移~

そのような状況下、当社は業績を伸ばし続けています。なぜなら当社は、現場のリアルを鍛えているからです。現場のリアルを絶えず磨くこと、訓練することにより、力を伸ばしていくことが大切です。

スライドの同業他社との売上の推移を比較すると、C社は別としても、A社、B社、D社、E社は、横ばいもしくは売上が減少しています。

やはり専業である自社に多くの依頼をいただき、伸びていく傾向は、今後も続いていくのではないかと思います。また、続けていく決意で取り組んでいます。

16.引越業界の売上高シェア推移

ここ10年間の売上シェアの推移です。こちらは、引越市場規模を5,000億円と仮定して算出したものです。先ほど、他社では横ばいもしくは売上が減少傾向にあるとお話ししましたが、各社もしくは月ごとに前提条件が変わってしまう可能性があるためです。

当社のシェアは、10年前には13.6パーセント、680億円くらいでした。5年前は891億円で17.8パーセント、2025年3月期は20パーセントまできています。B社に関しては、決算発表がまだだったため、前年実績を適用していますが、過去の流れから見ると、大きく相違ないと見ています。

10年前の大手5社のシェアは50パーセントでしたが、現在は60.8パーセントになっています。その中で当社だけが、シェアを7パーセント近く伸ばしています。そのような面でも、これからもシェアを伸ばしていけるのではないかと思います。この業界で唯一無二の存在を目指し、今後もシェアにこだわって取り組んでいきたいと考えています。

17.引越業界の現状課題とサカイの対策

業界の現状の課題と当社の対策についてご説明します。1つ目は、2024年問題です。これは当社だけでも重たい案件であったにもかかわらず、すべての取引先業者を苦しめ、相乗で大きな問題になりつつあります。

当社はスケールメリットを活かすこと、ネットワーク体制を活用すること、またコンプライアンスを徹底することのこの3つで生産性を上げていきます。

コンプライアンスの徹底に注力し過ぎているところもあるため、作業件数がマイナスになりましたが、今後も徹底しながら取り組んでいきます。そのような面では、2024年問題の影響が大きいのですが、当社の規模感からすると、しっかり乗り越えていけると見ています。

2つ目は、人手不足です。先ほども新入社員のスライドでお話ししましたが、当社は人を集める力がとても強い会社だと自負しています。高校回りをして先生方とコミュニケーションを取ったり、従業員も卒業した高校を回っていろいろなことをご説明したりして、人材の獲得に努めています。

もちろん上場企業であること、テレビCMの人気の高さに加えて、最近は従業員に対する待遇改善があり、そのような面で、人手不足でも人を集めていけると考えています。

3つ目は、料金の高騰です。仕入価格が高騰していますが、スケールメリットを活かして大量に仕入れることで、価格を下げています。また、特に一般物流と傭車先と比較しても安い値段で、グループ企業に仕入れを依頼しています。さらに全国ネットワークを活かして仕入価格を抑えています。

4つ目は、環境への配慮です。リユース事業は引越会社だからできることだと思っており、ここを伸ばしていきます。ただし、お金を出したり、寄付したりといった話ではなく、引越会社が資源として持ち帰ればリユースになるため、リユース事業に注力したいと思います。

また、「エシカル引越」の導入や、いろいろなシステムを入れて配車効率を向上することで環境負荷を減らしていきたいと思います。以上のように、当社は、2024年問題を含む業界の課題を乗り越えていけると思っています。

18. 当社の強み

当社の強みは5つあります。1つ目は、圧倒的な集客力です。80数万件の引越を実施しています。

これ以上受注してしまうとできないのがわかっており、お客さまをむやみに広げることもできないため、一部で受注制限しています。特にインターネットでは、かなり受注制限してこの数字のため、集める力は強いと考えています。

2つ目は、圧倒的な採用・人材力です。

3つ目は、圧倒的な技術力です。5月9日に「専務杯」という技術コンテストの新人戦がありました。全従業員の中から、予選を勝ち上がった者を本社で戦わせます。またそこで得た知識を持ち帰らせることを繰り返しているため、他社に負けない圧倒的な技術力がつきます。

4つ目は、全国ネットワークです。引越会社は今、全国で二百十数社あります。この業界の参入障壁は低いですが、今からどこにどのような会社が参入しても、とりあえず当社と競合する状況です。

