18.11期 業績

井上伸雄氏:2018年11月期の業績についてご説明いたします。

売上高でございますが、5,735億円。前年に対して118億円の増収となりました。国内は65億円の増収。海外は円安による為替影響12億円を含みまして、53億円の増収となりました。

営業利益は前年に対して18億円増の331億円、国内・海外ともに増益になりました。

経常利益は18億円増加の343億円となりました。特別損益はポーランドの子会社などの減損損失が24億円生じましたが、投資有価証券の売却益や事業譲渡益などにより10億円増となりました。

当期純利益は、税引前利益の増加で法人税等は増加いたしましたが、前年に対して2億円増の183億円となりました。

昨年(2018年)4月に公表いたしました計画に対しては、売上高・利益ともに未達でございます。主に下期における国内の売上高の未達と、夏から秋にかけて頻発した災害が影響しております。2016年からの通期経営計画に対しましては、売上・利益ともに未達に終わりました。

大変厳しい状況ではございましたけれども、国内の営業利益計画については達成することができた状況でございます。

18.11期 売上高の状況

次に、事業別の売上高の状況を申し上げます。

調味料事業ですが、国内では野菜高の影響を受け、調味料が伸び悩みました。一方、海外のマヨネーズやドレッシングが順調に推移いたしまして、合計で30億円の増収となっています。

タマゴ事業ですが、国内の鶏卵相場下落が15億円の減収要因となりましたが、外食や中食向けの小型パック液卵など付加価値商品が伸びたこと、また米国の乾燥卵相場の上昇などによりまして、事業全体で4億円の増収となりました。

サラダ・惣菜事業は昨年(2018年)の11月1日付で行いましたコンビニエンスストア向けベンダーの事業譲渡が28億円の減収要因となりましたが、カット野菜で31億円、新たな販路の開拓を進めた惣菜で26億円それぞれ増加したことによりまして、事業全体では28億円の増収となりました。

加工食品事業は、付加価値の高い商品が着実に伸長し、2億円の増収。

ファインケミカル事業は、医薬用EPAの減少が影響して6億円減収となりました。

物流システム事業は、既存取引先の受託拡大や連結子会社の増加などによりまして、70億円の増収となっております。

共通事業の減収は、食品機械販売の減少によるものでございます。

18.11期 営業利益の状況

続いて、事業別の営業利益の状況をご説明申し上げます。

調味料事業ですが、国内売上の伸び悩み、そして減価償却費の増加が影響いたしまして、9億円の減益となりました。

タマゴ事業ですが、米国の乾燥卵相場の上昇などによりまして、12億円の増益。国内の付加価値品の伸張効果を含めまして、事業全体で17億円の増益となりました。

サラダ・惣菜事業は、売上の拡大と省力化などのコスト改善が進展いたしまして、6億円の増益となりました。

加工食品事業ですが、不採算商品の見直しが進んだことに加えまして、付加価値品が伸張して4億円の増益でございます。

ファインケミカル事業ですが、主に海外でのヒアルロン酸の伸張が貢献し、4億円の増益となっています。

物流システム事業は、保管や運送の合理化を進めましたが、燃料や車両などの調達コストの増加や自然災害の影響などによりまして3億円の減益となりました。

共通事業の減益は、売上高の減少によるものです。

18.11期 営業利益の増減要因(前年差)主な内容

営業利益の18億円の増加要因を前年差で記載しております。

食品事業では、売上総利益率の改善が大きく寄与しております。売上の増加による利益増は主に海外のマヨネーズ・ドレッシング。国内のカット野菜や惣菜などの売上の増加で12億円を創出しております。

売上総利益率の改善による利益増の主な内容は、付加価値の高い商品の販売ウエイトを上げていく取り組みを続けておりまして、それで10億円。これは主に、タマゴ事業が貢献している状況でございます。

また、生産性の向上や不採算カテゴリーの改善など、コスト改善の取り組みで14億円を創出しております。米国の乾燥卵相場の上昇も、売上総利益率の改善に寄与しております。広告宣伝費の減少は、昨年実施したカット野菜の広告を、本年は実施していないことなどによります。

その他の販管費は、海外を含めた事業拡大による労務費の増加が主な内容でございます。バランスシートでキャッシュ・フローの状況を示しておりますので、ご覧いただければと思います。

なお、2018年度の設備投資でございますが、321億円を実行いたしました。これにより、中期3年間の設備投資は923億円となりました。

2016-2018年度 中期経営計画 重点テーマ

次に、2016年度からの中期経営計画において重点テーマといたしました2点の状況について触れさせていただきます。

この中期経営計画では、「国内食品5事業の利益増加」。そして「中国・東南アジアの成長加速」。この2つを重点テーマとしておりました。

まず、国内食品の5事業につきましては、売上総利益率の改善の取り組みに注力をしてまいりました。とくにタマゴ事業、そしてサラダ・惣菜事業の牽引で目標としておりました利益の60億円増を上回る結果となりました。次の中期経営計画におきましても、タマゴ事業、サラダ・惣菜事業の利益拡大を図ってまいります。海外の売上計画は、先ほどご覧いただきましたように、未達でございました。

