決算は企業の“通知表”

ーー「決算について」おうかがいします。Kenさんにとって、株式投資における決算の位置付けはどういったものなのでしょうか?

Ken氏(以下、Ken):通知表に近いのかなとは思っています。会社を経営している中で、3ヶ月ではなかなか変化はしないと思うんですけど、例えば、営業を強化したりすると、3ヶ月で伸びる時もあるので、決算はそういう変化を読み取るものかなとは思っています。

小さな変化を読み取りたいなと思っていて、僕は株の話をする時に、「受験生に近いですよね」みたいな話をよくしているんです。例えば、偏差値が高い子は東大を目指すと思うんですけど、そういう子たちが東大に行くのは、株価的に言うと、20パーセント上がるみたいなイメージなんですよ。優秀な企業が優秀な成績を出して、それで投資家にも一応評価されている、みたいな。東大行くのはもちろんすごいので評価はされるんですけど、人によっては、東大に行くのは当たり前というか。

逆に偏差値が低い子たちが、難関大学を目指すのはたぶんとんでもないことで、そういうのを取りたいんですね。

決算ってテストに近いと思っていて、いきなりバッと点数が合格ラインまで行くのではなくて、「英語の点数はそんなに変わらないけれど、発音記号と文法だけ毎回取れるようになってきたぞ」とか「授業の小テストでけっこう点数が取れるようになってきた」とか、それが小さな変化だと思っているんです。

全体で見ると、500点満点中の10点とか20点ぐらいしか変わらないかもしれませんが、実力は絶対ついてきていて、いい方向に向かっている。

要因として、例えば塾に通い出したとか勉強時間を圧倒的に増やしたとか、そんな感じのことを決算で読み取って、そういう銘柄に入るのが理想なんですよ。小さな変化は利益率とか、販管費を抑えられているよねとか、そういうところを読み取ろうとしています。

ーーそれで言うと、あまり期待されていない会社って、たぶんマーケットでも埋もれていますよね。

Ken:そうなんですよ。誰も見ていない。ある意味、海運株、資源株も、かなり市況に振らされるもので、なかなかP/Lの予測がつかない結果、PERとしても低く評価される。けっこう大きな赤字も出したりするので、投資家から敬遠されがちだったんですけど、そこはいきなりコンテナのバブルが来ましたし。

資源株や石炭株もある意味、ESGとかで、どちらかというと遠ざけられる存在だったんですけど、結局必要になったら高くても買うしかないというところで、好きですね。ある意味、地銀も同じですよね。

1銘柄深堀りのほうがパフォーマンスは上がる

ーーKenさんも当然、ふだん検索ツールを使ったりされていると思います。どういう感じで銘柄を見つけたり、ウォッチしたりしているのでしょうか?

Ken:まず、人と意見交換して聞くというのが1つです。あとは、ちょっと世の中を広い視野で見たり、いろいろな情報を聞いたりする中で、「この業界、来そうだぞ」というのがあれば、「銘柄スカウター」とか「株探」とかを使って、その業界の関連銘柄を調べていますね。

あとは、単純に決算を見ていって、おもしろいところや知名度がある企業を見ます。例えば最近だと、メルカリの株価が下がっていたので、「それってなんで下がっていて、何が嫌われているんだろう?」とか、そういうのから入ったりしますね。

ーーほかになにかありますか? 『四季報』を四半期ごとに見るとか。

Ken:僕、四季報はあまり見ないんですよね。ちょっとおもしろいなという銘柄は見るんですけど、そこはあまり見なくて。

ーー四季報の全部の銘柄を見るツールとかあるじゃないですか(笑)。

Ken:四季報の記者の方と同じ温度感のものもあれば違うものもあるんですよね。たぶん、企業によって直取材とか電話取材とか、たぶんそういう違いがあるんだと思います。

なので、完全に参考にはしていないです。どちらかというと、1銘柄深堀りのほうがパフォーマンスが上がるのかなと思っています。網羅して見落としを減らすというのもある種のパフォーマンスの上げ方だと思うんですけど、僕はどちらかってというと、少し深堀ったほうがいいのかなと思っています。

例えば、『日経』はもちろん読んでいますし、あとは、『鉄鋼新聞』とか『海事新聞』とかいろいろあると思うんですけど、追っている業界の業界誌を見たりしています。

数字の裏付けや継続性の“解像度”を上げるためにログミーFinanceを活用

ーーさまざまな分析ツールがある中、ログミーFinanceを使う理由と、使うタイミングを教えてください。

Ken:ログミーFinanceを使うのは、自分の特定の銘柄の解像度を上げたい時です。決算とか決算説明資料とか有報とか、その企業の記事や他社メディアの記事を見たりする中で、もっと知りたいなという時にログミーさんを使っています。

