総選挙後の日本市場が急上昇した背景とは

松本大氏:総選挙があり、マーケットが随分上がっているということで、「なんでだろう?」と思っている方もいるかと思うので、まずは簡単にそれだけお答えしておきます。

おそらく、自民党がかなり議席を減らしたわけですが、国民民主党なりと連携をしていかないと政権運営ができにくい中で、国民民主党が言っているような財政出動、あるいは減税などを自民党政権も取り入れていかなきゃならないんじゃないかとか。

あるいは、日銀との関係でも、石破(茂)さんは、金利は上げていったほうがいいんじゃないかというのがどこかにあったと思うのですが、このような状況ではとてもそんなことを言い出せないので、金利は上げられないだろう、ということで円安になる。

財政出動という言い方はちょっとアレですが、そういう財政を使った景気浮揚策が出やすくなるんじゃないかとか、そういう一連の連想で流動性が増えてマーケットが上がったのだと思うんですね。

総選挙で与党があれだけ負けた次の日のマーケットで、以前の日本であれば株式は売られたと思うんですよね。ところが今回は上がった。上がった理由は先ほど言ったように、説明できるのですが、もし下がっていても、やはりもっともらしい説明ができるんですね。

やはり上がったことが大切で、なぜ上がったかというと、センチメントとしてインフレ的な連想が日本は強いということと、中国やヨーロッパはいろいろな問題があって今はとても投資ができないので、お金はアメリカと日本しか行きようがないとか、そういったことがあって、やはり今回の中でも、マーケットは上がる方向を選んだんだと思うんですね。それがすごく重要なところじゃないのかなと思っています。

質疑応答:TOBされたティーガイア社について

それでは、いただいたご質問についてお答えしていきたいと思います。質問は全部読むのではなく、要約しながら対応をしていきたいと思います。

「先日ベインキャピタル社(Bain Capital LLC)にTOBされたティーガイア社(3738)について。通常TOBされると株価が上昇すると思うのですが、当該企業は26パーセントのディスカウントTOBです。どういうことなんでしょうか?」ということです。

これは、もともと株価が上がりすぎていたり、あとは詳しくは憶えていないのですが、TOBに応じる大株主との間であらかじめ何か握りがあったんじゃないかなという気がします。

一般に、TOBとかMBOでは株価は上がるのですが、株主構成などの関係で税金が得になるかたちで大株主が株を売れるので、その分価格を下げてやるというやり方があるんですね。そういう中で株価が下がることもあると思います。

日本におけるプライベートエクイティファンドが上場企業に関わる時は、少数株主にとって必ずしも一番いいかたちにならないこともあったりするので。

私も、東証の市場区分に関わる「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」のメンバーで、そこでもそういう問題を取り上げて、良くしていこうと取り組んでいます。

質疑応答:新興国の投資信託について

「新興国の投資信託、インデックスよりアクティブのほうがいいのでしょうか?」。そうですね。新興国はやはり為替のリスクなどで、すごく大きくずれることがあるので、インデックスよりはいいマネージャーが運用するアクティブファンドです。

アクティブというのは、売ったり買ったりするという意味ではなく、マネージャーがきちんと会社を見て、選んで買っているという意味です。新興国の場合、個別株で買うのはすごくリスクがあると思うんですよね。新しい状況が発生していても、なかなか情報が入ってこなかったりするので、ファンドのほうがいい。

ファンドもテーマによるんですかね。例えば「インド」というテーマだと、インデックスでもいいんじゃないかと思います。やはり、マネージャーをよく見ているもの、ということになるかと思います。私だったら、いい運用者が運用しているアクティブファンドを探しにいくと思います。

質疑応答:AIバブルが来る可能性について

「AIバブルが来る可能性がありますか?」。「NVIDIAの株価がバブルなのか? 安いのか?」というのは議論があるところですが、岡元(兵八郎)なんかに言わせると「安い」って言うんですね。

AIの可能性があまりにも大きい中で、AI関連株がすごく上がっているようで、まだ実は控えめなんだという考え方もあり得えます。「AIバブルは来る可能性がありますか?」というご質問に対しては、来る可能性があると思います。

