登壇者の紹介
司会者:みなさま、本日は株式会社Schooの記者発表会にご来場いただきまして、誠にありがとうございます。Schooは、本日10月22日、東京証券取引所グロース市場に新規上場しました。
本発表会では、株式会社Schooの代表取締役社長CEO森健志郎よりご挨拶と、Schooの事業および成長戦略についてお話をいたします。短い時間ではございますが、どうぞ最後までお付き合いください。それでは、森さん、よろしくお願いします。
森健志郎氏(以下、森):株式会社Schoo、代表取締役社長、森です。今日は、みなさま、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。今から会社の概要と成長可能性について15分ほどお話をいたします。
会社概要
森:それでは、会社紹介をいたします。エグゼクティブサマリーを軸にまず全体観をお話しします。
弊社は、オンラインでの社会人教育に創業13年来一貫して取り組んできた会社です。その中での主力事業は、BtoB SaaSモデルの動画研修プラットフォーム「Schoo for Business」というサービスです。このサービスは、ARR、CAGR52パーセントの成長をしている、まさに高成長SaaSで、この事業が我々の現在の基幹事業となっています。
弊社が目指しているのは、社会人教育の第一想起です。日本の大人の方が何かを学びたくなったら「schoo」だよね。企業が人材育成について相談したくなったら「shoo」だよね。そんな社会人教育、リスキリング、人的資本経営で、最初に想起していただけるブランドを目指していく。それが我々が今目指しているところです。
今日は、たくさんお話をするので、「株式会社Schooは、社会人教育の第一想起を目指している会社だ」と、そこだけしっかり覚えていただければと思っています。
ミッションは「世の中から卒業をなくす」
森:最初に、我々の会社のミッションを紹介させてください。我々の会社のミッションは、創業13年来変わっていません。「世の中から卒業をなくす」です。私自身、創業する前はリクルートという会社に勤めており、その時のeラーニング研修は自分が満足するものではありませんでした。
学習体験が物足りないから学べないだけではなく、お金がない、時間がない、場所がない、モチベーションが湧かない、さまざまな学びを妨げている課題が、社会人には存在します。
そういった課題を、テクノロジー、クリエイティブ、ビジネスモデルですべて解決していく。それによって学び続ける社会を作り、日本経済、ひいては世界経済の前進に寄与していきたい。そんなことを創業13年来一貫して掲げてきたのが、株式会社Schooです。
ちなみに、社名の「Schoo」は、「SCHOOL」という学校の英単語の終わりの「L」を取って「Schoo」です。学校の終わりをなくし、学びの終わりを取り除く、そんなことをブランド名・会社名にも込めています。
社会人教育の重要性の変化
森:社会背景です。少子高齢化というトレンドから、日本国内の社会人教育の重要性は飛躍的に高まっています。社会人教育に位置する主要な3つのプレーヤーにも、13年前から潜在的にじわじわ変化が起こってきました。
1つ目が企業です。終身雇用のモデルは、もう終わりを迎えています。デジタルを中心に新しい人材を外から採用しようと思っても、そもそも人材が外にいない。だから自社の人材を育成することに時間とお金をかけていかなければならない。そんな変化が起こってきました。
次に個人です。転職、副業、起業など、働き方は多様化しています。自分で何を学んで、どのように生きるか。キャリアオーナーシップを一人ひとりが持っていく重要性が拡大しています。
3つ目が、大学や専門学校などの高等教育機関、資格の学校などの社会人教育事業者です。そもそも少子高齢化で学生となる方が減っています。コストを下げたり、留学生や社会人を取っていくために、オンラインをもっと使っていかなくてはならない、そんなマーケットになっています。
こういった変化は13年前からどんどん進んできたものなのですが、ここ数年で一気にスピードを上げて進んでいます。国主導のリスキリング政策であったり、人的資本経営であったり、人への投資だったり、国策としての取り組み・メッセージが、この変化を今一気に押し上げていて、不可逆なものにしています。そんな背景の中で、我々はビジネスをしています。
オンライン動画研修プラットフォーム「Schoo for Business」の紹介
森:今お話しした社会背景と連動するかたちで、社会人教育の変化に網羅的に対応できるビジネスポートフォリオを持っていることが弊社の特徴です。