「解像度って具体的に何か?」というと、その数字の裏付けや継続性です。それらを知りたいんですよね。

先ほどのテストの話だと、マーク方式の場合、適当に当たった可能性もあるわけじゃないですか。例えば長文で、1問20点のやつがたまたま当たっちゃったみたいな。それがたまたまなのか、それとも裏付けの理由があるのか。実は長文読解を最近がんばっているとか、そういうことを知りたい時にログミーさんを使っています。

決算説明会資料にも一応文言が書いてあるんですけど、前後の文章や温度感がわからないですよ。ただの説明資料の文字だとわからないんですが、ログミーの記事は話し口調で書かれているので、その温度感がわかりやすいです。

温度感がわかって、数字の裏付けがわかると継続性がわかってくる。マーケットは継続性を織り込むのが苦手なので、そこに、「自分が取れるかもしれない」という仮説が作れるかどうかを考える時に使わせてもらっています。

ーーKenさんは決算説明会の動画を見ますか?

Ken:例えばPBRが1倍割れているのに対して、表情や言い方で本当に懸念に思っているなとか、とりあえず言っているだけだなとかがわかるので、より高いレベルの情報を得るというところで動画を使っています。

書き起こしは、やはりスピードがメリットですよね。僕の周りでも、動画を見ることに長い時間を取られることを懸念している人がいます。だったら書き起こしを読んだほうがいいんじゃないかという方もけっこういますね。「書き起こしがなかったら動画を見るしかないから見るけど」という人が、僕の周りの投資家では多いです。

ーー話し言葉そのままだと、主語が抜けていたり、同じことを何度も言っていたりということがあるので、実はログミーでは、登壇側が発信したい内容の意図は変えずにユーザーが読みやすいように、文章を校正しているんです。

Ken:そうですね。ログミーの記事はスラスラ、本みたいな感じで読めますよね。実際の会場で聞いていたら意図はわかるけど、文字化するとちゃんとした文章になっていないとか、けっこうありますよね。

記事内で注目しているのは、上方修正と下方修正の理由

ーー先ほどちょっとお話があった、記事の本文のどういった部分に注目されているのかについて教えてください。数字に対しての、出来上がりの定性情報を確認したりする感じですか?

Ken:そうですね。例えば、決算説明資料とか短信は「この増益の要因につきましては新製品が好調で」とかで終わるんですけど、その新製品がなぜ好調なのか、どこにウケているのかがわかるのがログミーのいいところだと思います。

表面の数字を読んでいる投資家はすごく多いと思うんですけど、その表面の数字からさらにその先の数字に落とし込むのが苦手だし、別にやる必要すらないと思っている人がけっこう株価形成しているのかなという感触があって。

僕みたいに、株を長めに持つというのが、ある種あまり敵がいないなと思っているんですけど、そうすると、継続性が本当に重要になってくるので、そこをなるべく知りたいというのはありますね。

実はこれには業界構造の変化も隠れているんですよね。最近だと、それこそサブコンもそうだと思うんですけど、社会の変化を捉えられたら、投資アイディアにもつながると思っていて。

私の習慣でけっこうやっているのが、上方修正と下方修正の理由をとにかく見ることで、それはログミーさんの記事に書かれていると思っているんですね。

今、社会の中ではこういうトレンドがあるんだとか、人件費が上がっていることによってここがきつくて、ここが今いいんだという教養に関しては、動画だと「そもそもそこに時間使うのはどうなの?」という話があるので、そういうのは教養として、全体を把握するためにログミーの記事を読んでいます。

投資判断においてQAは非常に重要

ーーQAを公開する企業の割合もけっこう増えてきているのですが、KenさんはQAを重要視していますか?

Ken:やはり投資判断にかなり関わる部分なので、めっちゃ重要だと思います。QAって、だいたい8割ぐらいの人が同じことを聞くんですよね。なので、ログミーにQAを公開すると、発行体側の負担も少なくなるだろうし、投資家としても、だいたいみんな同じことを考えていたりするので、そこがわかることによって投資しやすくなりますね。

あと、QAで聞きたいことがあるけどそれが聞けないとか、「質問のメール送るのが面倒くさい」みたいな投資家もいる中で、よくわからないやつは投資対象から外れちゃったりするので、そういう意味では、QAが公開されているのは、めちゃめちゃありがたいと思います。

上場間もない企業の事業説明が書き起こされているのがありがたい

ーーログミーの記事の中で、実際に投資のヒントになったユースケースはありますか?

Ken:INFORICHさんはけっこう前から載せられていて、それを拝見することで実際に解像度を上げられました。

上場間もない企業はありがたいなと思います。というのも、やはりほかにはそんなに載っていなくて情報をあまり収集できないんですよ。

ーー確かにそうですよね。私もやはり上場してすぐの企業の目論見書って見ないんですよね。「事業計画及び成長可能性に関する事項」の資料を見る中で、ビジネスモデルはある程度理解はできるんですけど、そこから買うか買わないかとなると、やはり補足の説明が欲しいなと思います。

Ken:そうですよね。そこはありますよね。ログミーの場合、上場してすぐの企業が決算説明会の中で事業の説明を細かくしてくれて、それが書き起こされているのでありがたいです。

「これ、売上が立っているのはわかるけれど、細かい売上の立ち方とかどうなの?」とか、「従量課金だけど、ボリュームディスカウントされてそうだな」とか、そういうのがちょっとわからなかったりするので、そういうのがわかるのは、本当にありがたいですよね。

IRの予算は5倍ぐらい増やしていかないと駄目だと思う

ーーIRにおける課題は何だと思いますか?

