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株式会社QDレーザ6613

東証グロース

電気機器

2026年3月期第2四半期決算説明に際して

大久保潔氏(以下、大久保):株式会社QDレーザ代表取締役社長の大久保です。よろしくお願いします。本日は2026年3月期第2四半期の決算についてご説明します。

第2四半期は幅広いお客さまから受注をいただき、売上高は6億3,100万円で前年同期比13パーセントの増加となりました。営業利益は依然として赤字ですが、マイナス1億6,900万円と前年同期比で1億2,500万円の改善となりました。

レーザデバイス事業については、製品ごとに売上伸長のばらつきはあるものの、年間計画の達成に向けて順調に進捗していると考えています。

視覚情報デバイス事業では、年度初からB2B型およびB2B2C型事業への構造転換を進めており、国内外のお客さまと新たな取組みを開始しています。

大きなトピックとして、中小企業庁が実施している中小企業成長加速化補助金の申請を行い、今年9月に採択されました。この補助金に加え、今後10年間で売上を100億円にすることを目指す「100億宣言」という取組みも進めています。詳細については後ほどご説明します。

このような取組みを通じて、成長ビジョンの実現や企業価値の向上に向け、引き続き取り組んでいきます。

会社概要

大久保:まず、会社概要を簡潔にご説明します。当社は2006年に富士通研究所からスピンオフして設立された会社です。

2021年2月に、現在の東証グロース市場である東証マザーズ市場に上場しました。現在、従業員数は47名です。本社は神奈川県川崎市にあります。

事業内容は主に2つです。1つは半導体レーザデバイス事業です。通信、加工、センサ用の最先端の半導体レーザを開発・製造・販売する事業であり、当社独自の量子ドットレーザも扱っています。

もう1つは視覚情報デバイス事業です。当社が開発した網膜投影技術を使用した製品や光学ユニットといった部材を開発・製造・販売する事業を展開しています。

製品拡大の道のり

大久保:製品拡大の道のりについて簡単にご説明します。

ページの上段はレーザデバイス事業です。通信用の量子ドットレーザ、精密加工やセンサに使用するDFBレーザ、水準器やセンサなどに用いる高出力レーザ、バイオ検査などに使用する小型可視レーザといったものを主力製品として扱っています。

表の下段は視覚情報デバイス事業です。先ほどご説明した網膜投影技術を使った製品群をビジョンサポート、ビジョンヘルスケア、スマートグラス、XRグラスといった分野に製品や部材として提供する事業を展開しています。

QDレーザ|目指す姿

大久保:今回の決算説明資料では、私たちが目指す姿をあらためてお示ししました。

「人の可能性を照らせ。」という理念の実現もと、当社独自の技術を成長ドライバーとして活用し、最先端の光半導体デバイス・モジュール・応用製品の提供者として、グローバル顧客の技術パートナーとなることを掲げています。これにより、光半導体分野のメジャープレイヤーとなることを目指しています。

当社は、売上の伸びとともにお客さまの数も徐々に増えており、産業界を中心に確実に知名度が上がり、お客さまからの信頼をいただける立場になってきていると考えています。

この目指す姿に向けた取組みの継続と、さらなる追求により、この業界のメジャープレイヤーへと成長する決意を社内外に示しながら、気持ちを引き締めて取り組んでいきたいと思っています。

QDレーザ|事業計画の達成に向けた取組み

大久保:事業計画の達成に向けた取組みについてです。当社は昨年11月に中期経営計画を公表しており、その中で今期および来期に向けた事業計画についてご説明しています。

まず、2026年3月期の事業計画の進捗状況についてご説明します。

事業計画の進捗ですが、現在までに「74パーセント」を達成しています。この数字は第2四半期終了時点での売上と受注残の合計が年間計画に対してどの程度の進捗かを示したもので、前年、前々年と比較しても悪くない数字と考えています。

また、事業計画では大きな柱を2つ設定しています。1つ目が「安定した経営基盤の構築」、もう1つが「成長可能性の追求」です。これらの両方の実現により、大きな成長を目指すのが当社のビジョンです。

「安定した経営基盤の構築」では、上期の売上高が前年同期比で12.9パーセントの増加となりました。当社が目指している成長プランに対して順調に進んでいると考えています。

レーザデバイス事業では上期の売上高が5億8,000万円となり、上場以来の最高額を達成しました。視覚情報デバイス事業では現在事業構造の変革を進めている最中ですが、増収率は43.2パーセントとなり、順調に進んでいると考えています。

「成長可能性の追求」では、レーザデバイス事業において、中小企業成長加速化補助金を活用し、設備投資計画を加速させる方針です。

また、視覚情報デバイス事業では国内のお客さまとともに「網膜投影型XRグラス」の共同開発に引き続き取り組んでいます。こちらは非常に大きなポテンシャルを秘めた分野だと考えています。

