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伊藤仁士氏(以下、伊藤):みなさま、こんばんは。IR・広報部長の伊藤です。本日は遅い時間にもかかわらず当社の会社説明会にご参加くださり、ありがとうございます。

本日は、当社の会社概要をご説明した後、2024年12月期第2四半期の決算の状況についてご説明します。また、株主還元の方針や7月に実施した株式分割、生成AI向けの半導体における当社製品の貢献について、さらに事前質問の内容についてもご紹介します。

会社概要

会社概要についてご説明します。当社は1912年に創業し、今年で112周年を迎えます。関連会社数は117社、従業員は約2万名となります。

荏原の歴史

荏原製作所は、創業者である畠山一清の恩師で、当時「ポンプの神様」と呼ばれた井口在屋先生の「ゐのくち式渦巻ポンプ」を製造する、大学発のベンチャー企業として創業しました。

創業の精神は「熱と誠」です。畠山一清はこの精神のもとに、事業を拡大していきました。「熱と誠」とは、「与えられた仕事をただこなすのではなく、自ら創意工夫する熱意で取り組み、誠心誠意これをやり遂げる心をもって仕事をすること」を意味しています。熱意と誠意の精神で人に接すれば、相手に通じないことはないという思いは、現在も従業員に根付いています。

製品で見る荏原の事業の歴史

事業の変遷についてご説明します。当社は1912年の創業以来、技術と信頼性をベースに常に、その時代の課題や産業が求めるものに対してソリューションや製品を供給してきました。

1912年の創業当初は、「水を安全かつ安定的に供給するための事業を通じて、国作りに貢献する」という意志を持って国産第1号となるポンプなどを開発し、日本の近代化に貢献してきました。その後は、ポンプで培った流体や回転体を扱う技術を中心に、事業を発展させてきました。

水を取り扱う場合はポンプ、気体を扱う場合には送風機やコンプレッサ・タービンにこの技術が使われています。冷凍機の場合は、ターボ冷凍機と呼ばれるものに同じく流体や回転体の技術が使われています。

祖業の大型ポンプは、現在ではインフラカンパニーに、標準ポンプと呼ばれる比較的小型のポンプや冷凍機は、送風機とともに建築・産業カンパニーに、コンプレッサ・タービンとカスタムポンプの一部はエネルギーカンパニーというかたちで発展しています。

また、ポンプの供給先である水処理プラントへも参入し、その後、焼却炉事業を手がけて、現在の環境カンパニーを発展させてきました。

1980年には、勃興しつつあった半導体市場に当社のポンプやブロアの技術を応用したドライ真空ポンプを開発し、市場参入を果たしました。

その後、回転体や流体技術を応用し、お客さまからのご要望とご助言を受けつつ、CMP(Chemical Mechanical Polisher)と呼ばれる半導体製造装置を開発し、市場投入しました。こちらも現在、主力事業の1つに育っています。

当社は、このように常に新たな課題に挑戦し、幅広く事業を展開していくことで発展を続けています。

現在5事業を展開していますが、2023年からはより市場に向き合い「顧客起点での価値創造」を実現していくため、従来の製品別組織から対面市場別組織へと再編しています。

くらしを支える荏原の製品

スライドは、当社製品がどのようなところで活躍しているかを簡単にまとめたイラストです。ふだん、当社製品を直接目にする機会はなかなかないかと思いますが、スライドに示すとおり、当社の製品はさまざまなシーンでみなさまの暮らしを支えています。

例えば、ビルやマンションでは水道の蛇口をひねるとお水が出てくると思いますが、地上3階以上の場所については、当社のポンプや給水ユニットが水を送るために使われています。家庭から発生したゴミを処理する廃棄物処理施設も当社で手掛けています。

また、電子機器には欠かせない半導体チップの製造工程で使われるCMP装置なども取り扱っています。このように、当社では社会インフラを支える製品を多数扱っています。

世界中で活躍する荏原の製品

海外にも幅広く展開しています。スライドに示したような場所で当社の製品が使われています。

例えば、砂漠の中にあるラスベガスでは、フーバーダムから水を送ってくる取水ポンプや送水の設備に当社の製品が使われています。また、シンガポールのマーライオンが水を吐き出しているポンプにも、当社のポンプが使われています。

また、コロッセオの修復プロジェクトの一環では、外壁洗浄用の高圧ジェットポンプに当社のポンプが使われました。このように、当社の製品はさまざまなかたちで海外でも活躍しています。

荏原の事業構成(2023年度)