法人向けには、オンライン動画研修プラットフォームの「Schoo for Business」、個人向けにはコミュニティ型動画学習サービスの「Schoo for Personal」、大学や専門学校、社会人教育事業者のみなさんには、データ活用型のラーニングマネジメントシステムである「Schoo Swing」。これら3つのサービスをご提供しています。
これらはすべてオンラインの動画教育のサービスであり、リカーリング型中心、積み上げ型中心のビジネスモデルです。また、売上高構成比の94パーセントは、法人向け「Schoo for Business」が占めています。
ビジネスポートフォリオは、社会人教育の変化に網羅的に対応できるように作られていますが、BtoB SaaSの事業の構造をしているのが弊社の特徴です。
財務のハイライト
森:次に、財務のハイライトを簡単にご紹介します。2023年9月期は締まっており、売上高20億円、営業利益6億円の赤字で着地をしています。2024年9月期は第3四半期累計まで締まっています。3クオーターの売上高は20億3,000万円、営業利益は300万円の黒字に転換をしています。
ひとえにリカーリング型中心の収益がしっかり積み上がってきたこと、原価を中心にコストコントロールをしっかりと行い、利益を出しながら成長するという経営体制が確立されてきたことによるものです。
収益の内訳
森:我々の収益のほとんどはBtoB SaaSで、90パーセントの売上はリカーリング収益です。そのため、SaaSのメトリクスについても簡単に補足をさせていただければと思います。
弊社SaaSのメトリクスであるARRは28億円、CAGRは52パーセントの成長を続けています。このARRを分解すると、契約社数×ARPA(1社当たりの単価)というかたちに数字を分解することができます。一般的なSaaS同様、契約社数2,400社、CAGR20パーセントと、社数もしっかり面として伸ばすことができているだけではなく、弊社の特徴は、1社当たりの単価を示すARPAが、CAGR26パーセントに伸び続けているということです。
背景は2つあります。1つは、我々のビジネス構造は変わっていないのだけれど、社会背景の変化により、大企業のお客さまからの問い合わせがシンプルに増えていること。2つ目が、部分的に導入いただいた会社さまに、弊社のプロダクトやカスタマーサクセスに強くご満足をいただく中で、部分導入・全社導入に移行するアップセルが再現性を持って実現できる取り組みが確立されてきたことです。
社数だけではなく、1社当たりの満足度も高まって、1社当たりの売上高も伸びているのが弊社のSaaSモデルの特徴です。
Schoo社の沿革
森:ここからは詳細の話になるので、ポイントを絞ってご説明します。気になる点は、ぜひ質疑応答のパートで聞いていただければと思います。
弊社の沿革です。弊社は2011年10月に創業しました。最初は、個人向けtoC向けのサービスで事業を開始しました。その中でいろいろな動画学習コンテンツ、いろいろな機能を一般の個人の方に使っていただき、どうすれば動画学習で満足いただけるのかというノウハウをためてきました。
そのノウハウを個人向けに活用するだけではなく、2015年には、法人向けのサービスに転用することで、さらに収益成長が加速していきました。かつ、ここ数年は、人的資本・リスキリング市場の追い風を捉えて、業績成長がさらに拡大しているというのが弊社が置かれている状況です。
主力事業は「Schoo for Business」
森:そんな弊社の主力事業は「Schoo for Business」というオンラインでの動画研修プラットフォームです。コンプライアンスやビジネスマナーなど、企業や人事から従業員に対する強制型の研修ではなく、所属している従業員が自発的に学び続けられる環境を作る自発学習環境の整備を一括でお任せできますという、オールインワンの企業内人材育成プラットフォームです。
収益のかたちはリカーリングです。1従業員当たり月額1,650円を基準の価格として、積み上げ型で収益をいただくモデルとなっています。
市場環境と競争優位性
森:ここからは、市場環境と競争優位性です。まず、マクロの市場トレンドです。釈迦に説法ですが、日本は少子高齢化です。労働生産年齢人口はどんどん減っていますが、1人当たりの労働生産性は停滞している。このままでは、少子高齢化によって経済の規模を維持していくのは難しい。もしかすると、日本に暮らすすべての人の幸福を維持していくことは難しいかもしれません。そんな状況の中で、我々は経済活動を行っています。