このような取組みを通じて、2026年3月期の事業計画を着実に達成し、その上で全社目標である来期2027年3月期の全社黒字化を目指していきます。この目標に向けて、順調に布石を打てていると考えています。

レーザデバイス(LD)事業部|安定した経営基盤の構築

大久保:レーザデバイス事業についてです。こちらのスライドでは「安定した経営基盤の構築」に関連するものとして累積顧客数の伸びを示しています。第2四半期では16社の新しいお客さまが加わりました。

スライド右側の中段に記載のとおり、当社ではKPIとして認定顧客数を掲げていますが、今年9月時点で113社に到達しており、現時点での進捗としては順調な推移だと考えています。

「安定した経営基盤の構築」として、核となるのはレーザデバイス事業であり、これは当社の土台と言える事業です。この事業をさらに成長させていくことが重要です。

この観点で新製品の投入は非常に重要です。新製品としては、革新的な新しい製品もあれば、お客さまの求めるスペックに応じた小規模な改良品なども含まれますが、このような新しい製品を継続的に市場に投入することが重要であり、その開発を継続して進めています。

第2四半期は新製品の開発を推進しており、第4四半期までにはそのサンプルを完成させて、マーケティングを開始することを目指して取り組んでいます。

レーザデバイス(LD)事業部|成⻑可能性の追求

大久保:レーザデバイス事業に関する「成長可能性の追求」についてご説明します。当社は、量子ドットレーザが成長可能性を実現するための核と考えています。

現在、データセンター向けの需要が増大しており、データセンター向けの研究開発目的で当社の量子ドットレーザを購入しているお客さまは、今期で6社となっています。

当社では、そのうち1社か2社を量産化に結び付けたいと考えています。この分野は非常に高いポテンシャルがあると見ており、当社の成長可能性を実現する重要要素と考えています。具体的には、データセンターにおける半導体の光配線に関心を持つお客さまが量子ドットレーザを試用しています。

この量産化を実現するためには、いくつかの課題があります。1つ目は、お客さまの研究開発を量産化へと進めるため、求められるスペックに対応する製品を提供することです。「ここを微調整してほしい」といった要求はお客さまごとに異なるため、個別の対応が必要です。

2つ目は、量子ドットレーザ自体の性能向上を図ることです。これは、当社の研究開発に関わる課題です。スライドにも記載している、高出力化や多波長対応といった大きな開発目標に取り組む必要があります。このような挑戦を通じて量産受注の早期実現を目指していきます。

この取組みを加速するためには設備が非常に重要です。そのため、設備を増強することで、当社の開発スピードを加速できると考えています。

スライド下段に記載のとおり、第2四半期の取組みとして、中小企業成長加速化補助金を活用し、設備投資を加速する計画です。現在、その詳細について詰めている段階です。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):量子ドットレーザの製造に関する設備投資計画について、このまま順調に進んだ場合のスケジュール感について教えてください。研究開発が関係して若干のずれが生じる可能性もあると思いますが、もう少し教えていただければと思います。

大久保:設備投資計画と関連する内容として、当社はセミファブレスという生産体制を採用しており、自社で製造している部分と外部に製造委託している部分があります。

外部に製造委託している部分については、委託先である協力会社の状況にもよりますが、比較的柔軟に規模を拡大することが可能と考えています。一方で、当社が自社で製造する部分の拡充が生産キャパシティに影響します。

今回、当社が自社で保有する設備をほぼ倍増することを目指しています。これにより、現在計画している「100億宣言」に基づく生産規模は、ほぼ達成可能です。

もちろんキャパシティの拡大だけで売上が上がるわけではありませんので、開発にも営業にも注力し、目標の実現に結びつけていきます。

坂本:設備投資の目的として、現在外部委託しているものをすべて内製化するわけではなく、もともと自社で生産している部分の強化を進めるという理解でよろしいでしょうか? 

大久保:まさにそのとおりです。特に量子ドットレーザの製造は非常に難しく、当社のノウハウが集約されている部分ですが、これを自社設備で製造しています。その設備の増強を考えているものです。

レーザデバイス(LD)事業部|成⻑可能性の追求

大久保:量子ドットレーザやデータセンター、低消費電力、光配線などは、少しわかりにくい内容だと思いますので、こちらのスライドであらためてご説明したいと思います。

まず、データセンターと低消費電力とはいったい何なのかと疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。データセンターは、例えば私たちがスマホを使って情報を得る際に、データセンターとやり取りして、その情報がスマホに表示される訳です。

最近ではAIが登場し、みなさまもAIを活用したアプリをお使いになっていると思いますが、そのAIが動作するデータセンターの消費電力が非常に大きいことが、現在大きな問題となっています。