Ken:IPOはこれからも増えると思います。今4,000社弱ぐらいあって、認知はそれなりにあると思うんですけど、しっかり見てもらうというのが、ほとんどの銘柄ができていないと思います。

そうなった時に、やはりある程度人目がつくところに露出していくことはすごく重要だと思います。4,000銘柄ある中で、「わかりにくいなら別にそいつにこだわる必要ないじゃん」という話で片づけられちゃうので、そういう意識をやはり発行体も持たないと、よりきつくなっていくと思います。

これから(IPOは)さらに増えるし、「じゃあ、日本株のアナリストとかは増えているの?」というと、ぜんぜんそうじゃないし、特に中小型株なんてどことどこぐらいしかないレベルなので、やはり発行体側の努力は、かなり大事かなと思いますね。

ーー確かにそうですよね。

Ken:IR予算の桁をもっと増やして、上げていかないと駄目だと思います。そこを年間100万円とかでケチケチやっていても……もうね、5倍ぐらい増やしなよみたいな話で、500万円だったら人を1人雇うより安いわけじゃないですか。それはすごく思います。

ーーそこに対しては、やはりある程度予算をかけてやったほうがいいですよね。

Ken:そうですね。絶対良いです。特に小型株に関しては、機関投資家より圧倒的に個人投資家のほうが流動性のリスクを取って入ってくれるので大切です。

個人でがんばっている人が増えているので、IRは人材不足だと思うんですけど、そこは発行体もがんばってほしいなというのはあります。

コストが低いので「足を運んで、セミナー」というのをみんなやりがちなんですよね。僕も、投資しているところの役員と面談する中でIRの質問をするんですけど、その役員が担当していたり、もしくはそもそも社長が担当していることがあるんですよ。

社長にもIRにかける工数と効果を重視してほしいという話はしているんですが、中には「IRをがんばるのはいいんだけど、そうするとほかの業務ができなくない?」と言う人がいるんですよね。であれば、工数をかけずに露出できるメディアもあるよという話をけっこうしたりしています。

ただのセミナーだと資産性がまったくないんですよね。50人に聞いてもらったとしても、そこから増えることはなくて、それこそ動画とかWebの記事だったら、1日5人でも見てくれれば1ヶ月で150人になるので、資産性があると思います。そういうのは、すごく大切だと思いますね。

ーー4,000社が、そこのユニバースに入っていくためには、やはり事業会社側もちゃんと努力しないといけない。そうしないとなかなかそこに入れないですよね。

Ken:うん、そうですね。それは間違いなくて。僕、Twitter(現X)でアンケートを取ったことがあるんです。それなりの母数があったので確かだと思うんですけど、「監視銘柄、何銘柄ですか?」というアンケートで、ほとんどの人が100銘柄いかなかったんですよね。

兼業の人は、100銘柄以内しかまず見ていないとなった時に、そこに入るのは本当に難しい。「認知」はよく言われていて、大事だと思うんですけど、やはり監視銘柄で興味を持ってもらうことがめちゃめちゃ大事。もう少し解像度を高くすると、特に大口の人に見てもらえるというのが、すごく重要なのかなって思います。QAも大口の1人に刺されば、場合によっては1億円とか入れてもらえる。それで株価上がりますよね。

認知を取りたすぎるがために、乱れ撃ちみたいになるパターンがあるんですけど、結局100株投資家しか集まらないことがけっこうあるんですよね。100株投資家って、株価を上げる力はそんなになくて。

今は、アルゴリズムという追随型がすごく力を持っているんですけど、特定の注文に対して連動するアルゴリズムがけっこうあるんです。大口の注文に対してどんどん買い上げたりするアルゴリズムの場合、やはり1人、2人、3人大口に入ってもらうのがすごく重要なので、そこの質みたいなところは、けっこう大切なのかなという感じがしますね。

ーーでは、その層に届けるためにはどうしたらいいのでしょうか?

Ken:変な話、「認知度を増やしたい」と言ってエンタメっぽい番組に出ても、認知は増えるかもしれないけれど、株価を上げてくれる層には届かない。そこをわかっていない会社がめちゃめちゃ多いですね。

その点から考えると、ログミーを見ているのはピラミッド型にした時にけっこう上にいる人たちで、もちろん初心者の方もいると思うんですけど、その中でもわりと熱意がある人たちだと思っています。