2020年12月期決算説明会
山口聡氏:みなさま、おはようございます。本日は、当社の2020年12月期決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。
本日は、2020年12月期経営成績の概況、国内加工食品事業の21年度施策、国内農事業、及び国際事業の収益構造改革と21年度施策、2021年度通期業績予想の順でご説明いたします。30分弱の説明時間を予定しております。
2020年12月期 連結業績
まず、経営成績の概況についてです。連結決算の概況です。2020年度はコロナ禍の影響を大きく受けた1年でした。当社においても、感染防止に努めつつ、全社が一丸となって、この危機に対応してまいりました。
その結果、売上収益、事業利益において、対前年で増収増益を達成することができました。売上収益は1,830億円となり、対前年で1パーセント増、事業利益は136億円で11パーセント増、営業利益は107億円で24パーセント減、当期利益は74億円で27パーセント減となりました。
売上収益は、国内事業における家庭用の飲料・食品・通販などが好調で増収。事業利益は、米国事業において減損を計上しましたが、国内事業における販売促進費の減少や原価低減などにより増益となりました。
営業利益、当期利益の主な減益要因は、19年度に物流新会社の譲渡利益があったこと、20年度においてはポルトガルHIT社の固定資産の減損を計上したことなどによるものです。
2020年12月期 事業別業績
続いて、事業別の業績についてです。国内加工食品事業の飲料カテゴリーは増収増益。一方、食品他カテゴリーは業務用の売上収益の減少などにより、減収減益でした。国内農事業は、第2四半期以降の販売が好調だったことや、収益構造改革などで増収増益となりました。
国際事業は、米国の外食向け売上収益の減少などで減収となりました。また、事業利益は米国持分法適用会社の減損などにより減益となりましたが、当減損を除いた事業利益は増益となっております。
コロナの事業への影響(時系列)
続いて、コロナの事業への影響について時系列でご説明します。当社では、国内の家庭用商品、業務用商品、米国の業務用商品の3つのカテゴリーにおいて、コロナの影響を大きく受けています。
このグラフは、3つのカテゴリーの売上収益の前年同月比をパーセントで表示したものです。国内の家庭用商品は巣ごもり需要などを反映し、2月以降、年間を通して前年を上回る水準で推移しました。
国内の業務用商品は、コロナの影響が最も深刻であった4月を底に、徐々に回復傾向にありますが、コロナの感染状況によって売上収益の変動が続いています。
米国の業務用商品についても、4月を底に回復傾向にありますが、国内業務用商品と同様に、上がり下がりを繰り返している状況です。
国内加工食品事業(飲料)
続いて、国内加工食品事業の飲料カテゴリーについてご説明します。飲料カテゴリーは「野菜をとろうキャンペーン」やコロナの影響による健康・巣ごもり需要などで増収増益となりました。
別添資料にありますとおり、野菜飲料全体の市場規模は昨年を下回りました。これには、リモートワークの拡大に伴うオフィス需要の減少が影響しています。こうした中、当社は「野菜をとろうキャンペーン」と連動したCMや価値訴求によって、野菜飲料のシェアを57.4パーセントに上昇させました。
当社野菜飲料の売上収益前年比を販売チャネル別に見ると、コンビニエンスストアでは減少していますが、量販店やECなどが伸びています。また、容器別に見ると、大型容器の販売が好調で、家庭内での消費傾向が高まっていることがわかります。
商品別では「野菜一日これ一本」がテレビCMやパッケージ上での価値訴求によって、前年比108パーセントに拡大しました。「野菜生活100」シリーズは、アップルサラダや昨年2月に発売しましたSoy+が好調に推移し、前年比107パーセントとなりました。
トマトジュースは大型容器が前年を上回る売上でしたが、パーソナル容器の売上が減少し、前年比98パーセントとなりました。
事業利益は、売上収益の増加に伴う利益増や販売促進費の減少、ペットボトルの内製化などによる原価低減などで増益となりました。
国内加工食品事業(食品他)
食品他カテゴリーは、内食向け食品や通販の販売は好調でしたが、業務用商品の落ち込みにより、減収減益となりました。内食機会の増加により、トマトケチャップやトマトソース、パスタソースの売上が大きく伸び、内食向け食品は前年比109パーセントとなりました。
また、通販も同様に、前年比109パーセントとなりました。一方で、業務用商品は前年比84パーセントと、前年を大きく割り込みました。
事業利益については、業務用商品の売上収益減少と通販の広告宣伝費の増加などによって減益となりました。
国内農事業
続いて、国内農事業についてご説明します。国内農事業は収益構造改革が進み、増収増益となりました。