質疑応答:セブン&アイの株価について

「セブン&アイ(3382)に関する質問です。現在の株価は2,200円台。外資が2,700円で買収するのに株価が上がらないのはどうしてですか?」。

結局、買収提案に会社側が乗らないと……この、クシュタール(Alimentation Couche-Tard Inc.)という会社は敵対的買収をするとは言っていないんですね。あと、確か法的に拘束力のある「買います」というのも出していないと思うんですね。

だから、敵対的買収でもなく法的拘束力のある「買いたい」でもなく、ただ「買いたい」と言っているので、その買収が起きるか起きないかがわからない。わからないのでそこまでは株価が上がらないということだと思います。

質疑応答:暗号資産について

「マネックス証券で投資を始めて10年が経っています。長期・分散・低コストでインデックスファンド投資を継続しています。マネックスグループはマネックス証券を売却し、暗号資産交換所の『Coincheck』に注力しているように感じています」ということなんですが。

いや、そんなことはなくて、マネックス証券の半分程度をドコモ(9437)さんに渡して、逆にドコモさんの顧客ベースにアクセスできるようにして、ドコモさんと一緒にマネックス証券を今の2倍以上、3倍、4倍、5倍、10倍に育てていこうと思っています。マネックス証券を売却したんじゃないんですね。マネックス証券を大きくするために半分をドコモさんに持ってもらって、一緒に育てることにしたかたちです。

暗号資産に関しては、今、金がすごく強くて、ドルによる世界の通貨制度に対するヘッジとして金が買われているとよく言われますが、金を買っている人は、実はビットコインもある程度買っているという話があります。

日本もアメリカも、やはり国がお金をいっぱい使うと思うんですよ。だからお金がどんどん刷られる。それは短期的には株価が上がるのですが、お金が刷られるということはお金の量が増えるので、お金の価値が下がると思うんですね。例えばキャベツを作りすぎると価格が下がるみたいな。お金を刷りすぎれば本来的な価値は下がる。インフレが起きるわけです。

そういう時に安定した価値を何が持てるだろうかということで、通貨の価値は下がるけれど株の値段が上がるから、「いってこい」でいいじゃないかという考え方もありますが、そういう時のためにリスクヘッジとして金やビットコインのような暗号資産というのがあると。

あるいは、暗号資産はプログラムができるお金なので、例えば悪い人に渡ったら価値がなくなったり、お金を盗んでドラッグや武器を買おうとしても、日用品しか買えないお金を作ることもできるので、いろいろなかたちで暗号資産はまだ可能性があると思います。

質疑応答:AI株を売却するタイミングについて

「そう遠くない時期にAI市場はドサッと下がる懸念が消えません。どんなマーケットシグナルを察知した時に半分売るなどといった対応をすればよいか教えてください」。

わからないですよね。これは有名な実験なんですが、体育館の上から砂をずっと落とすんですね。そうしたらグーッと砂の山ができる。だんだん高くなってきてどこかで臨界点を超えて崩れるんですね。これ、何回実験をやっても崩れるタイミングも崩れる大きさも崩れる形も全部違うんです。

バブルの崩壊はそういうことで、臨界点が来ると崩れるんだけれども、起きてみないと、タイミングや大きさ、形はわからないんですね。

シグナルはなかなかなくて、崩れ始めた時に売る。要するに、それまでの最大利益から2割減ったら、もう半分売る。4割減ったら残り半分も売っちゃうとか、そういうルールを決めておくんですね。

ルールを決めておかないと、最大利益から2割下がった時に、また戻るかもしれないと思ってアクションが取れない。そうしたら4割まで下がっちゃうとか、そういうことがあるから、今言ったようなかたちでルールを作っておく。察知することはまず不可能だと思うので、売られ始めたらルールに基づいてきちんとポジションを減らしていくとよいと思います。