事業の概況についてご説明します。2023年12月期の当社グループ全体の売上収益は7,593億円、営業利益が860億円、営業利益率が11.3パーセントとなっています。

先ほどご説明したとおり、当社は対面市場別に5つのカンパニーで事業を行っています。各カンパニーの事業規模はスライドに示しているとおりです。近年、半導体製造装置の市場拡大が続いていることもあり、現在精密・電子カンパニーの売上比率が上がっている状況です。

スライド右側に示した海外売上収益比率は、現在60パーセントを超えて年々拡大しています。すべての事業でアフターサービスに力を入れており、サービス&サポートの売上収益比率は全社で約40パーセントとなっています。

荏原の実績・強み

当社の実績と強みについてご紹介します。当社が100年以上にわたり培ってきた流体や回転体といった複数の技術を組み合わせることによる社会課題への解決力と、お客さまからの信頼性といった強みを活かし、業界トップクラスのシェアを誇る製品を多数保有しており、多くの納入実績があります。

建築・産業カンパニーでは、ビルや工場で使われている標準ポンプが国内シェアNo.1となっており、年間販売台数は130万台以上に上ります。また、冷凍機とともに使用される冷却塔のシェアもNo.1です。

エネルギーカンパニーではコンプレッサや大型のカスタムポンプを販売しています。その中でも、ダウンストリームと呼ばれる石油・ガスプラント向けのコンプレッサで世界のトップシェアを誇っています。また、クライオポンプと呼ばれるLNG向けのマイナス163度の極低温の液体を扱う特殊ポンプも、世界トップシェアとなっています。

インフラカンパニーと環境カンパニーについては国内市場を中心としています。洪水対策の排水機場用ポンプは国内トップシェアを誇っており、環境カンパニーにおいても、廃棄物処理施設として累計500施設以上を納入しています。

また、みなさまが注目している半導体市場向けビジネスを展開する精密・電子カンパニーにおいては、CMP装置の累計出荷台数が現在3,000台以上となっており、さらにCMP装置、ドライ真空ポンプともに世界2位のシェアを誇っています。

業績推移

スライドは、過去10年間の業績推移を示したものです。2017年に12月期の決算へ移行した後は、5期連続で売上収益、営業利益ともに過去最高を更新しています。

2020年には長期ビジョンを発表し、直近では中期経営計画の経営目標の達成や、成長事業の1つである精密・電子カンパニーの牽引など、着実に業績を伸ばしています。

中期経営計画「E-Plan2025」の位置づけ

当社の中期経営計画「E-Plan2025」についてご紹介します。「E-Plan2025」は、長期ビジョン「E-Vision2030」で目指す、2030年にありたい姿からのバックキャストと、「E-Plan2022」を総括して見えてきた課題を受けて設定したものです。スライドには、課題とビジョンを示しています。

一番のテーマは、製品主体のプロダクトアウトから、顧客ニーズを軸としたマーケットインの取り組みを加速することです。「顧客起点での価値創造」をテーマに、各事業でのさらなる競争力強化を進めています。

中期経営計画「E-Plan2025」の財務数値目標

財務数値目標です。「E-Plan2025」期間中は各事業の競争力強化のため、成長投資や基盤投資を行うことを重視していきます。その一方で効率性、収益性の指標は、2022年12月期に達成した高い水準以上を目指しています。

2023年12月期は投資を確実に実行しながらも、各事業の稼ぐ力が着実に成長したと言えます。2024年12月期については、2023年12月期以上に成長投資と基盤投資を実行するため、各指標で2023年12月期をやや下回るような計画となっているものの、引き続き高い水準を維持する計画となっています。

中期経営計画「E-Plan2025」のキャッシュアロケーション

「E-Plan2025」期間中のキャッシュアロケーションの推移です。2024年12月期は建築・産業カンパニーにおけるM&Aの実施やエネルギーカンパニーにおけるサービス&サポートの拠点の最適化、精密・電子カンパニーにおけるCMP生産工場の増設、また藤沢工場の研究開発棟の建設など、成長投資を拡大、継続していく計画となっています。

加えて、水素などの新規事業領域への投資や、全グループへの基幹業務システム(ERP)の導入も行います。各事業の競争力強化だけでなく、新しい収益の柱となる立ち上げと、それを支える経営プランの整備など、2025年12月期の目標に向かって着実に投資を実行していきます。

直近の業績動向

8月14日に発表した2024年12月期第2四半期の決算についてお伝えします。スライドは概要になります。今回の決算のポイントは、スライド下段に示した3点に集約されています。