当社と競合するということは、拡大のスピードを加速できるということですので、全国ネットワーク網を早期に展開した当社に大きな強みがあります。

5つ目は、引越を基軸としたグループ戦略です。今はパートナー戦略としてムービンググループの形成を行っています。また、M&A、リユース、電気工事、一般物流についても積極的に取り組み、グループ戦略である「暮らしの中にもっと“SAKAI”を!」というキーワードで伸ばしていきたいと思っています。

19.採用と定着の状況

採用人数は482名となり、サカイ引越センターグループ入社式を大阪市中央公会堂で行いました。やはり地域ごとで行うと、同期感がなくなるため、みんなを集めて行うことになりました。大学生のみでしたが、全国の新入社員が一同に集まる大規模な入社式は、55年目にして初めてです。

また、今は採用も多様化しており、リファラル採用にかなり力を入れています。先ほどお話しした技術コンテストで、全国から選抜された30名弱のうちの2名は、父親が当社の従業員です。今いる従業員の子どもも次々と入社しています。

加えて、当社でアルバイトをしていた95名を正社員として登用しました。逆に、当社が内定を出した後にアルバイトに来ている方もいますし、アルバイトで来ている方に内定を出すこともあります。

100名近くの方がアルバイトを経験しており、ミスマッチが少なくなっているため、離職を減らす手段の1つになります。離職率は10.6パーセントになっています。

20.サカイの成長戦略

当社の成長性については、以前からお伝えしているとおり、半期ごとに振り返りを行っています。

「価値の訴求」が大きな命題となります。その下に5つの指針として、共創の経営、人材活用、生産性向上、シェア拡大、グループ戦略があります。

価値の訴求については、評価は「〇」だと思います。共創の経営と人材活用についても評価は「〇」としています。

生産性向上については後ほどご説明しますが、事務職1人あたりの取扱件数が減っています。ただし、管理部門を減らすわけにはいきませんので「△」にしていますが、今後は伸ばしていきたいと考えています。シェア拡大、グループ戦略については「◯」です。

21.価値の訴求 ~世界一の新生活応援グループを目指して~

サカイ引越センターグループは「まごころ こめて おつきあい」を大きなモットーに掲げています。これは創業者の言葉です。そして、Main Visionとしては「世界一の新生活応援グループ」を目指しています。

その実現に向けたMission 1が「すべての引越に携わる」ことです。どのようなかたちでも構いませんので、引越に関わっていきたいと考えています。Mission 2は「グループ戦略」を進めていくことです。

キャッチコピーには「暮らしの中にもっと“SAKAI”を!」を掲げています。全社一丸となって、こちらに取り組んでいきます。

それを達成するためにも、引越を基軸とした好循環ということで、引越とそれに付随する業務を同時にお客さまに提供することで、シナジーを生み出していきます。それにより、高満足な引越作業を行うことで、それに伴いシェア拡大をどんどん図れます。

そして、私どもがシェアをどんどん拡大していくことにより、競争環境を緩和します。そうなれば、プライスリーダーになることができます。待遇改善やDXを推進し、圧倒的な機動力でグループを拡大していくことで、この循環をどんどん回していきながら、さらなる価値の訴求をしていきたいと考えています。

22.価値の訴求 ~世界一の新生活応援グループを目指して

その基本として、1つは引越の単価をどれだけ上げられるか、もう1つは付随業務をどれだけ増やせるかが重要です。私どもは、引越単価はもちろん、付帯単価も上げていくことができています。

引越単価は2024年7月に運賃を改訂しました。その前提として、長距離運賃の改訂があったため、お客さまにもご理解いただけました。

付帯単価についても、いろいろな商品をラインアップしています。スライド右下に「レギュラー」と記載しているのが一般的なもので、電気工事や家電・家具などの商品販売です。以前もお伝えしましたが、あるメーカーのエアコンは量販店を抑えて、当社が一番お客さまに直接販売していると聞いています。

その他にも、引越のタイミングで抗菌・消臭の施工をしたのが17万6,000件あります。また、協力業者とタッグを組んで、入居前に防虫効果のある液剤を塗布する害虫防除プログラムも実施しています。これらは引越の時以外なかなかしづらいものですので、そのような意味でお客さまの役に立っています。