我々が広義的に位置をしているHRマーケットは、まさに今、ゲームチェンジのタイミングを迎えています。今までは、子どもが増えていました。人が増えていました。そのため、企業が経済活動を行う上で、人材紹介や人材派遣といった外から人を集めてくる採用費にしっかりとお金をかけて、採用をしっかりとマネジメントしていけば、経済活動を維持・拡大できていました。
ですが、今は少子高齢化です。すでに地域を中心に、必要な人材が採れていない会社が増えています。だからこそ、自社にいる従業員の生産性を上げるため、自社に足りない職域の人材を育てるために、人材の育成に対してお金をもっと使っていかなければならないマーケットに変化をしてきています。
かつ、優秀な人材に定着してもらわなくてはいけません。優秀な人材は、自分のキャリアを本気で考えています。だからこそ、成長できる環境を選ぶようになってきています。人材の育成、定着にお金をかけなければならないマーケットに、HRマーケットが全体が変化をしてきている。その追い風を我々は受けているという状況です。
狭義的に弊社が捉えているマーケットは、法人向けeラーニングの教育市場、約1,100億円のマーケットです。
このマーケットでお話できることが2つあります。1つは、まだ弊社は、ARR28億円の規模です。なので、しっかりと今のプロダクトを展開していくことで、まだマーケットを取っていく余白が十分にあります。現状のマーケットだけでも余白が十分にあると考えています。
2つ目は、今お話ししたとおりです。HRマーケットの変化から、教育や定着に企業がもっとお金を払うようになっていますし、なっていきます。マーケット自体も中長期で見ればさらに伸びていくだろうという環境で我々はビジネスをしています。
質と量の両面で強みを持っているコンテンツ
森:今お話しした法人のオンライン教育市場においては、専門型のeラーニングベンダーさまや、対面式の研修でeラーニングにオンラインで取り組む会社さまなど、さまざまな競合がいます。
そういったしのぎを削る会社さまに対して、我々は「コンテンツ」「プロダクト」「カスタマーサクセス」の3つの強みの掛け合わせで、今までもマーケットシェアを伸ばしてきましたし、今後も勝っていくことを考えています。
1つ目はコンテンツです。質と量、両面で強みを保有しています。弊社は創業13年来、自社でスタジオを作り、内製のコンテンツを1つ1つ手作りをしてきました。
不満足だったコンテンツは分解をし、作り直し、満足いただいたコンテンツは再現性を追求する。その13年間の試行錯誤の中で、どうすれば動画学習コンテンツでご満足いただけるかというノウハウを蓄えてきた、それが第一の強みです。
かつ、すでに8,500の日本語の学習講座、社会人向け動画学習講座を保有しています。一般的な個人や一般的な企業さまの大まかな教育ニーズには、ある程度応えられるようなラインナップをすでに保有しているのが強みです。
独自体験とプロダクト
森:2つ目が独自体験とプロダクトです。創業13年以来、ライブ配信、双方向で学び手と教え手がやり取りをするという学習体験を追求し、インタラクティブな学習体験をオンライン上で作ってきました。通信サービスの運営の中でPDCAを回しながら、実際に学び手にご満足いただける体験を追求し、それを法人研修のシチュエーションで提供するからこそ、今までの強制的に従業員に与えられる、ちょっとつまらないeラーニングの体験とは違うねというところでお客さまからご支持を得てきている、そんなプロダクト体験が強みの2つ目です。
細部にこだわるカスタマーサクセス
森:3つ目が細部にこだわるカスタマーサクセスです。一般的なSaaSは、オンボーディングに終始するケースがとても多いです。使い続けていただくところまでしっかりとサポートするSaaSさまは多いですが、弊社は、弊社のサービスを使っていただくことで、いかにその企業の従業員に最後まで学び続けていただけるか、その企業から卒業をなくせるか、ここに徹底的に向き合ってきている会社です。
そのため、しっかりと伴走するカスタマーサクセスをやっています。その結果、アップセルを考慮した解約率であるNet Revenue Churn Rateは、直近12ヶ月の平均で、0.04という低い水準まで引き下げることができています。満足いただけるコンテンツやプロダクトを提供する中でカスタマーサクセスがしっかり伴走し、使って、学んで、その企業から卒業がなくなるまで徹底する。これが弊社の強みの源泉となっています。
成長戦略