第1四半期は日照不足などでトマトの調達量が低下し、減収のスタートとなりました。しかし、第2四半期以降は菜園の稼働率の上昇や、夏から秋の産地を予定通り拡大できたことなどにより、増収となりました。
2020年の生鮮トマトの市場価格は、時期によって高低がありましたが、販売・需給マネジメントの強化などの収益構造改革により、事業利益は増益となりました。その結果、4期ぶりに黒字とすることができました。
国内事業 野菜をとろうキャンペーンの進捗①
次に、「野菜をとろうキャンペーン」の進捗です。国内事業では、20年度から「野菜をとろうキャンペーン」をスタートさせ、1人あたりの1日の野菜摂取量をあと60グラム増やすことをスローガンに、日本の野菜不足をゼロにする活動に取り組んでいます。
こちらの表は20年度の「野菜をとろうキャンペーン」の主な施策です。賛同企業19社と当社で発足した野菜摂取推進プロジェクトは、コロナ禍の影響を受け、当初計画から約半年遅れた7月31日から本格始動しております。
国内事業 野菜をとろうキャンペーンの進捗②
こちらは、賛同企業との取り組み事例です。今後は、こうした事例をより多く積み重ねていきたいと考えております。
国際事業
続いて、国際事業についてご説明します。国際事業は、コロナの影響による米国KAGOME Inc.社の業績悪化に伴い、減収となりました。事業利益は、米国持分法適用会社の減損により減益となりましたが、それを除くと増益となっております。
各社別の状況です。米国KAGOME Inc.社は外食需要の落ち込みにより、大幅な減収となりました。こうした状況を受け、人員削減などの緊急的な固定費削減を行いました。その結果、事業利益は減益となりましたが、減益幅を最小限に抑えることができました。
ポルトガルのHIT社は、コロナによる内食需要の増加により、食品メーカー向けの原料販売が増え増収となりましたが、事業利益は若干の赤字となりました。なお、固定資産の減損約30億円につきましては、次ページにてご説明します。
カゴメオーストラリア社は、日本カゴメ向けのトマト・ニンジン原料の販売が増え、増収となりました。
また、表の下段にあります、米国の持分法適用会社の減損は、トマトの一次加工を営むIngomar社に関するものです。同社では、近年のトマトペースト需要の低迷で、出資当初に見込んでいた利益を計上できておりません。
このため、のれん相当額の約10億円の減損を実施しました。なお、同社は安定したキャッシュフローを計上しており、経営そのものには大きな問題はないと判断しております。
HIT社の収益構造改革と今後
それでは、ポルトガルHIT社の収益構造改革と今後について、ご説明します。このグラフは、HIT社の年度末におけるトマトペーストの在庫数量と利益率の推移を示したものです。
16年度以降、世界的なトマトペーストの需要低迷などにより、在庫数量は高水準となり、利益を圧迫しておりました。20年度は食品メーカー向け販売が増加し、在庫過多の状態はいったん解消しましたが、今後、生産量を販売可能な規模に適正化することが重要と考えています。
そこで、20年度において適正な生産規模を見据え、固定資産の減損を計上しました。本減損によって、21年度以降の成長に向けた基盤が整ったと考えております。21年度は、高付加価値商品へのシフトと償却負担の縮小などで、利益率は4パーセントに改善する見込みです。
連結事業利益増減要因
続いて、連結の事業利益増減要因です。まず、国内加工食品事業は広告宣伝費の増加が17億円。これは「野菜をとろうキャンペーン」に関連したテレビコマーシャルなどによるものです。
原価低減は、調達戦略の見直しやペットボトルの内製化などで17億円の原価低減を実現し、広告宣伝費の増加分を相殺しました。
販売促進費は、コロナの影響による販促機会の減少に伴い、11億円減少しました。これに国内農事業、国際事業の利益増減があり、20年度の事業利益は19年度を13億円上回りました。
営業利益、当期利益増減要因
次に、営業利益と当期利益の増減要因について、ご説明します。20年度の事業利益は136億円となり19年度を上回りましたが、19年度は物流新会社への事業譲渡益があり、20年度はHIT社の減損を計上したことから営業利益は107億円となり、対前年で34億円減少しました。
当期利益についても、19年度と比べて実効税率が上昇したことなどにより、対前年で28億円減少しました。
財政状態計算書変動内容
財政状態計算書変動内容はご覧のとおりです。資産は、資金調達環境のひっ迫に備えて借入を実施した結果、流動資産が289億円増加しました。借入によって、負債も225億円増加しています。
結果として、親会社所有者帰属持分比率は49.3パーセントとなりましたが、当社の財務基盤の健全性に影響を及ぼすことはございません。
キャッシュフローの変動
キャッシュフローの変動はご覧のとおりです。
国内加工食品事業の10年間