1点目は、連結業績の全体感です。セグメントごとに若干の濃淡はあるものの、全体的に会社の計画比で順調な進捗となっています。開示している計画値との乖離も小さく、サプライズが比較的少ない決算になったと考えています。

2点目は、受注高と売上収益、営業利益から当期利益まで、すべて前年同期比でプラスとなっており、ヒストリカルにも第2四半期決算として過去最高業績となった点です。特に営業利益では前年同期比18パーセント増となり、利益創出力、いわゆる稼ぐ力も含めて好調を維持できた決算だったと考えています。

3点目は、みなさまの関心が高い半導体市場において、低迷していた市場が底打ちとなり、現在は回復基調が継続している点です。一部顧客の工場稼働率も向上してきたこともあり、アフターサービスも含めた当社の精密・電子カンパニーの受注が前年同期比で大幅増となっています。

通期の業績予想については、大きく変わってはいないものの、インフラカンパニーと環境カンパニーの受注状況と下期の動向を踏まえて、受注計画を若干上方修正しています。売上収益と営業利益については、前回の予想から変更ありません。以上が今回の決算の概要です。

FY24 1-2Q連結決算サマリ_セグメント別

セグメントごとの決算サマリです。受注高については、精密・電子カンパニーが前年同期比で大きく増加しています。建築・産業カンパニーも国内、海外ともに堅調に推移して増加しています。

インフラカンパニーは、排水機場向けの遠隔監視案件等を複数受注したこともあり、前年同期比で増加しています。一方、環境カンパニーとエネルギーカンパニーは、市場環境に大きな変化は見られないものの、大型案件の受注タイミングにより前年同期比ではやや減少しています。全体としては、前年同期比で300億円以上プラスとなっています。

売上収益については、インフラカンパニーを除く他のセグメントが堅調に推移しており、全体で前年同期比で307億円増となりました。営業利益については精密・電子カンパニーが牽引し、前年同期比で61億円増加しています。

次のスライドで、その増減要因についてご説明します。

FY24 1-2Q連結決算サマリ_営業利益増益分析

スライドは、昨年第2四半期から今期第2四半期にかけての営業利益の利益増減分析です。

売上要因としては、エネルギーカンパニー、建築・産業カンパニー、環境カンパニーで増収となり、41億円のプラスとなりました。収益性については、精密・電子カンパニーと建築・産業カンパニーの改善により92億円プラスです。ここは比較的増加水準になっています。

固定費については、ベースアップなどによる人件費の増加により83億円のマイナスがあり、円安による為替の影響として25億円のプラスとなりました。さらに藤沢事業所の建物の解体に伴う除却損で13億円のマイナスがあり、結果として第2四半期の営業利益は399億円となりました。

FY24 1-2Q連結決算サマリ_地域別売上収益

地域別の売上収益です。スライド右側の円グラフに示すとおり、海外売上比率は現在6割を超える水準となっています。今期第2四半期は、国内・海外ともに売上が増えており、特に国内は主に建築・産業カンパニー、環境カンパニーの売上が伸びています。

海外を地域別で見ると、前年同期比で伸びが大きいのは北米と中国です。一方、減少幅が大きいのは、台湾、韓国を含むその他アジアです。北米はエネルギーカンパニー、中国、その他アジアは、精密・電子カンパニーの売上が大きく影響しています。

FY24 業績予想

2024年の業績予想です。先ほどご説明したように、受注高は、環境カンパニーおよびインフラカンパニーの状況を受けて、110億円上方修正しています。それ以外については、期初計画から修正はありません。

株主還元

株主還元です。当社は、株主のみなさまに対する利益還元を最も重要な経営方針の1つと位置づけており、株主還元に関しても連結配当性向35パーセント以上を目標に、当該期の業績に連動して実施する方針としています。

2024年12月期は、1株あたり年間配当金は46円を想定しています。なお、当社は7月1日付で1株を5株に分割する株式分割を行っているため、2023年以前の年間配当金は分割後の金額で、遡及して記載しています。

株価推移

トピックスをいくつかご紹介します。1つ目のトピックは、株価推移についてです。2020年2月に、長期ビジョン「E-Vision2030」を発表しました。2030年に向けたありたい姿を示したもので、発表後は株価が着実に伸びていきました。

2024年2月には、通期決算発表後に初めて時価総額が1兆円を突破しました。その後も株価は上昇していく中、2024年6月30日を基準として、7月1日には1株を5株にする株式分割を実施しました。