スライド右側にサーバーラックのイメージ図を掲載しています。これは玄関ドアほどの大きさなのですが、ここに最先端のAI用コンピュータやサーバーを設置すると、家数軒分の電力を消費してしまうことが問題視されています。

AIデータセンターの増設計画が進む中で、社会的に「これほどの電力消費が許容されるのか?」という批判があり、特にアメリカでは大きな議論となっています。

よってデータセンターの事業者側は、消費電力は削減したいものの、コンピュータやデータセンターの能力は落としたくないという事情があります。そのために、データセンターの処理速度を向上させながら、さらに低電力化を実現するためのさまざまなソリューションについて真剣に研究が行われています。

その中で、銅線の電気配線を光配線に置き換える技術革新が注目されています。多くの企業で研究が進められており、光配線技術はすでに一般的な議論の対象になっているものです。

当社へのお問い合せも、その中の最先端の技術開発に関連するものです。半導体チップの周囲ぎりぎりまで光配線へ置き換える取組みを進めている企業などからお声がけをいただいています。

スライド右下にはそのイメージ図を掲載しています。半導体チップは非常に高温になり、特にCPUやGPUなどのデータセンターの中でも最も肝となる頭脳の部分は大量の熱を放出します。

その近くでレーザを動作させるには高温環境下でも安定して動作するレーザが要求されますが、そこで量子ドットレーザの優位性が発揮されます。

量子ドットレーザは高温環境でも動作可能です。そのため、半導体チップに極限まで近い場所でも使用できるので、半導体メーカーをはじめとする当社のお客さまが注目しており、研究開発が真剣に進められています。その中で、当社製品も研究開発用として採用されている状況です。

お客さま側の研究開発と当社のより良いレーザ製品の提供が相互に進むことで、これらの技術の実用化が加速すると考えています。

坂本:仮にこの技術が実用化された場合、コスト面を含めたさまざまな課題があると思います。現状の見通しでは、どの程度電力消費を抑えられるものなのでしょうか?

大久保:さまざまな企業からさまざまな報告が出ていますが、3分の1から10分の1に削減できる可能性があると言われています。

坂本:それは電力コストも大幅に削減されることになりますね。

視覚情報デバイス(VID)事業部|事業の構造転換

大久保:続いて、視覚情報デバイス事業における事業構造転換についてご説明します。

当社は網膜投影技術を自社の中核技術として開発し、製品を展開してきました。昨年11月は中期経営計画を策定し、「安定した経営基盤の構築」および「成長可能性の追求」の2つの柱のもとに事業を分類した上で、それぞれに戦略を構築することから計画をスタートさせました。

そして、現在はスライドの中央に示したように、さらにこれらの取組をB2B2C型およびB2B型に転換する施策を進めています。これは今期の年度初から開始したものです。

さまざまな取組みが並行して進行しており、特に現在進んでいるものとして、海外顧客への網膜投影ユニット供給についての協議や、網膜投影ユニットを搭載した機器を日本で展開する協議などが挙げられます。

また、光学ユニットに関しては、レーザと光学系やMEMSを組み合わせたものについて産業用途への応用を検討しています。当社の技術を応用するもので、具体的な協議を開始しています。

「成長可能性の追求」にあたる取組みとして、国内のお客さまと「網膜投影型XRグラス」の共同開発を継続しており、現在も順調に進んでいます。

これらを踏まえ、注力領域と新規取組みを組み合わせながら、事業の構造転換を図りつつ、中期経営計画で掲げた視覚情報デバイス事業の黒字化を目指して取り組んでいます。

視覚情報デバイス(VID)事業部|事業の構造転換

大久保:具体的な進捗についてご説明します。

国内のお客さまとの「網膜投影型XRグラス」の共同開発および開発受託(NRE)の継続については、順調に進んでいます。スライド右側に小さな写真を掲示していますが、小型化や軽量化、性能向上など、さまざまなテーマに対して着実に取組みを進めている状況です。

海外のお客さまへの網膜投影機器のユニット提供については、現在、実務的な協議を進めています。

海外のお客さまの機器を日本で販売することについても議論が進んでいます。当社は、これまでに自社製の網膜投影機器を販売してきた経験がありますので、そのノウハウを活用して、海外のお客さまの機器の国内展開に取組みたい考えです。スライド右側にはそのイメージ写真を掲載しています。

産業用途向けの光学ユニット提案についても、具体的な会話を始めています。

さらに、当社のいくつかの技術について医療機器への活用の可能性についても議論しています。パートナーを探しながら、事業機会を探る取組みを進めています。

現時点では具体的な名前を公表できる段階には至っていませんが、取組先との具体的な会話が同時並行で進んでいます。できるだけ早くしっかりとした形あるものにし、成果をお示しできるようにしていきます。