重点エリアであります中国や東南アジアでございますが、マヨネーズやドレッシングの需要拡大を進めまして、営業利益については13億円増加した状況でございます。海外においては、今後も中国・東南アジアに重点的に注力して拡大を図っていく計画でございます。

また、2018年度までの中期計画では、これまでなかなか踏み込みが浅かった国内の低収益カテゴリーへの対応を進めました。次の中期計画についても、引き続き取り組んでいく予定でございます。

以上、2016年度から2018年度までの中期計画の重点テーマの状況についてご説明申し上げました。

キユーピーグループのめざす姿と2030ビジョン

長南収氏:第9次中期計画についてご説明いたします。

2019年から2021年の第9次中期計画では、国内の持続的成長と海外での成長加速を実現してまいります。2018年までの第8次中期計画では、グループの力を最大限に発揮して、価値を創出するグループ共同をテーマに掲げ、売上総利益の拡大に向け付加価値商品へのシフトやコスト競争力の強化を進めてまいりました。

第9次中期計画の初年度にあたる2019年は、当社の創業100周年となりますが、次の100年を見据えて利益を創出する力を高めてまいります。この度、グループの長期ビジョンとして「2030 VISION」を策定いたしました。

社会の変化が加速する中、次の100年に向けて成長を続けていくために「2030年にはこうありたい」というグループの姿について、さまざまな角度から検討いたしました。社会の変化を多角的に予想し、自ら変えていく力を身につけていきたいと考えております。

「2030 VISION」では、マヨネーズとドレッシングを中心にサラダとタマゴの魅力を世界に広げるために、メニューなどの提案力や技術力で食卓を楽しくすることができるような、サラダとタマゴのリーディングカンパニーを目指してまいります。第9次中期計画は、この「2030 VISION」に向けた第1ステージと位置付け、得意な分野を伸ばすとともに、社会的な課題にも取り組んでまいります。

なお、第9次中期計画では、事業などの区分の変更を行います。事業区分の変更といたしましては、調味料事業は、加工食品事業に含まれていたアヲハタ株式会社以外を「調味料事業」に移管するとともに、名称を「調理・調味料事業」に変更いたします。

「加工食品事業」のアヲハタ株式会社については「フルーツ ソリューション事業」として独立いたします。「物流システム事業」につきましては、賃貸に関わる取引を「共通事業」に移管するとともに、名称を「物流事業」に変更いたします。

また、各事業の利益をできるだけ実際の状態に近づけるため、事業に按分できない費用を「全社費用」として区分することにいたしました。これにともない、各事業の利益は事業利益と表現することにいたしました。

グループ経営方針

第9次中期計画は、3つの経営方針で進めます。国内では調理・調味料事業、サラダ・惣菜事業、タマゴ事業。この3事業に集中し食の主役化を推進することで、持続的な成長を実現してまいります。

海外では、中国・東南アジアを中心に展開を加速していきます。さらに、環境変化に対応した経営基盤の強化を進めます。

重点指標

そして、4つの重点指標に注力いたします。

まず、営業利益率6.5パーセント以上、ROE8.5パーセント以上を目指します。さらに、経営方針に基づく指標として、国内3事業における事業利益率は8.8パーセント。中国・東南アジアの売上成長率は、110パーセント以上を目指していきます。

業績目標

続きまして、業績目標を申し上げます。

売上高は、2018年に対し115億円増の5,850億円といたします。国内は64億円減となりますが、事業譲渡による影響を除くと228億円伸ばすことになります。

営業利益は49億円増の380億円といたします。国内は、事業譲渡の影響を除くと34億円伸ばすことになります。

経常利益は47億円増の390億円、当期純利益は31億円増の214億円を目指します。為替影響は売上高で9億円、営業利益で1億円の益を見込んでおります。

営業利益 増減要因

次に、営業利益の49億円増の内訳を要因別にまとめました。

国内で集中していく3事業では、コンビニエンスストア向けベンダーの事業譲渡による影響が8億円のマイナス要因になるため、実質23億円を伸ばしていきます。また、海外全体では28億円増になりますが、そのうち中国・東南アジアでは18億円伸ばしていきます。注力する国内3事業と中国・東南アジアで、合計41億円伸ばしてまいります。

国内での持続的成長(食の主役化)

それでは、経営方針の国内3事業に集中し、「食の主役化」の推進についてご説明申し上げます。

第8次中期計画では、グループ協働をテーマにグループ全体で価値を創出してまいりました。しかし、厳しくなる国内市場において持続的成長を実現するためには、体質の強化を進めるとともに、社内外の協働で料理としてサラダとタマゴの美味しさを提供する「食の主役化」を進めていくことが必要になります。

3事業が融合し、マヨネーズやドレッシングを中心にサラダやタマゴの領域を広げていくことで、伸びゆく中食市場での拡大を進めるとともに、健康寿命の延伸にも取り組み、サラダとタマゴのリーディングカンパニーを目指してまいります。