森:最後に成長戦略をお話しします。まずは短期の成長戦略です。一言で申し上げると、大企業のお客さまをもっと取っていくぞというのが成長戦略です。
今日本の大企業は変革期にあります。少子高齢化によって外から人を採ろうと思っても、そもそも人が足りていない。リスキリング、人的資本経営をもっと本気で考えなくてはならない。大企業のみなさんは、人的資本や組織の戦略についてしっかりと考え直さなければならないタイミングに来ています。
そんな大企業のみなさまに、「Schoo for Business」というオールインワンの人材育成サービスをご提供するだけではなく、一緒に人的資本戦略を考えていくコンサルティングサービスだったり、その企業にできる限り寄り添ったかたちのオンライン集合研修サービスだったり、そういったオプションサービスを組み合わせてご提供することをすでに始めています。その結果、クロスセル・アップセル、新規のお客さまの開拓が加速をしており、現状のCAGRの業績成長に強く起因しています。
「もっとこんなサービスを作ってほしいよ」「もっとこんなコンテンツを作ってほしいよ」というお声をいただいているので、これをさらにSaaSサービス、オプションサービスで反映していく。そうすると、また深く大企業に入っていけて、もっと深くお声を聞かせていただける。そんなグロースサイクルをぐるぐる回していくことで、さらに高い成長性を追求していくというのが、短期的な成長戦略の柱となっています。
業績予想
森:この成長戦略をもって、業績予想を出しています。すでに第3四半期まで締まっている2024年9月期の通期の業績予想は、売上高28億4,000万円、営業利益3,600万円の黒字を見込んでいます。また、2025年9月期の業績予想は、売上高37パーセント成長の39億円と営業利益6億4,000万円の黒字を見込んでいます。
中長期的な構想
森:最後に、弊社の中長期的な構想について紹介をさせてください。法人向けサービスを中心に、リカーリングレベニューをこれからも積み上げてまいります。
その結果、2つの核となる資産を積み上げていけると考えています。1つ目が「学び手の顧客基盤」です。新しいことを学びたい個人、学ばせたい企業、そういった学び手の顧客基盤をしっかりとプールしていく。今までもしてきたのですが、もっと増やしていく。これが第一のキーアセットになっていくと考えています。
2つ目が「教え手のパートナーシップ」です。弊社のプラットフォームでは、3,000人以上の講師の方に今までご登壇いただいています。教育ビジネスをもっと提供していきたいという大企業、高等教育機関、社会人教育事業者と教え手とのパートナーシップはもっと増えていくと思います。
最終的にはこういった2つのキーアセットを「Schoo」のブランドの上でマッチングさせていくマーケットプレイスでのサービスを提供したり、それらのステークホルダーを巻き込んで一緒になって日本の隅々まで学びを届けていって、世の中から卒業をなくせるようにやっていける地域の独自提供モデルを作っていきたいと考えています。
既存事業の成長とアセットを組み合わせた新たな施策の結果、「社会人教育の第一想起」、大人がなにかを学びたくなったら「Schoo」、企業が人材育成、人的資本経営を相談したくなったら「Schoo」、と想起していただける会社になるということを戦略の目標としています。
森:今回このタイミングで上場も、まさにメディアのみなさまを中心に、リスキリングや人への投資に注目が集まっていて、ご形成いただくシチュエーションも多くなっている環境だと考えており、社会人教育だったら「Schoo」だと、名前をたくさんの方に覚えていただけるように企画したというのが背景です。簡単になりますが、私からの会社の紹介は以上です。ぜひ質疑応答でいろいろなお話しを賜ればと思っています。ありがとうございました。
質疑応答:リベラルアーツ分野を設けた背景
質問者:コンテンツの中にリベラルアーツがあると思いますが、あれは最初からあったものではなく、途中からあったものなのでしょうか。またどういった狙いであの分野を作ったのか教えていただけますか。
森:最初から作られたものではなく、段階的に作っていたものです。狙いとしては、できる限り柔らかく、日常に活かせる学びを取り揃えていくことで、最初の学びの敷居をもっと下げていきたい。学びに対して抵抗感を持っている人たちに、もっと学び始めていただけるようにしたいというところから、お金や健康を中心とするリベラルアーツのコンテンツの拡充を行ってきました。
質疑応答:講師依頼の基準
質問者:教え手がかなりいらっしゃるとのことですが、講師を依頼している際に何か基準はあるのでしょうか?