続いて、国内加工食品事業の21年度の施策について、ご説明します。はじめに、国内加工食品事業のこれまでの10年間を振り返ります。
国内加工食品事業は、16年度から18年度の第一次中計において収益構造改革を行い、利益獲得力を向上させました。一方、18年度以降、売上収益は停滞しており、トップラインの成長が課題であります。
コロナによる生活者の意識・行動変化
コロナによって、外食・イベントなどが大きく制限される中、生活者の食に対する意識・行動は大きく変化しています。家庭での食事、調理機会は大きく増加しています。調理そのものや、家族との食事におけるコミュニケーションを楽しむ傾向も強まっています。
また、コロナを予防するために、健康・免疫・衛生といった意識が、これまでになく高まっています。加えて、外出や通勤が減ったことによりコンビニでの購買機会が減り、一方で、スーパーやECで買い溜めをするなど、購買行動にも変化が見られます。
このような生活者の変化は、当社にとって日本における野菜摂取量を大きく増加させる機会でもあると捉えています。
21年度の施策①
次に、21年度の施策です。21年度は「野菜をとろうキャンペーン」に全力で取り組み、野菜需要を喚起することでトップラインを成長へと反転させていきます。
飲料は、野菜のビタミンに関する情報発信を強化し、生活者の関心の高まりに応えて、野菜飲料の習慣飲用化を促進します。また、好調なSoy+の新商品を発売し、植物性領域への拡張に引き続き取り組みます。
食品、業務用においては、家庭用事業の持続的成長に向けて、家庭内での洋食メニューの提案を強化していきます。業務用事業の再建に向けては、食品メーカーや惣菜など、コロナ環境下においても好調な業態への営業活動を強化します。
また、日本一食べたいナポリタンを決定する「ナポリタンスタジアム2021」を開催し、トマトケチャップの需要拡大を図ってまいります。
通販、ECにおいては自社通販を強化するとともに、流通ECと連携することで新規顧客を開拓していきます。また、21年度より「野菜をとろうキャンペーン」の強化本部長として、料理愛好家の平野レミさんを起用し、さまざまなメディアや店頭ツールを通じて、野菜摂取の大切さを楽しく、わかりやすく発信していきます。
国内農事業の10年間
続いて、国内農事業の収益構造改革と21年度の施策についてです。国内農事業は1998年より事業化し、全国の量販店に販路を拡大。16年度に、売上・利益が最大となりました。
しかしながら、17年度以降、大規模菜園の相次ぐ参入などにより競争が激化し、業績が低迷していました。こうした状況を打開するため、収益構造改革に取り組み、20年度は黒字に転換することができました。
しかしながら、今後も安定的に利益を確保し、持続的な成長を実現するためには、もう一歩踏み込んだ改革が必要と考えています。
KAF社の設立と21年度の施策
そのために、カゴメアグリフレッシュ社、以下、KAF社と呼ばせていただきます。を設立し、21年度からは国内農事業をKAF社が担う体制としました。今回のKAF社の設立の目的は、意思決定の迅速化、生産性の向上、アライアンスの推進、ガバナンスの強化の4つです。
KAF社のミッションは、先進的で持続可能な農ビジネスを構築し、生鮮トマトだけでなく、新しい野菜や農業ビジネスを育成することです。それにより、国内農事業の収益基盤をより強固なものとし、利益を確実に生み出すことのできる体質に変えてまいります。
21年度においても、収益構造改革をさらに強化し、事業利益率の改善と「野菜をとろうキャンペーン」による売上拡大を目指します。
国際事業の10年
続いて、国際事業の収益構造改革と21年度の施策についてです。国際事業はトマトペーストなどの一次加工品、ピザソースなどの二次加工品を主力商品としております。
これまで、世界的なトマトペーストの需要拡大を前提とし、種子開発から農業生産、加工、販売までの垂直統合型ビジネスを展開してきました。売上は17年度に10年度の約3倍規模まで成長し、アジアの不採算事業などを整理することで、15年度からは黒字に転換することができました。
しかしながら、近年はトマトペーストの需要低迷に伴い、収益力が低下するなど、一次加工事業を中心に業績が悪化しております。そこで、20年度に、先ほどご説明しましたHIT社の減損により、21年度以降の成長に向けた基盤を整備しました。
21年度の施策②
21年度は、一次加工の規模適正化とともに、米国での拠点間連携と、アジアでの野菜飲料事業に注力していきます。一次加工については、今後は規模の拡大は追わず、事業別・顧客別の収益管理と、その選別を進めて安定成長を図ります。
米国事業については、米国市場全体を対象としたBtoB事業での成長を追求します。米国は、人口が増加している成長市場であり、加工用トマトの巨大な産地と市場が存在する魅力的なエリアです。
当社は米国において、トマトの種子の販売からトマトの加工品の製造販売までの経営資源を保有しています。それらの連携を強化することで、新たな米国市場での成長を追求していきたいと考えています。