坂本:事業の構造転換で収益改善を見込んでいるとのことですが、手応えのようなものがあれば教えてください。

大久保:本日は具体的にご説明することはできませんが、すでに具体的な相手がおり、具体的な条件について交渉を進めている段階です。これらをビジネスの形にしていきたいと考えています。

坂本:進捗に期待しています。

QDレーザ|成⻑に向けた今後の取組み

大久保:私たちは成長に向けてさまざまな課題に取り組んでいますが、さらに成長を進めるための布石についても考えていく必要があります。それをみなさまへのメッセージとして、こちらのスライドにまとめました。

まず、スライドの一番上に記載されている「100億宣言」と中小企業成長加速化補助金の採択についてです。こちらはすでにご説明しましたが、補助金を活用してレーザデバイス事業に関連する設備投資を加速させ、製品開発スピードの向上を目指しています。

ただし、下に括弧書きで記載しているとおり、かなり大規模な設備導入になりますので立ち上げには相応の時間がかかることを想定しています。量産への寄与は、2027年度以降になると考えています。

次に、経営基盤のさらなる強化に向けた施策についてです。提携や出資、M&Aなども積極的に検討して進めていきたいと考えています。ただし、取組みにあたっては闇雲に進めていくのではなく、スライドに記載している2点を重視します。

1つは「安定した経営基盤の構築」に資する取組みであることです。もう1つは、当社の技術力やビジネス経験を活かせる取組みであることです。この点を重視し、案件を選別しながら積極的に取り組んでいきます。

そして、イノベーションの加速、「テクノロジー×キャピタル」です。こう記載すると無計画に進めそうに見えるかもしれませんが、最大の優先事項は来期の黒字化です。キャッシュが回る事業体制を構築し、サステナブルな事業体として成長させていきます。

一方で、当社は技術企業ですので、テクノロジーを育成し、拡大していくことも重要です。技術をイノベーションとして確立し、ビジネスとして成り立たせるには、一定の投資が必要と考えています。それが次の成長を生み出すための手段にもなっていきますので、適切なキャピタルの投入を検討していきます。

QDレーザ|100億宣言

大久保:こちらのスライドでは「100億宣言」を掲げています。今年7月に中小企業庁のホームページで公表され、当社からも発表している内容ですが、その中身についてさらに詳しくご説明します。

「100億円宣言」は2035年度に売上高100億円の達成を目指すビジョンです。その柱となるのが、これまでご説明してきた「安定した経営基盤の構築」と「成長可能性の追求」の2つです。

「安定した経営基盤の構築」については、レーザデバイス事業のベースライン事業と視覚情報デバイス事業で、年平均11パーセントの売上成長を実現します。ベースライン事業とは、量子ドットレーザの量産化による大きな売上成長を除いた事業のことです。これにより、まず安定した経営基盤を構築します。

「成長可能性の追求」については、先ほどご説明した量子ドットレーザ関連の事業です。こちらはグローバルの大手顧客1社、2社からの量産受注を目指します。

現在取組を進めているお客さまはグローバル大手企業が含まれており、この規模のお客さま方からの量産受注は、当社に非常に大きな収益インパクトをもたらします。これを実現することで、2035年の売上高100億円の達成を目指して取り組んでいきたいと考えています。

スライドの下部には時間軸を示した簡単な概念図があります。まずは来期の全社黒字化を達成します。その後、2028年度には量子ドットレーザの量産が徐々に始まると想定しており、これらを積み上げることで2035年には売上高100億円を達成します。

坂本:2035年度に売上高100億円達成するビジョンについてご説明いただきましたが、現在の売上高から考えると相当な成長率が必要だと思います。

2028年から量子ドットレーザを本格的に生産するマイルストーンを掲げられていますが、2028年度から2035年度までの具体的なシナリオやトピックなどはありますか? 視聴者もイメージが湧きやすくなると思います。

大久保:「安定した経営基盤の構築」は、まさに当社が毎年取り組んでいることです。視覚情報デバイス事業については、事業の構造転換を進めています。このように、現在布石を打っている施策が具体的な形になっていくことで、その取組みが来期以降の事業の柱となっていきます。

また、レーザデバイス事業は元よりB2B型ですが、視覚情報デバイス事業も同様に、B2B型へ大きくシフトしていく考えです。やはり企業のお客さまと明確な目標を設定し、製品を作って販売していくことは、高い確度で事業の構築が可能だろうとの期待を持っています。

そのような中で、2桁成長を継続していくことはややアグレッシブに見えるかもしれません。しかし、実際には私たちの現行の取組みをさらにスケールアップできると考えていますし、そのための改善の余地も見つけることができると思っています。それを継続することで、確実な成果を出せると確信しています。

