16年度の総括及び17年度の計画
井阪隆一氏:おはようございます。お忙しい中、たくさんのみなさまにお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
日頃はたいへんお世話になっておりますことを、高い席ではありますが、この場をお借りしまして、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。
それでは、私の方から17年度の戦略について、ご説明を申し上げたいと思います。
まず、16年度の総括、および17年度の計画でございます。
16年度につきましては、各社・各事業会社のトップとワン・トゥ・ワン・ミーティングを重ねながら、経営課題を抽出をして、中期経営計画を練り、できるだけお金を生まない資産については、ウミ出しをさせていただくということに取り組みました。
また、組織作りということで、ホールディングスと事業会社が一体となって、収益を上げられるような組織作りをさせていただきました。
17年度の計画でございますが、去年の10月にも申し上げましたように、我々にとって、最大の成長エンジンであります、国内・海外のコンビニエンス事業。ここで圧倒的な力を発揮できるような下地を確立する1年にしたいと思っております。
構造改革が必要な事業につきましては、この半年間プロジェクションをいろいろ具体的に詰めてまいりましたので、それを実行に移して、しっかり収益改善をしていきたいと思っております。
中期経営計画の概要
こちらは昨年の10月7日に発表させていただいた中期計画の内容です。
5つの柱で19年度の営業利益4,500億円、ROE10パーセントを目指すというご報告をいたしました。
まず1つ目の施策として、日米コンビニエンス事業を成長の柱とし、経営資源を集中させる。
2つ目として、エリアと業態の選択と集中をする。百貨店部門においては、H2Oさまとの資本業務提携の基本合意、締結。そして、イトーヨーカドー首都圏への重点化を開始する、ということを申し上げました。
3つ目に不動産再開発。
4つ目はオムニチャネル戦略を抜本的に見直す。
5つ目は来春をめどに、マネジメントアプローチの観点でセグメントを見直す。どのセグメントに重点的に資源を集中させていくかということを、この春にご報告させていただきました。
年度別売上シェアと売上増減の推移
まず、セブン‐イレブン・ジャパンでございます。
この折れ線グラフはセブン‐イレブン・ジャパンの、日本のコンビニエンス市場における売上のシェアを示しております。棒グラフはコンビニエンス市場の成長を示しております。
オレンジの斜線で示してるところがセブン‐イレブン・ジャパンの売上ボリュームが増えた分。ブルーのところが、セブン‐イレブン以外のコンビニエンス企業が伸ばした部分でございます。
おかげさまで16年度につきましては、42.7パーセントの売上シェアをいただきました。かねてから申し上げているとおり、50パーセントのシェアを目指して、これからもいろいろな施策を打っていきたいと考えております。
マーケットチャンス(食の外部化)に対する打ち手
我々が一番、注力してまいりますのは、中食市場。カテゴリーの強化です。
この棒グラフは、中食市場規模の推移を表しておりまして、折れ線グラフがセブン‐イレブン・ジャパンのシェアを示しております。
食の外部化ニーズ、働く女性の増加であったり、単身世帯の増加であったり、お年寄りの増加であったり、お食事に困っている人が非常に増えております。ここをセブン‐イレブンの軸にしてやっていこうということで、伸ばしてまいりました。
その結果、左側の表にありますように、セブン‐イレブンの使われ方は随分変化してきたように思います。2007年度のお客さまの数を100として、16年度は109という状況になっております。
既存店の成長戦略
15年度から16年度にかけて、客数の伸びが鈍化したんじゃないかというご心配をいただくこともありましたが、16年度につきましては、かなり販促を見直しました。
例えば、おにぎり100円セールの日数を8日間減らしました。おでん70円セールの日数も半分にしました。
多少、集客効果の高いプロモーションを減らしたんですが、それでも16年度は既存店客数は前年比100パーセントをクリアしております。お客さまの層も随分変わってまいりました。