さらに、ポリカーボネート板は毎年12万枚くらい販売しています。このような取り組みにより、付帯単価を増やしています。

23.価値の訴求

価値の訴求については、2021年以前は単身の家族だけだった引越も、今は大型移転やプレミアムサポートなど、タワーマンションなどへの引越もどんどん手がけていきます。サカイ引越センターとしては、そのようなバリューコンシャスな引越を提供します。

一方、単身で安く引越を済ませたいお客さまに対しては、パートナーやグループ会社でコストコンシャスな引越を提供します。

25.共創の経営 ~パートナー売上、引越品質の確保

実は、パートナー売上は好調に推移しています。スライド右側のグラフのとおり、今期予算は25億円でしたが、パートナー戦略により28億円弱の実績となりました。来期は31億円を計画しています。

これでも少ないと感じるかもしれませんが、件数を思い切り増やすとやはり品質が悪くなり、お客さまからの不満が非常に高まってしまうことがあります。そのため、無理せず予算どおりに、きちんと品質を担保しながらパートナーに取り組んでもらうことを考えています。

26.グループ戦略~株式会社スタイルとの協業~

グループ戦略における、株式会社スタイルとの協業についてです。スタイルは九州にある会社ですが、九州エリアの支配率も2ポイント上昇しており、12月に資本を入れています。

現状はまだシナジーが創出されていませんが、来年の繁忙期までには、共同配送や共同運行の仕組みを作り、シナジーを出していきたいと思っています。

また、スタイルでは平日の受注件数に困っていると聞いていますので、サカイ引越センターの仕事も請け負っていただけることになっています。今後もこのような協業を広げていきたいと思っています。

28.人材活用 ~働きがいの創出~

人材活用について、現在のエンゲージメントスコアは54点となっています。コロナ禍の入社式では、高校生を200名くらい採用しましたので、家族や学校の先生をご招待し、イベント化することで満足度を向上させました。

また、外国人等の採用も進めています。外国人人材が実際の引越作業をしているかというと、まだそこまでではないのですが、将来の布石を打っておきたいと考えています。やはり文化の違いがとても大きいため、いくら当社の従業員が指示しても、なかなか理解してもらえないこともあります。

現在はベトナム人3名、ネパール人3名がシステム系業務の高度人材として就業しています。8月にはインドネシアから8名が入社しますが、サカイ引越センターの今の環境と、将来きたるべき外国人の雇用環境の間を取り持ってもらえるような人材の育成にも取り組んでいます。

29.人材活用 ~働きがいの創出~

ユニフォームもリニューアルしました。こちらはミズノと共同開発したもので、かなりの好評です。今までのユニフォームは昔ながらの作業ズボンで動きづらく、危険な面もありました。

そのため、若い従業員が着て、かっこいいと思えるようなユニフォームに刷新しています。私の年代からすると、半ズボンにスパッツという格好にはこれまでの制服とのギャップを感じ、抵抗がありますが、若手には好評です。

31.生産性の向上

生産性の向上としては、いろいろ検討しています。「Digi田甲子園」などを利用して、社内のデジタル化もどんどん進めていっています。しかし、作業件数が減ってしまっているため、前期および当期については、生産性向上が図れませんでした。

ただし、法人業務はいろいろなかたちで自動化されていますし、顧客情報の登録については以前とは雲泥の差でデジタル化が進んでいます。引き続き、生産性の向上についてはこだわって取り組んでいきたいと思っています。

現在はインターネットの担当者もいますが、そのような業務もAIで代替できるのではないかと考えており、実現したあかつきには、既存の担当者は別の部門で活躍していただきたいと思っています。

33.シェア拡大

シェア拡大については、全体的に係数が下がっていたのですが、関東圏だけはシェアを上げています。裏を返せば、それだけ熱心に取り組んだということです。以前から、環境戦略を含めて「関東がキーだ」と言い続けていますが、成果が出始めたと考えています。

前期には浦安支社と鴻巣支社を出店しました。今期は平塚支社と守谷支社を出店する予定で、渋谷にも小さいながら営業所を作っていきたいと考えており、こちらでは小さな引越に対応したいと思っています。

品川駅の貨物駅である「東京レールゲート」にも大きな倉庫を借りており、モーダルシフトや小口配送の取り組みなど、実験店としてそのようなことも行っています。

34.シェア拡大 ~法人チャネル~

シェア拡大に向けては、BtoBや大型移転、行政の仕事がありますが、今年の参議院選挙でも支援を行っています。

各自治体の投票箱の設置から回収の見直しなども手がけていますが、今期予算の29億円から、来期は32億円まで目指していきたいと考えています。信頼を得られれば、将来また依頼をいただけますので、きちんと対応していきたいと思います。