株式分割の目的は、当社グループの持続的な成長に共感していただける方々にとって、当社の株を買いやすくすることにあります。より投資しやすい環境を整備し、特に個人投資家層の拡大を図ることを目的としています。

生成AI向け半導体と精密・電子セグメントの製品需要との関係

2つ目のトピックとして、最近世の中の注目度が非常に高く、急成長している生成AI向け半導体と、当社の精密・電子カンパニーの製品需要との関係についてご説明します。

生成AI案件の進化と普及、拡大に伴い、その基盤となる半導体技術への投資が増加しており、半導体市場は今後数年間に大きな成長が期待されています。

この中で鍵となるのは、スライド中央の図にあるGPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれる画像映像用のプロセッサーと、HBM(High Bandwidth Memory)と呼ばれる高いデータ転送速度を持ったメモリです。さらに、それらをインターポーザと呼ばれる基板の上でつなぐ配線が重要となっています。

当社製品群は、これらのGPU、HBMの製造、さらにはそれらをつなぐ配線工程において貢献することができ、生成AI向け半導体の需要増加によって、当社ビジネスの拡大が期待されます。

それぞれについて、簡単にご説明します。1つ目は、GPU製造向けです。GPUの生産量の増加に加えて、さらなる先端ノードのGPUが採用されることによって、当社製品の需要増加が期待できます。

将来的には、BS-PDN(Backside Power Delivery Network)というGPUの裏側に電源を取る技術が採用されると、裏面研磨が需要拡大し、弊社のCMP製品のさらなる需要拡大が見込めると考えています。

2つ目はHBM製造向けです。HBMの生産量の増加に加えて、スライド左の図に示したとおり、HBM1個あたりのDRAMの積層数が増えると、当社の製品の需要拡大が期待できます。すでにCMPは顧客の工場稼働率の上昇や増産によって、サービス&サポートの需要も増加しています。

将来的には、HBMのプロセスでハイブリッドボンディングと言われる、メタルと酸化膜を張り合わせる技術が採用されると、ここでもCMPが採用されますので、需要拡大が期待されます。

3つ目は、パッケージング向けです。インターポーザ上でHBMをつなぐ配線には、弊社のめっき装置が使用されており、2023年下期からすでに受注が増加しています。このように、生成AI向け半導体の需要増加に伴い、当社製品の需要も増加していくことが期待されています。

水素の社会実装への貢献

3つ目のトピックは、水素の社会実装への貢献です。事前にご質問もいただいていますが、当社の新エネルギーに関する取り組みをご紹介します。

弊社は、自社とバリューチェーンにおけるGHG(Greenhouse Gas)の排出量を軽減することで、2050年のカーボンニュートラルの達成を目指しています。

2021年には、水素関連事業プロジェクトをコーポレートプロジェクトとして立ち上げ、スライドに示したように、「つくる」「はこぶ」「つかう」の3つの領域で、荏原ならではの製品で水素社会を実現する取り組みを進めています。

水素を「つくる」領域では、ICFG(内部循環流動床ガス化システム)を開発しています。こちらは焼却炉を反応炉として用い、廃プラスチック等から水素等を製造する技術です。また、メタンを原料として水素と炭素を製造する、ターコイズ水素製造に関する研究開発を行っています。

水素を「はこぶ」領域では、スライドの写真にあるように、液体水素を昇圧するポンプの開発を完了し、昨年上市しています。また、アンモニアを石炭火力変換に用いるためには安全に運ぶ必要があるため、アンモニアキャンドポンプも開発しています。現在、株式会社JERAと共に実証実験を開始しています。

水素を「つかう」領域では、冷暖房を使うビルや工場、空港などの大規模施設に、快適な冷暖房空間を提供する吸収冷温水機において、従来は都市ガスを燃料としていましたが、世界で初めて水素を使用した製品も開発しました。こちらは現在、株式会社トクヤマと実証試験を開始しています。

また、ロケット用の電動ポンプについては、室蘭工業大学、インターステラテクノロジズ株式会社と共同研究開発を進めています。

統合報告書

最後のトピックです。2024年6月末に「統合報告書2024」を発行しました。弊社の取り組みについて詳しくご紹介しています。企業の価値創造ストーリーや、各カンパニーのビジネスモデル、ROICマネジメントなどについても記載していますので、ぜひこちらもご覧ください。

質疑応答:半導体製造装置の保守点検について

司会者:「半導体製造装置の保守点検の詳細を教えてください。ストックで積み上がるイメージでしょうか?」というご質問です。

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