質疑応答:農業関連への投資について

「食品の値上がりでエンゲル係数がすごいことになっています。そこで農業関連に投資するのもありかなと思いました」。

投信で、「グローバル・アグリカルチャー&フード株式ファンド」というものを当社でも扱っているのでご検討いただけると幸いです。

質疑応答:5億円を10年寝かせる場合の配分について

「今、5億円の余裕資金が手に入ったとして、今後10年寝かせる場合、投資や預貯金の配分など、どういうふうにしたいか?」。

10年間、蓋を閉めておくんだったら、どうですかね。S&P500のインデックスと、マネックス・アクティビスト・ファンドを35パーセントずつと、金を20パーセントと、ビットコイン10パーセント。35パーセント、35パーセント、20パーセント、10パーセント。10年蓋をするんだったら。

MAF(マネックス・アクティビスト・ファンド)以外の65パーセントは基本ドル建ての資産ですね。10年経つとやはりドルが強いんじゃないかというビューもあるし、ビットコインも金も、基本はドルベースで、考えると思います。

質疑応答:東証取引時間延長について

「取引時間が30分延長されますが、場中に決算を発表する企業は増えるでしょうか? 個人投資家には不利になると思っていて、できればやめてほしいです」。

東証市場の価格発見機能という観点では、場間に発表したほうがいいと思いますが、個人投資家の方の場合、日中は情報を見たり判断したりなどのアクションが取れない方が多いと思います。

そう考えると引け後のほうがいいと思うので、そういう株主、投資家の方のご意見を聞きながら決めていくことになると思います。場中に決算する企業は増えるでしょうが、限定的なんじゃないのかなと今は思っています。

質疑応答:20年後の日経平均株価について

「20年後の日経平均株価はいくらぐらいと予想しますか?」。20年ね、ちょっと待ってくださいね。20年というと、10万円を超えている、12万円……11万円ぐらいですかね。10万円を超えていると思います。12万円ぐらいいくんじゃないですかね。年率6パーセントで20年間、今の日経平均からコンパウンドすると12万5,000円になりますね。

だから、6パーセントいくかな。でも仮に6パーセントが無理で、3パーセントしかいかないとしても、それでも7万円いくんですね。だから10万円以上……いや、やはり12万円ぐらいいっていると思います。

質疑応答:ストラテジックキャピタルのダイドーリミテッドのエンゲージメントについて

「ストラテジックキャピタルのダイドーリミテッド(3205)のエンゲージメントをどのように思いますか? 当初のエンゲージメント内容とは違い、すぐに株を売却し、提案した取締役もすぐに退任してしまいました」。

これはストラテジックさんもプレスリリースを打っていて、変な意図はなかったんだと説明をされていますが、少なくとも外から見る限りでは、少し変な感じだったという思いを私も持っています。今度、丸木(強)さんに会ったら、質問してみたいと思います。

質疑応答:ハイイールド債を買うタイミングについて

「ハイイールド債を買うタイミングについて教えてください。ちなみに今は買い時ですか?」。

やはり投資なので安い時に買うべきで、アメリカの金利が、この間1回下がりましたが、なんとなく今の景気はあまりにも強くて、もうそんな簡単には下げないんじゃないかという憶測もあるので、アメリカの金利がきちんと下がり始めるのを確認できてから買うのでいいんじゃないかなとは思います。

質疑応答:宇宙ビジネスの現状と今後、スペースX上場の可能性について

「私募ファンドでスペースX(SpaceX)を購入しました。宇宙ビジネスの現状と今後と、スペースX上場の可能性について松本さんの見解を」ということなんですけど。

宇宙ビジネスはまだまだ伸びていくと思います。文字どおりスペースがあると思いますが、スペースXが必要な資本量などを考えると、やはり上場しないとお金が足りないと思うので、上場の可能性は高いと思います。時期がいつかはよくわからないです。

質疑応答:新興国と日経平均の伸びしろについて

「現在2銘柄の投資信託を保有しています。日経平均と中国を除く新興国の2つです。今後、資金の都合があり、新興国を取り崩して日経平均に乗り換えていくのがよいかなと考えていますが、新興国と日経平均、どちらが伸びしろが大きいと思いますか?」。

為替のこともあるので、難しいですね。日経平均のほうが為替も安定しているし、いろいろな意味で安定しているので安心で、新興国は伸びはあるかもしれないけれども、為替で一気に全部すっ飛んじゃうかもしれないというのがあるので、私だったら半々で持つかなと思います。