野菜飲料のBtoC事業は、引き続きアジアへの輸出販売を強化していきます。アジアへの輸出販売は現在7地域に広がり、事業の売上は7億円の規模まで成長してきました。将来的には、中核事業となるように育成してまいります。
2021年度 連結通期業績予想
続いて、2021年度の通期業績予想についてです。21年度の連結通期業績予想は、売上収益1,860億円、事業利益131億円で、20年度の実績に対して、売上収益はプラス30億円、事業利益はマイナス5億円となる見込みです。
なお、20年度の中間決算で発表した修正予想に対しては、売上収益は修正予想どおり、事業利益は修正予想からプラス6億円となる見込みです。
国内加工食品事業は、「野菜をとろうキャンペーン」によりトップラインを成長させ、売上収益はプラス32億円を見込みます。事業利益は、売上成長のための販促費の増加や、20年度にコロナ禍で一時的に減少した費用の増加などを見込んでおり、マイナス20億円となります。
国内農事業の事業利益はKAF社による粗利マネジメント強化や、菜園の収益力向上などにより、プラス4億円となります。
国際事業は、一次加工の規模適正化により、売上収益はマイナス4億円となりますが、事業利益はプラス14億円を見込んでいます。20年度の減損10億円を除いても、4億円の改善となります。
2021年度 連結事業利益増減要因
21年度の連結事業利益の増減について、ご説明します。21年度は、国内加工食品事業における販売促進費の増加が16億円の減益要因となります。トップラインの成長に向けて、積極的なプロモーションを仕掛けていく費用を見込んでいます。
また、販管固定費の増加も14億円の減益要因です。21年度は企業活動が通常に戻ると予測し、人件費、旅費交通費などの費用の増加を見込んでいます。
国内加工食品事業の売上収益増、および農、国際の収益構造改革に伴う事業利益増がありますが、この販売促進費、販管固定費の減益要因をカバーするには至らず、事業利益は20年度に対してマイナス5億円の131億円を見込んでいます。
固定投資計画
続いて、固定投資計画についてです。固定投資の総額は、第2次中計期間の計画377億円に対して、一部計画の中止・延期などがあり、約マイナス60億円の318億円となります。
21年度においては151億円の投資を計画しており、主な投資は富士見工場の紙ライン新設等で79億円となります。富士見工場の投資によって、同工場の紙容器飲料の生産能力は現状から20パーセント増加します。
配当金
配当金は20年度に1株当たり36円、21年度は37円とします。
サステナビリティ
最後に、第3次中計に向けた取り組みについて、ご説明します。まず、サステナビリティに関する取り組みについてです。
自然の恵みを原料とする当社にとりまして、自然環境の保全は事業の継続に必要不可欠です。温室効果ガスの削減に関しては、CO2の削減目標を従来の2°C目標から、パリ協定の1.5°C目標に対応するため、より厳しい基準への見直しを検討しています。
その他、植物由来素材やリサイクル素材を用いたプラスチックを採用するなど、環境負荷の低減に努めてまいります。ガバナンス面では、昨日のリリースでお伝えしたとおり、買収防衛策の廃止を決定しました。
持続的な成長に向けた取り組み
第3次中計では持続的な成長が不可欠であり、トップラインを成長させるために、2つの達成手段に引き続き取り組んでまいります。
1つは「野菜の摂取量を増やす」です。21年度以降も「野菜をとろうキャンペーン」を継続することで、食生活に対する行動変容を促進し、野菜摂取の習慣化を図ってまいります。
もう1つは「野菜の供給量を増やす」です。社内と社外の力を融合して、最適な組み合わせをつくるオープン型バリューチェーンの構築により、野菜の供給力を強化していきます。
また、新たな成長に向けた基盤の整備を行っていきます。1つ目は、21年度からROIC管理を導入し、投下資本の有効な活用に焦点を当て、社内の管理を行っていきます。
2つ目は、DX基盤の整備です。全社のDXプロジェクトを始動しており、全社カスタマーデータプラットフォームの再構築と、その戦略的活用を推進していきます。
3つ目は、働きがいの向上です。働き方の改革をさらに進化させ、働きがいを高める施策にウエイトを移していきます。具体的には、エンゲージメントの強化に取り組んでまいります。
最後に
コロナの影響による健康的な食事や免疫力強化への意識の高まりは当社にとって追い風ですが、同時に、食と健康領域において競争が激化することが予想されます。
当社は、野菜の力でこの競争に勝ち残り、2025年のありたい姿と長期ビジョンの達成を目指して、社員一同、全力で取り組んでまいります。2025年の定量目標については、環境変化をふまえて見直しを行い、第3次中計の発表時に公表します。私からは以上になります。本日は、ご清聴ありがとうございました。