そのような意味で、当社のビジョンに立ち戻ることになりますが、お客さまにとって重要な部材を供給するサプライヤーになっていますので、このポジションに居続けられるように努力することが必要だと考えています。

このような取組みを続けていきますので、おそらく「安定した経営基盤を築く」過程では派手なマイルストーン達成を示すことよりも、多岐にわたる事業ポートフォリオの中で着実に数字を積み上げていくことが進捗を示す最大の経過説明になるのではないかと思います。

坂本:まとめのような質問になってしまいますが、最近AIが爆発的に発展していることについて触れたいと思います。

この分野の成長性については私も15年ほど前から予測していたことですが、1つの基礎技術が浸透すると、その結果として爆発的に新しいサービスが生まれる構図があります。

そのような観点で見ると、個人的には御社の高精度なレーザ技術は最先端であるがゆえに、今後さまざまな技術の発展とともに利用されていく性質のものではないかと感じられます。

例えば、データセンターの分野でもレーザが多用されるような未来が考えられると思います。2028年以降、技術革新によってレーザ技術がさらに広く活用される可能性があるのか、ご意見をうかがいたいです。

大久保:量子ドットレーザの技術については強みと弱みがかなり明確です。高温で動作するという明確な強みがありますので、創業以来その優位性を活かせるアプリケーションの探索を続けています。

量子ドットレーザは非常にユニークな技術であり、根源的な物理現象で差別化できる製品ですので、量子ドットレーザの応用領域を探索し続けてきたとも言えると思います。

最近のお客さまとお話をする中で、彼らも量子ドットレーザをしっかりと研究したいと思っており、データセンターが量子ドットレーザを活かせる領域だと真剣に考えていることがわかりました。

AIやその周辺技術を考えると今私たちは非常に大きな技術的変化の中にいますが、当社のような規模の企業は、変化の中で勝負することが重要だと思っています。

既存の市場に新規参入するのは難しい一方で、変化する市場でユニークな特性を活かせば、大きく成長できる可能性があります。今がまさに勝負の時期だと考えています。

さらに、お客さまにはグローバル大手企業が含まれていますので、これは絶対に勝負すべきだと思っています。

坂本:それが順調に進んでいくことで、売上高100億円の達成も可能になってくるということですね。

大久保:この実現に向けて取り組んでいきたいと思います。

業績ハイライト

大久保:ここからは業績ハイライトとして、今期の実績についてご説明します。

売上高は、レーザデバイス事業、視覚情報デバイス事業、全社すべてにおいて、前年同期比で上向いています。

冒頭でもご説明したとおり、レーザデバイス事業は前年同期比11パーセント増、視覚情報デバイス事業は43パーセント増となり、全社では13パーセント増となりました。

業績ハイライト

大久保:続いて収益についてです。全社としてはまだ営業損失の状態ではありますが、すべての矢印が上向きになっています。

全社では前年同期比43パーセント増となり、1億2,500万円の改善となりました。レーザデバイス事業が営業利益のプラスを牽引しており、前年同期比35パーセント増となる9,700万円と進捗しています。

スライド下段は経常損失と半期純損失です。いずれも前年同期比で1億4,000万円の改善という結果になりました。

業績ハイライト

大久保:こちらのスライドには、今ご説明した内容の詳細を掲載しています。スライド右側には主要製品群別の売上サマリーを記載しています。

今期は製品毎にややばらつきが見られる状況です。個別の説明は次のスライド以降で簡単に触れますが、まだらな状況である一方で、製品ポートフォリオが分散していることが安定した売上獲得につながっており、全社でプラスの結果となっています。

視覚情報デバイス事業についてはまさに構造転換の只中であり、今期は開発受託の売上を計上しています。この構造転換の布石を着実に形にして、確実に数字が出せるように取り組んでいきたいと考えています。

貸借対照表

大久保:貸借対照表です。損失の影響により、2025年3月期末比で総資産は2億3,400万円のマイナスとなっています。

キャッシュフロー

大久保:キャッシュフローにつきまして、現金及び現金同等物残高は、前年同期末比で5億4,400万円のマイナスとなっています。

受注状況

大久保:受注状況についてです。現在、売上高実績と受注残高の合計が年間想定売上高の74パーセントに達しています。これは過去2期と比べても高い進捗率だと考えています。

DFBレーザ:売上高

大久保:各個別の製品についてです。DFBレーザは産業によってさまざまな違いがあります。

当社の主力製品として幅広い産業界に販売していますが、業界によって大きな差が生じることになりました。今期は特に計測用光源、半導体ウエハプロセス関連が大きく伸び、売上を牽引しています。