07年度に女性客比率42パーセントだったのが、16年度では47パーセント。50歳以上の比率でいうと、25パーセントから40パーセントと、大きく変わってまいりました。
我々のお店の使われ方が変わると同時に、やはりカテゴリーによっても、伸びてるカテゴリー、あるいは落ち始めている、大きく落としたカテゴリーが鮮明になってまいりました。
右側の表が示しておりますのは、2006年と16年の平均販売金額・販売数量の比較です。一番増加したのが冷凍食品で、10年前と比べて4.7倍の規模になりました。
カウンター商品につきましては約2.6倍。これは、コロッケとか、からあげとか、フライヤー商品。およびコーヒー、ドーナツ。こういった商品が増えたことによります。
タバコについては数量は減ってますが、金額として136パーセント。デイリー商品については116パーセント。
一方、減ったカテゴリーは雑貨が72パーセント。それから雑誌・書籍が43パーセントということで、大幅にこの10年間でカテゴリーの売上の変遷がございます。
やはりお客様の変化を素直に見て、我々の売り場にしっかり反映させていこうと考えました。
既存店の成長戦略(新レイアウト)
セブン-イレブンにおいても、やはり過去のやり方に縛られた部分がありました。古屋ともいろいろと打ち合わせをしまして、このレガシーをとにかく打ち破ろうと。
今のお客様の動向に合わせたレイアウトに、大幅に変更していこうということで、考えております。
上の表が既存のレイアウトです。入ってすぐ右側に雑誌ゴンドラがあって、左側にはカウンターがありました。このスペースは、40年来、ほとんど変わっていません。
この様なレイアウトでずっとやってまいりましたが、今回、下のレイアウトに変更していきたいと思ってます。
入りまして右側にイートインコーナーを置き、左側に、伸びております冷凍食品。食の外部化ニーズを追えるカテゴリーとして、非常に関連性の高いチルド。
そして米飯という流れにして、奥正面のカウンタースペースについては、従前よりも拡大し、しっかりお客さまに接遇ができる効率のいいスペースを確保していきたいと思っております。
すでに20店舗ほどでテストを始めておりまして、効果測定を見ますと、非常にバラついています。
平均で日販2万円ぐらいしか効果の出ない店から、10万円以上の売上効果、増加につながっているお店もございます。
おしなべて言うと、恐らく3万円ぐらいの日販増加が期待できるんじゃないかと考えております。差し当たって今年度は、既存店で800店、そして新店で1,100店、このレイアウトで導入していきたい。
そして5年後には全体で約10,000店を新型レイアウトにしていきたいと考えております。
これをやると、1店舗当たりの売上を今以上に大きく伸ばせると確信をしております。
既存店の成長戦略(商品力の強化)
トップラインを上げる方策以外にも、利益率をどうやって上げるかということにも心を砕いていかなければなりません。
これはその一例でございますが、FFコーヒーの進化も続けていきたいとも思ってます。
去年の2月から北海道地区で本格的なカフェラテが作れるマシンを導入して、アイスラテもホットラテもミルクをスチーマーで温めて、コーヒーとブレンドできるマシンを入れました。
味が今までのものよりも、はるかにいいということで、お客さまにご支持をいただいております。
赤の折れ線グラフが新型マシンの北海道エリア、ブルーが全国ですけども2、3割売上が伸びました。
これによって、粗利益率がコーヒー全体でもちろん変わるんですけども、お店全体の粗利益率も0.1パーセントの改善が見られました。
こんなかたちで利益率の改善をそれぞれのカテゴリーで進めながら、トップラインとボトムラインがしっかり上がるように政策を打ち続けていきたいと思ってます。
リスク(労働環境の変化)に対する打ち手
左上のグラフは東京地区の最低時給の推移を表しています。2000年から2006年までは、ほぼ最低賃金が変わらずにきたんですが、2007年から16年にかけて毎年2パーセントずつ最低賃金が上がっておりまして、時給に換算しますと10年間で200円以上の時給が上がるということになってきております。
近くて便利ということで、いろんな品揃えの変更だったり、レイアウトの変更であったり、商品改良をやりながら、既存店前年比56ヶ月連続100パーセントクリアということでやってきました。