森:明確に汎用的な基準を設けているわけではありません。ガバナンスやコンプライアンスを重視いただけるすばらしい方というのが前提です。作っていきたい学習コンテンツに合わせて要件を設定して、その要件に満たされた講師の方を探してご連絡しているので、コンテンツ単位によって違うところがあります。
質疑応答:カスタマーサクセスの手法
質問者:チャーンレートの下降とカスタマーサクセスのやり方の関係性についてうかがいます。目に見えて下がってきたのは、どういったカスタマーサクセスの手法を取り始めてからだったのでしょうか?
森:組織の中での学び合い、これを弊社のカスタマーサクセスが一緒になって作っていきました。
弊社の代表的なクライアントである旭化成(3407)さまとも、カスタマーサクセスの取り組みをしました。新入社員の方々と一緒にコンテンツを選択して学んだ結果、その方々が学んだ内容を社内のチャットツールに投稿したり、一緒にそのコンテンツを使った勉強会を開いたりしました。
中のサービスを使っている従業員や人事任せにするのではなく、カスタマーサクセスが一緒になって企画をして使ってもらう、それによって使い始めたり使い続けている人たちを増やしていくという取り組みをやってきました。
今、旭化成さまの事例でお話ししましたが、企業さまに合わせてカスタマーサクセスが伴走し、組織の中で学び合いの文化を作っていく方針を続けてきたというところが、解約率を大きく引き下げ、ネットレベニューチャーンレートの大きな引き下げに寄与していると我々は考えています。
質疑応答:投資における今後の方針について
質問者:2024年9月期から黒字になりましたが、今後は安定して黒字を達成していくのか、それとも場合によっては成長投資をして、黒字よりも売上成長を目指すのか、お考えをお聞かせいただけますか?
中西勇介氏(以下、中西):私、CFOからお答えします。基本的には、正のキャッシュフロー、黒字の範囲内で投資を行うということを基本に、方針を固めています。
かつ、基本的にブレークイーブンポイントを超えると、それ以降は限界利益率が高まって、利益の出やすい体質にあるという状況なので、その範囲内で適切な投資を行っていきます。ただし、おっしゃるように、勝負の時には一定のコーポレートアクションをするということも当然放棄しません。
質疑応答:上場のきっかけについて
質問者:なぜ上場しようと思ったのか、そのきっかけを教えてください。
森:先ほどお話ししましたが、やはり「社会人教育の第一想起を獲得する」という中長期の戦略的な目標を掲げている以上、まずは多くの方に、今ホットになっているリスキリングや人的承継というトレンドと「Schoo」を結びつけて認識していただく必要があると思います。それが今一番やりやすいのが、上場だと我々は考えています。
中長期的な戦略目標である「社会人教育の第一想起を獲得する」ための大きな手段として上場を企画したというのが、一番大きな理由です。
質疑応答:地方創生の展望について
質問者:御社の事業の中に「地方創生」があると思います。上場したことによって今後、どういった展望を考えているのかを教えていただきたいです。
森:お答えできることも限られてきますが、現状、企画されている内容をお話しすると、やはり自治体の方と連携して個人や企業の方に届けていく方式をもっと探っていきたいと考えています。
例えば、地域の企業さんや個人の方は、どうしてもデジタルリテラシーや情報の非対称性が課題ですし、研修にかけられる予算など、さまざまな面で導入に至れない、そのサービスが使えないというシーンが多く見られます。
なので、その地域でパワーを持っている地方行政、地方自治体の方々と連携をして、そういった企業・個人の方にどうすれば学びを届けていけるのか、現状でも模索をしていますし、鹿児島県の日置市においては、取り組みが開始しています。自治体と連携をして、地域の企業・個人にいかに学びを届けるか、を第一に進めていきたいと考えています。
質疑応答:2025年9月期の業績見通しについて
質問者:2025年9月期の業績見通しについて、もう少し詳しく教えてください。