小型可視レーザ:売上高

大久保:小型可視レーザは大口のお客さまの在庫調整の影響を受け、やや伸び悩んでいますが、年度を通じて挽回していきたいと考えています。

高出力レーザ:売上高

大久保:一方、高出力レーザではすべての分野でプラスになっています。具体的には、建設・DIY用水準器、半導体工場用センサ、マシンビジョンなどにおいて全面的にプラスに向かっており、この順調な流れを継続していきたいと思っています。

量子ドットレーザ:売上高

大久保:量子ドットレーザは研究開発用途の受注であるため、定期的では無く、受注がまだらに発生する傾向があります。ただし、注目度が大きく上がっている中で、今期は前年同期比136パーセントという好調な数字となりました。

視覚情報デバイス(VID):売上高その他中期経営計画進捗

大久保:次に視覚情報デバイス事業では、売上構成として開発受託が今期の数字の中心となっています。事業の構造転換を進めている最中であり、その中での数字となります。ここでしっかりと事業転換の布石を打つことが来期の数字につながると考えており、全力で取り組んでいます。

2026年3月期予想

大久保:こちらのスライドは、今期の事業計画におけるKPIなどの抜粋です。中期経営計画に掲げた来期の数字ですが、本日は説明を割愛します。私からのご説明は以上です。

質疑応答:補助金を活用した設備投資の配分について

荒井沙織氏(以下、荒井):「半導体レーザ事業と視覚情報デバイス事業という2本柱の中で、開発投資の配分はどのように考えていますか?」というご質問です。

大久保:今回、レーザデバイス事業について、補助金を活用して大きな投資を進めることを考えています。この補助金は非常に大規模なもので、助成率は50パーセントでありながら、最大5億円の補助となっています。当社としてはこれをフルに活用したいと考えています。

今回はこのような大きな投資を計画しているものの、このような大規模の投資を頻繁に行う計画はありません。設備投資は限定的に行いつつ、基本的には事業から得られたキャッシュで必要な開発投資を進めていくのが原則だと考えています。

例えば視覚情報デバイス事業の共同開発は、具体的にお客さまの要望を受けながら開発を進め、収益を伴うかたちで取組んでいます。無理のない範囲で資金を回しながら事業を進めていくのが基本方針と考えています。

坂本:補助金の用途は限られていると思います。今回の設備投資では、工場を建てるようなものではなく、機材の導入に重点が置かれているのでしょうか? あるいは通常の研究に対する資金として活用するのでしょうか? 

大久保:基本的には、自社で保有する大型機材を1台追加することが主な軸となります。

坂本:なるほど、それが生産工場の強化につながるのですね。

質疑応答:網膜投影機器の市場可能性と事業戦略について

荒井:「視覚支援用途だけでなく、産業、エンタメ、メタバースなど他分野への展開も期待されていると思います。中長期で特に大きな売上貢献を見込んでいるアプリケーション領域はどこでしょうか?」というご質問です。

大久保:網膜投影機器に関するご質問だと思います。当社は網膜投影についてB2B2C型事業やB2B型事業への転換を目指していますが、新しいアプリケーションが重要だと認識しています。

網膜投影には、ピントが合わせやすいこと、レーザ光のロスが少ないことで究極的には低消費電力を実現できることなどの特徴があります。コンシューマー用途の中でも、特にXRグラスにおいては可能性があると考えています。

XRグラスでは、最近、Meta社とRay-BanがAIグラスを発表しており、さまざまな場面で注目されています。実際に数百万台売れているとのことです。

AIが身近に使われるようになった時、コンシューマーとして本当に必要なガジェットは何なのか、それがAIグラスで、スマートフォンに代わるようなものになるならば、世界を一変させる可能性があります。

ただし、このような大きな領域の取組みについては、当社はB2B型やB2B2C型の事業を通じて、この分野に挑戦するお客さまに対して部材を提供していきたいと考えています。いずれにしても、AIとつながる機器の分野が大きなチャンスになると考えています。

質疑応答:今後のロードマップについて

荒井:今ご説明いただいたような部分が最大のボトルネックとなるようですが、そのような中で、ロードマップを描くのは難しいことなのでしょうか? 