しかし、右側のグラフを見ていただきますと、2010年度から16年度までのオーナー総収入と1店舗当たりの人件費の推移を折れ線グラフでとっておりますけれども、ほぼイコールでシンクロしております。頑張ってもなかなか利益を増やす環境が作りにくい。そんな環境を加盟店さんと確認できておりました。
そして今後、さらに社会保障の範囲の拡大、労働時間管理の厳格化がなされる中においても、既存の加盟店さん、オーナーさん方にしっかり経営マインドを奮い立たせていただいて、勇気をもって経営していただくために、今般17年9月より、セブン‐イレブンチャージ1パーセント特別減額という措置を取りたいと思っております。
これによりまして、加盟店オーナーさん一人ひとりが、必ずや拡大均衡に向かって、商売に今以上に熱心に取り組んでいただけるようになると思っております。その点の売上も期待できると思っております。
新規のオーナーさん候補も「セブン‐イレブンがこういう制度をやってくれるんだったら、個人として事業主をやってみようじゃないか」という方も、これによって増えてくればありがたいなと思っております。
2009年に不良品本部15パーセント負担という政策を出した時に、当時で年間で約100億円の経費増になりましたけれども、あの時から既存店が大きく伸び始めたということを、ぜひ付け加えておきたいと思います。
制度的にサポートするだけではなくて、いろんな設備面、仕組み面でもオーナーさん方、現場の生産性をあげる努力をしていきたいと思ってます。
生産性の向上(働き方改革へのサポート)①
こちらが食洗器でございます。外食やファーストフード店では、この食洗器が入っているのは当たり前なんですが、セブン‐イレブンとしても自動食洗器を導入していきます。先ほど見ていただいたように、カウンターの売上が10年前と比べて2.6倍になっています。
であるにもかかわらず、すべてのサニーテーションはずっと手作業でお店の負担になっておりました。負担になっているばかりでなく、洗っている間は物が売れないわけですから、お客さんにとっても、物が買えない時間帯としてロスタイムになっておりました。
それを防ぎながら、さらに熱湯でしっかりと殺菌をしますので、お客さまに対しては、安心安全な食品の提供を、便利さとも同時に両立させることができると思っております。
人件費も1日1時間削減しますと、年間で30万ほどの削減になると思いますし、水の使用量が2割ぐらい下がりますので、非常に環境にやさしい、そういう設備投資になるかと思います。
生産性の向上(働き方改革へのサポート)②
店舗の中だけではなくて、サプライチェーン全体で生産性を上げる術はないものか、ということも検討もしております。RFID、ICタグでなんとか在庫管理とか食品管理、売上管理をしたいと 思っておりますが、まだ商品1品1品にICタグをつけられるほどコスト的には練れてきておりません。
ただ、仕訳単位でセンターでICタグを活用して、店舗でRFIDで検品するということをやりますと、大幅に物流センター、トラックのドライバーさん、そしてお店の従業員さんの省力化、生産性の向上につながると思っております。
私も1980年に入社してずっと検品作業というのをお店でやっておりました。時代とともに進化はしました。端末でバーコードをスキャンして、検品して、それが伝票としてちゃんと発行されるということがありましたが、それでも毎日1品1品商品をスキャンニングしないといけない。この手間は大変でございます。
今回実験でありますけれども、全部これをRFID検品に置きなおすとどうなるかということで試算しますと、1日あたり1店舗あたり170分の時間が8分まで削減できます。
そうしますと人件費が、年間で80万から90万ぐらいの削減効果になるということが出てまいりました。センター仕分けも、カゴ車納品、パワーゲート車両を導入することでドライバーさんの労働環境も大幅によくなります。
トラックの回転率も上がるということで、ここの労働環境の改善にもつながると考えております。これは、8月からテストを実施して、できるだけスピードをもって拡大をしていきたいと思っております。
17年度の主な行為と数値計画
そんな政策を打ちながら、17年度の目標でございます。営業利益で2,440億円プラス5億円。非常にコンサバティブに見ております。先ほどの制度変更チャージの部分が、おそらく下期で80億円だと思ってます。
ただ、先ほど申し上げました、レイアウト変更および食洗器の導入、これによる売上増加分、利益の増加分は、今回織り込んでいません。