「2025年9月期は、ARPAの高い大企業を中心とした新規獲得、既存顧客のアップセルを進めるため、単価上昇が全社業績を牽引する」と書いてありますが、この2025年9月期については、どのタイミングで増やせそうなのかという見通しと、既存顧客のアップセルについて、今期にどういったところが特徴的になりそうか、というあたりを教えていただければと思います。
中西:2025年9月期のご質問だと認識をしています。端的に申し上げて、先ほど森からもありましたように、弊社の売上は2要素あります。1つ目が、契約社数×ARPA(1アカウントあたりの平均売上)です。
「そこでどのように仕組みを作っていくか?」という質問だなと捉えさせていただくと、社数は前年対比、成長率110パーセントです。それに対して、ARPAの成長率は、135パーセントです。
つまり、前年対比だと、売上全体は137パーセントの成長になりますが、我々は、主なメインターゲットを社数ではなく、1社あたりの単価を伸ばしていくというところに重きを置いています。
新規の獲得はもちろんしていきますが、それ以上に、1社あたりの単価を高めることによって、売上高の実現を目指すというのが、弊社の基本的な戦略です。
質疑応答:「全社導入」の展望について
質問者:その単価について、先ほど、「部分的に導入されている会社さんは、全社導入するようにする」とおっしゃっていたところだと思いますが、今年はどういったところでまだ伸びしろがありそうだ、などの特徴があれば。
中西:例えば、部分導入されている会社さんの特徴は、階層別ですね。「新入社員の研修で最初入った」とか「子会社の一部で入ったんだけど」というところが多いです。それを全社導入していく、というのが結論になるわけですが、具体的に申し上げると、「『Schoo』入れてみました」という大企業さまは、他のサービスも入れていらっしゃるんですよね。
その中で実際、新入社員に使ってみて、「あ、『Schoo』ってわかりやすいね」と。コンテンツの多さとか、プロダクトのわかりやすさとかで、「使ってみていいね」となって、「じゃあ他の部署でも使ってみよう」「今まで新入社員だけだったけども、マネジメント研修でも使ってみよう」。
そのようにして、だんだんと使われていく範囲が伸びていく。ここが、弊社のARPA拡大の作戦になると考えています。社数も伸ばしていきますが、社数以上に、ARPAのほうを伸ばしていくというようなイメージです。
質疑応答:販管費・人件費の内容について
質問者:2025年9月期の販管費・人件費が大幅に増える予定がありますが、どういったところに力を入れるのかをうかがえればと思います。
中西:主に、人件費です。人件費で増える部分は、大企業攻略に伴う営業人員です。あとは、上場会社として必要な管理人員の強化をメインとしています。そこが販管費の重要ポイントかなと思っています。
質疑応答:株価終値719円の受け止めについて
質問者:株価の終値が、719円とつきました。株価についてという点と、競合優位性の部分で、コンテンツ、プロダクト、カスタマーサクセスを挙げていますが、やはり他社と比べた時に差別化が見えにくい印象があります。
例えば「コンテンツをこういうふうにしていきたい」とか、他社と差別化を図っていきたいという点があればおうかがいしたいです。
森:まずは、株価に関してどう考えているかですが、しっかりと真摯に受け止めたいと考えています。公開価格と終値、初値の比較に関しては、ポジティブな、堅調なスタートを切ったかなというところです。
ご質問いただいているのは、おそらく弊社の資金調達上で、最終ラウンドの株価と現状の公開価格、終値を踏まえ、誤差があるというところかと思います。それに関しては、しっかりと今の株主さまにお返しをできるようにやっていくというのが、お答えになります。
というのも、最終ラウンドで入っていただいた株主さまのほとんどは、まだ売り出しではなく、360日のロックアップに応じていただいているので、まだ弊社の株主として残っています。なので、2025年9月期を踏まえて、しっかりとその先を見据えてバリューアップして、ご支援いただいた分をきちんとお返ししていきたいというのが、前提になっています。
質疑応答:競合優位性について