大久保:広くコンシューマーに向けて販売する製品については、共同開発の取組みも含めて開発を進めていきたいと考えています。今期の売上高にも一部反映されているように、この取組みによる収益を上げながら事業を推進するかたちを取りたいと思っています。

したがって、共同開発のプランや長期的な方向性についてお客さまと合意することが、非常に重要だと思います。そしてそのマーケットのリスクについても、お客さまと協力して解決していくかたちに変えていきたいと考えています。これがB2B型と呼ばれるものだと思います。

他の分野においても同様です。産業用途向けに製品を出す場合でも、「産業」と言うとイメージがぼんやりとしてしまいますが、その中にも成長している分野とそうではない分野があります。

産業用途もB2Bとして各分野に振り分けて、ポートフォリオを分散することで、より事業を安定化させたいと考えています。

これまでのQDレーザは、単一の勝負に依る事業説明が多かったように思いますが、幅広い布石を打ちながら事業を進めていきたいと思います。

もちろん社会の大きな変化、例えばAIの登場などに対応し、それを見据えて事業を展開することは必要不可欠だと思います。しかしながら、会社全体のビジネスを一極集中させるのではなく、B2B型でより安定的な事業基盤を作りながら、着実に前進することを目指していきたいと考えています。

質疑応答:生産拠点の移転期間中の見通しについて

坂本:新拠点への移転に関して、移転期間中の生産活動についていくつかご質問をいただいていますので、まとめてうかがいます。

「生産拠点の移転に伴い、視覚情報デバイスも戸塚へ移転する予定ですか?」「生産移転に際して一時的な中断は発生しますか?」というご質問です。

大久保:建設協力金方式で戸塚に新拠点を作る予定ですが、視覚情報デバイス事業部についてもその近くに一緒に移転します。

製造については、当社はセミファブレスでありますが、視覚情報デバイス事業はほぼファブレスと言えるかたちになっています。そのため、製造活動が途絶えることはありません。

ただし、自社で保有している施設もあるため、それらの移転時には一部中断が発生します。そのサプライチェーンに関しては、しっかりと検証を行っており、移転中も途絶えることなく運用できると考えています。

坂本:かなり大きな機械もあるようですね。

大久保:おっしゃるとおりです。

質疑応答:高出力化対応や多波長対応の難度について

坂本:量子ドットレーザの顧客ニーズに対応して、さまざまな製品を開発し、それが受容されているというお話がありましたが、それに関連して質問をいただいています。

「高出力化や多波長対応については、いろいろな対応をされていると思います。これはなかなか困難で難しいものなのでしょうか?」というご質問です。

大久保:簡単ではないと思います。当社は長い時間をかけて取り組んできましたが、容易に大きな性能向上ができるものではありません。しかし、それでもやり続けることが重要だと思います。

質疑応答:可視レーザの新波長・高出力化の進捗について

坂本:「可視レーザに関連して、新波長と高出力化の開発進捗について教えてください」というご質問です。

大久保:当社のエンジニアが新しい構造や設計の試作品を開発しています。お客さまに提供できる製品が完成次第、順次リリースしていく予定です。このような開発の取組みは恒常的に進めていくべきものですので、活動を継続しています。

質疑応答:量子ドットレーザの低波長領域拡大によるメリットについて

坂本:「量子ドットレーザに関して、1,100ナノメートルでよいのでしょうか? 低波長領域が広がっているようですが、この広がりによるメリットを教えてください」というご質問です。

大久保:私はエンジニアではないため正確にお答えできるかわかりませんが、新しいアプリケーションを、お客さまがどんどん開発を進めている状況にあると思います。お客さまから「こういう波長のものはないのか?」というお問い合わせをいただくことがありますが、それはご質問にあった波長についても同様です。

新波長を作るからアプリケーションが増える、あるいは研究開発が進んで「この波長があればこのような使い方ができるのではないか」という、両方が同時に動いている印象があります。

質疑応答:菅原顧問の活動状況について

坂本:「研究開発の話に関連しておうかがいしますが、菅原元社長はお元気でしょうか? たまにIRや製品開発状況の進捗、解説などで声を聞けたらと思います」というご質問です。

これは要望に近いのですが、いかがでしょうか?

大久保:私自身はかなりの頻度で話をしており、一緒にお客さまのところに行くこともあります。大人気の菅原顧問については、このイベントへの参加は難しいと思いますが、なにか機会を考えたいと思います。

質疑応答:黒字化への意気込みと資金調達方針について

坂本:「2027年3月期の黒字化を計画の中で、ワラントなどの資金調達は想定していない認識でよいでしょうか? 黒字化の実現に向けた、大久保社長の意気込みや熱意をお聞かせください」というご質問です。

締めの質問として、ご回答をお願いします。

大久保:2027年3月期の黒字化を目指すにあたっては、ワラントを含むエクイティファイナンスは現在考えていません。

坂本:そのほか、補助金を活用するといった方法もありますよね。

大久保:資金調達については、多様な方法があると思います。株主のみなさまにきちんとバリューを提供できる方法が第一義だと考えていますので、そのような考え方で取り組んでいきます。

黒字化については、石にしがみついてでも達成する覚悟で全力を尽くしていきます。

大久保氏からのご挨拶

荒井:最後に、ご視聴いただいているみなさまへ一言メッセージをお願いします。

大久保:現在はまさに大きな勝負のタイミングであり、会社としても黒字化を実現する非常に重要な今期、来期だと考えています。

また、みなさまからいただいたご意見やお問い合わせはすべて目を通しており、それが励みになることが非常に多いです。引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願いします。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日登壇者に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:量子ドットレーザで大手1社ないし2社からの受注を目指すとのことですが、他大手5社から6社の受注はライバル会社になるかもしれないということでしょうか?