先ほど申し上げましたように、レイアウト変更は非常にばらついていまして、日販で1万円2万円しか上がらない店から、10万円以上上がる店がありますし、1,800店がどのタイミングで実施されてるかというのは、なかなか数字に反映させることができませんので、それは織り込んでません。
もしこれがスピーディーに実施できれば、既存店の前年比は大幅に上がってくると思いますし、先ほど古屋社長とも話していたんですけども、今回の制度変更がオーナーさんのモチベーションを上げて、既存店の売上増加に必ずやつながるだろうということで、2人では一致しております。そういう部分もここには織り込んでおりません。
堅くここで出させていただいた数字は2,440億でございます。
基本戦略:質を伴った成長
続きまして7-Eleven, Inc.でございます。
こちらの棒グラフはアメリカのセブン-イレブンの1日1店舗当たりの日販を示しています。折れ線グラフで示しておりますのは、フランチャイズ化率の推移を示しております。見ていただいてわかるように、この棒グラフが徐々に伸びてきてます。
これはフレッシュフードの強化、出店基準の厳格化、優良物件のM&Aを繰り返したことによって、日販が徐々に上がってきてるという状況であります。それに加えて直営店が多かったアメリカのセブン-イレブンも、フランチャイズ化することで、1億3,700万ドル2003年度の営業利益が、16年度で7億400万ドルと5倍強まで成長してきたという状況を確認いただけると思います。
Sunoco LP社の小売事業の一部を取得
これだけ営業利益を伸ばせる、非常に肥沃なアメリカのマーケットで、今回非常に大きなチャンスをいただくことができました。
ガソリンメジャーがリテール(小売)部分から、撤退してどんどん店舗を売却していましたけれども、今回、数少ない優良物件のお話がございまして、店舗網の強化、これによってサプライチェーンの充実も図れるということと、今回の物件そのものが、非常に優良物件であるということで、決議決定を昨日いたしました。
どれだけ優良の物件かといいますと、商品売上で日販で4,800ドル。これは7-Eleven, Inc.、アメリカのセブン-イレブンの日販と一緒です。それからガソリン販売量が1日当たり5,100ガロン。これはSEIのガソリン販売量。38パーセントのお店しかガソリン販売はないですが、その1店舗あたりと比べて、1.5倍のガソリンの販売量ということでございます。
そして、出店してるエリアと、今回買収するエリアがほぼ重なっておりまして、テキサスでいいますと770店の既存店に対して、550店のアクイジションができて1,320店。フロリダ州ですと810店、10店、920店。ニューヨーク州なんかですと340店ということで、非常にドミナントが図れる場所にあるということでございます。
中期計画:質を伴った成長の更なる加速
今までのそのアクイジションがどうだったのかというと2005年から10年というのは、あまり大きなM&Aはなかった歴史がございますが、それに対して11年から16年については、かなりM&Aをやってまいりました。
2005年から10年で、この棒グラフが示しておりますのは、グリーンの部分がオーガニックの出店で、オレンジの部分がM&Aでございます。見ていただいてわかるように、2011年12年13年では非常に多くの店の取得をしております。折れ線グラフが示しておりますのは、営業利益額の推移でございます。
下の表で見ていただいておわかりのとおり、2005年から10年の営業利益の伸び、年率5.3パーセントに対して、11年から16年については11.4パーセントということで、非常に大きな伸びが達成できてます。
今回のアクイジションも、この成長に絶対生かしていきたいと思っています。19年度の目標として1万店、日販5,000ドル。そして10億ドルの営業利益の達成ということを目途として、今回のアクイジションを進めさせていただこうと思ってます。
17年度の主な行為と数値計画
2017年度のSEIの目標数値でございます。
ここには店舗純増数と設備投資額が、今回のアクイジションを織り込んでおりますが、それ以外の営業収益の数値には今回のアクイジションの部分は織り込んでません。取得時期によってかなり数字がぶれるということがございますので、確定次第ご報告・発表させていただきたいと思っています。