現地通貨でお金を借りて新興国のファンドを買えるのなら、それが一番いいと思いますが、そういうことはできないので、新興国ファンドを買うためには新興国の為替のリスクを取らなきゃいけない。それを考えるとなかなか悩ましくて、今もし両方持たれているのなら、私だったら半々にすると思います。

質疑応答:課長になったら心掛けたいことについて

「毎月の配信、楽しく拝聴させていただいています。私事ながらこのたび課長になりました」。おめでとうございます。「そんな私に今後のアドバイスをお願いします」。

課長になられたということは、その上に役員とか社長とかも当然いるわけですね。仕事をしていると「なんで部長はこんなことするのかな?」とか「なんでこんなことを言うのかな?」とか、あるいは役員に対しても、「なんでこういう説明をするのかな?」とか、あると思うんですね。

そういう時に、自分だったらどういう判断をするかな、自分だったらどういう説明の仕方を社員、あるいは世間に対してするかなというのを考えるといいと思います。要はイメトレをする。

ご自身の会社の部長、役員、社長などがどこかで何かを話したり、何か判断をした時に、「なんでそうなの?」と思うのは簡単かもしれません。もちろん、いい判断やいい発言をされる場合もあると思いますが、自分だったらどうベターにできたかなというのを考えると、とてもいいかな。イメトレをするといいかなと思います。

質疑応答:米国大統領選の影響について

「米国大統領選で共和党が勝利すれば移民規制により物価が上がり結果的に金利が上昇し、円安が進むのでしょうか?」。

これね、難しいと思うんですよ。トランプ氏になるとインフレ政策でドル高になるんじゃないかという考えが多いと思うんですけど、トランプ氏は金利を上げたくないと言う可能性があります。もちろんこれは中央銀行の専権事項ですが、大統領の発言で金利があまり上がらない可能性もゼロではありません。

インフレなのに金利が上がらないと実質金利は下がるので、結果としてドル安になるということはあり得ると思います。為替については様子を見ないとまだわからないですね。

質疑応答:株の勝率について

「『文藝春秋』に、株をやった人の95パーセントは損しているという記事があってモヤモヤしています。松本さんの感覚で、株をやって、『1番、めちゃ儲かっている人』『2番、ちょっと儲かっている人』『3、トントンの人』『4、ちょっと損した人』『5、めちゃ損した人』の割合はそれぞれ何パーセントだと思いますか?」。

人の数じゃなくて金額で言ったら、損している金額よりも儲かっている金額のほうがはるかに大きいですよね。人数で言ったら損している人のほうが多いのかもしれない。だけど金額で言ったらたぶん儲かっている金額のほうがはるかに大きいと思います。

やはり投資理論などで随分変わってくるので、我々もいろいろなセミナーを開催していますが、投資の仕方は学んだほうが結果が出るので、学んでいただけるように、我々もなるべくわかりやすいサービスをご提供していきたいと思います。

質疑応答:年度末のおける日経平均とS&P500の予想について

「松本さんの、年度末の日経平均、S&P500の予想」。えぇ、わからない。日経平均は年度末だと4万1,000円ぐらいかなという感じがします。S&P500はどうかな。今から見て、年度末でそれぞれ、3パーセント上と6パーセント上とか、そんな感じでしょうかね。

質疑応答:トルコリラへの投資について

「先月の『ここだけトーク』でトルコリラへの投資をご質問されていた内容の筋が良いと感じ、追加質問させてください。現在トルコリラは4.2円です。1万通貨単位で年間1万4,000円のスワップポイントがもらえます。すると3年保持すればトルコリラがどんなに下落しようとも負けなしになります。これを理解した上でのトルコリラへの投資は筋が良いでしょうか?」。

いや、これは下がっていってしまうとスワップポイントも小さくなっていっちゃうし、固定ではないので、スワップポイントも動きます。一概にそのようなことはないと思います。

今日もいっぱいご質問、ご要望いただきましてありがとうございました。みなさまからのご要望が我々にとってのガイドになりますので、これからもぜひさまざまなご要望、ご批判、ご質問をいただければと存じます。本日は長い時間、ありがとうございました。