その実現に向け、最適な生産体制の構築を進めるとともに、各事業の販路を相互に活用することも含めて、新たな販路への展開を進め、お客さまへ提供する機会を拡大させていきます。

さらに、当社グループがもつ独自の技術を活用するとともに、事業横断の研究テーマを増やすことで、これまでにないおいしさなどの新たな価値を創出していきます。

国内での持続的成長(最適生産体制の構築)

最適生産体制の構築について、少し詳しくご説明いたします。

コスト競争力の向上に向けた取り組みとして、第7次から第8次までの中期計画ではアイテム精鋭化からカテゴリー精鋭化へと進化させてきましたが、第9次中期計画ではさらに本格的に実行してまいります。

そして第9次以降、第8次から進めてきた3事業に集中した国内生産拠点の再編を実行し、第10次までには約20拠点の集約と統合を進めていきます。資産効率を高め、生産合理化や生産能力向上を図るとともに事業が融合する拠点を配置することで、シナジー効果を創出していきます。

国内での持続的成長(まとめ)

国内の3事業については、このような「食の主役化」に向けた取り組みを中心に利益を創出する力を高め、事業利益率8.8パーセントを目指していきます。また、グループソリューション事業とファインケミカル事業は専門分野に特化することで、それぞれの分野においてなくてはならない存在に成長させていきたいと考えております。

海外での成長加速

次に、海外展開についてご説明いたします。

第9次中期計画では、海外でも大変評判の高い「キユーピーマヨネーズ」と「深煎りごまドレッシング」を世界戦略商品と位置付け、サラダの需要を拡大していきます。また、各エリアの状況をしっかりと捉え、スピードを上げて商品開発や業態ごとの戦略を進めるとともに、経営基盤の強化に取り組みます。

海外全体では売上高で179億円、営業利益で28億円の増加を実現させるために、中国と東南アジアの売上高の年間平均成長率を110パーセント以上継続することにこだわってまいります。中国と東南アジアでは売上高で130億円、営業利益で18億円を創出し、海外全体を牽引していきます。

中国展開の加速

中国におきましては、2017年12月に設立しました統括会社の機能とエリアでの戦略を強化していきます。統括会社については、生産や販売での合理化を進めるとともに、広告宣伝などのマーケティング機能を強化します。

中国におけるマヨネーズやドレッシングはデータが示しているとおり、使用率が低い状況です。マヨネーズとドレッシングの用途拡大に向けた提案を継続的に行うことが使用率を向上させ、市場の拡大に結びつくと考えております。

エリアによって、食の嗜好が異なることから、エリアごとの食の嗜好に合わせたメニュー提案や商品開発を行い、マヨネーズで110パーセント・ドレッシングで120パーセントの売上成長を続けてまいります。

参考)海外展開 エリア別の主な取り組み(調理・調味料事業)

東南アジアについては、「深煎りごまドレッシング」の用途を拡大させるとともに、現地のニーズに合わせた新規カテゴリーを創出し、東南アジア全体で育成してまいります。

米国や欧州、日本からの輸出については、世界戦略商品である「キユーピーマヨネーズ」や「深煎りごまドレッシング」に注力し、キユーピーブランドの浸透を図ってまいります。

環境変化に対応した経営基盤の強化

経営基盤の強化に向けた取り組みについてご説明いたします。

次の100年に向けて社会的責任を果たし、成長を続けていくために変化していく社内外の課題に取り組んでいきます。環境に対する主な取り組みは、資源の有効活用や商品廃棄の削減、CO2の排出削減などになります。

資源の有効活用の事例として、野菜の未利用部の活用をご紹介いたします。キユーピーグループは、国内においてキャベツを原料として一番多く使用していることから、キャベツの未利用部の活用に取り組んでいます。カット野菜の主力商品であるキャベツの千切りを清浄する工程において、利用していない芯や外側の葉を乳酸発酵し、乳牛の飼料にすることで、未利用部の有効利用とともに牛が出す乳の量が増加するという効果も確認されております。

この取り組みに関しては、昨年内閣総理大臣賞をいただきました。引き続き、野菜の未利用部の活用に向けて行政や大学などの研究機関と取り組んでまいります。

社会に対する主な取り組みは、サラダやタマゴを軸にした食生活の提案や食育活動などになります。また、ダイバーシティの推進やガバナンスの向上・基幹システムの刷新などを行い、基盤を強化してまいります。

キャッシュフローの配分

第9次中期計画の営業キャッシュ・フローは累計で1,450億円を計画しており、設備投資で約1,000億円を使用する見込みです。主に最適生産体制の構築、海外での生産能力向上、物流機能の強化、基幹システムの刷新などに投じていく予定でございます。

株主還元につきましては、配当金の決定基準として配当性向30パーセント以上を継続してまいります。今期末も配当金については、創業100周年記念の5円を含む7円増配を予定しております。