回答:現在、研究開発用途の量子ドットレーザを受注している半導体企業などの当社顧客には、量子ドットレーザ以外のレーザ光源も含めて研究開発を進めている企業や、量子ドットレーザのより良い使い方について模索している企業がありますが、いずれにしても当社製品が量産用に採用されるためには、顧客側の研究開発が一定の成果を示す必要があると考えています。

このため、すべての顧客が早期に量産移行すると想定するのは楽観的過ぎると考えており、当初1社から2社の量産受注を目標にすることが現実的であると想定しているものです。また、顧客のアプリケーション次第では、最終的に量子ドットレーザ以外のレーザ光源を選択する可能性もあり、当社としては量子ドットのメリットを顧客が最大限享受できるよう、レーザの品質向上に努めていきます。

<質問2>

質問:政府の経済政策で、半導体分野などへの積極的な投資をするような記載がありましたが、すでに御社の中で会話をされていることはありますか? また、社長として期待していることはありますか?

回答:経済産業省をはじめとして、政府による半導体産業を支援するさまざまな経済政策が進められており、これらの政策によって国内の半導体メーカーの設備投資等が活発化することで、当社への好影響が生ずる可能性があるものと考えます。

当社自身が政府の半導体産業支援政策の対象になっているという事実は現在のところありません。

<質問3>

質問:「RETISSA MEOCHECK」に関して、医療機器として国から認証を受けることはできないのでしょうか? また、そのような計画はないのでしょうか?

回答:医療応用の取り組みとして「RETISSA MEOCHECK」の医療機器化を事業開発の方向性の1つと考えており、取組みの検討を行っています。

<質問4>

質問:新拠点に新たな結晶装置を入れる時期はいつ頃でしょうか? 装置は1台いくらぐらいでしょうか? 海外製で長年のインフレと為替の影響から10億円ほどするとすれば、今の手持ちキャッシュでは足りなくなるのではないでしょうか?

回答:2027年度中を想定していますが、決定次第公表します。キャッシュについては中小企業成長加速化補助金を活用する方針です。

<質問5>

質問:取締役の方々は現金給与に加えて、会社負担で株式を報酬として受け取っているため痛みを感じないと思いますが、4万人以上の株主は現金を出しており、デイトレーダー以外のほぼ全員が今の株価で損をしている点は理解して経営してください。

回答:株主のみなさまにはご心配をおかけしています。まずは2027年3月期の黒字化達成に向けて諸施策を推進していきます。

<質問6>

質問:量子ドットレーザの量産をいつまで待たせるのでしょうか?

回答:顧客の開発進捗次第の部分があり当社として明言できかねますが、2030年度までの市場の立ち上がりを想定しています。

<質問7>

質問:スマートグラスの開発でTDKに見放されることはないのでしょうか?

回答:相互の重要なパートナーという認識の下、開発を進めています。

<質問8>

質問:データセンター向けの研究開発を進める顧客6社について、具体的な社名公表時期の目途はいつ頃になりますか?

回答:他の当社製品の販売先と同様に、業界慣習として顧客の社名の公表は大変厳しく制限されることが一般的です。当社判断だけでは開示できませんが、重要な顧客との取組みの中で公表可能である取組みがありましたら速やかに開示します。

<質問9>

質問:XRグラスの市販時期の目安はいつ頃になるのでしょうか?

回答:網膜投影型XRグラスは顧客との共同開発を行っており、当社はB2B型・B2B2C型事業として取組みを進めています。XRグラス製品の市場投入計画は顧客が検討を進めているため、顧客の計画次第となります。

<質問10>

質問:アイウエア型ディスプレイなど、網膜投影ディスプレイの社会実装が進んできていますが、量産・普及フェーズに向けた最大のボトルネックと、その解消に向けたロードマップを教えてください。

回答:網膜投影型ディスプレイを取り扱う海外企業の登場など、徐々に網膜投影ディスプレイに関心を持つ企業が増えていると認識しており、当社はB2B型・B2B2C型事業として取組みを進めています。

アイウェア型ディスプレイ(XRグラス)がコンシューマー向け市場に浸透するためにはアプリケーションが重要だと考えています。例えば他社では、AIを利用できる新しいタイプのXRグラス(AIグラス)を発表して人気を得ているなどの動きがあり、AIグラスがコンシューマー向けの新市場を開拓する可能性があります。

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