また、琉球大学病院の引越にも12月から携わっており、ちょうど3月で終わったところです。

さらに、「松井秀喜記念館」での業務も担っています。スライド右端の写真は、松井秀喜さんが畳の上でずっと素振りしていたことの証となる貴重な展示物です。このような価値のある物品の運搬も手がけています。

36.サカイの成長戦略 ~グループ戦略~

グループ戦略については、電気工事、リユース、クリーンサービスを主軸にしながら、それ以外の分野も基盤ができつつあります。

以前は電気工事、リユース、クリーンサービスしかなかったため、この3つで売上高300億円を目指していたのですが、住環境メンテナンスや商品販売などでさらに売上高300億円を作っていきたいと思います。そして、グループ全体では売上高1,400億円を目指します。

37.グループ戦略 ~電気工事~

電気工事は非常に順調で、サカイ引越センター以外の外販の仕事がかなり伸長しています。一部の家電メーカーなどから直接受けている仕事が非常に多くなってきました。

また、新規分野の取り組みとして、防災関連で消防設備の点検業務を行っています。さらに、EVの台数もかなり増えていることから、EVの設備工事とメンテナンスも行っています。サカイ引越センターのエアコンの脱着をメインで行っていた会社でしたが、継続して外販売上を伸ばすことができるまでに、大きく育ってきていると言えます。

38.グループ戦略 ~リユース~

リユースについても、引越時の引取件数がかなり上がってきており、売上高も順調に上がってきています。まだまだ利益率が低いため、これは私どものノウハウでは対応できません。

そのため、「ジモティースポット」との協業店舗を神奈川県に出店しました。ジモティーでは集客を含めて物の仕入れがしたいというニーズがあり、当社はノウハウをもっと仕入れたいと考えていたことから、今回の協業となっています。

39.グループ戦略 ~クリーンサービス~

クリーン・システムでは、不動産管理会社の管理物件の清掃案件をどんどん増やしているところです。BtoBが忙しく人手も足りないことから、なかなかBtoCに進出できていませんが、BtoCに進出できるように取り組みを進めていきたいと思っています。

40.グループ戦略 ~株式会社キャンディルとのシナジー~

キャンディルは持分法適用会社で、6億円くらいの相乗効果が出てきました。キャンディルの水まわりコーティングを私たちが販売して、キャンディルが施工しています。

また、引越業者であるがゆえに物損事故も起こってしまうのですが、キャンディルのシステムによって、何かあったらすぐに窓口につながり、一緒に対応できるように検討しています。これにより、お客さまに迷惑をかけない体制を構築していきます。

41.今後のグループ戦略

2027年3月期は売上高1,400億円を目標とします。引越単体で1,100億円までは確実に達成したいと思っていますし、グループ事業では最低でも300億円はクリアしたいと考えています。

将来的には引越事業単体で経常利益率12パーセントにすることを掲げ、引越を基軸としたグループ戦略により拡大していきます。M&Aがなかなか成就していないため、こちらもきちんと実績を出していきたいと考えています。

42.連結業績予想

下田:2026年3月期の連結業績予想についてご説明します。売上高が前期比3.7パーセント増の1,254億8,200万円、経常利益が前期比1.7パーセント増の133億6,800万円、当期純利益は前期比1.7パーセント増の89億1,500万円を見込んでいます。

43.個別業績予想

個別の業績予想については、売上高が前期比2.9パーセント増の1,070億2,200万円、経常利益が前期比0.8パーセント増の118億1,500万円、当期純利益は前期比0.8パーセント増の79億4,100万円を見込んでいます。

44.株主優待

2026年3月期の配当は、1株当たり98円、配当性向44.7パーセントを予定しています。なお、後処理の関係で44.7パーセントとなっていますが、実際の配当性向は45パーセントとなる予想です。

質疑応答:配当性向引き上げの背景と自己株取得について

質問者:今回、配当性向を35パーセントから45パーセントに引き上げたとのことですが、キャッシュアロケーションを考えている中で、その背景として自己資本比率をどのように見ているのですか? 

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