森:もう1つが、他社との競合優位性ですね。大きく分けると2つかなと思っています。1つ目がプロダクトの体験、もう1つがカスタマーサクセスです。
まず、プロダクトの体験ですが、我々は、「みんなで学ぶ」というところを通信向けサービスで磨き上げ、それを研修サービスに反映しているとお話ししました。
先ほどのプレゼンテーションでは説明を省いていましたが、生放送で双方向でやり取りをする機能だけではなく、集合学習機能という、弊社にしかない独自の機能のようなものにも落とし込みを行っています。
これは、日時と参加者を設定するだけで、弊社にある動画学習コンテンツや、その企業が持っているeラーニングなどのデータがその日時になると自動的に再生される機能です。設定された参加者だけがそのページに入れて、みんなでチャットをしながら、その動画の講座を楽しく受けることができる機能です。
みなさんもコンプライアンスとかビジネスマナーなど、そういった講座を受けなければならないことがあったかと思いますが、それを1人でただ観るのではなく、一緒に受ける仲間とチャットをしながら、楽しく学習することができる機能。これは、通信向けのサービス体験から法人向けのサービスにプロダクトとして反映した、独自の機能です。
こういった独自の機能開発を突き進めていくことで、競合に対しても優位性を発揮していきたいというのが、第一です。
2つ目が、カスタマーサクセスが深く伴走して、その企業の従業員が独自で学び合いを行っていくという支援です。これをやっていくのが、2つ目の競争優位性になるかなと思います。
質疑応答:中長期の戦略の時間軸について
質問者:中長期の成長戦略に関して、どれくらいの時間軸でどういったかたちを目指されるのか。あと今後、成長していく上で、新しいサービスを開発、新サービス、新プラットフォームを作っていくのか。そのあたりも含めて教えていただきたいです。
もう1つ、利用する企業や組む相手方が変わってくる中で、御社が発信される学習コンテンツの内容に今後、変化は生じてくるのだろうかというところに関しても、お聞かせいただければと思います。
森:まず、1つ目の中長期の戦略の時間軸ですが、ここで具体的な数字の明言は難しいものの、長くない時間軸で実現していきたいなということだけは、申し上げたいなと思っています。
マーケットプレイスや地域への提供モデルと書いているので、それに付随する新サービスの開発があり得るかというご質問ですが、あり得るというのがお答えです。現状、何か作っている、企画されているものがあるという状況ではなく、必要があれば作っていくというのが今、お伝えできる内容です。
質疑応答:学習コンテンツの変化について
森:2つ目の、学習コンテンツの変化ですね。これはあり得ると思います。ただ我々が13年間ビジネスをやってきた中で、例えば今まで必要だったロジカルシンキングが、1年後にまったく使えなくなるなど、急激な変化はなく、緩やかな変化の中で必要な学習は変化していっている、と考えています。
当然、テクノロジーをはじめ、新しく作り続けなければならないものはあるので、その部分はしっかりと原価として予算にも算入していますが、他のコンテンツはある程度、長く使うことを想定して作っているものも多くあるので、適時、時代の流れに合わせてアップデートしていくものもあるものの、一定、今のコンテンツでもある程度長い時間、有用な価値を発揮できるのではないかと考えている、というのがお答えです。
質疑応答:M&Aと海外展開の予定について
質問者:これまでコンテンツの買収なども含めてM&A的なことはされていたのか。今後、M&Aについてはどのような考えでしょうか? あと、海外には行かれるのでしょうか? すでに行っているのでしょうか? 以上、2つです。
森:お答えとしては、両方同じになるかなとは思いますが、M&A・海外ともに今、取り組んでいるものはありません。将来あり得るとは思っていますが、現状お伝えできること、企画しているものはないというのがお答えです。既存事業の成長と併せて、キャッシュも生まれていくことになるので、その取り組みの先として、M&Aや新規事業、海外展開は十分にあり得ると考えていますが、現状、何か進めているものはございません。
質問者:ありがとうございました。